1.DXの基礎知識:2026年における再定義と深化
2026年1月現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)を取り巻く環境は、数年前の「導入期」から、AI(人工知能)とデータガバナンスを基盤とした「定着・深化期」へと劇的に変化しています。本章では、元来のDXの定義(DXの意味やデジタイゼーション、デジタライゼーションとの違い)を整理しつつ、経済産業省の最新施策である「デジタルガバナンス・コード3.0」や、現実のものとなった「2025年の崖」以降の世界観を踏まえ、中堅・中小企業が今まさに直面している課題と機会について解説します。
1-1.DXとは?概念の進化と
デジタイゼーション・デジタライゼーションとの違い
デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)の定義は、時代とともにその重みと具体性を増しています。2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した概念で、「IT技術の浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義されています。
しかし、ビジネスの現場においては、経済産業省の定義する「データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」という解釈が重要です。
DXを正しく理解するためには、以下の3段階の区別が不可欠です。2026年の現在は、これらを統合的に進めることが求められます。
デジタイゼーション(Digitization)とは、「デジタル化」、「電子化」を指します。例えばこれまで紙ベースで発行していた請求書をPDF形式に置き換えることなどを指します。
一方、デジタライゼーション(Digitalization)は、一連のワークフロー全体を電子化することを指します。例えば、受注システムから電子請求書を自動発行して処理するほか、店頭で行っていた受付をWebで完結できるようなワークフローを構築することを指します。
そしてDX(Digital Transformation)は、デジタライゼーションを会社全体に波及させ、企業のありようやそこで働く人の本質までを変化させてしまうような大きな変革を起こすことを指します。
| 段階 | 用語 | 定義 | 具体例 | 2026年の視点と変化 |
|---|---|---|---|---|
| Phase 1 | デジタイゼーション Digitization |
アナログ・物理データの デジタルデータ化 |
|
「事業継続の最低条件」 Windows 10のサポート終了(2025年10月)を経て、古いPCの刷新は完了しているべき段階。もし未達の場合、セキュリティリスクにより信用等を失う恐れも。 |
| Phase 2 | デジタライゼーション Digitalization |
デジタル技術を活用した 業務プロセス改革 |
|
「自律化への移行」 従来の「人がツールを使う」形式から、「AIエージェントが自律的に業務を遂行する」形式へ。プロセスの一部ではなく全体をAIが指揮する段階に。 |
| Phase 3 | デジタルトランスフォーメーション Digital Transformation |
デジタル技術を活用した ビジネスモデル変革 |
|
「企業価値の再構築」 デジタルガバナンス・コード3.0が求める本丸。単なるデジタル化ではなく、競争優位性と持続的な企業価値の向上が求められる段階に。 |
現状では、多くの企業がいまだ業務プロセスのデジタル化(Digitalization)で止まっているのではないでしょうか。ビジネスモデル変革も、同時並行的に進める必要があります。
▼DX、デジタライゼーションについては、下記の記事でも解説しています。
1-2.DXが必要な理由:2025年の崖の現実と新たな成長への圧力
かつて経済産業省の『DXレポート』(2018年)で予見された「2025年の崖」問題は、2026年現在、予測から現実の経営課題へと移行しました。DXが必要とされる背景には、大きく2つの課題があります。
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①「2025年の崖」の現実化とレガシーシステムの限界
経済産業省が『DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~』の中で警告した「2025年の崖」があります。複雑化・ブラックボックス化した既存システム(レガシーシステム)を放置した場合の経済損失リスク(最大年間12兆円)は、2026年の今、現実の経営リスクとなっています。
