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コロナ禍で満足な営業活動ができていない企業も多いでしょう。グローバルインサイト合同会社CEOの水嶋玲以仁氏は、打開策の1つに「インサイドセールス」を挙げました。

インサイドセールス=テレアポではない

写真:グローバルインサイト合同会社 CEO 水嶋 玲以仁 氏

グローバルインサイト合同会社
CEO
水嶋 玲以仁 氏

新型コロナウイルス感染症の流行を受け、多くの企業では、顧客企業に直接足を運び、対面で商談を行っていた営業活動ができなくなっています。

しかし、デルやGoogle、マイクロソフトで営業職を務めてきたグローバルインサイト合同会社CEOの水嶋玲以仁氏は、たとえコロナ禍でも営業活動は可能といいます。それが、電話やメールを中心に、顧客にコンタクトを行う内勤営業職「インサイドセールス」です。

「コロナ禍での営業活動は必然的にリモート営業中心になります。残念ながらそこでは、訪問営業のノウハウが通用するとは限りません。むしろ、これまでのやり方を見直し、インサイドセールスによって、組織的な営業手法を取り入れる好機と考えたほうが良いでしょう」

インサイドセールスとは、どのようなものなのでしょうか?水嶋氏はそのことを解説する前に、インサイドセールスに対する誤解を解く必要があるとします。

「多くの人が誤解していますが、インサイドセールスの仕事は、見込みがありそうな企業に片っ端から電話して商品のセールストークを行うことでもなければ、ひたすらアポ取りを行う仕事でもありません。たとえば、営業組織の中に電話専門のスタッフを新たに加えればよい、といったような単純な話ではありません。

インサイドセールスの役割は、顧客と継続的な関係性を築き、売上につながる中長期的な提案活動を続けることにあります。

訪問営業を重視する日本企業では、インサイドセールスをフィールドセールス(顧客と対面する営業活動)の補助的な存在だと捉えられるケースもあり、なかなか普及が進んでいないのが現状です。インサイドセールスの理解が表面的なままでは、営業活動の根本的な改善にはつながらないでしょう」(水嶋氏)

「売るタイミング」を把握して無駄をなくす

水嶋氏が先ほど触れたように、インサイドセールスとは「顧客と継続的な関係性を築き、売上につながる中長期的な提案活動を続ける」ことですが、実際にどのように顧客にアプローチするのでしょうか。水嶋氏は、従来から存在する類似した手法である「テレマーケティング」を例に出して解説します。

「テレマーケティングは、相手に対して商品の魅力や導入のメリットを説明して、興味を持ってもらうことを主とします。しかしインサイドセールスの場合は、顧客の課題やニーズを聞き出したり、営業提案機会を見極めるために必要な情報を引き出したりすることを重視します」

例えばテレマーケティングの場合、顧客にアプローチし、営業訪問の約束をこぎつけたとしても、いざ営業担当者が顧客に話をしたら、「購入を検討できるタイミングではなかった」「購入の決裁権のない相手だった」「顧客のニーズと提案内容が合わなかった」というケースも起こり得ます。これでは、営業担当者にとっては無駄足です。

インサイドセールスは、このような営業の非効率な部分を解消します。

「インサイドセールスでは、見込み客のニーズや課題をヒアリングします。さらに、『予算がどのくらいなのか』『検討時期はいつ頃なのか』『アプローチする相手はだれなのか』といったBANT情報を引き出すための会話も行います。提案機会と受注につながる確度の高い相手を探り当てることで、その後工程で営業担当者が無駄のない活動を行えるようになるわけです」(水嶋氏)

※…Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の頭文字を取ったマーケティング用語

見込み客へのヒアリングの中で、「検討時期は未定」「今は検討していない」と言われてしまうケースも十分に考えられます。これでは営業につなげることができませんが、アプローチが途切れてしまっては、これまでのテレマーケティングと何ら変わりません。

「この場合は、メールなどで顧客に役立つ情報提供を定期的に行うなどをして、『継続的につながる』ことが大事です。見込み客がもらって役立つであろう情報を提供し、信頼関係を築くことで、いざその顧客が検討する段階になったときに、自社を第一に想起してもらえます。そのときに改めて提案すればいいのです」(水嶋氏)

水嶋氏は実際のインサイドセールスの例として、自身がコンサルティングを手掛けて支援している大手ITベンダーの例を挙げます。

「このITベンダーは、顧客とつながり関係性を築くため、従来は実際に訪問して対面でコミュニケーションする方法を取っていましたが、コロナ禍で思うようにできなくなってしまいました。

そこで、インサイドセールスやデジタルマーケティングを組み合わせて、顧客へ情報提供やヒアリングを重ねることで、営業担当が会えない中でも顧客との関係性の維持に成功しました。そのおかげで、顧客が製品導入を検討するタイミングを逃さず、営業担当者が提案のアプローチができたと聞いています」

営業の頭数を集めるよりも大事なこと

このようにインサイドセールスは、適切な見込み客を適切なタイミングで営業担当者につなぐ重要な存在になりますが、実際にうまく機能するためには、「プロセスセリング」の考えが必要になるといいます。

「見込み客に対して何の資料を渡すのか、どのタイミングでどのような電話をするのか、どのタイミングで提案するのかなど、案件成約までには必ず何らかのプロセスがあります。

この一連のプロセスを分解・標準化したうえで営業活動を行う手法が『プロセスセリング』です。プロセスリングは、プロセスを明確にしたあとにインサイドセールスが担うべき役割を定義するもので、たとえば顧客関係管理システム(CRM)や営業支援システム(SFA)など、顧客の状況や営業の進捗度を把握できるツールを使用すると効率的です」

