NTTコミュニケーションズ
ヒューマンリソース部
岩瀬 義昌
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コロナ禍におけるニューノーマルな働き方として、リモートワークが主流となった2020年。最適なリモートワーク・マネジメントへの関心も高まりました。NTT コミュニケーションズ(以下、NTT Com)では、私ヒューマンリソース部(以下、HR)岩瀬義昌を中心として、新しい働き方のプラクティスをまとめた「リモートワークハンドブック」を作成。一般公開されると、SNS上でも話題となりました。
その後、社外技術顧問の及川卓也さん、イノベーションセンター(以下、IC)、データプラットフォームサービス部(以下、DPS)、第二ビジネスソリューション部(以下、二BS)の有志メンバーも仲間に加わり、4月6日、新たに「オンボーディング ハンドブック」を制作・公開しました。
本記事でその一部をご紹介します。
「オンボーディング」とは、新しく着任したメンバー(あるいは長期の休暇から復帰したメンバー)が、早期に組織・チームの一員として定着し、戦力化するまでの一連の受け入れプロセスのことです。オンボーディングの成功には、一度限りの研修やオリエンテーションにとどまらず、新メンバーが独り立ちし、成果を出すまで支援を継続していくことが重要です。
では、具体的にどんなことをすれば良いのか? 「オンボーディング ハンドブック」では、新メンバー受け入れに際し、上長・チームメンバーの方々が、まずは何を考え、何をすると良いのかを解説しています。
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、NTT Comのリモートワーク利用率は80%を超えています(2021年4月時点)。リモートワークの浸透により、柔軟な働き方が実現できるなどのメリットがある一方で、新しく着任したメンバーがチームへ溶け込む難易度が上がっています。リモートワークでは、打ち合わせ以外でチームメンバーの様子が見えません。その結果、新メンバーと既存メンバー双方で人となりが伝わりにくく、既存メンバーによる新規メンバーの立ち上がりの支援も難しくなったことなどが、溶け込みづらさの理由として挙げられます。
「定量的なデータを取っていたわけではありませんが、異動後の立ち上がりが難しくなったという話や、新入社員からも(チームメンバーと)話す機会が少ないので不安、といった声が聞かれていました」(HR 岩瀬)
「私自身、昨年6月に育児休暇から復帰した際には苦労をしました。再編により組織も社内システムもガラリと変わり、マニュアルすらどこにあるのか分からない、教えてもらおうにも誰に尋ねたら良いのか分からない状態でした。上司や同僚に聞くにも、オフィスに居る時のように様子が分からないので、聞くのをためらったこともありました」(DPS 延命さん)
オンボーディングは、通常のオフィスでの受け入れにおいても非常に重要なプロセスですが、リモートで実施する場合には、さらに注意が必要となります。
オンボーディング ハンドブックの制作には、プロダクトマネジメントの手法を取り入れています。本当の課題を探すため、実際に新規に組織・チームに参画した、2020年度 新入社員を対象として、ユーザーインタビューを実施しています。
さらに、課題に対する必要な解決策を見つけるため、社内外の知見・ノウハウを調査しています。実際にその解決策が適切なのか、さらにインタビューなどを通じて、仮説検証し、有効でない解決策ならば、なぜ有効でないのか、課題の本質は何なのかをメンバー間で検討してブラッシュアップを繰り返しました。
「ハンドブックの制作に当たり、アンケートやユーザーインタビューへのご協力など、20年度の中途採用の方々、新入社員(現2年目社員)、そしてその上長の皆さまに、大きく貢献いただきました。この場を借りて心からお礼を申し上げたいと思います」(DPS 稲員さん)
「組織・チームによって受け入れ時の支援内容に大きな差がある印象はありましたが、インタビューによって課題が見え、全社にノウハウを展開したほうが良いと強く感じました」(二BS 千々岩さん)
本ハンドブックでは、前述の通り、ディスカッションやユーザーインタビューを経て洗い出したベストプラクティスを数多く解説しています。以下にその一部をご紹介します。
チームメンバーが支援に積極的な姿勢を出していない場合、チーム全体の心理的安全性*が下がり、新メンバーが周囲を積極的に頼るのが難しくなります。
新メンバーを迎えることが決まった時、チームリーダーやトレーナーだけでなく、チーム全体で支援することを合意しましょう。支援すべき内容は、例えば次の通りです。
また、3カ月や半年後のチームとしてのゴール設定を推奨します。新メンバーがいかに早く成功体験を積むことができるか、一丸となって取り組むことができるかで、チームの結束も強くなるという二次効果も期待できます。
