2022年ダイアログ

私たちは、さまざまなステークホルダーとの対話の機会を設け、コミュニケーションを深めるべくダイアログを実施しています。
ダイアログ一覧はこちらをご覧ください。

社員それぞれによるコーポレートシチズンシップの推進
~サステナビリティ経営時代の「社会に応える」企業グループを目指して~

NTT コミュニケーションズは、自らの強みを活かした ICT ソリューションの提供を通じて、サステナブルな未来の実現を目指しています。その指針となる「サステナビリティ基本方針」に基づく重点領域「社会」には、「コーポレートシチズンシップの推進」を重点活動項目の 1 つとして掲げています。
これまでさまざまな形での社会貢献活動に取り組んできた NTT コミュニケーションズですが、コロナ禍をきっかけとしたフレキシブル&ハイブリッドワークの積極的な導入を背景に、自社における社会貢献活動のあり方にも変化が必要であると捉えており、その手段の 1 つとして、業務を通じて得たスキルや経験を活かすプロボノ活動への取り組みをスタートさせました。今回のダイアログでは、企業と連携したプロボノ活動で多くの実績を持つ認定 NPO 法人サービスグラント代表理事・嵯峨さまをお招きし、今後いかにして社員それぞれのコーポレートシチズンシップを推進し、会社全体の「社会に応える」力へと変えていくべきなのか、役員やプロボノ経験を持つ社員を交えて対話しました。

参加者

参加者

エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズグループ:4名

  • 認定NPO法人 サービスグラント代表理事 嵯峨 生馬 氏

    認定NPO法人
    サービスグラント代表理事
    嵯峨 生馬 氏

  • ビジネスソリューション本部 第三ビジネスソリューション部 CSR委員長 和田 薫

    ビジネスソリューション本部
    第三ビジネスソリューション部
    和田 薫

  • デジタル改革推進部 山本 達也

    デジタル改革推進部
    山本 達也

  • NTTコム エンジニアリング株式会社 山口 博史

    NTTコム エンジニアリング株式会社
    山口 博史

  • 常務執行役員・CSR委員長 安藤 友裕

    常務執行役員・CSR委員長
    安藤 友裕

プロボノとは

プロボノとは、「公共善のために」を意味するラテン語「Pro Bono Publico」を語源とする言葉で、社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや専門知識を無償で提供する社会貢献活動であり、法曹界をはじめ幅広い分野で広がりを見せています。日本においても2010年頃より、企業がサステナビリティ戦略の一環として取り入れる事例が増えており、社会課題を抱えるNPOとプロボノを結び付けるマッチングサービスが普及しつつあります。2022年10月から2023年1月にかけて、NTTドコモグループが認定NPO法人サービスグラントと行ったプロボノプロジェクトには、NTTコミュニケーションズグループの社員9名が参加しました。

