今季トップリーグ初の東北開催。敗戦を糧に次戦「千葉ダービー」へ
開幕白星スタートを切ったNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス(以下アークス)。
2月28日(日)の「トップリーグ2021」第2節は、宮城・ユアテックスタジアムが舞台。アークスにとって全7試合あるリーグ戦で、唯一の東北開催となった。
2月14日に地震があったものの、東北新幹線も復旧。ラグビー界だけではない尽力により、トップリーグにとっても今季初の東北開催が予定通り実現した。
第2節の相手となったのは、こちらも開幕戦白星のトヨタ自動車ヴェルブリッツ。
優勝経験こそないものの、4強入りを8度経験しており、強豪としての地位を確立している。
初のトップ4を目指すアークスの立場は「挑戦者」。勝利すれば2016年10月以来の凱歌となる。
リーグ戦の成績によって振り分けられる全20チームによるプレーオフは、負ければ終わりのノックアウト方式。それまでにひとつでも有意義な経験を積み重ね、揺るぎない確信を手に入れたい。
アークスは勝利した開幕戦メンバーから2人を変更(先発1人、リザーブ1人)。
同志社で中高大を過ごした2年目のFB(フルバック)安田卓平がリザーブから先発に繰り上がり、慶大卒で6年目の石橋拓也がリザーブに入った。
その他のメンバー21人は変わらず、開幕戦で共に躍動した2人の共同キャプテンも先発。
ゲーム主将はFL(フランカー)金正奎共同キャプテンが担い、一学年下の相棒であるLO(ロック)中島進護は4番を背負った。
ゲームをコントロールする司令塔は、世界レベルの新加入コンビ。前節に続いてSH(スクラムハーフ)グレイグ・レイドロー、SO(スタンドオフ)フレッチャー・スミスだ。
東北出身者では、秋田育ちのPR(プロップ)齊藤剣(能代工-明大)もリザーブに入り、後半から途中出場を果たした。
※トヨタ自動車戦の出場メンバーはこちら
先蹴はアークス。雲ひとつない快晴に、SOスミスのキックオフ・ボールが美しい放物線を描いた。
まずアークスが魅せたのはラインアウト・ディフェンス。スクラムにおいてもプレッシャーをかけたが、前半7分の自軍スクラムでは反則のコール。トヨタ自動車がPG(ペナルティゴール)により3点を先取する。0-3
直後の前半10分PR三宮累が敵陣ゴール前でジャッカル成功!! 強靱な足腰を持つPR三宮の好プレーから、SHレイドローがPG成功。スコアをイーブン(3-3)に戻した。
しかしここから主導権はトヨタ自動車へ。
「前半はミスから簡単にボールを渡してしまい、そこからトライを取られました」(LO中島共同キャプテン)
相手ウイングがキックオフ・ボールを直接確保するビッグプレーを見せ、アークスは危機を察知したFB安田のタックルから一時は難を逃れるが、前半12分に押し切られて失トライ。
さらに自陣での反則により1PG、相手のビッグタックルから直後のアンストラクチャー(陣形が乱れた状態)を仕留められて前半21分に1トライを奪われ、15点(3-18)のリードを許す。
ここからアークスも反撃に転じる。
敵陣ゴール前スクラムから前半25分、SHレイドローが3人飛ばしのロングパスをWTB(ウイング)石井魁に通し、大きなストライドの韋駄天がチーム初トライ!
ゴールは失敗も10点差(8-18)に詰め寄る。
ラインアウトではNo.8ブリッツが完璧なスティールを見せるなど、前半は空中戦のディフェンスが効果てきめん。
しかし自陣で反則を犯してしまう悪循環で苦境に陥ると、ゴール前に下がって相手がラインアウトモールから前半31分にトライ。8-25
アークスはスクラム勝利からPK(ペナルティキック)を奪取するなど見せ場を作るが、サインプレーでのハンドリングミスも重なりスコアは伸びず。トヨタ自動車が17点(8-25)をリードして前半を折り返した。
アークスは後半序盤でもオフサイドの反則を犯してしまい、ピンチを招いた。
この日オフサイドの反則が多かった理由をCTB池田悠希が語った。
「(オフサイドは)相手アタックの勢いに押され、それでも『前に出よう』という意識があり、下がりきれないままディフェンスをしたことが原因だと思います」
相手のハイテンポのアタックは続き、いよいよ失トライ寸前という場面。ここで閃いたのがWTB張容興の剛脚だった。
前半6分にゴール目前のピンチから相手のパスをインターセプト。そのまま約80mを独走する起死回生のトライ。ゴールキックも成功して10点差(15-25)となった。
振り子のようにモメンタム(勢い)は交互に振れた。
トヨタ自動車は「ワイドにあれば自信を持ってボールを振る」(トヨタ自動車・SH茂野主将)というアタックで、キックカウンターから後半10分にトライ。6分後にモールからも連続トライを奪い、アークスのビハインドは20点(15-35)に拡大した。
しかしピンチの後にチャンスがくるのがラグビー。
「(途中出場した)齊藤剣、セコナイア・ポレ、平井将太郎がかなり良い仕事をしてくれたことは間違いないです」(No.8ヴィリー・ブリッツ)
上記3人に元慶大主将のLO佐藤大樹を加えた4人が後半20分から途中出場。すると直後にアークスは右ラインアウトからモールで堅実に前進。
相手は反則で崩したものの、ラックからNo.8ブリッツが抜け出して右中間にトライ!ゴール成功で22-35とした。
さらにアークスの攻勢は続いて、後半26分の敵陣ゴール前スクラム。
スクラムでは押せなかったが、SOスミスの飛ばしパスが途中出場のWTBトロケマイケルに通り、千葉・浦安出身のフィニッシャーが右隅にトライ。
さらに右隅から高難度のコンバージョンをSOスミスが決めて、大きな歓声。ついに6点差(29-35)に詰めた。
「後半に自分たちのラグビーができて、6点差まで詰めることができました」「細かいミスを減らせばかならず自分達のアタックができる、ということは分かりました」(LO中島共同キャプテン)
「後半に詰め寄った点は讃えたいと思います」
アークス指揮官のヒュー・リースエドワードHC(ヘッドコーチ)はそう語ったが、その後「ベストパフォーマンスとは言いがたい」と言葉を紡いだように、終盤に突き放された。
自陣での反則により窮地となる流れから失2連続トライ(後半32、38分)。アークスは最終盤にトライを目指すが、最後はハンドリングミスで相手ボールに。そのまま勝ち点なく29-47で終戦を迎えた。
フィジカルで力負けはしていない、とLO中島共同キャプテンは力強く語った。
リースエドワードHCがまず口にした改善点も「自分たち自身を直す」こと。激しいディフェンスを重ねると共に規律意識をさらに徹底する。
世界トップレベルを知るFL(フランカー)リアム・ギルは「この試合を自分達のターニング・ポイントにしたい」と語った。
次戦のリーグ第3節は勝負所だ。相手は同じ千葉を本拠地とするクボタスピアーズ。負けられない「千葉ダービー」がやってくる。