今季初の金曜ナイターでサクラ咲く!
秩父宮で歓喜の勝利!
金曜ナイターに集った観客を、鮮やかなラグビー、見事な快勝で魅了した。
「(ボーナスポイント付きの)勝ち点5を取れたことは『満足』という言葉では言い表せません。選手たちは本当によくやってくれました」(ヒュー・リースエドワードHC)
NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス(以下アークス)が迎えた「ジャパンラグビートップリーグ2021」の第5節。
全7試合のリーグ戦は、いよいよ残り3試合。
1勝2敗1分け(総勝ち点7)のアークスは3月26日(金)、ファンへ向けて、そして4月中旬に始まるノックアウト制のプレーオフ・トーナメントへ向けて、一戦必勝を期して東京・秩父宮ラグビー場に乗り込んだ。
トップリーグの金曜ナイター(18時キックオフ)は今季初。場内には桜が咲き、観客は夜桜見物も兼ねることができた。
相手となった1勝3敗(総勝ち点6)の東芝ブレイブルーパスは、順延された前フォーマットで、東京・新国立競技場で対戦するはずだった相手。
激しいプレー、強力なフィジカルで日本の社会人ラグビーを牽引してきた誇り高き伝統チームだ。
アークスは前節からメンバー23人中6人を変更し、東芝と対峙した。
先発は4名変更となり、長髪がトレードマークのHO(フッカー)アナル・ランギ、攻守に存在感を示すFL(フランカー)鶴谷昌隆がスタメン入り。
そして80分間フル稼働する大黒柱、FL金正奎共同キャプテンが2試合ぶりにゲーム復帰。ルーキーながら存在感を示す石田大河が先発FB(フルバック)を託された。
リザーブは2名変更となり、瞬発力に優れる湯本睦、パワフルなトロケマイケルが入り、共に後半途中から出場を果たした。
※東芝戦のメンバーはこちら
「東芝戦までの約2週間は、自分達のラグビーと向き合った。」先発LO(ロック)の中島進護共同キャプテンが語った。
「チームとして『自分達のラグビーをやろう』と、全員でスタート地点に戻り、東芝戦に向けて良い準備ができました」
大きなスペースにボールを運び、観客を楽しませるラグビーで勝利する――。そんな志を再確認してリスタートした。
序盤戦は東芝が猛攻。先手を取るべく自慢のフィジカルを前面に出してくるが、アークスも粘り強いディフェンスで対抗。
前半11分にタッチライン際でボールを繋がれ、相手7番に先制トライを奪われるものの、前半の失点はこれ以降なかった。
7点を追いかけるアークスは、ここから前半だけで怒濤の4連続トライを披露した。
まず前半14分、SH(スクラムハーフ)グレイグ・レイドローがペナルティゴール(PG)で3点を奪取し、3-7とする。
そんなレイドローが「彼のパフォーマンスは素晴らしかった」と讃えたのが、今季からスタンドオフに転向した筑波大卒のSO(スタンドオフ)前田土芽。
チーム初得点から2分後の前半16分、堅守からの速攻で前田が輝いた。
アークスは相手のミスからカウンターを仕掛けると、前田が広い視野から巧みにラン突破。フォローしていたCTB(センター)シェーン・ゲイツの逆転トライを見事に演出し、10-7!
「外側にスペースがあることはチームとして共通認識がありました」
そう語ったのは前半19分、センタースクラムからの一次攻撃でトライを奪ったWTB(ウイング)石井魁だ。
アークス自慢のスクラムが供給した安定したボールは、SHレイドロー→CTBゲイツ→そしてFB石田へ。
ここで日体大の元主将が一瞬の加速でスピードに乗り、華麗にクリーンブレイク!WTB石井魁へと繋ぎ、快足トライゲッターが歓喜のチーム2トライ目を奪った。
10点リード(17-7)としたアークスはさらに前半24分、「チャン」ことWTB張容興の突破から、最後はWTB石井がフィニッシュ。チーム3連続トライを決め、24-7とリードを拡大する。
「NTTコミュニケーションズはすべてのチャンスを活かした印象。特にブレイクダウン(ボール争奪局面)の圧力が良かった」
試合後にそうコメントしたのは、東芝の指揮官トッド・ブラックアダーHC(ヘッドコーチ)だ。
そのブレイクダウンでジャッカル役を務め、序盤から攻守交代を起こしていたのがNo.8リアム・ギル(豪州代表15キャップ)。
するとNo.8ギルは前半36分、攻撃でもパスを受けてライン突破。
さらに片手のオフロードパス(タックルを受けながらのパス)をSHレイドローへ繋げると、ボールは南アフリカ出身の万能選手、CTBシルヴィアン・マフーザに繋がった。
2本のオフロードパスから前半最後のトライが生まれ、31-7で前半を折り返した。
「ブレイクダウンの圧力は今シーズン取り組んできた部分。そこが試合に出たことが勝因のひとつになったと思います」(FL鶴谷昌隆)
相手指揮官が讃えたブレイクダウンの圧力は、後半も効果てきめん。
アークスは後半のスタートからラックに殺到し、見事に東芝のノックオンを誘う。
すると直後、スクラムからのボールを受けたCTBゲイツが相手を弾きつつ、強烈なレッグドライブでさらに前進!
そのまま相手を引きずるようにして右中間に豪快なトライ!右隅からのSHレイドローのゴールキックも成功し、38-7とした。
攻撃の手を緩めないアークスは後半10分にも攻守交代からカウンター。
No.8ギルの絶妙なグラバー(ゴロ)キックを再獲得したWTB石井が、自身今季初のハットトリック達成。石井はこの日のマン・オブ・ザ・マッチに輝き、点差を45-7に広げる。
アークスはフォワード陣がモール・ディフェンスでも力を発揮。
さらに、後半17分に相手1番がレイトタックルで退場(レッドカード)となり、追加点が期待されたが、14人の東芝に後半30、36分に連続トライを許した。
「1試合を通して僕たちがやりたいラグビーができました。ただ後半最後に 、劣勢に立たされてしまったところが次の課題だと思います」(FL鶴谷)
しかし、アークスのラグビーに手応えは掴んだ。
FL金共同キャプテンは最後まで運動量豊富にファイトし、最終盤に相手の反則を引き出した。最後はボールを保持して45-19でノーサイド。
計6トライを挙げ、3トライ差以上のボーナスポイントが付いた最大勝ち点「5」も獲得。
夜桜も見事な秩父宮の金曜ナイターで、待望の今季2勝目をファンと共に味わった。試合後のロッカールームには歓喜のチームソングが響いていた。