SAPとは

About SAP

SAPとは、ドイツ中西部のヴァルドルフに本社を置く、ヨーロッパ最大級のソフトウェア開発会社の名称で、社名であるSAP(以下SAP社)は、システム分析とプログラム開発の意味を持つ「Systemanalyse und Programmentwicklung」からとられています。
1972年に創業以来、全世界の多くの企業に製品を供給し、企業に即したシステムをパッケージとして導入してきました。20年後の1992年には日本法人であるSAPジャパンが設立されています。
SAP社が開発し、提供する”ERP”パッケージ製品 「SAP ERP」や「SAPシステム」がERP製品の代表格として世界中の企業で利用されています。

SAP社とSAP ERPの歴史

① 初期
SAP社における製品開発の歴史は、「SAP R/1システム RF」からはじまりました。これは、世界初となる統合型業務基幹システムであり、メインフレーム用会計システムとして1973年にリリースされ話題となりました。
② 発展期
1979 年には、「SAP R/2 メインフレームシステム」を発表します。この製品はSAPシステム独自のABAP言語を採用し、マテリアルマネジメントモジュールなど、企業に必要となる業務機能の大半をカバーしていました。
③ 拡大期と現在
その後、1992年、日本法人の設立とともに発表し、クライアント/サーバーシステムに初めて対応した「SAP R/3 Enterprise Edition1.0」が引きがねとなり、SAP製品は爆発的に普及していきます。特に「SAP R/3 Enterprise Edition 4.6C (SAP R/3 4.6C)」は世界的なスタンダードとしての評価を獲得します。この世界的なヒット製品となったバージョン群につく「R」という文字は"Real-time data processing"を略したものですが、その思いは、「SAP ERP Central Component (ECC) 6.0」にも継承されていきます。
こうした実績をもとに2010年には、「SAP HANA」を発表。このインメモリデータベース製品は 「SAP ERP」を含め、進化発展を左右するエポックメイキングな存在となり、その後「SAP S/4HANA」へとつながっていきます。

SAPとERP

SAP and ERP
イメージ:SAPとERP

「SAP ERP」はERP製品の中でも歴史が長いことやグローバルに展開する大企業での導入実績が多いため、ERPパッケージの代表格とみなされています。ERPで世界に名が知れたSAP社ですが、現在では、ERPにととどまることなく、その周辺領域もカバーする製品も開発、提供しています。
たとえばERPがカバーしていない領域に対応する業務ソリューション(例:CRMやHRソリューション)やDX実現を加速するためのクラウドソリューション(例:SAP Analytics Cloud )などです。
また、現在多くの日本企業が注目しているDX(デジタルトランスフォーメーション)に関しても、SAP ERPに限らず、ERPを中心として企業DXのためのITアーキテクチャを構築する傾向にあります。

ERPとは

ERPは「Enterprise Resource Planning」の略語で、日本語的に直訳すると「経営資源計画」となります。
ERPの目的は、組織全体に分散している「ヒト・モノ・カネ」といった経営資源の情報を、統合的に(計画)管理することにより、業務の効率化だけでなく、経営の意思決定を迅速に行い、経営の効率化を図るための手法・概念のことを指しています。
これは、MRP(Material Requirements Planning:資材所要計画)の発展形として1990年初頭ガートナーグループにより提唱されたものですが、こうした考えを実現するための統合型(業務横断型)ソフトウェア(統合基幹業務システム)を「ERPパッケージ」や「ERPシステム」と呼びます。
ERPパッケージの定義としては、「部門やバリューチェーンを横断する統合業務プロセスのベストプラクティスが提供されること」、「統合データベースを有しそれによりデータ統合がなされ、業務間の連携をリアルタイムもしくはそれに準ずる形で提供されること」などが挙げられます。(下図参照)

画像:Enterprise Resource Planning(経営資源計画)

SAP ERPの特徴

SAP社が提供するERPパッケージについて、他社と比較した際に特徴となる3点をご紹介します。

グローバル企業への導入実績

長い歴史と実績が評価され、グローバル企業での豊富な導入実績があります。特に大企業での採用が多く、フォーチュン500社に選ばれる 多くの企業が「SAP ERP」を利用しています。また、グループ会社や中堅向けのERPパッケージ(例Business One)も提供しています。

