平野 敏行Toshiyuki Hirano

プラットフォーム/ネットワーク
グローバルデータスペース

Toshiyuki Hirano

平野 敏行

多種多様な企業が安心・安全にデータをやり取りできる、分散型の新しい仕組み「データスペース」のサービス開発に取り組んでいます。この先進的なテクノロジーの魅力を、より多くの方にわかりやすく伝えていきたいと考えています。

社会・産業課題を解決するために、国境を越えた自由なデータ流通・利活用を加速させることを目指して、積極的に情報発信を行っていきます。

平野 敏行

経歴

1985年生まれ、埼玉県出身。2011年にNTTコミュニケーションズ株式会社(現 NTTドコモビジネス株式会社、以下 NTTドコモビジネス)に入社。入社以来、ソリューションサービス部やイギリスの現地法人でグローバル案件のプロジェクトマネージャー業務を担当。2024年からスマートインダストリー推進室に所属し、分散型データ連携基盤(データスペース)やトラスト基盤に係るサービスの企画・開発や実証実験などを推進。

趣味は、読書、料理、ロードバイク。

活動履歴

主な所属団体
  • International Data Spaces Association (IDSA) Telco CommunityおよびIDSA Japan Hub
  • Catena-X Internationalization Committee Japan Workbench
  • ロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会 (RRI)
  • International Open Forum on Data Society (IOFDS)
  • Virtual Engineering Community (VEC)
主な講演活動
  • Virtual Engineering Community(VEC)協賛セミナー
  • IPA 国内外デジタル化動向を踏まえたデジタルエコシステムの在り方に関する検討会
  • (一社)日本機械工業連合会 グローバル・バリューチェーン研究委員会
  • One NTT Data Summit in Thailand
  • 東京国際大学 講義「サプライチェーンアナリティクス実践」
過去のメディア対応実績
  • ウラノス・エコシステムに商機あり SIerやソフト開発、通信キャリアが積極関与 (週刊BCN )

インタビュー

  • 01

    エバンジェリストとしての得意分野とミッション

    私の得意分野は、「グローバルデータスペース」という分散型のデータ連携基盤です。この仕組みを用いると、多種多様な企業間で国境を越えて安心・安全・効率的にデータをやり取りできます。

    NTTドコモビジネスのグローバル事業拡大期に入社し、香港の現地法人でのトレイニー経験を皮切りに、ソリューションサービス部やイギリスの現地法人でグローバル案件の提案・構築に携わるなど、キャリアの大半を、法人向けグローバル案件のプロジェクトマネージャーとして歩んできました。ある公共セクターのお客さま案件では、南スーダンやパレスチナといった紛争地域の拠点にネットワークを構築したことがあります。これはお客さまや当社にとって前例のない案件でした。途上国の新規拠点開設に向けたIT導入計画を立て、現地パートナーベンダーをゼロから探して契約するといった経験は、現在の業務にも大いに役立っています。

    こうした経験を通じて、「テクノロジーによる社会課題の解決」と「日本の優れたサービスのグローバル展開」を将来のキャリアの軸にしようと考えるようになりました。そんな思いを抱いていたイギリス駐在時代、当社エバンジェリスト(境野哲さん)の講演を聴いて「データスペース」というテーマに興味を抱き、欧州のお客さまに技術トレンドとして紹介する活動を始めました。この活動が現在の部署(スマートインダストリー推進室)につながり、かつて感銘を受けた構想(Gaia-X*1など)をサービスとして形にしようと、全力で事業化に取り組んでいます。

    *1 Gaia-X:特定のITプラットフォーマーに依存しない、安全で信頼性の高いデータインフラ(データスペース)を構築するための欧州の構想。企業や個人が自らのデータを管理・コントロールできる「データ主権」の確立をめざしている。

    私の強みは、小さな「芽」からサービスを構想し、具体的な形にする力です。未踏領域においても、現状を分析してゼロから課題を設定し、実現可能な計画へと落とし込みます。この一連のプロセスを、これまで培ってきたプロジェクトマネジメントスキルとグローバルな経験を生かして推進できるのが、私の価値だと考えています。

