爽快な白星スタート!「最後のトップリーグ」開幕戦で41得点。攻守に手応え!!
日本最高峰「トップリーグ2021」が、2月20日(土)、ついに開幕を迎えた。
「さまざまな人の努力があって僕たちはグラウンドに立つことができており、感謝を感じています」(金正奎共同キャプテン)
試合後にZoomを介して行われた記者会見。FL(フランカー)金共同キャプテンの言葉が、これまでの紆余曲折を端的に表していた。
3連勝中だった2020年シーズンは、コロナ禍により中止。ステイホーム期間を経て、チーム初の共同キャプテン制(金正奎、中島進護)を採用し、21年シーズンへ向けて再始動した。
チーム史上初の「トップ4」を目標に掲げて、1月の練習試合では2連勝したが、上り調子で迎えるはずだった1月16日の開幕戦が1か月延期。
「精神的に難しかった」(金共同キャプテン)というまさかの展開も受け入れ、ついに迎えた、待望の舞台だった。
開幕延期により大会フォーマットは2ステージ制が1ステージ制となり、2組(レッド/ホワイトカンファレンス)に分かれた16チームによるリーグ戦は、7試合に。
試合総数にして28試合が減少し、1試合の重要性が格段に増した。
一戦必勝。目の前の試合にすべてをぶつけ、リーグ戦の成績によって振り分けられる4月17日開始のプレーオフで、まずは悲願のトップ4入りを目指す。
そして迎えた運命の開幕戦、舞台となった東京・江東区夢の島競技場の空は晴れ渡っていた。
開幕に尽力した関係者、待ってくれていた人達への感謝を胸に、NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス(以下アークス)が、Honda戦の舞台に立った。
2022年1月に新リーグへ移行するため、トップリーグは18年目の今季がラストシーズンとなる。
「ラスト・トップリーグ」初戦の相手は、成長著しいHonda HEAT(以下Honda)だ。
2009年度にトップリーグに初参戦し、以後は昇降格を繰り返したが、2018年度は過去最高の9位でフィニッシュ。アークスは昨シーズン、敵地で勝利したものの厳しい戦いを強いられていた。
アークスは共同キャプテンがそろって先発。ボールキャリアーとしても迫力満点のLO(ロック)中島、攻守両面で働き続けるFL金。
またハーフ団はともに新加入選手で、元スコットランド代表主将のSH(スクラムハーフ)グレイグ・レイドロー、SO(スタンドオフ)フレッチャー・スミスの実力派コンビ。
そしてFLリアム・ギル、大卒ルーキーでは唯一の先発となったFB(フルバック)石田大河も記念すべきトップリーグデビュー戦となった。
※Honda戦の出場メンバーはこちら!
アークスの10番を背負ったSOスミスがキックオフボールを蹴り上げ、トップリーグ2021の開幕戦(13時K.O.)が始まった。
強烈な風下に立ったアークスだが、まずラグビー王国出身の24歳、SOスミスが魅せた。
前半6分に鋭いパスで内側に走り込んだWTB(ウイング)石井魁の突破を演出。すぐさまフォローし、抜け出した石井のリターンパスを受けて鮮やかに先制トライ。
トップリーグ2021最初のトライを記録し、SHレイドローのコンバージョンキック(2点)も成功。アークスがトップリーグ開幕戦を飾るファースト・トライで7点を先取した。
しかしここからアークスは乱調に。
連続でノット・ロール・アウェイ(タックル後に退転しない反則)を犯してしまうなど、ミス、反則によってリズムに乗り切れない。
自陣でのミスから失点する展開となり、Hondaが2本のPG(ペナルティゴール)、前半18分のトライもあり13-7と逆転を許してしまう。
ここで7人制韓国代表のスター、「チャン」ことWTB張容興がキックオフボールを受けた相手にビッグタックル。
たまらず相手がこぼしたボールを獲得したアークスは敵陣の懐深く侵入。そして前半28分、スクラムから、まずCTB(センター)池田悠希が突進。
最後はSOスミスが左大外でフリーになっていたWTB張を見逃さず、すばやく配球。タックルセンスにも溢れる韋駄天が左隅に2トライ目を決め(ゴール不成功)、ビハインドを1点(12-13)に縮めた。
そしてこの日の快勝劇を力強く支えたのは、アークスの強力スクラム。最前線でスクラムを組む先発PR(プロップ)の上田竜太郎には手応えがあった。
「練習してきたことを全て出すことができ、チームを勢いづかせることができました」(PR上田)
前半33分には敵陣ゴール前スクラムを迎え、19年W杯日本代表の具智元選手も擁するHondaスクラムに重圧をかけ、2連続でペナルティを奪取!