豊富な標準機能

さまざまな業種業態のニーズに対応できる豊富な標準機能を提供しています。世界中で幅広い業種の企業に利用されてきた実績に基づいて各国法制度・商習慣にも対応でき、グローバルビジネスを展開する企業の課題にも柔軟に対応しています。また、また、購買ソリューションや経費精算ソリューションなど、ERPの業務機能領域を補ったり強化するなどの、個別業務アプリケーションも提供しています。

多様なインフラ展開をサポート

ますます進むデジタル化やクラウド化にも多様なインフラ選択肢で応えることができます。「SAP S/4HANA Cloud」といったSaaS型(シングルテナント、マルチテナントも選択可能)、パブリッククラウド上での利用や基盤運用をSAP社が行う「SAP HAHA Enterprise Cloud」、もちろん、オンプレやパブリッククラウド上で自社やパートナーが運用する選択も可能です。

SAP ERPの主な機能

Key features of SAP ERP

「SAP ERP」では、モジュール単位でさまざまな機能を提供しています。モジュールは特定の部門に関連した複数の業務のプログラムを集めて構成されていますが、ここでは代表的なモジュールをピックアップして紹介します。

① SD(Sales and Distribution)販売管理用モジュール
販売管理に関わる機能を全般的にサポートします。販売・在庫・物流部門をリアルタイムな一元情報でつなぎ、業務を効率化します。
② MM(Material Management)在庫購買管理用モジュール
在庫の入出庫管理や棚卸管理をサポートする在庫管理機能と資材やサービスの購買から発注、入庫などの購買と調達のプロセスを管理する機能を提供します。
③ WM(Warehouse Management)倉庫管理用モジュール
倉庫構造を定義し、出庫、入庫をはじめ倉庫内での在庫の移動や、最小単位の棚番レベルでの品目の保管管理を支援し、自動化・省力化を推進します。
④ PP(Production and Planning)生産計画、生産管理用モジュール
生産計画から製造指図を経て製造実績まで、製造にかかわるプロセスに対応した機能を提供します。生産活動の改善や効率化の推進に貢献します。
⑤ PM(Plant Management)プラント保全用モジュール
検査・予防保全・修理の3つの主な機能により、工場や各種プラントにおける設備のメンテナンスをサポートし、安定稼働を支えます。
⑥ HR(Human Resources)人事管理用のモジュール
採用活動から労務管理、人事考課や人材育成業務、組織管理業務など、多岐にわたる人事管理業務に対応した機能に対応し、人的経営資源の最大活用につなげます。
⑦ PS(Project System)プロジェクト管理用モジュール
特殊機械の製造設置や、ビルやプラントの建設など大規模かつ長期にわたる工事の設計および調達、建設などの工程管理から原価や売り上げの管理まで対応します。
⑧ FI(Financial accounting)財務会計用モジュール
決算書などの外部向け報告書の作成やその作成に必要な固定資産や債務、債権管理などの関する情報の登録や処理などを行う機能に対応します。
⑨ CO(Countrolling)管理会計用モジュール
部門やプロジェクトなど社内の原価管理を目的としています。費用や利益の収集と管理、予算との対比なども行え、部門ごとの収益性の把握にもつなげます。
⑩ RE(Real Estate)不動産会計用モジュール
不動産の種類や運営形態に合わせた管理業務に対応します。契約管理、会計管理、保守管理も含め、不動産管理に関する総合的な機能を提供します。
⑪ IM(Invest Management)設備予算管理用モジュール
設備投資や研究開発の際に、設備が完成したり研究開発が成果を上げたりするまでの投資予算と設備実績の管理に使用する機能を提供します。
⑫ CA(Cross Application)クロスアプリケーション用モジュール
文書管理機能など、生産や物流、会計や人事関連の各モジュールにおいて共通に使用するアプリケーションが標準機能として提供されます。

ERPの
刷新について

About ERP renewal
イメージ:ERPの刷新について

なぜ、いまERP刷新?そのメリット

現在、デジタル化やクラウド化が社会に浸透普及するなか、AIやロボットの活用によるDX(デジタルトランスフォーメーション)の実現など、企業は大きな変革の波に直面しています。そうした変化に俊敏に対応していくためにも現行のシステムを「SAP S/4HANA」に移行することによって得られる期待や成果など、ERP刷新においての変化とメリットをご紹介します。