セキュリティリスクの増大 サポート終了後のOSを使用し続けることは、サイバー攻撃(ランサムウェア等)に対して無防備であることを意味します。 サプライチェーンからの排除 セキュリティ対策が不十分な企業は、大企業のサプライチェーンから排除されるリスクが高まります。 コスト増 延命措置としてのESU(拡張セキュリティ更新プログラム)は有償であり、根本的なシステム刷新(マイグレーション)を先延ばしすることになります。 特に2025年10月のWindows 10のサポート終了以降、サポート終了後のOSを使用し続けることは、サイバー攻撃(ランサムウェア等)に対して無防備であることを意味し、セキュリティリスクへの対応が遅れた企業は、取引先からの信頼を失う可能性が高まっています。すでに2025年10月の期限を過ぎていますが、「実はまだ一部のPCがWindows 10のままだ」「対策をしたつもりだが、抜け漏れがないか不安」というケースも少なくありません。 サイバー攻撃の標的になる前に、現状のリスクを正しく把握することが急務です。以下の診断ツールを使えば、簡単な質問に答えるだけで、御社の状況に合わせた最適なPC環境の更新プランやセキュリティ対策が分かります。今すぐチェックして、安全な経営環境を取り戻しましょう。
▼Windows10サポート終了について、下記の記事や診断コンテンツでも解説しています。
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②深刻化する労働力不足と「2025年問題」
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、国民の約5人に1人が後期高齢者となる「2025年問題」を通過し、労働人口の減少は加速の一途をたどっています。 人手が足りない中で企業を存続させるには、デジタル技術で生産性を劇的に向上させるしか道はありません。経済産業省は、DXを実現することで2030年に実質GDP130兆円の押し上げが可能というシナリオも提示されており、DXは企業の成長の鍵となっています。
▼2025年問題については、下記の記事でも解説しています。
2.DX実施のステップ
デジタルガバナンス・コード3.0による「守り」から「攻め」への転換が進むなか、経済産業省は2024年9月に「デジタルガバナンス・コード3.0 ~DX経営による企業価値向上に向けて~」を策定しました。これは、DXを単なる「システムの刷新(守り)」と捉えるのではなく、「企業価値向上(攻め)」の手段として再定義するものです。
今、本当に必要なのは「新しいシステムを入れること」ではありません。「会社をどうしたいかという社長の思い」と「デジタルの活用」を、ぴったりと重ね合わせることです。
このガイドラインによって、古くなった仕組みを捨て、社内の雰囲気そのものを新しく作り変えていくための「正解ルート」がはっきり見えてきました。「外部のプロに協力してもらう」だけでなく、「自社の社員がデジタルを学び直すこと」、そして「取引先や地域に会社の変化を伝えていくこと」。これらをバラバラではなく、一つのセットとして進める方法をわかりやすく解き明かします。
これからのDXを支える、新しい「基本の形」がこちらです。
3つの視点(大切にすべき考え方):
- 経営者の思いをデジタルにつなげる:IT部門に丸投げせず、社長自らが「デジタルで会社をこう変える!」と語ること。
- 「理想」と「現実」を数字で見る:「なんとなく」ではなく、理想の姿と今の差を数字でしっかり比べること。
- 当たり前」の文化にする:社員が新しいスキルを身につけ、みんなが前向きに「変えていこう」と思える環境を作ること。
5つの柱(取り組むべき項目):
- 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定:「どんな会社になりたいか」を決める
- DX戦略の策定:そのための「デジタル計画」を立てる
- DX戦略の推進(体制・人材・ITシステム):動ける「チーム・人・仕組み」を整える
- 成果指標の設定・見直し:うまくいっているか「数字」でチェックする
- ステークホルダーとの対話:周りの人たち(顧客や社員)と「対話」する
これらは、大企業だけでなく、中堅・中小企業が地域社会で生き残り、人材を獲得するための「企業の魅力(エンゲージメント)」を高める上でも不可欠な要素となっています。DXを成功させるためには、場当たり的なツールの導入ではなく、経営戦略と一体となった体系的なアプローチが不可欠です。
2026年のDX推進は、かつての「PoC(Proof of Concept、概念実証)」の繰り返しから脱却し、現場主導の「実装と定着」がメインテーマとなります。今や、専門家でなくても使えるAIや便利なITツールが普及し、現場のスタッフが自ら仕事の進め方を改善できる時代になりました。それに伴い、DXの目的もただの「コストカット」ではなく、「仕事のやりがい」や「会社の魅力」をどう高めるかへと変わってきています。
