BCP対策の目的は?DR対策との違いと体制づくりのポイント

BCP対策の目的は?DR対策との違いと体制づくりのポイント

もし、BCP(事業継続計画)対策の計画書を作成する担当者になった場合、具体的にはどのように進めればよいのでしょうか。今回は、BCPで行う計画書作成の進め方と緊急時の体制構築のポイント、またBCP対策とDR対策の違いについて紹介します。

目次

計画書作成時に押さえておきたい、BCP対策の目的

BCPとは災害などの緊急事態における企業や団体の事業継続計画(Business Continuity Planning)の頭文字をとった言葉です。日本国内では東日本大震災をきっかけに注目が高まり、台風被害や大寒波など近年の異常気象の頻発もあって、ますますその重要性が叫ばれるようになりました。

事業継続の肝となるBCP対策の計画書作成には、BCPの意味や策定の目的を本質的な部分で理解することが必要です。まずは、BCP対策の基本事項を解説します。

BCP対策の目的

BCPの主な目的は、緊急事態において企業や団体が事業を継続するために必要な手順を総合的な見地から事前に計画することにあります。BCP対策は大別して二通りの観点で考えることができます。

一つ目は、緊急事態が発生した場合に事業が直接的に受ける被害を最小限に食い止めるという観点です。企業が事業を続けられなくなるリスクは多種多様です。地震や台風などの自然災害リスクの他、火災や爆発といった事故のリスク、情報漏洩などセキュリティ面のリスク、感染症蔓延のリスク、戦争やテロなどの政治的なリスクといったあらゆるリスクが考えられます。

こうした各種のリスクを前もって想定して、それぞれの影響を分析、緊急の対処方法を検討し、緊急時に事業が被る被害を可能な限り最小限にするための準備を進めます。

たとえば、かつて静岡県熱海市で発生した大規模な土砂災害では、JR東海道線が運転見合わせとなった他、国道の一部が26日間にもわたって通行止めになるなど、交通インフラにも甚大な影響を与えました。土砂災害が発生した場所は「土砂災害警戒区域」に指定されており、さらに被害直前の数日間の総雨量は過去10年間で最高を記録していました。

このようなことから、土砂災害が発生するには充分な条件が揃っていたと考えられます。企業は「災害は起こるもの」という意識を持って、交通インフラが寸断した場合の代替手段を想定したり、従業員の避難行動マニュアルを整備したりするなどの対策を取る必要があります。

その他、毎年のように全国各地で発生している記録的豪雨では、広い範囲で河川の氾濫や床上浸水、土砂災害、道路の崩壊などの被害が生じています。その結果、高速道路などの交通インフラにも影響し、大手企業を含む多数の企業が操業停止となる事態を招いています。その際、取引先企業と連携して部品調達を図るなどの行動に移し、事業の継続を試みた企業の例もあります。

このような大雨被害で他に取りうる対策として、

  • 大雨警報が発令された時点で浸水を避けたい電子機器を高層階に移動させる
  • 平常時から製品の保管場所を2階以上にしておく

などの行動が考えられます。BCPでは、被害を最小限に食い止めるために、あらゆる事態を想定して対処法を決めておく必要があります。

二つ目は、緊急事態が発生して事業が実際に被害を受けた後で、事業を継続し、迅速に復旧するという観点です。事業を継続させるためには、被災後になるべく早く事業を元に戻すための仕組みや手順を構築しなければなりません。

実際にトラブルが起こった場合、無計画に対処するのではなく、経営陣がリーダーシップを発揮し、確実な指令系統をもって事業全体をリードしていくことが求められます。本部やリーダーの指揮のもとに、緊急事態対応に取り組むための実働組織を明確にしておくことも欠かせません。

とくに、企業や団体が保有する有形資産の復旧に当たるチーム、システム回復に当たる復旧対応チーム、取引先や外部団体との連絡・調整といった対外対応担当のチームは、スピーディに活動を開始する必要があります。

他にも従業員の安否確認や避難指示、食料・備品など必需品の手配を行う後方支援の体制、復旧に向けた資金調達や決済機能を管理する財務体制も重要です。このように、これらのチームが互いに連携して機能することで効果的なBCPが実現できるのです。

BCP対策は大きくわけて以下の二通りの観点が必要
観点1 被害を最小限に食い止めるにはどうすべきか / 観点2 事業を継続し、迅速に復旧するために、何をすべきか

たとえば、製造業で製品に不具合があった場合、消費者に注意喚起して回収や修理を行うリコールを実施することがあります。このリコールも、製品の欠陥という緊急事態に対して事故や被害を最小限に留めて、事業を継続するBCP上の措置の一つと考えられます。

このようにBCP対策では、平常時に行うべき対策や、緊急時の具体的な行動手順と指示系統の設置基準などを事前に策定しておき、有事の際にも事業の継続と早期復旧が可能であるように備えることが最重要課題となります。有効なBCP対策をもって緊急時に事業を途切れずに継続し、途切れたとしても早期の復旧を実現できれば、それが一般消費者を保護することになり、将来的に企業価値を高めることにもつながるのです。

DR対策との違い

DRとはディザスタリカバリ(Disaster Recovery)の略で、災害や事故などの緊急事態における復旧計画を指します。

BCPが総合的な事業継続計画であるに対し、DRは主にシステムに特化した復旧・修復計画です。DRはBCPの一部ととらえる考え方もあります。あらゆる業種において情報関連のインフラやシステムが重要な役割を果たすようになった現代で、DRの需要は急速に増えてきています。

