21点差からの逆転勝利がするり・・・。スクラム圧勝も2勝目はならず。
何度もスクラムに勝って雄叫びを上げました。
そのたびにペナルティキック(PK)を獲得し、チームは大きく前進。
チームは21点差を見事に逆転。勝利を目前にしながら、しかし試合終了間際にまさかの展開が――。
「あらためて、ラグビーは80分間のスポーツだと学ばせてもらいました」(フランカー(FL)・金正奎キャプテン)
トップリーグ2020で、1勝1敗のNTTコミュニケーションズ シャイニングアークス(以下アークス)。
1月25日(土)は、大阪・万博記念競技場で、こちらも1勝1敗のクボタスピアーズ(以下クボタ)と対戦。
アークスが千葉県浦安市を拠点とするのに対し、クボタは船橋市が本拠地。ファンにはおなじみの「千葉ダービー」となりました。
今回はラグビーW杯日本大会を湧かせたスターが勢ぞろい。
アークスには南アフリカ代表のフッカー(HO)マルコム・マークス、対するクボタには同代表でナンバーエイト(NO8)だったドウェイン・フェルミューレンが。
またスタンドオフは、W杯オーストラリア代表の豪華マッチアップ。
アークスの司令塔はクリスチャン・リアリーファノ、対するクボタの10番は同代表のバーナード・フォーリー。
日本最高峰トップリーグでしか味わえない、代表チームメイト同士の対決が実現。
クボタ戦のメンバーはこちら!
薄曇りのなか、前半は風下に立ったアークス。
序盤は、高精度のアタックを仕掛けるクボタのペース。
アークスはタックルが甘くなり前半2分にトライを許すと、7分には相手10番フォーリーのキックを大外で捕球され、2連続トライを奪われてしまいます。0-14
立ち上がりに課題を残したアークスですが、ここから日本代表のNO8アマナキ・レレイ・マフィの好タックル、フランカー(FL)鶴谷昌隆がジャッカル(ラック成立前にボールを奪うプレー)で見せ場を作ります。
しかしハンドリングエラーでアタックが継続できずにいると、前半20分、クボタがゴール前ラインアウトから、連続攻撃を仕掛けてトライ。
アークスは約20分間で、21点(0-21)を失いました。
しかしアークスも反撃。
スタンドオフ(SO)クリスチャン・リアリーファノがライン突破すると、今季初先発のCTB石橋につなげて敵陣へ。
相手の反則からNO8アマナキの突進をまじえ、スペースに走り込んだCTB石橋がチーム初トライ!点差を14点(7-21)に縮めます。
ここからスクラム戦で、圧倒的な優勢に。
前半終了間際の6度目のスクラムで押しきり、この日初めてコラプシング(スクラムを崩す反則)を奪取。
「対策はしていました。ペナルティを誘い、流れをもってこられたのは狙い通りでした」(プロップ(PR)・三宮累)
第2節サントリー戦に続いてラインアウトの精度も高く、トライの期待が高まります。ただブレイクダウンでの劣勢から攻撃が続かずに前半終了。
14点差(7-21)で後半へ向かいました。
「自分達のやることをやり続ければいける、という感覚はありました。ハーフタイムでは、やるべきことを変えることなく、練習してきたことをしっかり出そう、という話をしました」(ロック(LO)牧野内)
やるべきことをやれば得点できる――そう確認し合ったアークスは、後半に圧倒的なボール支配率で猛攻。
反撃の狼煙は、やはり圧倒的だったスクラムでした。
9度目のスクラムで、この日2度目のコラプシング(スクラムを崩す反則)を奪取。左ゴール前ラインアウトへ進むと、ここでスペシャルサインが炸裂。
後半7分、大阪出身のスクラムハーフ(SH)湯本睦がボールを受けて突破すると、スローワーのHOマークスへリターンパス!
ここで左隅をHOマークスが突進し、豪快なトップリーグ初トライ!ゴールは不成功も12-21と詰め寄ります。
ただ前半に続き、アークスはブレイクダウンで苦戦。
ボールキャリアーを抱え上げられ、密集からボールが出ない「アンプレアブル」の反則を再三取られ、攻撃が寸断します。
しかし快足フルバック(FB)シルヴィアン・マフーザの好守などで失点を防ぎながら、迎えた16分でした。
11度目のスクラムで、この日3度目の反則(コラプシング)を奪取!
ここでアークスは3点が入るペナルティゴール(PG)を選択。SOリアリーファノが見事にHポールを射抜き、ついにビハインドは6点差(15-21)に!
さらに後半27分。
相手のノックオンで迎えた敵陣ゴール前スクラムから、フォワードがインゴールめがけて猛進。
最後はゴール前の攻防に強いHOマークスが押し込み、この日自身2トライ目!
2点が入るコンバージョンキックも成功し、ついに21点差を逆転!22-21
大事なキックオフで、マイボールを確保したアークス。
相手の反則や5度目のコラプシング奪取もあり、敵陣22メートル内に侵入。
クボタの防御に阻まれてトライができないなか、後半35分、NO8アマナキが突進からオフロードパス(タックルを受けながらのパス)。
これをウイング(WTB)石井魁が絶妙なタップパスでCTB石橋につなげて、今季初先発のCTB石橋が右隅にチーム4トライ目!
ただ右隅からの難しいコンバージョンは決まらず、リードは6点差のまま。残り時間は約4分――。
大事なキックオフで、競ったボールはクボタへ。
ここで防戦となったアークスは、痛恨のオフサイドの反則。
さらに自陣へ下がると、FW勝負から一転、右サイドへ展開すると、相手10番フォーリーがゴール下にトライ。
ゴールも決まり、試合終了直前にまさかの逆転を許しました。27-28
キックオフボールは確保できず、相手が時間を費やしてフルタイム。
掴みかけた21点差からの逆転劇が、終了間際の失点により手からこぼれ落ちました。
試合のマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)は、2トライを決めたHOマークス。
また「7点差以内の敗戦」に与えられるボーナスポイント「1」を獲得し、総勝点を「5」に伸ばしました。
後半猛追で21点差をひっくり返したアークスは次戦、神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場で、リコーブラックラムズと対戦。
FL金キャプテンは試合後に悔しさを滲ませつつ、決然と語りました。
「確実に言えることは、やっていることは間違いじゃない、ということです」
「努力が結果に結びつかなかったことは自分達にとって辛いですが、それが間違いではないことは分かっています」
ヒュー・リースエドワードHC(ヘッドコーチ)の声

