データドリブンマーケティングの課題とは? 導入成功のポイント

社会のあらゆる場面でデータの重要性が高まる中、マーケティング領域においてもデータ活用が非常に進んでいます。データにもとづいて施策を実施・改善していく「データドリブンマーケティング」は、チャネルや購買プロセスが複雑化した今の時代に合ったマーケティング手法として多くの企業で取り入れられ、効果を上げています。

データドリブンマーケティングとは

データドリブンマーケティングとは

データドリブンマーケティングとは、ユーザーの行動履歴や売上情報、ビッグデータなど、オンライン、オフラインを問わず取得した複数のデータにもとづいて客観的に判断するマーケティング手法です。熟練の担当者が、カンや経験にもとづいて判断するのと対極にある手法と言えます。

データドリブンとは、日本語で「データ駆動(データによって動かされる)」と訳されます。馴染みがない言葉ですが、データを活用してビジネスや経営上などの意思決定を行うことを指します。近年ビッグデータに代表されるようにデータの重要性が高まっており、マーケティングだけでなく経営、ジャーナリズムなど、さまざまな場面でデータドリブンという概念が取り入れられています。

企業にデータドリブンマーケティングが求められる背景の1つとして、顧客が商品を認知してから購入するまでの経路が複雑化していることが挙げられます。かつてはAIDMAに代表されるような購買行動モデルに沿って、不特定多数に同一のメッセージを届けるマーケティング手法が中心でした。しかし今は、特定の購買行動モデルを示すことは困難になっており、従来型のマーケティング施策では効果を上げにくくなっています。

そこで、重要になるのがデータです。スマートフォンが行動の中心となっている今の顧客は、SNSで商品・サービスの評価を確認し、ブランドのストーリーを知って共感し、オンラインで購入し、感想をSNSに投稿して他者へ影響を与えるといったように、認知から購入までの経路が複雑になっています。このような中で、チャネルごとにデータを取得して顧客の感情や行動を把握できるデータドリブンマーケティングの重要性が高まっているのです。

さらにIT技術の進展によりデータの取得・蓄積が容易になったことや、人口知能を使った高度な分析が可能になったことも、この動きを後押ししています。センサーでリアルタイムの動きを取得する、スマホでの利用履歴とPCでの利用履歴を統合する、といったデータ取得の部分から、将来を予測する、クラウド上で膨大な量のデータを一元管理する、などの部分まで、データドリブンマーケティングを行うための環境が整ってきています。

データドリブンマーケティングの目的

客観的なデータによって顧客のことを正確に理解し、顧客満足度を高める施策を行うのが、データドリブンマーケティングの最大の目的です。かつては、熟練の担当者がカンや経験にもとづいて施策を立案・判断することが当たり前のように行われていました。もちろん、この方法でも効果がないわけではありませんが、主観が混じりやすい、前回効果があった施策が今回も効果があるとは限らない、といった問題から、正しい判断ができない場合も多くあります。

分析方法をデータドリブンにすることで、さまざまなデータを取得・蓄積して分析し、顧客のニーズや嗜好、行動パターンを把握したり、それらの相関関係を導きだしたり、効果を予測したりできます。さらにスピーディかつ客観的に結果を評価し、次の施策に生かすことも可能です。顧客が望む施策を企業が実施すれば、顧客の満足度が上がります。その結果、商品・サービスの評価も高まり、購入してくれる人も増えていきます。

データドリブンマーケティングのメリット

データドリブンマーケティングのメリット

データドリブンマーケティングを行うメリットは、客観的にデータで比較や分析ができるようになることです。カンや経験則などによるマーケティングでは、「なぜ今回効果があったのか」「次も成功するか」を判断することは困難です。また属人的なため、以前効果があった施策をいつまでも変えずに実施してしまったり、担当者がいないと内容がわからなくなってしまったりという事態を引き起こしかねません。