システム維持負荷からの脱却と内製ITメンバーの価値シフト

業務の拡大や変更に伴うシステムの複雑化や情報や業務のブラックボックス化において属人性の排除が行え、システム維持に関する負荷の軽減が期待できます。また、現在大きな課題となるセキュリティの向上や保守切れのリスクをなくし、これから必要となる高度なノウハウを持つ人材の育成につながります。

企業競争を勝ち抜くための投資シフト

競争優位が見込める市場や業務にIT資本を投下して、新たな市場やサービス領域を拡大するなど投資の効果的かつ効率的なシフトを促します。特に、すでに企業で顕在化している従来システム(レガシーシステムの崖問題)の保守・運用に係る維持管理コストの増大に対しての有効な策となります。

データ活用による経営シフト

ERP内の業務データをコアとして、業務関連の社内データはもとより顧客データやマーケティングデータなど、ビッグデータの利活用の仕組み作りの一歩が踏み出せます。

以上のように、いま日本の多くの企業が直面しているDX実現の土台作りのカギが『ERP刷新』と言えます。

ERP刷新の課題とは

既存運用業務の棚卸と見直しが必要

昨今の情報システム部門は、単にシステムの維持だけではなく、企業競争力に寄与するITを求められる傾向にあります。そして、ERP刷新を通じてその期待は一層高まることでしょう。
その期待に応えるために、ERP刷新に際して、一度アウトソーシングしてブラックボックスになっている業務も含めて、全既存運用業務の棚卸と見直しを行うことが必要になります。

業務の見直しと「Fit to Standard」の徹底が必要

競争優位が見込める市場や業務にIT投資を投下するためには、逆にコモディティ部分はコストを最小化することになります。そのためには既存の業務と業務アプリの棚卸と評価を行い、コモディティ部分は「Fit to Standard」、つまり業務をERP標準機能に合わせることでアドオンやカスタマイズを最小化しコストを抑える必要があります。
またERP周辺業務に関しては、SaaSなどを活用し連携させることで業務効率性とROIの両立を目指します。

企業ITアーキテクチャの見直しと刷新が必要

ビジネス環境の変化に柔軟に対応でき、かつ、ERPをDXコアとしたデータ利活用の仕組み作りのためには、ERPの刷新とクラウド化だけでなく、SaaSなどの外部サービス、設備や製品、従業員・顧客・取引先などさまざまな「ヒト・モノ・サービス」と有機的かつセキュアに連携できるようなITアーキテクチャ全体の見直しが必要になります。
上記では主として実行上の課題を紹介しましたが、これらよりさらに重要であり成功のための必須条件が「企業としてのビジョニング」です。企業としての将来ビジョンを実現するための手段がERP刷新でありDXとなる点は忘れてはなりません。
どのような社会課題を解決することで存在意義を見出すのか?それと両立する形でビジネス競争に打ち克つためにどのような姿になりたいのか?というビジョンを描き、ステークホルダーの間でそれを共有する。これがスタート地点であり、そのスタート地点に立つこと自体が最初の大きな課題ともなります。

「SAP 2027問題」への対応法

既存のSAP ERPは2027年でシステムのサポートを終了することが発表されています。このサポート終了の発表が企業に与えた影響は大きく「2027年問題」ともいわれていますが、「SAP ERP」ユーザーへは下記のような対応で、業務への影響を軽減し企業ニーズに合わせてシステムを未来型に変革する選択肢を用意しています。

ケースI 「SAP S/4 HANA」への移行を検討

流れは、①移行方式を検討から始まります。ブラウン/グリーンフィールドのいずれかの選択を行いますが、最近では部分的な導入もSAP社より推奨しています。次に②として「展開モデルの検討」があります。オンプレ/PaaS/SaaSなどのいずれかを選択する流れとなります。
実際に、クラウドにするのか、また、どのような使用形態にするかなどを決定し、速やかに移行に着手することが重要です。

ケースII サードパーティ保守の利用の検討

製品ベンダーが提供する保守サービスの代わりに、サポート専業のベンダーが保守サービスを提供する「第3者サポート」の選択です。

ケースIII 代替製品への乗り換えを検討

別パッケージに乗り換える選択肢もありますが、事実上ゼロからの作り直しになります。

「SAP2027年問題」を好機ととらえ、現行環境の課題解消のみならず、ERP刷新とともに企業IT全体を刷新することで過酷な企業競争にITを活用して打ち克つための変革を支えるためにDXプラットフォーム構築に挑戦的に着手される企業のケースも少なくありません。こうしたケースでは、企業IT部門の内製化の拡大と価値刷新をセットで考えられる傾向にあります。

