Our Value

NTT Comの技術戦略とIOWN構想の概要

未来のICTを実現するNTT Comの技術戦略とIOWN構想

現在の生活にインターネットは欠かせないものです。その中で4Gから5Gへ通信規格が進化するなど、私たちの身の回りのICT技術は進化しています。一方で、ICT技術の進化により、世界のデータ通信量は2010年から2025年で90倍、電力消費量は2006年から2050年で12倍になるという推計が出ています。(

既存技術のままでは、通信量や消費電力などの面で数年後には限界が訪れてしまいます。
こうした課題解決のため、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)ではインターネットの飛躍的な発展をもたらすIOWN (Innovative Optical and Wireless Network)構想の実現に向けた取り組みを行なっています。

IOWN構想では、日本電信電話株式会社(以下、NTT)が発明した「光電融合技術」を用いることで大容量、低遅延、低消費電力を兼ね備えた革新的なネットワーク基盤・情報処理基盤の構築を目指しており、現在次の3つの技術的な要素から構成されています。

1つめが、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入した「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」、2つめは、あらゆるものをつなぎ、その制御を実現する「コグニティブ・ファウンデーション®(Cognitive Foundation®)」、そして3つめは、実世界とデジタル世界の掛け合わせによる未来予測などを実現する「デジタルツインコンピューティング(Digital Twin Computing®)」です。

NTT Comの技術戦略では、①NTT研究所の技術と連携した既存事業の技術優位性の拡大、②技術マーケティング活動による先進技術の既存事業への隣接化および新規事業への誘導を軸とした活動を目指しており、IOWN構想実現に向け、これらの3つの技術要素の展開に取り組んでいきます。

さらに、量子暗号などの次世代技術を活用し安心・安全なIOWN構想の社会実装を目指していきます。将来実用的な量子コンピュータが普及しても安心してデータ流通が行えるよう、量子鍵配送(QKD:Quantum Key Distribution)や耐量子計算機暗号(PQC:Post-Quantum Cryptography)とIOWNの技術要素を組み合わせた検証を行っています。

「IOWN®」、「Cognitive Foundation ®(コグニティブ・ファウンデーション®)」、「Cradio®(クレイディオ)」、「デジタルツインコンピューティング(Digital Twin Computing®)」は日本電信電話株式会社の商標または登録商標です。

)出典
https://www.rd.ntt/iown/0001.html

Our Future

IOWN構想がもたらす未来の社会像

山下達也

NTTコミュニケーションズ㈱イノベーションセンター 副センター長/テクノロジー部門長/IOWN推進室長

NTTコミュニケーションズ株式会社に入社後、先端IPアーキテクチャセンタ所長、技術開発部長を経て、現在イノベーションセンター副センター長/テクノロジー部門長/IOWN推進室長。Interop Tokyoプログラム委員、IPv6普及・高度化推進協議会理事、沖縄オープンラボラトリ理事、サイバー関西プロジェクト 幹事、高度ITアーキテクト育成協議会(AITAC)副理事長なども務める。

現在、インターネットの活用が急速に普及し、より大容量なデータを、より速く届けることが求められています。しかしそれを実現するには、今のインフラ環境ではいずれ限界が来てしまいます。そこでインフラ環境自体を刷新し、よりよい通信環境を整えようとしているのが、NTTの掲げるIOWN 構想です。

IOWNの起源は、NTTが発明した2019年4月に発表した世界最小の消費エネルギーで動く光トランジスタですが、この光デバイスの開発はさらに発展し、2020年には、世界初の超高速と低消費電力を両立した全光スイッチ、世界初の光の干渉だけで任意の論理演算ができる超高速光論理ゲート、世界最高速の帯域100GHzを超える直接変調レーザなどの発明を成し遂げ、光技術の可能性を格段に広げることができました。そして、今後、光の演算処理をチップの中に内蔵する「光電融合型プロセッサー」を実現することを目指しています。

Our Challenge

NTT ComのIOWN構想の取り組み

Challenge 01

1コグニティブ・ファウンデーション®(CF:Cognitive Foundation®

神崎誠

  • プラットフォームサービス本部 マネージド&セキュリティサービス部 マネージドサービス部門
  • イノベーションセンター IOWN推進室(兼務)
  • データプラットフォームサービス部 5G・loTタスクフォース(兼務)
  • 担当課長
  • マネージドサービスの企画・開発に従事
  • Cognitive Foundation®構想の立案に参画