社員の課題解決能力を育むプロボノ
嵯峨 生馬 氏
嵯峨
本日はお招きいただきありがとうございます。私は2005年よりプロボノ活動の推進に取り組む認定NPO法人サービスグラントの代表を務めています。立上げ当時はまだ「プロボノ」という言葉自体がほとんど知られていない状況でしたが、近年の企業のCSRやサステナビリティ活動の高まりと相まって、少しずつ認知度が高まり、プロボノ活動自体も広がりを見せているところです。また2022年12月、経団連が改訂した企業行動憲章の実行の手引きにおいて、「従業員の社会参加」が非常に重要なテーマとして挙げられており、プロボノはその選択肢の1つとしてますます注目が高まりそうな機運も感じています。NTTコミュニケーションズグループにおかれましても、サステナビリティの推進に向けて有望な取り組みになろうかと思いますので、そのあたりを本日はぜひご一緒に掘り下げていきたいなと考えています。
安藤
本日は貴重な機会を賜りまして、誠にありがとうございます。まずは、私たちのサステナビリティ推進に向けた取り組みなどについて説明させていただければと思います。ご案内のとおり、今日、深刻化する気候変動問題をはじめとした、地球規模でのさまざまな課題やリスクへの対応は、持続可能な社会や地球環境を次の世代へ、そしてその先の未来へつないでいく上で、一層喫緊となっており、今を生きる私たち一人ひとりの行動と共に、特に影響の大きい企業部門の活動が果たすべき役割はますます重要となり、重くなってきているところです。私どもNTTコミュニケーションズグループでは、こうしたSDGs・ESGをめぐる国内外の動向やそれらに伴う企業活動に対する社会的要請や期待の高まりなどを踏まえ、2021年5月、これらの動きに、より事業と直結した形で積極的に対応すべく、新たにサステナビリティ基本方針を策定しました。この基本方針においては、「社会」「環境」「人材」「ガバナンス」をサステナブルな未来の実現に向けた重点領域とし、それぞれに重点活動項目(マテリアリティ)を設けています。また、この基本方針は、私たちの「企業理念」「信条」のもと、「サステナブルな未来の実現」を目指し、私たち一人ひとりが、「自らはじめ」「共に高め」、事業ビジョンの推進や日々の業務・事業活動などを通じて、「社会に応えて」自分らしく活躍していくことをその取り組みのベースに置いたものとなっており、こうした点を大切にして推進してきているところでもあります。そして、その一環として、コーポレートシチズンシップを重点活動項目、マテリアリティの1つとして掲げ、企業市民として社会に貢献する活動を進める中で、私たち一人ひとりが、「社会に応える」とはどういうことなのか、さまざまな観点から、考え、学び、体感し、そして、それらを自らのものとして、新たな視点で日々の業務や事業活動、CSVの推進に活かしていけるような、そうした機会を求めてきたところです。本日のダイアログのテーマであるプロボノは、こうした取り組みの推進に大きく関わるところであると考えています。本日のダイアログにはサービスグラントさまのご支援のもと、2022年10月から2023年1月にかけて実際にプロボノプロジェクトを体験した弊社グループの社員3名も参加しています。参加された方々からの経験談などを踏まえつつ、今後に向けた有意義な意見交換となることを期待しています。
嵯峨
昔話のようですが、社会貢献はビジネスとは別物であり、事業とは切り離して考えるべきだ、という考え方は、以前はごく普通でした。しかしながら近年に至って、企業自体が社会課題解決に真正面から向き合っていくものという考え方が極めて一般的になり、しかもそうしたことを、企業のトップが率先して発信するようになりました。