    エバンジェリストとしては、「市場の創造」と「サービスの創出」を両輪に、企業の垣根を越えたデータ連携を加速させ、社会・産業全体の課題解決をめざしていきます。データスペースの価値と可能性を分かりやすく解説し、産業界・政官界の賛同者を一人でも多く獲得して企業間データ連携の市場を活性化していくことや、データスペースを誰もが簡単に利用できるサービスをつくり、世の中に広めていきたいと考えています。

  • 02

    これまでの活動を代表するプロジェクト

    私の代表的なプロジェクトは、現在もワーキンググループのリーダーとして推進している、グローバルデータスペースのサービス化です。

    これまで私たちのチームは、将来のサービス化を見据え、2つの軸で活動を進めてきました。一つは、セミナー開催やお客さまとの実証実験(PoC)を通じた市場の開拓と啓発。もう一つは、海外パートナーとの協業による提供能力の拡張です。

    5年前はコンセプトレベルにとどまっていたデータスペースですが、現在は欧州を中心に社会実装が進み、かつての地道な活動が実を結びつつあります。最近では「欧州の取引先からデータスペース接続を求められたが、どうすればよいか」といった具体的なご相談がお客さまから寄せられるようになりました。

    こうした機運を好機と捉え、私たちはこれまでのPoCの知見を集約し、サービス仕様やプロセスの整備、さらに、実際のデータ連携の操作をお客さまにデモ展示できるプロトタイプの開発などを進め、2025年度内にサービス提供を開始したいと考えています。

    データスペースを活用した企業間データ連携は、社会・産業、特に製造業の在り方を根底から変える力を持っています。その最大の理由は、これまで人手を介して手間の掛かっていたデータのやり取りを、「マシン同士が自律的に行う」からです。これを実現するのが、データスペースが持つ以下3つの特長です。

    ① 分散型トラスト:デジタル証明書を用いることで、マシンを含む利用者同士が安全かつ確実に相手を信頼し、1対1でデータを連携できます
    ② 相互運用性:異なる企業の異なるシステム同士が、共通の通信手順・データ形式でスムーズに連携できます
    ③ 機械可読性:マシンやAIがデータを直接理解し、自律的に処理できるようになります

    これらの特長を組み合わせることで、物理空間とサイバー空間が高度に融合した、データドリブンな製造業が実現します。そして、製造業が抱える「グローバルなサプライチェーン管理」「サステナビリティ」「人手不足」「モノ売りからサービス化への転換」といった課題を、一挙に解決へと導きます。

  • 03

    NTTドコモビジネスと共に描く未来

    今、世界中でビジネスの役割が歴史的な転換点を迎えていると思います。かつての「モノを大量生産して豊かになる」というモデルから、「テクノロジーで社会・産業課題を解決する」ことへ、ビジネスの使命そのものが変わっていくと私は確信しています。

    当社は通信事業者として創業し、そのDNAを受け継ぎながら、クラウドやIoTを駆使してあらゆるデータをつなぎ、価値を生み出す企業へと進化しています。この強みを生かし、データドリブンな新しい産業社会づくりを牽引(けんいん)できると考えています。

    とりわけ、データスペースという新しい技術に大きな可能性を感じています。この技術の持つ力を皆が享受できるような良いサービスをつくり、普及させることで、より良い未来の実現に貢献していきます。

    その使命を果たす上で、エバンジェリストとして目標とする人物がいます。アメリカの天文学者であり、SF作家でもあるカール・セーガン*2です。彼は難解な科学を分かりやすく魅力的なストーリーで解説する天才であり、また、科学技術の負の側面(環境破壊や核兵器など)にも警鐘を鳴らしつつ、人類が理性を正しく用いた先の、明るい未来を語る優れたビジョナリーでもありました。

    私も彼のように、データスペースという複雑な技術を、誰もが理解できるストーリーとして語り、それがいかに社会・産業課題を解決するかの道筋を示したいと思います。そして、技術が浸透した先にある、豊かで持続可能な世界のビジョンを描き出すことで、一人でも多くの賛同者を得たいと思っています。

    *2 カール・セーガン(1934~1996年):アメリカの天文学者・作家・SF作家。NASAにおける惑星探査計画をリード。一般向けの科学書やSF小説の執筆でも知られる。映画「コンタクト」の原作者。

※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職などは取材時点のものを掲載しております。