データドリブンマーケティングでは、データ分析によって施策の効果や課題を明らかにすることができます。それを評価・改善しながらブラッシュアップしていくことで、効果が低い施策は中止し、効果が高い施策を継続するなど、結果的にムダなコストを抑えながら適切な施策を実施できるようになります。やみくもに施策を実施するよりも効率的です。

一方、顧客側にとっても、データドリブンになることで、ニーズに合った購入体験ができる、パーソナライズされた情報が届くなど、自分にとって適切な情報・体験となる可能性が高いため、顧客満足度につながりやすくなります。

例えばアパレルブランドが、実店舗で利用する会員カードとオンラインストアの会員情報を連携させ、購入金額ごとに顧客を分類した上でデータ分析を実施したとします。それによると来店頻度が高く、実店舗での購入金額が高い会員は、オンラインストアの購入金額も多い傾向があることがわかりました。また店舗スタッフがSNSで全身のコーディネイトを投稿した翌日には、来店数が増加することもわかりました。

今までこのブランドでは、実店舗とオンラインストアでは別の部署がそれぞれマーケティングを行っていました。しかし、データにもとづいてオンラインと実店舗を横断する施策を展開するようにしたところ、顧客1人当たりの購入金額が増加したばかりか、顧客からは「定期的におすすめコーデをSNSで紹介してくれるのでチェックするのが楽しみになった」「オンラインストアの情報が実店舗にも伝わっててお客さまとして大事にされている気がする」と好評価を得ました。このようにデータにもとづき施策を立案・実行するのがデータドリブンマーケティングなのです。

データドリブンマーケティングの注意点

しかし、いざ自社でデータドリブンマーケティングを実施する際には、いくつか注意すべき点があります。

まず、実施前に社内全体の理解を得ることが重要です。データにもとづくということは、すなわち過去の成功体験にはこだわらないということです。今までうまくいっていた手法を捨てて新しい施策を実施することに否定的な考え方をする社員が出てくることも十分考えられます。データの蓄積・活用を考慮すると、全社的な協力が不可欠です。そのため、自部門だけで取り組むのではなく事前に他部門や経営層など関連する部署にデータドリブンマーケティングの重要性を理解してもらってから実施することが重要です。

もう1つは、データドリブンマーケティングを実施する前に、データ分析にはどのようなデータが必要なのか、どのような手段で取得可能か、他のデータに合わせた形式かなど、きちんと計画を立てておくことが重要です。この部分でつまずくと、いざ分析する段になってから使えないデータばかりが溜まっていたことに気づいて愕然とする、といったことが起こりかねません。漠然としたイメージで考えるだけでなく、具体的なデータ形式にまで落とし込んで計画を立てることが重要です。

データドリブンマーケティングの課題

データドリブンマーケティングの課題

データドリブンマーケティングを実施する上での課題としては「データの可視化がうまくいかない」「データを活用できない」といったものがあります。
ここからは前述の2つの課題を詳しく見ていきます。

データの可視化がうまくいかない

企業が抱えがちな課題の1つが、データを可視化できないことです。数値の集合であるデータを、グラフや表、図といった手段で表して、変化や関係性、特徴などを一目でわかるようにすることをデータの可視化と呼びます。データの可視化により、見えなかった情報が明らかになり、価値ある情報となります。

データを可視化するためには、もとになるデータが必要です。顧客の行動履歴、ニーズ、嗜好などのデータを取得・蓄積するためには、それらを取得するためのシステム構築が必要になります。オフラインの行動を捕捉するためにはIoTなどのしくみも必要かもしれません。また複数種類のデータを掛け合わせるため、顧客情報や販売データなど既存のデータを活用する場合にはデータ形式を統一する手間や、まとめて一元管理するためのプラットフォームの導入も検討する必要が生じます。

こうして蓄積したデータには、不要なものを削除する、分析しやすいよう整えるなど、ツールなどを用いた前処理が必要です。分析に適した構造化データでない場合は、変換する作業も必要になります。このような地道な作業を経て複数のデータを連係し、比較分析することで、有用な結果を得ることができます。