この大きな変化の波に乗り、中小企業が迷わず進むための「目印」を整理しました。それでは、具体的な進め方を見ていきましょう。
2-1.DX化を推進するにあたってのステップを解説
経済産業省が策定した最新の「デジタルガバナンス・コード3.0」に基づき、中堅・中小企業が踏むべき7つのステップを解説します。
ステップ1.方針と戦略の明確化
経営ビジョン(企業の目指す姿)を明確にし、「なぜDXに取り組むのか」「DXを通じてどのような会社になりたいのか」を言語化します。ここでは経営者のリーダーシップが最も重要です。
今年のポイント
「業務効率化」をゴールにするのではなく、「顧客体験の向上」や「従業員の働きがい改革」をゴールに設定します。また、デジタルガバナンス・コード3.0に基づき、このビジョンを社内外に公表することが推奨されます。
ステップ2.現状把握と課題抽出(As is - To be)
「現状(As is)」と「あるべき姿(To be)」のギャップを定量的に把握します。特に「2025年の崖」に関連するレガシーシステムが残っていないか、棚卸しを行います。データ分析・活用に向けて業務プロセスを見直し、課題を抽出。業務プロセスを抜本的に見直す「BPR(Business Process Re-engineering、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」を念頭に進めましょう。
2026年の手法
経済産業省の「DX推進指標」を用いた自己診断や、プロセスマイニングツールを活用し、業務フローのボトルネックを可視化。ブラックボックス化したレガシーシステムの棚卸しは必須です。
ステップ3.推進チームの組織化とロードマップ策定
関係者によるDX推進チームを組織します。社内に専門家がいない場合は、外部パートナーを活用しつつ、並行して社内人材のリスキリング(学び直し)を進める「両利きの体制」を作ります。
2026年のポイント
推進チームには、IT部門だけでなく現場部門を必ず含め、業務とデジタルの両方を理解する体制を構築します。外部パートナーへの依存を前提としつつ、将来的な内製化を見据えた人材育成も並行して進めることが重要です。
ステップ4.予算確保と協業ベンダーの選定
自社の課題解決に最適なソリューションを持つベンダーを選定します。2026年度も継続される「IT導入補助金(デジタル化・AI導入関連)」などの活用も視野に入れて予算を組みます。 具体的な申請の流れやスケジュールについては、「【2025年最新版】IT導入補助金とは?申請の流れや活用方法を解説」で詳しく紹介していますので、あわせてご確認ください。 特に中堅・中小企業の場合、単独でのDX推進は困難と言えますが、予算を確保し、専用のノウハウを持った協業ベンダーを選定します。
2026年の選定基準
単なるシステム開発会社ではなく、ビジネスモデルの変革まで伴走できる「パートナー」を選びます。また、IT導入補助金などの公的支援制度を予算計画に組み込みます。
ステップ5.施策実行(PoCから実装へ)
実際に小規模な実装を行う「PoC(Proof of Concept、概念実証)」から始めます。効果を確認したら迅速に全社展開します。2026年は、AIを活用して開発スピードを上げる手法が一般的になっています。システムの継続的な改善を行うため、アジャイル開発※を採用すると良いでしょう。
※アジャイル開発とは 最初から完璧な完成形を目指すのではなく、優先度の高い機能から短い期間で作ってリリースし、利用者の反応を見ながら修正・追加を繰り返す手法。変化に強く、DX推進に適しています。
2026年のトレンド
PoCを繰り返すだけの「PoC疲れ」を避けるため、最初から本番導入を想定した「パイロット運用」が推奨されます。ノーコードツールなどの活用により、現場主導での改善サイクルを回します。
ステップ6.評価と改善
PoCの評価を行い、KPI(重要業績評価指標)に基づき成果を評価します。単なるコスト削減だけでなく、「売上向上」や「従業員エンゲージメント」も評価軸に含めます。
2026年のポイント
業務時間の削減率だけでなく、売上向上への貢献度、従業員エンゲージメント(eNPS)、顧客満足度(NPS)など、財務・非財務の両面から評価します。成果指標の見直しプロセス自体も評価対象とします。
ステップ7.継続的な改善と適応
改善の範囲を会社全体にまで広げ、適応・定着を図ります。顧客接点やサプライチェーン全体まで変革を展開できれば理想的です。ですが、DXに終わりはありません。AI技術の進化に合わせて、常にプロセスをアップデートし続ける企業文化を定着させます。
2026年のポイント
