6年ぶりの高知開催で決めた2連勝!
雨中戦で魅せたディフェンス。!
幕末に活躍した志士、坂本龍馬の出身地として知られる南国・高知に上陸したNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス(以下アークス)。
高知での日本最高峰「トップリーグ」開催は実に6年ぶり。
県内のラグビー少年少女にとっても待望の一戦だった。高知ラグビースクール(RS)に所属する小学生の谷口君は、日本代表ジャージーを着て観戦。5歳上の姉、2歳下の弟もプレイヤーだ。
「前半はNTTコミュニケーションズがリードしていたけど、後半は宗像サニックスが追いかけてきて、楽しかったです」(高知RS・谷口君)
5歳上のお姉さんは「雨なのにミスが少なく、ハンドリングが上手でした。声もよく出ていて迫力があった」と流石のコメント!日本最高峰の熱戦が、高知のユース世代にも刺激を与えたようだ。
全7試合のリーグ戦も、いよいよ残り2試合。
2勝2敗1分け(総勝ち点12)のアークスは、第5節終了時でレッドカンファレンス4位につける。
リーグ戦の成績が組分けに反映されるプレーオフ(ノックアウト制)は、2週間後の4月17日(土)に迫る。負けられないトーナメントへ向けてギアを上げていきたい状況だった。
今季3勝目をねらうアークスが、4月3日(土)、高知・春野総合運動公園陸上競技場で対峙したのは、九州・福岡から遠征してきた1勝4敗(総勝ち点5)の宗像サニックスだ。
ボールを大きく動かすことに長けた宗像サニックスに対し、アークスは前節からメンバー23人中6人を変更した。
先発は前節同様、4名の変更となった。スクラムの最前列中央にいるHO(フッカー)に2年目の山口達也。そしてLO(ロック)には身長196㎝のジミー・トゥポウが復帰した。
ハーフ団は2人とも入れ替えとなり、俊敏なSH(スクラムハーフ)湯本睦、開幕戦で高いパフォーマンスを見せたSO(スタンドオフ)フレッチャー・スミスがコンビを組んだ。
リザーブでは、スクラムハーフやウイングもできる今季初登場の鶴田諒、元フランカーの守備力も光るCTB(センター)石橋拓也も入り、2人とも後半途中から出場を果たした。
※宗像サニックスブルース戦のメンバーはこちら
この試合で、アークスはトライの量産を期していた。
トップリーグでは勝利したチームに勝ち点「4」が与えられる。更に相手に3トライ差以上をつければボーナスポイント「1」が上乗せされるため、1試合の最大勝ち点は「5」となる。
そして、この勝ち点5を獲れば、アークスはレッドカンファレンスの4位が確定する状況だった。
「試合前から『勝ち点5を獲りにいくぞ』という話はしていました」(ヒュー・リースエドワードHC)
ただ試合前になって雨が本降りとなり、後半途中までは雨中戦となった。ハンドリングエラーが起きやすい状況だったが、しかしアークスには攻撃の幅があった。序盤からフォワードが躍動したのだ。
「今日はモールを組むには完璧な天候でした」(LOトゥポウ)
曇天の下、まずアークスが猛攻を仕掛けた。SH湯本が左右にボールを振りながら近場を攻めたてると、前半5分だった。
宗像サニックスの反則で敵陣右に侵入したアークスは、ラインアウトからモールを組んでパワフルに前進。
最後尾のHO山口が押し込んで先制トライを浴びせ、同14分にはふたたび敵陣右のラインアウトモールから押し込み、2トライ目を奪った。
雨でも武器となるモールで2連続トライを奪い、見事にトレーニングの成果を発揮。幸先良く14点を奪ってみせた。
フォワードの奮闘に応えるようにバックスも躍動する。
キックオフからWTB(ウイング)張容興が弧を描いて左隅を突破すると、敵陣に入ったアークスはSH湯本が、FB(フルバック)石田大河の移動攻撃に反応。
配球を受けたFB石田が巧みなハンドリングで右隅にパスを通し、WTB石井魁が右タッチラインを疾走!襲い掛かる相手をいなしながらワンハンドでトライ!
SOスミスが難しい右隅からのキックも成功させ、21-0と大きくリードを拡げた。
アークスは激しいディフェンスでも魅せた。
「ディフェンスはプレシーズンから準備しているもので、サニックスさんのために大きく変えたことはありませんでした」(WTB石井)
自陣でのピンチではFL鶴谷昌隆が相手のスクラムハーフにプレッシャーをかけ、ルーズボールをPR三宮累が飛び込んで確保。
No.8リアム・ギルらの的確なタックルなどで肉体的、心理的に圧力をかけると前半37分、WTB張がインターセプト!
好守備からWTB張が今季3本目のインターセプトを決め、約70mを独走してチーム4トライ目。4連続トライという一方的な展開で、28-0で後半へ向かった。
「今日は後半の入りで細かいミス、ペナルティが多く、点数を与えてしまったことは課題です」(中島進護共同キャプテン)
後半のスタートは、戦況がぐるりと反転したようだった。
宗像サニックスの初トライは後半3分、敵陣チャンスで相手12番の中央突破。トライを許した上、No.8ギルが危険なタックルによりシンビン(10分間の一時退場)となってしまう。
その後、SOスミスが抜けてきた相手を一発で仕留めるなど、随所に好タックルを見せるが、14人のアークスはさらに1トライを奪われ、リードを14点(28-14)に縮められてしまう。
後半14分にNo.8ギルが戻って15対15になると、アークスはラインアウトの守備でLOトゥポウが再三プレッシャーをかける。
さらに後半25分、序盤から優勢だったスクラムで、途中出場組のフロントロー(庵奥翔太、平井将太郎、セコナイア・ポレ)を最前列に据えたアークスが、ペナルティを奪取!
そんな粘り強いファイトが奏功したのが後半28分。
スキルフル名CTBシルヴィアン・マフーザの鋭い守備から、相手がボールロスト。蹴り返したボールをWTB石井が俊足で追いかけ、デッドライン直前でグラウンディングするスーパープレー!
トライゲッターとして最高の仕事をしたWTB石井は、この日のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に輝いた。ゴールは不成功も33-14となった。
ところがチャンスの後にはピンチがやってくる。
宗像サニックスは途中出場のカーン・ヘスケス選手が再三の突破。15年W杯の南アフリカ戦で逆転トライを決めた強力なウイングだ。
そのヘスケス選手に後半33分にトライを奪われ、トライ差は「2」に。このままでは目標の勝ち点5は手に入らない――。
しかし後半34分、アークスはLOトゥポウらの激しいコンタクトなどで守備ラインを押し上げると、SOスミスが値千金のインターセプト!
トライ後のゴールも成功させて40-21に。土壇場でトライ差を「3」に戻した。
ピンチは最終盤にも訪れ、ゴールラインを背にした局面でNo.8ギルが球際に飛び込んでボールを確保。泥臭いセービングで、相手の攻撃を寸断した。
その後はボールをキープして、途中出場の鶴田が蹴り出してノーサイド。目指していた勝ち点5を見事に奪取した。
40-21で今季3勝目を挙げたアークスは、レッドカンファレンスの4位が確定。終盤は雨も上がり、明るくなった春野のピッチに拍手が降り注いだ。