SAP
S/4 HANAとは

About SAP S/4 HANA

「SAP S/4 HANA」は「SAP ERP Central Component (ECC) 6.0」 の後継として開発された第4世代のERPです。S/4 HANAは販売開始から1年で3,200社が採用し、2019年7月時点では1万1,500社まで成長し導入する企業は拡大を続けています。
インメモリデータベース「SAP HANA」を利用した「SAP S/4 HANA」には、より「シンプルを理想とする」ことを目指したSIMPLEの頭文字のSが付けられたと言われています。

SAP S/4 HANAのメリット

「SAP S/4 HANA」はSAP社が従来から提供してきた「SAP ERP」を「SAP HANA」に移行したものではなく、まったく異なるアーキテクチャとなります。進化した「SAP S/4 HANA」の主なメリットにはどんなものがあるでしょうか?

より高速でのデータ処理を実現

「SAP HANA」のインメモリデータベース技術を全面的に採用した「SAP S/4HANA」は、より高速でのデータ処理が可能です。あらゆる部門の日々の業務において、「ゼロレスポンスタイム」と呼べるストレスのない高速対応を提供します。

同じ基盤で分析やレポーティングができる

旧システムでは分析やレポーティングをするには、個別に構築したDWH(Data Warehouse)を必要としましたが、「SAP S/4 HANA」では、同一の基盤で行えます。これにより、よりスピーディに経営の意思決定に欠かせない判断材料を取り出せます。

使いやすいUX(User Experience:ユーザー・エクスペリエンス)で作業効率が向上

設計においても改良を実現し、UX(ユーザーエクスペリエンス)も従来に比べ大幅に改善されました。従来は各業務の処理を機能別に画面を使って処理していましたが、「S4 HANA」ではユーザーごとにロール別画面を設計することができ、作業効率の向上を実現しました。

オンプレミスもクラウドも選択自由

「SAP S/4 HANA」の導入先はオンプレミスでもクラウドでも自由に選択できます。企業で導入しているクラウドを活用することでより戦略的かつ効率的に企業情報システムを実現することも可能です。

「SAP S/4 HANA」の移行

多くの改善が見られる「SAP S/4 HANA」は、SAPからの移行、新規ERP導入の際にも最適な選択肢であると言えます。

導入の課題

「SAP S/4HANA」の導入や移行の際の課題は、複雑化するシステム設計、運用・保守などへの明確な対応が必要となることをはじめ、オンプレミスやクラウドといった新たな選択肢が増えるなど、検討の要素は多岐にわたります。
特に、クラウドのメリットや先進的な機能性、使い慣れた環境などを考慮して代表的なパブリッククラウドである「AWS」や「Azure」や、SAPシステムに特化したクラウド基盤「Enterprise Cloud for ERP」上で「SAP S/4 HANA」を動作させたい、さらには、AIや先進技術を活用してDX(デジタルトランスフォーメーション)を実現あるいは推進したい、という企業の要望を実現するためには、十分な時間と検討を繰り返す必要があります。
ここでも最適な選択肢は、高度な専門知識を有する外部の運用保守ベンダーとの連携が成功の鍵であることはいうまでもありません。

NTT Comの
SAPソリューション

NTT Com SAP solution
イメージ:NTT ComのSAPソリューション

NTT Comは、日系企業初、「SAP Certified Outsourcing Operations Partners」としてHosting/Cloud/SAP HANAの3カテゴリでグローバル認定を取得した、実績あるプロバイダーです。そのキャリアプロバイダーならではの実績と信頼性の高いSAPソリューションを提供し、「SAP S/4 HANA」への移行や新規導入と運用保守をサポートしています。

NTT Comでは、自社が提供する基幹システム向けクラウドサービス「Enterprise Cloud for ERP」をはじめ、「SAP on Azure」、「SAP on AWS」など、豊富なクラウド選択肢により「SAPシステム」の最適化と迅速な事業展開をサポートします。

今、企業が直面している課題は何か、そしてこれからどうすべきか。
SAP刷新からDX実現につなげるために、確かな選択をしていきましょう。

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