従業員が意識せずともデジタルを活用できる「企業文化への定着」を目指します。これには、継続的なリスキリング(学び直し)の機会提供が含まれます。
DX推進の7ステップフロー
このように、経済産業省の「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」には、「取り組みの実施を通じてノウハウを蓄積しながら必要な人材の育成に取り組んでいくことが必要」と記述されています。人材を育成しつつDXを推進するには、実際に小規模な実装を行い、効果を検証するPoCが有効な手段となります。
3.DXの成功事例と成果
実際にDXを推進した成功事例を業界別、業種別に紹介します。これらの中には、ここ1〜2年で施行された法改正への対応を「単なる義務」で終わらせず、業務変革のチャンスと捉えた「法改正対応の代表的な成功モデル」が多く含まれています。自社のビジネスに近い具体例を参考にすると良いでしょう。
3-1.業界別例
運輸業:働き方改革関連法(2024年問題)への対応
運輸業では、トラックドライバーの時間外労働に上限が課された「2024年問題」により、従来の配送モデルの維持が困難になりました。この法規制を乗り越えるための鍵となったのが「長時間労働の主因である荷待ち時間の解消」です。 具体的な成功事例として、デジタルツールでトラックの入退場をリアルタイム管理する仕組みを導入した企業の取り組みが挙げられます。90分以上の荷待ちが常態化していた状況から、30分超の案件をゼロにまで削減。法改正への適応を機に、物流の生産性を劇的に向上させた代表例と言えます。
▼運輸業のDXについては、下記の記事でも解説しています。
建設業:労働時間管理の厳格化と生産性向上
建設業も運輸業同様、2024年4月からの時間外労働上限規制の適用により、DXが加速しました。この「時間の制約」という課題を、現場の事務負担を物理的に減らすことで解決しようとしたのがDXの始まりです。 例えば、従業員が50名にも満たない建設会社が、自社課題解決のために開発した管理アプリが、法改正対応に悩む全国の建設会社から注目を集め、今や業界全体の課題を解決するツールへと成長しました。法規制というピンチを、自社だけでなく業界全体のビジネスチャンスに変えた好例です。
▼建設業のDXについては、下記の記事でも解説しています。
医療・福祉・ヘルスケア:マイナ保険証移行による基盤刷新
医療分野では、国の方針による「マイナ保険証への完全移行」という制度改正を機に、情報のデジタル一元化が進み、院内業務全体のデジタル化を押し上げる形となりました。これにより、カルテ情報の共有やレセプト業務の自動化が進展。深刻な人手不足の中で、事務作業を削減し、医療従事者が本来の対面業務に集中できる環境構築が進んでいます。
▼医療分野のDXについては、下記の記事でも解説しています。
自治体:デジタル田園都市国家構想の具体化
地方自治体では、国のデジタル化方針に呼応し、地方創生や人口増を目指したDX推進が加速しています。その先進事例として注目されているのが、日本初となる「デジタル住民票NFT」の発行です。初回販売分が即座に完売するなど大きな反響を呼んでおり、確かな手応えを見せています。人口減少という構造的課題に対し、最新技術を制度として取り入れることで、新たな関係人口の創出に成功しています。
▼自治体のDXについては、下記の記事でも解説しています。
一次産業:スマート農業・漁業の社会実装
特に労働力不足が顕著な農業や水産業では、「スマート農業」「スマート漁業」など、DX化による課題解決が図られています。少子高齢化により、今後も第一次産業では人手不足が続くことが予想されますが、それをカバーする技術やAIやIoTによる自動化は、単なる省力化に留まらず、技術承継という長年の課題を解決する手段として定着し始めています。
▼一次産業のDXについては、下記の記事でも解説しています。
3-2.業種別例
全業種共通:場所を選ばないワークスタイル変革・業務自動化
在宅勤務やハイブリッドワークは、今や特定の業種に限らず標準的な働き方となりつつあります。柔軟な働き方の実現は企業の責務となりました。ファイル共有のクラウド化や業務プロセスの自動化は、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方を実現し、緊急時の事業継続性(BCP)対策としても機能します。
▼業務効率化・自動化に関するDXソリューションについて詳しくは、下記の記事でも解説しています。
営業・販売:データ活用による顧客接点・商談管理の高度化
営業分野では、個人の経験や勘に頼るスタイルから、CRM(Customer Relationship Management、顧客関係管理)やSFA(Sales Force Automation、営業支援システム)を活用したデータドリブンな営業への転換が進んでいます。インサイドセールスの普及など、デジタルを活用して商談機会を最大化する動きは、BtoB・BtoCを問わず重要視されています。
