張 暁晶Xiaojing Zhang
Xiaojing Zhang
張 暁晶
IOWN®がめざす「ネットワークとコンピューティングの進化と融合」は、AIをはじめとした先端技術の可能性を最大限に引き出し、持続可能で豊かな社会の実現に貢献すると信じています。技術開発と社会実装の双方の現場をつなぎ、IOWNの価値を分かりやすく伝えながら、多くの方と未来を共創していきます。

経歴
2007年に日本電信電話株式会社(現NTT株式会社、以下NTT)に入社。ソフトウェア開発支援、特にソフトウェアテスト自動化に関する研究開発に従事し、ツール開発に加えて、論文投稿、学会発表、知的財産化も経験。2016年より、NTTコミュニケーションズ株式会社(現 NTTドコモビジネス株式会社、以下 NTTドコモビジネス)に所属。OpenStackやKubernetesなどのクラウドインフラに関する設計・構築・運用の技術検証を行う他、パブリッククラウドに関する技術評価にも取り組む。AWS OutpostsファミリーやMicrosoft Azure Stackファミリーといったハイブリッドクラウド製品の国内初導入を成功させるとともに、クラウド活用に関する実証を通じて、お客さま提案支援、社内CCoE活動、人材育成にも貢献。2023年からは、IOWNのコンピューティング・プラットフォーム領域における技術検証やお客さま提案支援に従事。分散データセンター構想「GPU over APN」の技術開発や、新しいサーバアーキテクチャの技術調査などを担当。2025年にエバンジェリストに就任し、IOWN技術がもたらす未来像の発信に取り組んでいる。
趣味は映画鑑賞、読書、ゲーム。
※IOWN®はNTT株式会社の商標または登録商標です。
活動履歴
主な所属団体 |
|
主な講演活動 |
|
主な執筆活動・論文など |
|
過去のメディア対応実績 |
|
インタビュー
-
01
エバンジェリストとしての得意分野とミッション
私の専門は、クラウドインフラと次世代コンピューティング技術です。ソフトウェア開発に関心があり、大学時代から情報系の学部を専攻。NTT入社後は、Webアプリケーションのテスト設計・実施を自動化するJavaベースの開発支援ツールの研究開発に従事し、技術的な探究だけでなく論文投稿や特許出願にも取り組みました。
その後NTTドコモビジネスに異動し、OpenStackやKubernetesなどのOSS(Open Source Software)を通じてクラウドネイティブな考え方を習得しました。またオンプレミスとパブリッククラウドをつなぐAzure StackやAWS Outpostsの国内初導入にも携わり、社内運用までを実現しました。
現在は光を中心とした革新的技術を活用する「IOWN構想」のコンピューティング領域に注力し、GPU over APNなどの分散データセンター技術の検証を進めています。近年、生成AIやデータ利活用の進展に伴い、GPUクラスタの重要性が増しています。単一のデータセンターには、生成AIのモデルサイズ増大による処理量の変動やリソース確保の制約、データセンターごとのキャパシティや電力供給の制限に応じた運用など、さまざまな課題があります。複数のデータセンターに分散配置されたGPUクラスタを論理的に一体化し、AI向けインフラとしての性能を引き出す挑戦は、技術的にも社会的にも大きな意義があると感じています。
このように、アプリケーションからインフラと、技術領域を横断してきた経験が私の強みです。そして専門性の異なる多くの技術者と協働していく中で、共通言語の日本語でも通じ合えないくらいさまざまな視点があることに直面しながらも、常に本質を捉え、分かりやすく伝える「通訳」のような姿勢を大切にしてきました。
エバンジェリストとしての私の専門分野である「IOWN」がめざす「ネットワークとコンピューティングの進化と融合」は、AIをはじめとする先端技術の可能性を最大限に引き出し、持続可能で豊かな社会を実現します。この未来へ向かう道の中で、技術と人、技術開発と社会実装の現場をつなぎ、IOWNの価値を分かりやすく伝えることが私のミッションです。
-
02
これまでの活動を代表するプロジェクト
これまで携わった代表的なプロジェクトの一つは、IOWN構想に基づくGPU over APN技術の検証です。これは複数のデータセンターに分散配置されたGPUクラスタを論理的に一つの大規模リソースとして活用する革新的なコンセプトであり、AI向けインフラの新たな選択肢となる可能性を秘めています。
直近の実証では、川崎・秋葉原・三鷹の3拠点に設置されたGPUを接続して分散クラスタを構成し、AIモデルを作る処理である「分散学習」を実行した結果、単一拠点での学習時間と比較して1.01倍とほぼ同等の性能を達成しました。さらに約3000km離れた海外拠点をエミュレートした環境でも1.07倍という結果を得ており、距離による性能劣化が少ないことが確認できました。またAIモデルに質問して回答を得る「分散推論」の実験では、APN越しであってもGPU数を増やすことで正答率が向上し、推論の所要時間も単一拠点とほぼ変わらない水準を維持しました。これにより複数拠点のGPUを活用したAI処理が、実用的な選択肢として成立することを示しました。
もう一つは、ハイブリッドクラウド製品(AWS OutpostsやMicrosoft Azure Stack)の国内初の導入です。この取り組みはローカル処理や低遅延やデータ所在要件など、エッジコンピューティングのニーズに応えることを目的としたものです。AI/ML処理の最適化からデータセンター床への固定に必要なネジの規格まで、フルスタックの知識が求められるプロジェクトであり、技術と運用の両面で多くの学びがありました。
これらのプロジェクトを通じ、クラウドインフラと次世代コンピューティング技術の進化は、社会課題の解決に直結する可能性を持っていると実感しました。
-
03
NTTドコモビジネスと共に描く未来
私がめざす未来は、ネットワークとコンピューティングが真に融合した社会の実現です。IOWN構想が掲げる「オール光」や「光コンピューティング」の世界では、AIやデータ処理がより高速かつ柔軟に行えるようになり、社会のさまざまな課題に対してリアルタイムで持続可能な解決策を提供できると考えています。GPU over APNのような技術はその一例です。地理的に離れたリソースを束ねて一つの論理的な計算基盤として活用することで、従来の制約を超えた新しい価値を生み出すことができます。
NTTドコモビジネスの強みは、通信とITの両方に深い知見を持ち、パブリックサービスとSIの両面を手掛けている点にあります。大企業から中堅・中小企業まで、さまざまな規模や業種のお客さまと協働できる柔軟性があり、技術開発から社会実装までを一気通貫で進められる環境が整っています。こうしたNTTドコモビジネスが持つ強みを生かしながら、エバンジェリストの一人として技術の可能性を分かりやすく伝え、多くの人と未来を共創していきたいと考えています。
※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職などは取材時点のものを掲載しております。