ユーピーアール株式会社
パレット自動管理サービスの基盤をクラウドに移行
高い拡張性や豊富な機能によりサービスの可能性が広がる
ユーピーアール株式会社
物流事業本部スマートパレット事業部長
中野 正樹 氏
「お客様へのサービス基盤として、安定性は 極めて重要なポイントです」
ユーピーアール株式会社
物流事業本部スマートパレット事業部長
川島 正 氏
「基盤構築に手間がかからない分、アプリ ケーション開発に注力できました」
課題
サービスの利用拡大により基盤の拡張が急務に
投資や労力を抑えて新しい基盤を構築したい
ネットワークでつながったモノとモノが相互通信を行い操作や計測などを行うIoT。人手不足という大きな課題を抱える物流業界でも、省力化・自動化という観点から大いに注目されている。
ユーピーアール株式会社は、物流現場で商品を運搬する際、荷物をまとめて乗せて効率よく運搬するための荷役台であるパレットのレンタル事業を展開。その中で、IoTにいち早く着目し、パレットの自動管理を行うサービスを提供している。
物流事業本部のスマートパレット事業部長である中野正樹氏は、その導入背景を紹介する。「パレットのレンタル事業において最も大きな課題だったのは、お客さまの現場におけるパレット管理でした。従来、伝票を発行して手動で入力を行うアナログ的な管理手法で運用されてきましたが、手間がかかることに加え、現場でパレットを紛失してしまうというケースが多くありました。そのため、当社では、数百メートルの通信が可能なアクティブRFIDを用いたシステムを開発し、2017年2月から『スマートパレット』という名称で提供しています」
「スマートパレット」は、同社が世界に先駆けて開発したもので、パレットに取り付けられたアクティブRFIDが発信するID情報を倉庫などに設置したリーダーで読み取り、半径最大300mの読取範囲において、同時に最大5万個のパレット管理を可能にする。伝票への入力をすることなく、パレットの在庫や入出庫の状況をリアルタイムで把握できるため、従来の課題であったパレット紛失をゼロにすることも可能となる。
画期的サービスだけに提供開始後すぐに多くの顧客から採用されるが、システム運用において新たな課題が浮上する。
スマートパレット事業部の部長として実際の運用を統括する川島 正氏は、「サービスを開始した時点では、システムの基盤を社内で構築して運用していたのですが、急速な利用拡大にともない、基盤を拡張する必要に迫られました。そのまま自社運用で規模を拡大するには多くの投資や労力が必要ですし、IoTブームという流れの中で、サービスとしてクラウド上のプラットフォームが提供されていたので、外部のサービスを利用する方針を決定しました」
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対策
新しい基盤としてクラウド上のIoTプラットフォームを選択
サービスとしての完成度や信頼性の高さが決め手に
同社では、複数のクラウド事業者を候補として検討を進めた結果、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)が提供するIoT Platformサービス「Things Cloud®」の採用を決定した。「Things Cloud®」は、デバイス接続からデータ収集、可視化、分析、管理など、IoTに必要な機能やプロセスを簡単かつ短期間に実現できる開発・運用基盤である。
「『Things Cloud®』は既にサービスとして完成されており、この基盤の上で何ができるか、ということが非常に明確でした。同時に費用も体系化して明示されており、その点でも安心感がありました。新しいプラットフォームをクラウド事業者と一緒に構築していくような時間や余裕はありませんでしたので、既存サービスとして高い完成度を有していることが最も大きな採用の決め手となりました。加えて、以前からNTT Comのサービスをいくつか利用しており、それまでの実績や信頼感、事業規模なども選択の理由に加えることができるでしょう」(川島氏)
同時に、モバイル通信環境として、NTT Comの「OCNモバイル ONE」を採用。「Things Cloud®」と一元化して提供されることに加え、費用面でも従来の通信環境よりもコストダウンが図れることが採用の大きな理由であったという。