コグニティブ・ファウンデーション®(CF)とは、クラウドやネットワークサービスに加え、ユーザーのICTリソースを含めた配備や構成の最適化、つまり構築・設定および管理・運用を、一元的に実施する構想です。この構想実現のため、NTT Comでは以下の取り組みを行なっています。

マルチオーケストレーター(MO)機能群のさらなる充実・高度化

マルチオーケストレーター(以下MO)とは、ICTリソースの配備や構成を最適化し、自動化・自律化するための機能群の総称です。
ワークフローエンジンやICTリソースごとの適したコマンド変換を担う「オーケストレーション機能群」、監視や構成管理などを担う「マネジメント機能群」、そして機械学習や統計分析などの機能を担う「インテリジェント機能群」。このように1つのソフトウェアではなく、各機能の組み合わせを可能にすることで、MOの適用領域を柔軟に考えられるようにしています。

これまで、アプリケーションやソリューションを動かすには、ICTリソースへの配備や構成について、複雑な最適化作業が必要でした。しかしMO機能があれば、こうした個々の配備に労力を割くことなく、ICTリソースを一元管理できるようになります。

Cradio®(クレイディオ)開発

MO機能群の中の「インテリジェント機能群」で使用する技術として、NTT研究所が研究開発している「マルチ無線プロアクティブ制御技術・Cradio®」を基にし、サービス高度化をNTT研究所と共同で進めています。これは、無線環境の調査や設計、維持などを最適化するものです。
Cradio®技術により、これまで知見やノウハウを有したものが対応した無線のアクセスポイントの設計や導入後のオフィスや工場のレイアウト変更による無線品質の影響を事前にシミュレーションすることも可能になります。これは、無線に精通したNTTグループだからこそ開発できた技術です。

IOWN構想アーキテクチャ

Challenge 02

2オールフォトニクス・ネットワーク(APN)

鈴木繁成

  • イノベーションセンター IOWN推進室
  • チームリーダー
  • APN検証に従事

オールフォトニクス・ネットワーク(APN)とは、ネットワークから端末まで、すべてにフォトニクス(光)ベースの技術を導入し、これにより現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難な、圧倒的な低消費電力、高品質・大容量、低遅延の伝送を実現するものです。この実現に向けてNTT Comでは以下の取り組みを行っています。

APN検証

APNの技術開発を進めるにあたって、その実験や検証をする場は欠かせません。そこで、NTT Comでは、NTT Comのオフィス、データセンターなど複数拠点を光ファイバーで接続したAPNのフィールド検証環境を構築し、非圧縮8K映像伝送、メタバースなどのユースケース検証、APNを制御するためのソフトウェア(APNコントローラー)やFlexible Bridge(APN-T)であるWhitebox Transponderの検証など、NTT研究所とも連携して行っています。これにより、ビジネス導入に向けた迅速な課題の抽出・解決を図っていきます。

APN検証

Whiteboxデバイス技術開発

Whiteboxデバイスとは、ハードウェア・NOS(Network Operating System)に関して自由に組み合わせられるアーキテクチャのデバイスであり、APNの実現に必要な技術要素の1つと考えています。NTT Comでは、テレコムインフラのオープン化コミュニティーであるTIP(Telecom Infra Project)に参画し、Whitebox Transponderの技術開発を進めており、2023年にはTIPコミュニティ初となるWhitebox TransponderのSilver Badge認定(技術的に使用可能と判断)を行いました。今後もGold Badge認定(フィールドで使用可能と判断)を行う等の技術開発を進めていきます。

Challenge 03

3IOWN Global Forumでの活動

張笑誠

  • イノベーションセンター IOWN推進室
  • APN検証に従事
  • オーブンコミュニティ活動参画
  • ・Telecom Infra ProjectのOpen Optical & Packet Transport
  • ・IOWN Global ForumのOpen APN Task Force

渡邉理恵

  • イノベーションセンター 技術戦略部門
    IOWN推進室(兼務)
  • オープンコミュニティー活動参画(IOWN Global
    Forumのユースケース検討チーム)

2020年1月、日本電信電話株式会社は、インテルコーポレーション、ソニー株式会社と、IOWN構想の実現と普及をさまざまな分野のパートナーと一緒に目指す団体として、IOWN Global Forumを立ち上げました。2021年9月現在、IOWN Global Forumは、70を超えるパートナー企業や大学などに参画いただいています。