インサイドセールスは顧客企業内のターゲット部門等の顧客(個人)を新規に発掘・継続的にフォローし、顧客課題の把握、リード・パイプライン生成を実施する役割を担う 画像:一般的なプロセスセリングとインサイドセールスの役割 一般的なプロセスセリングとインサイドセールスの役割(出典:グローバルインサイト合同会社の資料を元に作成)

営業のプロセスを分解して、工程ごとに行うべきことを明確化することは、人材不足解消の面でも役立ちます。

「多くの経営者が誤解していることですが、“営業力を強化するには、優秀な営業担当者の頭数を揃えればいい”と、考えてしまいがちです。しかし人材不足のいま、人を集めるのはそう簡単なことではありません。だからこそプロセスセリングが必要です。顧客開拓から提案、成約、顧客フォローまで、1人で担当する必要がなくなりますし、全工程を自分で抱えることによる、営業活動の“属人化”というリスクも低減できます」(水嶋氏)

営業が得意な人はインサイドセールス管理者に向かない

インサイドセールス部門を新たに立ち上げる際の注意点として、水嶋氏は「どのような人材を配置するか」に注意が必要と指摘します。

「インサイドセールスは、『セールス』という響きから従来のフィールドセールスの延長線で考えがちです。しかし、インサイドセールスのマネジメントを、フィールドセールスのそれと同じ要領で考えては、確実にうまくいきません」

たとえば、一般的なフィールドセールスのマネージャーは「売上が達成できるかどうか」「その見込みはどうか」「達成できないならどうすればいいか」ということを重点的に考えます。しかし、インサイドセールスマネージャーは、それらとは異なる観点が重要になります。具体的にいえば、「組織のハブとして機能できているかどうか」という視点が求められます。

「マーケティング部門と営業部門の間に位置するインサイドセールスは、全体を調整するハブとして人の話を聞き、それを上層部に報告し、人を動かして改善していく必要があります。顧客のさまざまなニーズや現場からの課題に関して情報収集を行い、共有し、変えていくのもインサイドセールスの役割です。

インサイドセールスのマネージャーを決める際は、個人の営業活動が得意だった人を配置するのは避けたほうがよいでしょう。こうした人材はすべて自分でやろうとするため、ハブの役割にはあまり向いていません。さまざまな関係者との全体最適を考えられる人材がおすすめです」(水嶋氏)

画像:インサイドセールスマネージャーは、営業(フィールドセールス)マネージャー、マーケティングマネージャーの ハブとなり、リード・パイプライン生成を推進する役割を担う インサイドセールスマネージャーは、営業(フィールドセールス)マネージャー、マーケティングマネージャーの ハブとなり、
リード・パイプライン生成を推進する役割を担う(出典:グローバルインサイト合同会社の資料を元に作成)

水嶋氏は「成果」についても、フィールドセールスとは異なる点に注意が必要と指摘します。

「インサイドセールスはプロセスを重視するため、すぐには結果を求めないことが重要です。

たとえばフィールドセールスの場合、数字を達成できなかった場合は、アプローチする顧客や訪問・電話の数を増やすなど、すぐに『量でカバーする』という発想になりがちです。しかし、インサイドセールスの場合は、量でカバーする前に、“品質”を疑いましょう。なぜうまくいかないのか見直し、改善するということが求められます。

インサイドセールスは、日本の製造業が得意とする品質管理のように、プロセス重視で上流工程から改善していきます。商談のサイクルも、1サイクル以上回したうえで改善に取り組んでいくべきでしょう」(水嶋氏)

営業マンの意識を変えるだけで数字は上がる

インサイドセールスをスムーズに導入するためのコツとして、水嶋氏は人材の“組み合わせ”が重要であるといいます。

「マーケティングのチームには、営業の現場経験者、あるいは営業マネージャーで現状の仕組みに課題を感じている人と、営業の現場経験はなくても、新しいことに取り組むことが得意な人を組み合わせて配属させることをおすすめします。

インサイドセールスは、営業とマーケティングの間をつなぐ存在ですから、双方の経験を得れば、非常に大きな力を発揮します。できれば、営業の担当者の中でも成績優秀な方に加わってもらうのが理想です。そうした人材はインフルエンサーにもなり得るため、その人を中心に、インサイドセールスの仕組みが社内全体に広がる可能性があるからです」

中小企業のように、人的リソースに乏しい場合はどうすればよいのでしょうか。水嶋氏は「必ずしも専任担当者は必要ありません」としつつも、工夫は必要であるとします。

「営業活動のプロセスを分解したうえで、『ここで電話フォローする』『ここで資料を送る』『ここでアポを依頼してみる』など、顧客の状況に応じたアプローチ方法を営業活動の中で設定すべきでしょう。これを行うだけでもだいぶ違いが出るはずです。

「現状の営業手法では利益が上がらないと感じているのであれば、まず営業のやり方そのものを見直すべきです。営業の仕組みを変えるのに必要なのは、人の意識だけです。設備投資のように大きな予算は必要ありません。新たな人材を採用しなくても、担当者の意識を変えるだけで済み、同じ人員で、売上が1.5~2倍に増えることもあります。

インサイドセールスは、投資効果が非常に高い点が特徴です。まだ取り入れていない企業の方は、ぜひ第一歩を踏み出してみてください」(水嶋氏)

●水嶋 玲以仁(みずしま れいに)氏プロフィール

水嶋 玲以仁(みずしま れいに)

グローバルインサイト合同会社CEO。Dell、マイクロソフト、Googleなど世界有数のIT企業でインサイドセールス業務に携わり、これまで20年に及ぶ経験を持つ。著書に『インサイドセールス 究極の営業術 最小の労力で、ズバ抜けて成果を出す営業組織に変わる』(ダイヤモンド社)がある。

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