いま選手達とのミーティングをしてきたばかりです。
21点差で負けているところから、22点を獲って逆転できるチームだということは、チャンピオンになるようなチームでなければ出来ない、と伝えました。今日のような力を見せていけばチャンピオンに近づきます。
勝てれば嬉しかったですが、最後の数分でトライを奪われ、負けてしまいました。
相手に与えた4トライは簡単すぎました。最後の数分間、しっかりプレーすることはとても重要です。負けて心が痛んでいますが、これを来週に繋げていくことが重要です。
FL 金正奎選手の声

あらためて、ラグビーは80分間のスポーツだと学ばせてもらいました。笛が鳴るまで勝敗が分からないのがラグビーです。
確実に言えることは、やっていることは間違いじゃない、ということです。努力が結果に結びつかなかったことは自分達にとっては辛いですが、間違いじゃないことは分かっています。
前に進むしかありません。来週へ向けて良い準備をして戦いたいと思います。
――スクラムでは相手を圧倒していました。
本当にフロントロー(FW第1列)は日頃から頑張っています。バックファイブ(FW第2、3列の5人)もしっかり押していますし、8人で押すことは体現できています。
FWの努力が、スクラムで結果に結びついています。
――HOマークス選手が2トライを挙げました。新加入の外国人選手はチームにフィットしていますか?
見ての通り、素晴らしいパフォーマンスをしてくれています。むしろチームを引っ張ってくれるような活躍で、みんなが良い影響を受けています。
PR 三宮累選手の声

――今日のスクラム戦を振り返ってください。
クボタさんのスクラムに対して対策をしてきて、試合前からFWで勢いをつけられたらいい、と話していました。ペナルティを誘い、流れをもってこられたのは狙い通りでした。
――スクラムについては完勝という感触でしょうか?
何回か相手のペースで組まれてしまったこともありましたが、ペナルティはなかったので良かったかなと思います。
また来週以降、自分達のスキルを出せるように練習していきたいと思います。
――ファンへメッセージをお願いします。
サントリー戦、クボタ戦とあと一歩のところで勝ちきれない試合が続いていますが、まだシーズンは続きます。応援どうぞよろしくお願いします。
LO 牧野内翔馬選手の声

――今日の試合を振り返って下さい。
クボタさんはFWが強いですし、接戦になると分かっていました。
ただFW勝負で50センチ、1メートルのゲインを許してしまいました。そこで勢いを与え、バックスにきついディフェンスをさせてしまったことが敗因のひとつだと思います。
――前半に3連続トライを許すなど、立ち上がりで苦戦しました。
そこは試合前から言っていました。クボタさんは相手にペナルティをさせてからFW勝負、というチームだったので、ペナルティをしないようにと話していました。
しかし前半に思っていたようにいかず、厳しい試合になったと思います。
――前半を終えて14点を追いかける展開(7-21)でした。ハーフタイムではどんな話を?
自分達のやることをやり続ければいける、という感覚はあったので、そこは変えることなく練習してきたことをしっかり出そう、という話をしました。
前半はそこが出ませんでしたが、後半は練習の成果を出すことできたので、逆転までいけたと思います。
――3年目ですが、トップリーグ先発はルーキーイヤーから2年ぶりでした。
出場できればどこでもよいですが、今日はこだわりのあるロックで出場できて嬉しかったです。ロックは近場で身体を当てることが多く、そこは自分の強みだと思っています。
ただ勝つことができなかったので、すごく悔しいです。
――最後にファンへメッセージをお願いします。
自分達のラグビーを突き詰めてやれば、どこのチームにも勝てると思っています。前半からしっかり出来るように、試合前・練習前のコミュニケーションを大事にしていきたいです。
今日は福岡から両親も来ていましたし、全国から大阪まで来てくれた方もいます。勝つことが恩返しになると思うので、今後も頑張っていきます。