ディフェンス奮闘しPG一本に抑えた。
師走の秩父宮でロースコアの接戦制す。
トップリーグ2017-2018シーズンのリーグ戦は残り3試合。
負けられない戦いが続くNTTコミュニケーションズシャイニングアークス(以下アークス)は、12月9日(土)、東京・秩父宮ラグビー場でキヤノンイーグルス(以下キヤノン)と対戦しました。
西日本からの寒波に見舞われ、秩父宮は日中にも関わらず日陰は震える寒さ。
しかし快晴も手伝って会場には8568人の方々が来場。正門前は試合前から活気に溢れ、選手たちもご来場の方々へ積極的に声を掛け、記念撮影、サインなどに応じていました。
この日対戦したキヤノンは、4勝6敗でホワイトカンファレンス5位。
序盤こそ開幕5連敗と出遅れましたが、その後は4勝1敗と尻上がりに調子を上げてきています。元ナミビア代表のギデオン・レンシングFWコーチが中心となってスクラムも強化しており、けっして侮ることはできません。
また今季は戦力補強も充実し、SO田村優やFL/NO8エドワード・カークらが新加入。特に25歳のルーキーWTBホセア・サウマキ(大東大)の突破力は脅威。WTBサウマキをいかに止めるかもポイントのひとつでした。
一方、先週に今季初のドロー決着となったアークスは、5勝1分4敗でレッドカンファレンス5位(総勝ち点25)。
日本選手権(兼トップリーグ優勝決定トーナメント)進出の可能性は残るものの、FL金正奎キャプテンは「先を意識するよりも一戦一戦」と、目の前の試合にフォーカスしたいと語りました。
まずは目の前の一勝を掴み取る。必勝の課された第11節は、午後2時5分に真継丈友紀レフリーの笛によりキックオフを迎えました。
キヤノンのアタックの中心選手は、足技を持ち味とするSOジャン・クロード・ルース。精確で威力あるロングキックのほか、ドロップゴールも得意としています。
前半7分、そのSOルースのロングキックから自陣10m付近に後退したアークス。迎えたマイボールラインアウトでミスをして相手ボールとなりますが、直後のディフェンスで粘って相手のノックオンを誘います。
前半12分にはキヤノンのSOルースが蹴ったハイパントの処理を誤って相手ボール。
すぐに防御裏へボールを転がされ、相手WTBサウマキがインゴールで抑えにかかりますが、ここはビデオ判定の結果トライは認められず。
アークスもSH光井勇人の俊足を活かしたアタックなどで対抗しますが、キヤノンも深いアタックラインの奥まで詰める鋭いディフェンスで対抗。
前半17分には、ラインアウトでのアークスの反則で、キヤノンがショットを選択。Hポールを射抜かれてキヤノンが3点を先制しました。
しかしアークスも粘り強いディフェンスを見せ、前半25分には左サイドでWTB小泉将、CTB石橋拓也が二人がかりでボールに絡んで攻撃をシャットダウン。
さらに前半27分にはキヤノンの17次攻撃を受け止め、最後はFL 栗原大介が好タックルで相手のノックオンを誘発。インゴールを譲りません。
直後の前半29分にはFBブラッキン・カラウリアヘンリーのグラバーキックをWTB小泉が敵陣左サイドで確保。素早いボール展開からCTB溝口裕哉が右奥へ絶妙なキックを蹴りますが、直前にキヤノンがラインオフサイドの反則を犯していました。
ここでアークスはショットを選択しますが、PGは決まらずスコアは0-3のまま。
前半33分には相手13番がNO8ヴィリー・ブリッツへのハイタックルでシンビン(10分間の一時退出)に。
一時的に14人となったキヤノンに対し、アークスはラインアウトモールから攻勢をかけますが、ボールに絡まれ相手ボール。FL金キャプテンが試合後「もっとボールを保持し続けられれば良かった」と振り返るなど、アタックの継続に課題が残る展開に。
お互いにしぶといディフェンスを披露しあい、前半を0-3で折り返します。
【選手入替/後半 12分】LOアイザック・ロス→石神勝/CTB溝口裕哉→シェーン・ゲイツ
後半はアークスがスタートダッシュ。
WTB鶴田諒のロングキックから敵陣に入ったアークスは、連続攻撃からHO三浦嶺が大きくゲイン。敵陣に入りますが、ここでノックオンが起きてふたたび相手ボールとなります。
ハンドリングエラーに加えて、サイズの大きいFW陣らにボール争奪局面で圧力を受け、たびたび攻撃権を失ってしまいます。
しかし後半15分には、敵陣ゴール前でのスクラム戦でコラプシングの反則を奪取。
ここはSO小倉順平が冷静にPGを決めて3点を奪い、この日の初得点が生まれました。
しかしキヤノンも反撃に転じます。
失トライ直後にアークス陣でボールを奪ったキヤノンは、ラインブレイクからゴール前で連続攻撃。しかしここはアークスが粘ってインゴールを死守。
直後のキヤノンボールのアークス陣スクラムでは、ショートサイドでボールを受けたWTBサウマキに対して、トイメンのWTB鶴田が渾身のタックル!見事ピンチをしのぎます。
後半22分にはPR三宮累がラックで攻撃権を奪うなど、キヤノンの猛攻を防ぎ続けるアークス。
迎えた後半27分でした。
スクラムのたびにめくれてしまう芝環境ながら、この日安定していたマイボールスクラムから右展開。するとボールを受けたSO小倉が、防御背後へグラバーキック。
キックをチェイスしたのは途中出場のCTBシェーン・ゲイツ。ドリブルを加えてボールをインゴールへ進めると、相手との競争に競り勝って片腕一本でグラウンディング!
TMO判定の結果トライが認められ、この日両チーム通じて初めてのトライ。ゴールキックは失敗もスコアで逆転し、後半27分でようやくリードを奪います。8-3。
【選手入替/後半 28分】PR上田竜太郎→庵奥翔太/HO三浦嶺→須藤拓輝/PR三宮累→小野慎介/FL栗原大介→ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ/CTBブラッキン・カラウリアヘンリー→マックス・ウッドワード
逆転を狙うキヤノンは再三にわたりWTBサウマキにボールを託しますが、WTB鶴田が果敢なタックルを続け、後半30分には3人がかり(WTB鶴田、CTB石橋、マックス・ウッドワード)で右タッチラインへ押し出します。
その後もエリア外側のブレイクダウンでボールを失うなど、キヤノンの攻撃を浴びる立場となったアークスですが、WTB小泉のカウンターラックからノックオンを誘うなど好守を続けます。
【選手交替/後半 39分】PR須藤拓輝→三浦嶺
試合時間が少なくなり、自陣から攻めるしかなくなったキヤノンに対してアークスは奮闘を続け、ついに相手が根負けしてノックオン。
最後はボールをキープし、80分のブザーが鳴ったところでSO小倉がタッチへ蹴り出しノーサイド。アタックに課題を抱えながらも、果敢なディフェンスを披露したアークスが価値ある粘り勝ちを披露しました。
マン・オブ・ザ・マッチにはSO小倉順平が選出。
勝利したアークスは今季6勝目を挙げ、今季通算成績は6勝1分4敗(総勝ち点29)となりました。順位はレッドカンファレンスの5位で変わりません。
次戦の第12節は12月16日(土)、愛知・パロマ瑞穂ラグビー場で、レッドカンファレンス2位のトヨタ自動車ヴェルブリッツと対戦します。
目の前の一戦に集中して勝利を掴むことはできるか――。アークスの今季の積み重ね、成長を見せる時がいよいよやってきました。