* 対人関係においてリスクある行動を取ったときの結果に対する個人の認知の仕方、つまり「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫だ」と信じられるかどうかを意味する。参考: Google re:Work
既存メンバーにもいえることかもしれませんが、新メンバーが組織やチームのミッションを理解できていない場合、自律的な行動は困難になります。また、表面上は目的を理解したとしても、その必要性を腹落ちしていなければ、モチベーションが上がらないことがあります。
チームリーダーから組織やチームのミッションを丁寧に説明します。達成すべき組織目標は何なのか、その中でチームはどのような役割を担っているのか、そして新メンバーが担当する業務はなぜ必要なのか、対話し、新メンバーが腹落ちして意義を理解できるようにします。
組織ミッションは、企画/育成担当から説明する場合もありますが、可能ならば組織長自ら説明をするのが最も効果的です。なぜなら、非常に多忙である組織長が、あえて時間を割いて登場することにより、組織としていかにメンバーを歓迎しているか伝えられるからです(HRでは山本恭子部長から直接ご説明いただいています)。
新メンバーが自身のゴール(達成すべき成果)を理解できていない場合、自律的に業務を進めることが困難になります。また、仮にアサインされた業務内容が、自身のやりたいことと全く合っていない場合、エンゲージメントが大きく低下する可能性があります。そして当然ながら、新メンバーのゴールがチーム内で共有されていなければ、既存メンバーはどのように新メンバーを支援すれば良いか分かりません。
新メンバーがチームへ配属された後に、本人のやりたいことを加味した上で、新メンバーの中期的(1~3カ月後)な業務・成果、到達すべきスキル目標などについて、1on1などを通じて合意しましょう。
また、合意内容はチームへ展開しましょう。同僚は言語化された情報を見ることで、同僚自身がどのように新メンバーを支援すればよいか、自律的に判断可能になります。リモートワーク中心の働き方では、「察する」ことは非常に困難であり、できるだけ「見える/見せる」ことが重要になります。
この他にも、ハンドブックではリモート環境下におけるオンボーディングのベストプラクティスをたくさんご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
「オンボーディング ハンドブックは、盛り込みたい話や、うまくいったこと、いかなかったことなど、社内から寄せられる意見を生かしながら、継続的にアップデートしていく予定です」(IC 水嶋さん)
一般公開された翌日、ハンドブックはSNSでもたちまち拡散され、一時はソーシャルブックマークサービス「はてなブックマーク」でも総合トップに掲載されるなど、予想していた以上に大きな反響がありました。
ご自身がオンボーディングした当事者で、“ハンドブックを読んで非常に参考になった” というお声や、“多くの組織で、オンボーディング後の定着・戦力化は個人の能力次第、と思われている中で貴重なナレッジ”という評価、“オンボーディング ハンドブックを毎日チームで読みながら議論している”というご報告など、オンボーディングの必要性を感じられるご意見が多数ありました。そして、リモート環境下であればなおさら、ノウハウが明文化されることが大切だとお考えになった方々が、ハンドブックを拡散してくださいました。
社内からも「お客さま企業のHRにご案内しました」という声も頂き、NTT Comに限らず、多くの職場において新メンバーの受け入れ方が課題となっていることがうかがえます。
NTT Com HRでは今後も、新入社員を迎える上長・トレーナー向けの研修や、新任課長研修でも本ハンドブックをご紹介して行く予定です。またDPSでは、ハンドブックの活用推進に加え、着任者・復帰者向けの「部内オンボーディングサイト -Welcome to DPS-」の開設、5月配属の新入社員向け「ウェルカムパッケージ(DPSオリジナルノベルティグッズ付き)」の配布や「メンター/バディー制度」の導入など、リモートでも不安なく入社・異動・復帰できる環境づくりを進めてまいります。
この春、新メンバーを迎えた皆さん、そしてこれから迎えられる皆さんもぜひ、チームでオンボーディングについて議論してみてください!
NTTコミュニケーションズヒューマンリソース部
岩瀬 義昌
ソフトウェアエンジニアとしてプラットフォーム開発に携ったのち、人事ニアとしてエンジニアのスキルアップやコミュニティ強化などを目的に、勉強会やコンテストなどを開催しています。NTT Comグループのエンジニア達の技術力や取り組みをお届けします!
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