こうなると、少し前まで企業のCSRや社会貢献活動というものは、社会貢献部やCSR推進室といった担当部署が行うものという風潮があったかと思いますが、今はそうはいきません。一人ひとりの社員も何らかの社会性を身に付けることが、ビジネスパーソンとしての基本要件になりつつあると言って過言ではないと思います。今「社会のために何かやらなければ」と考えている社員は決して少なくありません。いわゆるZ世代は特に社会貢献活動に関心が強く、会社にしがみついているだけでは、自分自身の成長も社員としての将来も保証されない――そんな風に考えている人が増えてきています。かつては本業に集中できなくなるからといった理由で、プロボノやボランティアが悪者扱いされる風潮もあったのです。しかし今、事業とサステナビリティを結び付け、社会課題の解決に活かすことが経営戦略上求められるようになってきました。プロボノのよいところは、本業をやりながら、本業で身に付けたことを活かしながら活動できるところです。週に数時間でも、自らの経験やスキルを活かして直接的に社会に関わることができます。会社としても、「社会のためになりたい」「会社の外の意見に触れて成長したい」といった社員の要望に応える場を作る必要が出てきている中で、その現実的かつ具体的な手段の1つとしてプロボノが選ばれる時代になってきているように感じます。
プロボノを通じ、社会に貢献できる喜びを実感
和田
私は2022年10月から今年1月にかけての約3カ月間、ここにいる3名を含めた9名でNTTコミュニケーションズグループの社員という形で初めてプロボノ活動に参加しました。支援させていただいたのは一般社団法人4Heartsで、神奈川県茅ヶ崎市を中心に聴覚障がい者の方々が抱えるさまざまな社会問題の解決に尽力されています。4Heartsは「スローコミュニケーション」という、日常生活の中において聴覚障がい者に接することのみならず、言語の違う方々やお年寄り、LGBTQなどコミュニケーションバリアが起きやすい場面でも、余裕をもって相手の立場を考えたコミュニケーションができる人を増やしていくことで、
和田 薫
今よりもっと暮らしやすい世界を作っていこうという考え方を提唱しています。活動は地元におけるワークショップなどのイベント開催、学校での講演が主になりますが、このコンセプトを今後世の中にいっそう広げていこうという中で、どこかで利益を得られるような仕組みを作らねばならないという課題を抱えています。 そのための方策としてB to C企業へのコンサルティングや研修の実現に向けた調査、サービスの検討、体制の確立などがテーマとなっていましたが、そのアプローチ方法についてプロボノ参加者との協働を通じて検討できないかと模索されており、そのお手伝いを我々がさせていただきました。実際の支援内容としては、B to C企業のニーズ調査から具体的な提案内容の検討、今後のステップの具体化などを行いました。その際、グループ企業やドコモショップをニーズ調査の対象として活動し、事業化に向けた具体的なプランを提示するなど、私たちのスキルやリソースを活かしたサポートができました。2023年1月に、3カ月間の活動の成果として提案書を提出すると、こちらで思っていた以上に喜ばれ、実際の企業へのアプローチにご活用いただいたというご報告もいただいています。
山本
プロボノプロジェクトに参加して、4HeartsをはじめとするNPOが向き合う社会課題の奥深さ、同時にその解決に向けた熱量やエネルギーの強さというものを改めて感じました。今回、プロボノに参加したきっかけとして、何かしらの形で社会に貢献したいという思いがあったわけですが、直接的に貢献するのはNPOであって、我々はその一歩手前での貢献になるということに、若干物足りない思いがあったのも事実です。しかしながら、実際に私たちの提案が非常にタイムリーだったと喜ばれたこともあり、今回、プロボノ活動を通じて社会課題の解決に微力ながら貢献できたという実感と喜びがわきました。
山口
私も活動を通じて、聴覚障がいを抱える方々のリアルな困難など、これまで強く意識してこなかった社会課題に対する学びが多くありました。障がい者の方々が社会に合わせて生活しているという事実に違和感を覚えましたし、誰もが生きやすい社会を作っていくという強い思いと行動の重要性を学んだように思います。街中で白杖をついている人を見かけた際に声をかけるといった行動を自分が取るようになったことは、明らかにプロボノに参加したことによる変化だと思います。
