キャプテンが窮地救った!大熱戦を制し、今シーズンは白星スタート。
劇的トライで勝負を決めたキャプテンは、試合後にチームのアティチュード(態度)を誇りました。
「最後まで諦めずに戦い抜く姿は、日本代表に続いて、僕たちも見せられたのではないかなと思っています」(フランカー(FL)・金正奎キャプテン)
ラグビー国内最高峰「ジャパンラグビートップリーグ2020」がついに開幕!
ワールドカップ日本大会で日本代表が巻き起こしたラグビー人気を引き継ぐ形で、1月12日(日)、全16チームによる総当たり戦(全120試合)の火蓋が切って落とされました。
NTTコミュニケーションズ シャイニングアークス(以下、アークス)の初戦は、東京・秩父宮ラグビー場が舞台。
過去最高タイの昨季5位から念願の4強入り、初優勝を目指すアークスが対峙したのは、昨季14位の日野レッドドルフィンズ(以下、日野)です。
キックオフは、この日行われた試合で最も早い午前11時30分。記念すべきリーグ開幕戦となりました。
観客数はラグビー人気の高まりを証明する1万7072人。聖地・秩父宮は人で溢れました。
アークスはこの日に出場した8人が、トップリーグ2020シーズンでのアークス初キャップを獲得。
先発フォワードでは3人。今季新加入で南アフリカ代表のフッカー(HO)マルコム・マークス、ニュージーランド出身のロック(LO)ジミー・トゥポウ。そして2年目のLO佐藤大樹。
先発バックスでは3人。オーストラリア代表のセンター(CTB)クリスチャン・リアリーファノ、ウイング(WTB)山田章仁、フルバック(FB)シルヴィアン・マフーザ。
リザーブからは立命館大卒のルーキーHO山口達也、今季新加入のプロップ(PR)セコナイア・ポールが、アークスで初めてトップリーグを戦いました。
(※日野戦のメンバーはこちら!)
大観衆のカウントダウンから、待ちに待ったキックオフ。
序盤のアークスはボール争奪局面で反則が続き、なかなか敵陣でプレーすることができず。
「ブレイクダウンでかなりプレッシャーをかけられました。そこは精度を上げなければいけません」(CTBクリスチャン)
しかし前半10分でした。
ゴール前でボールを右隅に運び、WTB山田が粘ってラックを形勢。振り戻しのアタックで、FWユニットの背後からFL金キャプテンが突進!
接点に走り込む勇敢なプレーでインゴールに押さえ、2020年シーズン最初のトライをスコア!
2点が入るゴールキックは不成功でしたが、幸先良く5点を先制します。
ここからトップリーグ昇格2年目の日野も反撃。
前半15分にオフロードパスがつながり相手フルバックにトライを奪われ、日野が5-7と逆転に成功。
アークスも自慢のバックスリー(ウイング(WTB)とフルバック(FB))が躍動し、キックカウンターWTB山田やFBマフーザが鮮やかに突破。
バックスが会場を沸かせると、アークスの強力スクラムも存在感。前半26分のセンタースクラムで3度目の反則を奪うなど、大きな武器として機能します。
前半31分には相手の反則につけこみ、CTBクリスチャンが3点の入るPG(ペナルティゴール)を成功。8-7と逆転に成功しました。
アークスはHOマルコムが十八番のジャッカル(ラック成立前にボールを奪うプレー)でピンチ脱出の場面も。
しかし勝負所でハンドリングエラーなどのミスがあり、思うようにスコアが伸びません。
「前半はエラーがあってトライができませんでした。たぶん緊張もあったと思います」(PRレイルアマーフィー)
逆にPGを追加されていた前半40分、攻守交代直後のアタックから、日野にトライ(ゴール成功)を許して17-8に。9点ビハインドで後半へ向かいました。
後半のアークスは、リーグ屈指の攻撃力を発揮。
FL金キャプテンが「後半は修正して戦い抜けた」と語ったように、後半は課題になったブレイクダウンの精度などを修正。80分間をメンバー23人で戦い抜きました。
さらにアークスは敵陣で鮮やかなサインプレーで勝負。
ラインアウトからスクラムハーフ(SH)鶴田諒がショートサイドから突進したり、タッチに蹴り出すと見せかけて速攻を仕掛けたり。
すると待望のトライは後半21分。
敵陣でハイテンポの連続攻撃を見せるアークスは、3年目のSH湯本睦が、走り込んだ2年目のCTB池田悠希へ矢のような飛ばしパス。
東海大の先輩・後輩コンビからトライが生まれ、ゴール成功でビハインドは2点(15-17)に!
追撃ムードのアークスは、さらに後半26分。
相手反則から敵陣へ得点機を迎えると、ゴール前でSO小倉が移動攻撃。一瞬の加速でディフェンスを切り裂き、ディフェンダーを引きずりながら殊勲の逆転トライ!
母校である桐蔭学園、早稲田大は今年それぞれ日本一になったSO小倉。メモリアルイヤーのトップリーグ開幕戦で逆転トライを決め、ついに22-17とリードします。
しかし粘る日野は後半31分、PGによる3点を追加。
アークスのリードはわずか2点(22-20)。トライはもちろんPG加点でも逆転となる大接戦に。
残り時間10分で、どちらに勝利が転がり込むか分からない状況――。
さらに日野は好調の10番が大きなキックパス。ここに反応していた途中出場のWTB小泉将が好タックルを見せ、ビッグゲインを防ぎます。
さらに続く日野の連続攻撃。
ここで相手のパスに反応していたのが、FL金キャプテンでした。
「味方がワイド(エリア隅)のブレイクダウンでプレッシャーを与えてくれたおかげで、相手が苦しまぎれにパスを投げないといけない状況を作ってくれました」
相手のパスをインターセプト。そのまま約50mを独走して、後半38分、勝利を呼び込む劇的トライ!
ゴールも成功して29-20。残り時間を自陣で稼いだアークスが、タッチに蹴り出してノーサイド。
「この4シーズン、トップリーグの開幕戦は勝てませんでした。チームの歴史を変える勝利になり嬉しいです」(ヒュー・リースエドワードHC)
試合の優秀選手に贈られるマン・オブ・ザ・マッチ(MOM)は、文句なしで2トライを挙げたFL金キャプテン。
頼れるリーダーが試合を決め、アークスは2020年シーズンでスタートダッシュを切りました。
ヒュー・リースエドワードHC(ヘッドコーチ)の声