ユーピーアールが既に開発して運用していた「スマートパレット」のアプリケーションをうまく「Things Cloud®」に実装できるか、当初はわずかながら不安もあったという。しかし、「Things Cloud®」にはソフトウェアを共有するインターフェースであるAPIが豊富に備わっており、連携の不安もすぐに解消。基盤移行プロジェクトもスムーズに進行し、2018年2月に新しい環境での稼動がスタートする。検討開始から約10カ月での移行完了という期間の短さも、クラウド利用のメリットといえるだろう。
図 「スマートパレット」への導入イメージ
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効果
将来のさらなる利用拡大にも安心して対応できる基盤を構築
プラットフォームの機能を使いこなして新たな可能性に挑戦したい
「最も大きな導入効果は、当初の目的であった拡張性です。柔軟性の高いクラウド基盤を利用することで、今後はユーザーの拡大をまったく気にすることなくシステムを運用していくことができます。加えて、APIを介した他のシステムとの連携も期待されるところで、いまいくつかお客さまと話が進んでおり、新しいサービスへ向けて可能性も広がっています。しかし、我々はまだ『Things Cloud®』の機能のうち10%程度しか使っていない感覚です。今後は残りの90%をいかに新しいビジネスに活用していけるのか、考えていきたいと思います」と、川島氏は移行の効果とこれからの期待を語る。
自社で運用を行っていた以前に比べ、社内の運用負荷が格段に軽くなったことに加え、管理画面上でシステム全体の状況をすぐに把握できることも、運用の効率化に寄与しているという。
技術・マーケティング部のマーケティンググループ長を務めている原大輔氏は、「お客さまに満足していただくためには、顧客ニーズに寄り添いながらサービスを先鋭化させることやスピード感を持った対応が不可欠です。今回、基盤として完成されていた『Things Cloud®』を利用することで、サービス展開として最初の一歩が違いました。従来とはまったくスピード感が変わってくるということです。今後、市場や顧客のニーズ変化にも柔軟かつ迅速に対応できるという意味でも、クラウド移行の意義は大きいと感じています」と、マーケティング部門の視点で評価を語る。
中野氏は事業部長の視点から、今回のクラウド移行の成果と今後の展望で言葉を結んだ。
「拡張性やスピードという面で基盤を強化できた意義は大きいと思いますが、より高い安定性を得たことにより、事業継続性という側面でも安心してサービスをお客さまに提供できるようになりました。物流業界においては、まだパレットを用いない“ばら積み”で荷物を運搬するケースも多くあり、効率化を図る目的でパレットの需要は今日でも伸長しています。人手不足を補う自動化や省力化を実現するサービスへの期待は高く、さらに付加価値の高いIoTサービスを提供しきたいと考えています」
ユーピーアールの新たなIoTプラットフォームは、「スマートパレット」以外にも、あらゆるモノや設備を追跡できるシステム「なんつい」でも利用されている。インターネット通販が一般化する中、労働力不足による物流コストの高騰は消費者にも影響が大きいもの。NTT Comのクラウド基盤を活用したユーピーアールの新たなサービス展開が期待される。
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導入サービス
IoT導入に必要な機能・プロセスをノンプログラミングで簡単・短期間に実現
ユーピーアール株式会社
事業概要
1979年に山口県宇部市で創業。現在は、コアビジネスであるパレットや物流機器のレンタル業に加え、カーシェアリングやパワーアシストスーツなど、幅広い事業を推進している。東京と宇部に本社を置き、全国に営業所やパレットのデリパリーポイントを広く展開。2011年にはシンガポールに現地法人を設立し、パレットレンタル事業をアジア圏へ拡大させた。「地球と人を尊重する会社」を経営理念に掲げ、環境問題へ貢献すると同時に、あらゆる分野にチャレンジするユニバーサル企業を目指している。
(PDF 504KB)
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(掲載内容は2018年8月現在のものです)
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