一方的な支援ではなく、双方向での学びがある
嵯峨
プロボノは普段の業務では交わらない人同士でチームを組み、本業の延長では出会いそうもない団体と協働するわけですから、他流試合や越境学習そのものです。昨今、企業においても既存の事業活動にいかにイノベーションを取り込んでいくのかといったことが非常に重要なテーマになっており、プロボノを通じて他流試合、越境学習ができる場を意識的に作っていくということが、1つの解決策になっていく気がします。また今回、ダイアログに参加された皆さんのお話を聞いていて、支援先の団体から得た気づきも大きかったのではないかと感じます。
山本 達也
プロボノに参加する皆さんのような大企業に勤める方々はビジネス上の高いスキルを持っていますが、一方でNPOは特定の社会課題に関する専門家でもあります。つまりプロボノとは、一方的な支援、ボランティアなどではなく、双方向での学びや気づき、対話へと誘い、それぞれにとってのナレッジを生み出す機会と捉えることができるのです。そもそも、そういう部分がないと、プロボノ参加者にとっても大きな満足感ややりがいは生まれてこないのではないでしょうか。私自身は、こうした活動の蓄積が会社組織における財産になっていく可能性があると考えています。
山本
課題解決に向けたスキルの提供という意味では、5人それぞれの得意をうまく組み合わせて貢献できたという実感があります。自分としては参加にあたっては力試しをしたいという思いがあったのですが、皆で力を合わせて取り組んでいくうちにチームのためにやり切りたいという気持ちが生まれました。プロボノはより若いうちに経験できると、よりよい体験になるような印象を受けました。
山口
もともとは一方的な支援をイメージしていましたが、嵯峨さんがおっしゃる通り、活動を通じてお互いが学びながら支え合っているという実感がありました。双方向での学びというところにプロボノの魅力や意義を感じます。
和田
同じグループの社員同士とはいえ、初めて出会った業務上でつながりのないメンバーと、3カ月にわたり一緒に同じ課題に取り組んだことは得難い経験でした。正直なところ、上司やリーダーがいないという通常業務とは異なる状況で行ったチームビルディングには戸惑いも多かったですが、終わってみれば互いに学び合うことの多い時間だったと思っています。本業が忙しい時は苦しいこともありましたが、それでも週1、2くらいで定期的にミーティグを重ね、徐々にチームとして形になっていったと思います。業務の合間に行うプロボノには給料が発生しませんし、本当に役に立ちたいというモチベーション、熱量がないとやり切るのは厳しいと思います。
山本
嵯峨さんは「本業をやりながら」と仰っていましたが、実際にはどちらも同時にやらないとならないこともあり、体力的にも厳しかったです。特に成果物をどう形にするかというところで悩み、途中ネガティブな気持ちも生まれましたが、最善を尽くそうというメンバーに助けられ、何とかやり遂げることができました。このように自身に足りないところを把握できたことも、プロボノ活動からの大きな収穫でした。
山口
自分にとってプロボノは「越境学習」の意味合いが強く、大きな知見を得た有意義な経験になったと感じます。集まったメンバーは、異なる専門性やスキルを持っており、さまざまな場面で頼りになると同時に多くの気づきを与えてくれました。また私の普段の業務では、お客さまの声を肌で感じる機会はないのですが、このプロボノにはそれがありました。プロボノを通じてパラレルキャリアの経験、意識を得る機会になることは、参加者にとってのメリットが大きいのではないでしょうか。
プロボノの輪を広げていく
山本
今回のプロボノプロジェクトの参加者は自ら率先してエントリーし、参加に至ったたわけですが、今後社内にプロボノの輪を広げていこうと考えた場合は、「ちょっと興味がある」「時期をおいて参加したい」といった人を積極的に引き入れていくような工夫が必要だと感じました。例えば、事前登録の仕組みを作り、登録者には先んじて情報を提供するといったことも考えられます。
山口 博史