NTT Comでは、現在IOWN Global Forumに参加し、APN実現を推進するためのOpen APNの仕様検討、IOWN構想におけるユースケース検討の活動に参加しています。
Open APN の仕様検討ではこれまで培ってきたネットワークサービスに関する豊富なノウハウを生かし、APNにおける検証・成果の展開を担っています。現在、Open APN関連技術の有識者とともにネットワークアーキテクチャと技術仕様に関する議論を定期的に行い、2023年に公開したOpen APNアーキテクチャドキュメントV2に貢献しました。また、Open APNの技術開発を進めるために2022年からPoC(Proof of Concept)検証にも参加し、その成果をコミュニティに共有しました。今後も継続してドキュメント作成、PoC等の活動に積極的に参加していきます。

IOWN構想におけるユースケース検討では、現在はユースケースの情報収集が主目的ですが、今後はユースケースの検討にもチャレンジしていきたいと思います。

また、今後IOWN構想を広く知っていただくための活動も実施していく予定でおります。ぜひ多くの方にご覧いただきたいと思っています。

IOWN Global Forumについて詳しくはこちら

※外部サイトへリンクします

 Challenge 04

4セキュア光トランスポートネットワーク

森岡康高

  • イノベーションセンター 技術戦略部門
  • 主査
  • 量子技術(現在は主に量子コンピュータと量子暗号)を軸にした先進技術の開拓や検証に従事
  • クラウドシステムのオペレーションやソフトウェア開発経験から既存事業の技術優位性の拡大に参画

セキュア光トランスポートネットワークとは、耐量子計算機暗号(PQC)を利用した鍵交換アルゴリズムや量子鍵配送(QKD)装置で生成された2拠点間の共通鍵を用いて、APN上に流れるデータを暗号化し量子コンピュータに対しても安全なセキュリティを持つ拠点間の通信・伝送を実現するものです。1つの鍵交換アルゴリズムで生成された共通鍵を供給するだけではなく、異なる鍵交換アルゴリズムで生成された共通鍵を合成することも可能です。さらに、 鍵交換装置から光伝送装置までの区間の鍵配送においても、PQCによる共通鍵の秘匿化を行うことで、End-Endでの安心・安全な通信を実現しています。この実現に向けてNTT Comでは以下の取り組みを行っています。

セキュア光トランスポートネットワークを用いた非圧縮8k映像伝送の検証

NTTComでは、未来へのインスピレーションの創発を促すOPEN HUB Park*との連携によるIOWN構想実現に向けた取り組みの1つとして、セキュア光トランスポートネットワークを活用した非圧縮8k映像伝送技術の実証をNTT研究所および東芝デジタルソリューションズ株式会社と連携して実施しました。これにより、IOWN構想による次世代ネットワークの普及が見込まれる2030年の量子コンピューター時代の安全性に対する課題解決の提供を目指します。

日本電信電話株式会社ニュースリリース:次世代の高安全な暗号技術を適用した光トランスポートネットワーク技術を開発~IOWNを支える高安全・大容量・低遅延な光伝送の実現へ~

耐量子セキュリティを有する大容量・低遅延の光伝送システム

* OPEN HUB Parkは、新たなビジネス創出の場、最先端技術を備えたワークプレイスとして2022年2月に開設。

** xKDとは、QKDやPQCを使った鍵交換の総称として使用しています。またxKDクライアントとは、光伝送装置がQKD装置またはPQC装置から暗号鍵を取得して設定・利用するソフトウェア機能です。
*** VideoPIUとは、長距離伝送用の光伝送装置に対して、SMPTE ST 2110による非圧縮映像伝送機能を付加するプラグインユニットです。

Post Quantum Cryptographyによる鍵交換アルゴリズムを用いたVM間通信暗号化の検証

セキュア光トランスポートネットワークの鍵交換アルゴリズム(Post Quantum Cryptographyを利用)をクラウド上に構築し、VM間の通信を暗号化する検証を実施しました。これにより、IOWNのAPN区間だけではなくEND – END間の通信においても量子コンピュータに解読出来ない、安心安全な通信の実現を目指します。

NTT技術ジャーナル:量子コンピュータ時代を見据えたセキュア光トランスポートネットワーク技術

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