スクラムで優勢となり相手を肉体的、精神的に追い詰めると、ボール展開から前半36分、最後は新加入のSHレイドローがトップリーグ初トライ!
強風のなか自身でゴールキックも決め、19-13と見事に逆転して前半を折り返した。
この日Honda指揮官のダニー・リーHC(ヘッドコーチ)が試合後に讃えたのが、アークスのディフェンスだった。
「後半は相手のディフェンスが素晴らしかったです」(Honda・リーHC)
後半風下に立ったHondaは、強烈な逆風にキックを多用できず、自陣からでもボールを保持して攻撃した。
そこでアークスは今季注力しているディフェンスが力を発揮。なんと後半を無得点に抑えたのだ。
「ディフェンスは準備してきた部分を出すことができて『ハマった』という印象です。今年は春からコンタクトの部分をメインに、例年以上にたくさん練習してきました。開幕戦で成果を出せました」(PR上田)
充実した攻防を見せるアークスは前半10分、PG加点でリードを9点に拡大(22-13)。
後半のアークスは、たとえ相手のクイックスローインから自陣に大きく下がっても、たとえ後半17分にLOジミー・トゥポウが危険なタックルでシンビン(10分間の一時退出)になっても――
中島共同キャプテンのジャッカル(タックルされて倒れた相手からボールを奪う守備プレー)成功などで堅陣を崩さず、零封を続けて、迎えた前半20分だった。
攻撃権を奪って敵陣に入ると、WTB張のオフロードパスから右サイドで得点機が生まれ、途中出場のHO(フッカー)セコナイア・ポレが、新加入のFLギルにパスを通してフィニッシュ。
SOスミス、SHレイドローに続いて、またもや新加入組がスコアラーとなり、ゴールキック不成功もリードは14点(27-13)に!攻守に充実のアークスが力を示した。
LOジミーがいない時間帯もインゴールを死守したアークス。Hondaの攻撃を止め続け、残り時間はいよいよ10分間に。
Hondaは守備の圧力からボールロストし、ここで獲得したペナルティに対して、途中出場のSH湯本睦が持ち前の積極性でクイックスタート。相手の隙を突き、未整備のディフェンスを突破してトライ!
観客も呆気にとられる早業で、リードはついに21点(34-13)となった。
そして最後に魅せたのはアークスの選手会長。
アークスはFW前1列が全員交代したスクラムでも(PR齊藤剣、HOポレ、PR平井将太郎)相手のペナルティを誘発!
自陣から攻め立てるHondaに対し、PR齊藤はジャッカルも貢献。すると残り時間2分で、敵陣左のラック最後方からボールを持ち出し、ラック中央を突破したのは途中出場の目崎啓志!
技アリの好プレーで選手会長がインゴールを奪い、SOスミスのゴールキック成功直後、フルタイムのホーンが響き渡った。
MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)には献身的に動き続けたNo.8(ナンバーエイト)ヴィリー・ブリッツが選出された。
攻めては41得点、守っては後半を無得点に押さえ、最終スコアは41-13に。
3トライ以上に与えられるボーナスポイント「1」も獲得し、最高の形で勝ち点「5」を獲得。トップリーグ開幕戦を爽やかな快勝で飾ってみせた。