なぜ、いまERP刷新?そのメリット
現在、デジタル化やクラウド化が社会に浸透普及するなか、AIやロボットの活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現など、企業は大きな変革の波に直面しています。そうした変化に俊敏に対応していくためにも現行のシステムを「SAP S/4HANA」に移行することによって得られる期待や成果など、ERP刷新においての変化とメリットをご紹介します。
システム維持負荷からの脱却と内製ITメンバーの価値シフト
業務の拡大や変更に伴うシステムの複雑化や情報や業務のブラックボックス化において属人性の排除が行え、システム維持に関する負荷の軽減が期待できます。また、現在大きな課題となるセキュリティの向上や保守切れのリスクをなくし、これから必要となる高度なノウハウを持つ人材の育成につながります。
企業競争を勝ち抜くための投資シフト
競争優位が見込める市場や業務にIT資本を投下して、新たな市場やサービス領域を拡大するなど投資の効果的かつ効率的なシフトを促します。特に、すでに企業で顕在化している従来システム(レガシーシステムの崖問題)の保守・運用に係る維持管理コストの増大に対しての有効な策となります。
データ活用による経営シフト
ERP内の業務データをコアとして、業務関連の社内データはもとより顧客データやマーケティングデータなど、ビッグデータの利活用の仕組み作りの一歩が踏み出せます。
以上のように、いま日本の多くの企業が直面しているDX実現の土台作りのカギが『ERP刷新』と言えます。
ERP刷新の課題とは
既存運用業務の棚卸と見直しが必要
昨今の情報システム部門は、単にシステムの維持だけではなく、企業競争力に寄与するITを求められる傾向にあります。そして、ERP刷新を通じてその期待は一層高まることでしょう。
その期待に応えるために、ERP刷新に際して、一度アウトソーシングしてブラックボックスになっている業務も含めて、全既存運用業務の棚卸と見直しを行うことが必要になります。
業務の見直しと「Fit to Standard」の徹底が必要
競争優位が見込める市場や業務にIT投資を投下するためには、逆にコモディティ部分はコストを最小化することになります。そのためには既存の業務と業務アプリの棚卸と評価を行い、コモディティ部分は「Fit to Standard」、つまり業務をERP標準機能に合わせることでアドオンやカスタマイズを最小化しコストを抑える必要があります。
またERP周辺業務に関しては、SaaSなどを活用し連携させることで業務効率性とROIの両立を目指します。
企業ITアーキテクチャの見直しと刷新が必要
ビジネス環境の変化に柔軟に対応でき、かつ、ERPをDXコアとしたデータ利活用の仕組み作りのためには、ERPの刷新とクラウド化だけでなく、SaaSなどの外部サービス、設備や製品、従業員・顧客・取引先などさまざまな「ヒト・モノ・サービス」と有機的かつセキュアに連携できるようなITアーキテクチャ全体の見直しが必要になります。
上記では主として実行上の課題を紹介しましたが、これらよりさらに重要であり成功のための必須条件が「企業としてのビジョニング」です。企業としての将来ビジョンを実現するための手段がERP刷新でありDXとなる点は忘れてはなりません。
どのような社会課題を解決することで存在意義を見出すのか?それと両立する形でビジネス競争に打ち克つためにどのような姿になりたいのか?というビジョンを描き、ステークホルダーの間でそれを共有する。これがスタート地点であり、そのスタート地点に立つこと自体が最初の大きな課題ともなります。
「SAP 2027問題」への対応法
既存のSAP ERPは2027年でシステムのサポートを終了することが発表されています。このサポート終了の発表が企業に与えた影響は大きく「2027年問題」ともいわれていますが、「SAP ERP」ユーザーへは下記のような対応で、業務への影響を軽減し企業ニーズに合わせてシステムを未来型に変革する選択肢を用意しています。
ケースI 「SAP S/4 HANA」への移行を検討
流れは、①移行方式を検討から始まります。ブラウン/グリーンフィールドのいずれかの選択を行いますが、最近では部分的な導入もSAP社より推奨しています。次に②として「展開モデルの検討」があります。オンプレ/PaaS/SaaSなどのいずれかを選択する流れとなります。
実際に、クラウドにするのか、また、どのような使用形態にするかなどを決定し、速やかに移行に着手することが重要です。
ケースII サードパーティ保守の利用の検討
製品ベンダーが提供する保守サービスの代わりに、サポート専業のベンダーが保守サービスを提供する「第3者サポート」の選択です。
ケースIII 代替製品への乗り換えを検討
別パッケージに乗り換える選択肢もありますが、事実上ゼロからの作り直しになります。
「SAP2027年問題」を好機ととらえ、現行環境の課題解消のみならず、ERP刷新とともに企業IT全体を刷新することで過酷な企業競争にITを活用して打ち克つための変革を支えるためにDXプラットフォーム構築に挑戦的に着手される企業のケースも少なくありません。こうしたケースでは、企業IT部門の内製化の拡大と価値刷新をセットで考えられる傾向にあります。