▼営業支援・顧客管理に関するDXソリューションについて詳しくは、下記の記事でも解説しています。
会計・財務:法対応を起点としたバックオフィスのペーパーレス化
会計・財務部門では、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応をきっかけに、最もドラスティックにDXが進んだ領域です。単に紙を電子化するだけでなく、システム連携による入出金管理の自動化を実現することで、経理業務のスピードと正確性を飛躍的に高めることに成功しています。
▼会計・財務部門のDXソリューションについて詳しくは、下記の記事でも解説しています。
人材・組織管理:労働力不足に備える採用・人材管理(HR)の適正化
「2025年問題」以降の深刻な労働力不足に直面する人事・組織管理部門では、HR Tech(Human Resources Technology)の活用がカギとなります。AIを用いた採用活動の効率化や、データに基づく人材の最適配置(タレントマネジメント)により、限られた人的リソースで最大の成果を目指します。
▼人材・組織管理部門のDXソリューションについて詳しくは、下記の記事でも解説しています。
3-3.補助金・助成金の活用
2026年度も、中小企業のDXを支援する補助金制度は継続・拡充されています。特に「省力化」や「賃上げ」に寄与する投資が優遇される傾向にあります。
特に「IT補助金」は、中小企業・小規模事業者を対象とし、在庫管理システムなどのソフトウェアや、PCなどのハードウェアを対象に支給される補助金で、適用範囲も広く設けられています。
専用サイトで各種ソリューションも紹介されているため、予算確保と協業ベンダーの選定の際に利用を検討すると良いでしょう。
▼IT補助金について詳しくは、下記の記事でも解説しています。
4.よくある課題と解決策(FAQ)2026年のリアルな壁
DX推進に伴うよくある課題と解決策について次にまとめました。
4-1.ITやDXに関わる人材が足りない
「外部リソースの活用」と「ツールの簡素化」が鍵です。NTTドコモビジネスの「まるごとビジネスサポート」のように、IT機器のトラブル対応や設定を丸投げできるサービスを活用し、社内担当者の負担を減らしましょう。また、専門知識不要で使えるノーコードツールやRPA「WinActor」を活用し、現場主導で自動化を進めるのも有効です。
4-2.DXに取り組もうとする企業文化や風土がない
DXは会社全体を変革する取り組みです。そのため、経営層も参加した風土づくりが重要となります。経営層が主導し、現場の意見を尊重した上で、業務改善でどのように事業全体を変えていくべきかを考えると、現場の賛同も得やすいでしょう。
すなわち「小さな成功体験」を共有することです。まずは「ハンコをなくす」「入力作業を自動化する」など、現場が楽になる成果を一つ出し、デジタルの恩恵を実感してもらうことから風土改革は始まります。
4-3.具体的な効果や成果が見えない
具体的な効果や成果が見えないとDX計画が頓挫してしまう結果ともなりかねません。PoCを実施する際には、見切り発車するのではなく、事前に効果や成果をどのように評価をするかを決定し、そのために必要なデータを取得する仕組みを構築しておきましょう。
導入前にKGI(重要目標達成指標)とKPI(重要業績評価指標)を設定します。「残業時間が月〇時間減った」「処理件数が〇件増えた」といった定量的な数値でビフォーアフターを計測し、評価するといいでしょう。
4-4.ITリテラシーが不足しており、最新情報の収集が追いつかない
DXを取り巻く環境は刻々と変化します。取り組みを開始した時点では最新のソリューションであったとしても、予算確保と協業ベンダーの選定の段階になったときにはさらに優れたソリューションが登場しているかもしれません。メルマガやセミナーなどを通じ、定期的に最新情報を収集するよう努めましょう。
また、生成AIを「先生」として活用しましょう。社内版ChatGPTなどを導入し、分からないIT用語やツールの使い方をAIに聞ける環境を整えることで、心理的なハードルを下げることができます。
4-5.目的設定をどうすれば良いかわからない
まずは自社の課題のうち、事業・組織単位という大きな枠組みでインパクトの大きいものから目的を設定していき、徐々に細分化する手法を採りましょう。また、自社単独での目的設定が難しい場合には、外部有識者による分析サービスを利用することも検討しましょう。
「他社がやっているから」ではなく、「自社の経営課題は何か」から逆算します。経済産業省の「DX推進指標」を使って自己診断を行うのも良いでしょう。まずは「顧客にどのような価値を提供したいか」というビジョンを明確にするといいでしょう。