まず試合に勝てたことはとても幸せです。この4シーズン、トップリーグの開幕戦は勝てませんでした(2014年度第1節の宗像サニックス戦以来)。チームの歴史を変える勝利になり嬉しいです。
ただ勝った手段については満足できていません。そこは課題が残るので、来週のサントリー戦に向けて修正したいです。
FL 金正奎選手の声

今日は勝てて良かったです。リース(エドワードHC)が言ったように、勝ち方は納得いくものではありませんでしたが、80分間を通して修正力を出すことができました。
チームはまだまだ成長できます。ここがピークではないので、次のサントリー戦へ向けて規律の部分を正して、信じて戦い抜きたいと思っています。
――勝利を決定づけた自身のインターセプトトライについて振り返ってください。
確かに狙ってはいましたが、味方がワイド(エリア隅)のブレイクダウンでプレッシャーを与えてくれたおかげで、相手が苦しまぎれにパスを投げないといけない状況を作ってくれました。
相手のスクラムハーフのパスコースはひとつしかありませんでした。こうした過程がトライに結びつきました。
――海外出身の強力な新加入選手が増えましたが、チーム内のコミュニケーションはどうですか?
新しく入った選手はワールドクラスの選手ばかりです。海外経験豊富な選手が多く、すぐチームに馴染んでくれました。新しく入ったという感じではなく、ずっと長く一緒にやっているように感じます。そこがすごく印象的です。
――トップリーグの2020年シーズンを飾る最初のトライを挙げました。
たくさんのお客様に来て頂けることは予想していました。観に来ている方々に対して刺激を与えられるような、そういう姿を見せることがチームの目的です。
そこを見せ切れたかどうかは疑問が残りますが、ただ最後まで諦めずに戦い抜く姿といったところは、日本代表に続いて僕たちも見せられたのではないかなと思っています
PR レイルアマーフィー選手の声