しかし、企業によっては、データを取得するシステム構築がうまくいかない、部門ごとにデータがばらばらに管理されているため統合できない、フォーマットがばらばらになっている、といった状況が起こりがちです。そうなるとデータを可視化できなくなります。その結果、データから有用な情報が得られず、経営層にデータの重要性を理解してもらいにくくなる可能性があります。

データを活用できない

もう一つの課題は、データの上手な活用ができないことです。

とにかくデータを集めればよいと考えてやみくもに集めるだけでは、量ばかり増えて質が伴わないことがままあります。質が低いデータを使うと分析結果の品質も低下します。例えばツールで読み込めないデータ形式で保存されたデータ、欠けている部分が多いデータや必要な項目が抜けてしまっているデータは分析に使えないこともあり注意が必要です。

また、データの分析には専門的な知識・スキルが必要ですが、データサイエンティスト、データアナリストなどの専門職が社内にいる企業はそれほど多くありません。そのため漠然とデータを集めたものの、どうやって、何を分析していいのかがわからずに活用できない場合もあります。

どちらの場合も、自社は「データを用いて何を実現させたいのか」を事前に明確にしてから必要なデータを収集・蓄積するようにすることで防止可能です。データ分析を行う専門職が不在の企業では、データ分析ツールなどを上手に利用するとデータを活用しやすくなります。これについては後述します。

データドリブンマーケティング成功のポイント

では、データドリブンマーケティングを成功させるためには、どのような点に気を付けるべきなのでしょうか。

全社で取り組む

データドリブンマーケティングを成功させるためには、できればトップダウンで、全社的に取り組むことが重要です。理由は、データ分析に用いるデータは多岐にわたるため、全社で取り組まないと効果が低下するためです。また成功のためには社内の協力体制が不可欠なため、部門単独で行っても期待できる効果は限定的です。

全社で取り組むためには、経営層がデータの重要性を理解し、トップダウンで実施することが有用です。

また、データ活用をスムーズにするための体制づくりも重要になるため、社長直轄で全社横断型のプロジェクトチームなどを作って取り組むのもよいでしょう。

データの意味を理解する

データは「21世紀の石油」と比喩されることもあるように、今の時代に欠かせないものです。データにもとづき判断する重要性を全社で正確に理解している必要があります。

特に経営層がデータの重要性を理解していることが求められます。データの重要性を理解してもらうために、データ活用の意義や効果、実際の分析結果などをわかりやすくまとめて説明するなどの努力も必要です。経営層が理解しているかどうかで成功するかどうかが大きく変わります。

適切なKPIツリーを組み立てる

他のマーケティング手法と同様、データドリブンマーケティングでも、まずはゴールを明確にするのが第一歩です。ゴールが不明確なままいくつも施策を実施しても効果は少なくなります。データドリブンマーケティングで成功するためには、ゴールを設定したうえで、それを達成するための道筋を明確にすることが重要です。そのときに役立つのがKPIツリーです。

KPIツリーとは、KGI(Key Goal Indicator/重要目的達成指数)、その実現に必要なKPI(Key Performance Indicator/重要業績評価指標)をツリー上に組み立てたものです。

KPIツリーを組み立てる目的は、ゴールまでの道筋を可視化することです。組み立て時にはマーケティングのゴールをKGIとして設定した後にKPIを設定しますが、実施時には下位のKPIから順番に達成していき、最終的にKGIを達成します。

データドリブンマーケティングを実施する際には、KPIツリーを組み立てたうえで、社内で共有することが重要です。

PDCAサイクルを回す

データドリブンマーケティングにおいては、データにもとづき施策を立案した後、実施、評価、改善というPDCA(Plan Do Check Action)サイクルを継続的に回します。はじめから完璧にできるわけではなく、失敗を繰り返しながら地道に改善を加えながら何回も施策を繰り返すことで、成功率が高くなります。