たとえば、製造業では製造ラインの機器などの稼働や連携を統括システムが一元管理して生産をコントロールしています。小売業やサービス業では、POSシステム(販売時点情報管理、Point Of Sale)を利用して店舗間での大規模な在庫管理を行ったり、顧客の情報や販売実績情報を収集したりしています。さらに、あらゆる業種において、社内の意思疎通やスケジュール管理、経理処理などでは情報伝達システムが欠かせないものとなっています。

こういったシステムが災害などでダメージを受けた場合、通常業務が完全に止まる可能性もあります。そのような事態を回避するためにも、システム面の災害復旧を図るDR対策は、BCP対策の中でもとくに重要な項目であるといえるでしょう。

BCP対策とDR対策の違い
災害発生 - BCP 総合的な復旧対策と継続 -> / 災害発生 - DR 主にシステムを復旧 -> システムやインフラを復旧 - 継続 ->

失敗しない計画書作成の進め方

BCPの目的を把握したら、実際に計画を策定する具体的な進め方も把握しましょう。

まだBCP策定を経験していない企業には、都道府県など各自治体や中小企業庁や内閣府などの行政機関が作成したBCP策定の指針が大いに役立ちます。BCP対策担当者や経営者向けに、さまざまな業種が使えるマニュアルが用意してあり、BCPを初めて策定するという担当者にも分かりやすい内容です。

指針の中には、計画のテンプレートが添付されているものもあります。テンプレートに沿って記入するだけで簡単に一通りの計画書が作成できます。

中でも、中小企業庁は公式Webサイトの「中小企業BCP策定運用指針」は、中小企業特有の事情や特性に合わせた内容になっており、現実の場面で役立つBCPの策定や事業継続に向けた具体的な運用方法が図解も交えてわかりやすく説明されています。取組状況を客観的に確認するためのチェックリストをはじめ、BCP作成用の記入シートやテンプレートを使って作成したBCPのサンプル、財務診断用の表計算シートなどをダウンロードできます。

さらにBCP作成用記入シートで様式には、BCPの基本方針や被害想定などの項目を、重要商品提供のための対策、緊急時の体制、BCPの運用といった項目が用意されており、順番に記入していけばBCPが完成する仕様になっています。入門、基本、中級、上級と進捗難易度に応じて4種類のコースに分かれており、業種別ごとのサンプルも提示されているので、自社の状況に合致した計画書を策定しやすいように工夫が凝らされています。初回ならば、こういったものを参考に作成してみてもよいでしょう。

緊急時に備える強い体制を作るには

緊急事態に備えるには、計画の作成はもちろん、緊急事態にも冷静かつ的確に対処できる強い体制が必須です。そのような強固な体制を作るために、重要なポイントを紹介します。

ポイント1:担当者を部門横断的に招集する

最初のポイントは、部門横断的にメンバーを招集することです。BCPの作成は総務部門や管理部門が担当する場合が多いと考えられますが、専門外の業務について策定した内容が実際の場面で実践不可能な内容になると意味がありません。策定に当たっては実務的な観点から事業の実像を正確に把握することが不可欠です。このため、BCP作成の作成担当者や作成担当部署だけでなく、システム担当の部署や金銭面を担う財務部、現場に関わる製造や営業などの部署からも意見を募ることが重要となります。

たとえば、東京本社事務所を置く企業がBCPで首都直下地震のリスクを想定したとします。首都直下地震では都心の交通機関が麻痺すると考えられており、事務所内の作業と相手企業の直接訪問だけで業務を行う場合には業務の継続ができなくなるリスクがあります。しかし、平常時からリモートワーク(テレワーク)環境を整備し、自宅や避難先などオフィス以外の場所から業務システムにアクセスできる体制を構築しておけば、そのような状況でも業務を継続できるようになります。

実際にコロナ禍に伴い外出自粛などの緊急事態宣言が発出される前からリモートワークを導入していた企業では、外出自粛時も従業員の安全に配慮しつつ業務を継続できたという事例もあります。

ポイント2:経営陣が積極的な関わりを持つ

続いてのポイントは経営陣が真摯な姿勢と強い意志をもって作成に臨むことです。BCP対策の必要性はある程度理解されていても、現実に緊急事態が発生していない状況では、会社全体で災害への意識が希薄であり、BCP対策の重要性は従業員に実感されていない可能性があります。

そのため、まずは経営陣が強い意志をもってBCP対策の重要性や取り組みを進める態度を表明し、従業員にBCP対策への意識を高めることが大切です。たとえば、内閣府が2019年5月に公表した「すそ野の広いBCP 普及のためのノウハウ集 第2版」には、多忙な社長に代わり取締役を運用推進責任者に設定したことで、実務担当者を巻き込んで現場との連絡が密になり、体制構築を成功させた事例が紹介されています。このことからも、上層部がBCP対策に積極的に参加することの重要性がうかがえます。

BCP対策では事業や業務の実態に即した計画書を作成し、実行を可能にする強力な体制と指示系統が必須です。有効なBCPを策定する上で、災害に強いクラウドサービスの活用やリモートワークの整備など、システム面に重点を置いたDR対策はもちろん、多面的な観点から対策を練っていくことが肝要です。

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