――今日のスクラムについて振り返ってください。
(すべて日本語で)良いスクラムと悪いスクラムがありました。
ペナルティはありましたが、試合中に直すことができました。コラプシングは多かったので、フロントロー(FW第1列)で修正すると思います。
――厳しい試合でしたが、フォワードが奮闘していました。
自分たちの仕事はできました。前半はエラーがあってトライができませんでした。たぶん緊張もあったと思います。
――開幕戦で緊張もあった?
まあ、ありましたね。みんなもあったと思います。
――ワールドカップでラグビーが盛り上がって、来場者の方も増えました。
来場者が増えて応援してくれてありがたいですね。(モチベーションは)上がりますね。良いプレーをしたいという気持ちになります。次の試合でも応援してほしいです。
SO 小倉順平選手の声

――今日の試合を振り返ってください。
まず初戦を勝てたことは良かったなと思います。そこに尽きます。
――前半が苦しい展開になり、スタンドオフとして心掛けたことは?
僕だけではなくて、外側にクリスチャン(・リアリーファノ)や(シルヴィアン・)マフーザなど喋ってくれる選手が多いので助かりました。
タイトなゲームになり、フォワードがすごく頑張ってくれました。『フォワードなくしてラグビーはない』ので助かりました。
――今年、出身校である神奈川の桐蔭学園が単独初優勝を果たしましたね!
前半押されていましたが、後半修正して勝ったことはすごいなと思います。(監督の)藤原(秀之)先生が泣いていたのでビックリしました。
――そして昨日、出身大学の早稲田大学が11年ぶりに大学日本一になりました。
世間は明治大学有利という感じだったので、本当に良かったですし、フォワードが対等以上にやれていたことが大きかったのではないかと思います。
――最後にファンの皆さまへメッセージをお願いします。
ワールドカップのおかげで来場者も増えました。僕たちの試合だけでなく、日本ラグビー全体としてたくさんの応援があると盛り上がるので、ぜひお越し頂けると嬉しいです。
CTB クリスチャン・リアリーファノ選手の声

――今日の試合を振り返ってください。
勝てたことはすごく嬉しいです。シーズンの始まりをポジティブに迎えられました。きつい試合で相手も良いチームでしたが、チームの努力を誇りに思っています。
――なぜタフなゲームになってしまったと思いますか?
ブレイクダウンでかなりプレッシャーをかけられました。そこが厳しかったですね。ブレイクダウンでの正確性が重要です。そしてアンストラクチャー(乱れた局面)でボールを失うと高い代償を払うことになってしまいます。
――オーストラリア代表ではスタンドオフですが、今日はセンターでの出場でした。
(小倉)順平というクオリティの高い10番がいて、彼は長い間チームでプレーしているので、チームをよくコントロールできる選手です。
私はセカンドレシーバーとして、すこし時間とスペースを与えられていました。そこでアタック指示を出すことで、順平を助けられていたと思います。
――2019年ワールドカップで初めてラグビーを観たという人も多く来場したと思います。彼らにどんなラグビーを見せたいですか?
たくさんトライを取れるような試合をしたいです。ただ競争の激しいリーグなので、時には勝ちにこだわるラグビーもしなければいけません。トップリーグはかなりレベルが高いので、そこも理解して頂いた上で、ロースコアの試合も楽しんで頂ければと思います。