成功のポイントは、PDCAサイクルのスピードを高速にすることです。そのためにはレポートを自動化する、承認プロセスを短縮するなどの工夫も効果的です。また、マーケティング担当者は多忙なため、他の業務に追われてPDCAサイクルが回らなくなってしまう場合もあります。それを防ぐためには、評価する担当者と実施する担当者を分けるなど、無理なく回る体制づくりを構築しておきましょう。

データドリブンマーケティングに役立つツール

データドリブンマーケティングに役立つツール

データドリブンマーケティングは、いかに効率よくデータを加工・分析するかがカギになります。そこで役立つのがデータ統合ツールやBI/BAツールです。

様々なデータを統合するツール

データドリブンマーケティングにおいては、データが重要であることは前項で述べました。しかし、いざデータを活用しようとしたときに、社内に保存しているデータがばらばらであることに気づくことでしょう。Webサイトの閲覧履歴、クラウドサービス内のデータ、オンプレミス環境で保管している顧客情報など、保存している場所もばらばらなら、データ形式もばらばらです。

このようにデータがばらばらで統合・連携ができていないことを、データのサイロ化と呼びます。組織規模が大きいほどデータのサイロ化が起きやすくなります。このような状態だとデータを活用の効率が低下するばかりか、最悪データ活用そのものができなくなります。

この問題を解決するには手動で対応することは難しく、専用のデータ統合ツールを利用するのが有効です。

NTT Comが提供するデータ統合サービスが、「データ統合インフォマティカ ソリューション」です。これは、データマネジメント・プラットフォームの提供で世界的に実績を持つ米企業インフォマティカのクラウドソリューションを、NTT Comのクラウド上で構築・提供するサービスです。

導入により、分散していたデータをプラットフォーム上で統合・可視化できるようになります。

詳細はこちら「データ統合インフォマティカ ソリューション」

インフォマティカソリューションがデータを統合管理するのに対し、ソフトウェアをつなぐためのAPIを統合管理するのが「API-GW as a Service」です。これは複数のシステムで利用するAPIを統合管理し、外部との接続を支援するサービスです。仕様が異なるAPIを統一仕様に変換する、一括認証、権限管理などの機能を提供しています。

詳細はこちら「API-GW as a Service」

専門知識がなくてもデータを分析できるツール

統合したデータを分析する際にも、専用ツールを活用すると効率が上がります。データ分析は高度な統計知識が必要なため、データサイエンティストと呼ばれる専門職が担当します。しかし、すべての企業にデータサイエンティストがいるわけではありません。そこで登場したのがデータ分析ツールです。ツールを使えば特別な知識がなくてもデータ分析を行うことができます。現場に近い立場の社員や経営層といった人たちが自身でデータ分析を行うことで、より高い効果が期待できるでしょう。このようなツールをBI/BA(ビジネスインテリジェンス/ビジネスアナリティクス)ツールと呼びます。

BI/BAツールはいくつも製品がありますが、データ分析を本職とするデータサイエンティストをはじめビジネスの現場まで、幅広いシーンで利用されているBI/BAプラットフォームが「TIBCO Spotfire」です。国内ではNTT comがサービスを提供しています。

ツールによって企業が蓄積したデータ分析・加工するだけでなく、将来に役立つ予測や提案まで得ることで、ビジネスの意思決定に役立てられます。

BI/BAツール TIBCO Spotfire®

データドリブンマーケティングは、スマホ中心でチャネルやユーザーの購買行動が複雑化した今の時代のニーズに合ったマーケティング手法として注目が集まっています。データにもとづいて客観的に判断するため無駄がなく、コストを抑えて効果的な施策が継続できるのがメリットです。

しかし実際に取り組むにあたっては、データの扱いに慣れていない企業の場合は苦心することも多いでしょう。必要なデータを集め、加工し、分析して意味のある結果を導き出すためには、今回紹介した注意点などが役立ちます。時には失敗を重ねながらPDCAを継続的に回していくことで最終的に望む結果が得られるはずです。

また、データ分析の専門家が不在の企業であっても、専用ツールを積極的に活用することで高い分析結果を得ることが可能です。データ統合・分析など用途に応じて導入するとよいでしょう。

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