4-6.DXを推進するにも予算確保が厳しい
ご紹介した「IT補助金」など、助成金活用も視野に入れましょう。また、長期間の計画を立て、経費を分散させても良いでしょう。
たとえば、サブスクリプション(月額制)のクラウドサービスを利用し、初期投資を抑えるのも手です。また、前述の補助金制度をフル活用することで、実質的な負担を大幅に軽減できます。Windows 10 のサポート終了に伴うPC入れ替えのタイミングに合わせて、リース契約を見直すのも一つの手です。
▼DX推進の課題について詳しくは、下記の記事でも解説しています。
5.無理なく始める「小さなDX」。
2026年の実践トレンド
2026年、DXはさらに次のステージへと進んでいます。
いきなり全社のシステムを刷新する必要はありません。まずは「手元のツール」から始め、徐々に「外部への委託」や「業務の見直し」へとステップアップする。「小さなDX」が、中小企業にとって最も確実です。
5-1.まずは「モバイル + AI」で業務を楽にする
最もハードルが低いDXは、すでに手元にあるスマートフォンと、生成AIの活用です。
- モバイル活用:現場の写真をスマホで撮ってそのまま報告書に添付する、チャットで即座に連絡するなど、PCを開く手間をなくすだけで立派なDXです。「ビジネスマホパック」なら、端末・回線・セキュリティ対策が一括提供されるため、IT担当者の負担を抑えつつ、安全なモバイルワーク環境を即座に構築可能です。
- AI活用:メールの下書き作成や、議事録の要約を生成AIに任せるだけで、デスクワークの時間は大幅に短縮されます。2026年現在、こうした高度なAI活用は「Stella AI for Biz」のような法人向けサービスを通じて、セキュアかつ安価に実現可能です。社内データとの連携により、自社独自の「AI秘書」として活用できる点も大きな強みです。
▼生成AI・スマホの業務活用例について詳しくは、下記の記事でも解説しています。
5-2.「苦手なことはプロに任せる」BPOの活用
「BPO(Business Process Outsourcing、ビジネス・プロセス・アウトソーシング)」と言うと大掛かりに聞こえますが、「自社でやらなくていいことは、外部のプロに任せる」ということです。例えば、PCのセットアップ(キッティング)や、トラブル時のヘルプデスク対応、セキュリティ監視などを外部サービスに委託することもBPOの一種です。人材不足の今、すべてを自社で抱え込まず、プロのリソースを活用することが賢い経営判断とされています。
▼BPOについて詳しくは、下記のサイトでも解説しています。
5-3.「業務の断捨離」こそがBPRの本質
「BPR(Business Process Re-engineering、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」は、専門用語で難しく見えますが、平たく言えば「今の業務フローに無駄がないか見直し、作り直すこと」です。 例えば、「AIとモバイルの導入で、日報が効率化した」「外部にPC管理を任せたら(BPO)本業に集中できた」といった変化が生まれます。このように、新しいツールやサービス、仕組みに合わせて、古くなった習慣や無駄な作業を捨てて再構築していくこと。これこそが、中小企業におけるBPR(業務改革)の第一歩です。
▼BPRについて詳しくは、下記の記事でも解説しています。
6.まとめ
2026年、DXはもはや選択肢ではなく、企業が生き残るための必須条件です。「2025年の崖」やWindows 10のサポート終了といった節目を越え、企業はセキュリティと生産性の基盤を再構築する必要があります。
今回はDX(デジタルトランスフォーメーション)の基礎知識から実施ステップ、業界別事例、そして2026年の最新トレンドまでを解説してきました。
本記事で紹介したように、運輸、建設、医療、自治体など、あらゆる業種で「小さなDX」が始まっています。DXを推進するには多くのステップがあり、すべてを自社だけで完結させる必要はありません。
NTTドコモビジネスは、通信インフラからAI、セキュリティ、ヘルプデスクまで、中堅・中小企業のDXをワンストップで支援するパートナーとして、みなさまの変革をサポートいたします。まずは「現場が少し楽になる」変化から始めてみてはいかがでしょうか。もしDXについて不明な点、お困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。
※本記事の内容は、2026年1月の情報を元に作成しています。
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