和田私の周りにも「プロボノやっています」と言うと、興味を持ってくれる人はたくさんいました。具体的な活動の状況などをより多くの人に伝える手段、機会などについては検討する価値があるように思います。

山口「参加したいけれど、忙しくて本業以外のことをやる余裕がない」という声も聞きました。例えば、短期間でのプロボノ参加といった選択肢を用意することで、今後の活動の活発化につながる可能性もあるのではないでしょうか。サービスグラントさんでは「プロボノ1DAYチャレンジ」といった企画も催されていましたし、まずはそうした参加者への負担感を極力減らした企画を通じてすそ野を広げていくことも必要かもしれません。

山本
まだまだ「プロボノ」という言葉自体が社内に浸透しておらず、なかなか興味を持つに至らないことはあると思います。また「プロ」から「プロフェッショナル」を連想してしまい、及び腰になってしまうこともあるようです。そこで提案ですが、「プロボノ」に社内向けの愛称を付けてみるのはいかがでしょう。例えば、「皆援隊プロジェクト(仮)はNTTドコモグループのプロボノプロジェクトです」といった形で社内に広報することで、よりその趣旨が印象を持って伝わりやすくなるのではないでしょうか。一方でプロボノ支援実績の社内発信などは、これまで以上にやっていくべきです。よいこと、甘い言葉だけでなく、大変さや失敗談なども伝えることで、本当に意欲のある人が参加してくれるようになると思います。
和田
今回のプロボノプロジェクトは、参加にあたって業務とは分けて取り組むことが条件になっていました。普段業務で使っているパソコンがプロボノでは使えないのは不便ですし、本来業務とプロボノ活動の線引きのあり方は、多くの社員にとってより参加しやすいものにするという意味では今後の課題だと感じます。
安藤
皆さんの体験談を伺って、社内にはない、別世界の環境のもとで、「自らのビジネススキルを活かしながら」、NPOの皆さまが対峙しておられる社会課題の解決、そのサポートにつながる取り組みについて、その団体の皆さまと双方向で意見交換し、学びあい、具体化に向けてチームビルディングしながら試行錯誤を重ね、成果物を作り上げていくというものであり、そうした中で、社会の課題の深さに肌で触れる機会になった、NPOの方々の解決に向けたエネルギーの強さを肌感覚で感じたといったお話もありましたが、これまで見えてこなかった社会や世界への気付き、あるいは、ものの見方、捉え方が広がる契機となり得るとともに、自分たちのビジネススキルが、色々な世界で「社会」に役立ち、活かせるんだといったようなことを実感できる契機ともなり、そして、先方の皆さまにも喜んでいただけ得る、さまざまな可能性を秘めた機会、取り組みであり、そうしたプロボノ活動における経験は本当に得難いものと感じました。また、日ごろの業務との両立や社内で広めるうえでの発信の形など、実際に取り組まれた方であればこその、示唆に富むご意見や今後に向けた課題、改善に向けたご提案や推進に向けたアイデアも数多くいただきました。大変有難く感じています。今後に向けてステップバイステップになってしまうかもしれませんが、こうした、実際に参加された方々のご意見などを踏まえつつ、よりよいプロボノのあり方を見つけていきたいと思います。
嵯峨
プロボノにおいて、支援先の声にどこまで応えるかというのは非常に難しく、一番の肝になる部分だと思っています。この支援先との事前の合意の取り付けを「スコープ設定」と呼んでいるのですが、ここでボタンを掛け違えてしまうと失敗する可能性がありますし、ここがうまく設定できると非常によい結果を生むことが多いものです。今、ビジネスの現場において、ジョブ型雇用やプロジェクトベースといわれる働き方が増えている中で、プロボノは限られた時間、リソースをいかに活用して、求められる成果を出すかという実践的な力を訓練する場になっていると考えています。少なくとも、次のプロジェクトに関わるときに必ず活かせる経験になるものだと思います。また今回、4Heartsのプロジェクトに参加していただいた皆さんには、本業においても今回の経験を活かせないかどうか、探ってみてはいただけないでしょうか。一度限りの社会課題のプロジェクトではなく、その後も実社会におけるさまざまな場面で思いやアイデアをつないでいくことができれば、プロボノを体験する意味はさらに深まるものと思います。
安藤
プロボノ活動は、企業としての社会貢献につながるということだけではなく、やはり普段の業務の中ではなかなか得られない、さまざまな事柄を実感しつつ体得できる、そしてさらには1つのプロジェクトの一部ということではなく、その全体をチームビルディングしつつ、いろいろと難しい局面もありながら直接やりきることでの達成感、自分への自信、成長にもつながり、ひいては日々の業務におけるさまざまな工夫、新たな取り組みへのチャレンジや、イノベーション、CSVの推進にもつながっていくよい契機になることが期待される点が企業活動における意義として挙げられるのだと改めて感じたところです。NTTコミュニケーションズグループでは、現在、私たちの「信条」そして「サステナビリティ基本方針」の「人材」領域の目指す未来でもあります「多様性に富み、誰もが尊重され、共に高め合い、お客さま、そして「社会に応えて」自分らしく活躍し、成長できる」、こうしたことにつながる多様な機会と環境の一層の充実/広まりに力を入れています。日々の業務・事業活動におけるチーム単位でのその社会的意義(社会への提供価値)を意識した取り組みへのチャレンジの奨励や、さまざまな異業種のお客さまやパートナーの皆さまとの社会課題解決に向けた共創の推進などとともに、貴重な機会となるプロポノ活動にも、今後さらに取り組んでいければ、と思っているところです。多様な機会の中で、社員の方々がこれまでの経験なども踏まえチャレンジしたいと考える機会にトライし、そこで得た知見などを社内での業務や次の機会に活かし、そうした中で、共に高め合いながら自律的にキャリアを形成し、お客さま、そして社会に応えながら、成長していって欲しいです。そして、社員の方々の自律的なキャリア形成、成長が、事業活動におけるさまざまな工夫、新たな取り組みへのチャレンジや、イノベーション、CSVの推進にもつながり、事業の持続的成長、そしてサステナブルな未来につながっていけばと思います。
嵯峨
会社としてプロボノを今後どう盛りあげ、活用していくべきなのかという観点では、意図的にプロボノ経験者のコミュニティを作っていくことをお勧めします。長くプロボノを取り入れている企業などでは、参加者のグループが自然発生的に形成され、あるいはコミュニティ化していき、先輩から後輩へとノウハウを伝承するといった流れができあがってきました。であれば、最初から会社が主導的にプロボノコミュニティを作る働きかけをしていけば、よりスピード感を持ってプロボノが広がる土壌ができあがっていくように思います。プロボノは会社としての新しいサービス、アイテムになる可能性をも秘めていますが、業務命令で社員に参加させることではありません。会社としてプロボノをオフィシャルな活動として位置付けし、「行っておいで」と送り出せる職場であること、そのうえで社員のモチベーションを高める環境づくりを進めることが理想的なあり方だと思います。
プロボノをサステナビリティ推進の1つの軸に
山本
今回のダイアログに参加して改めて強く感じたのは、プロボノはボランティアである必要があるのだろうか、ということです。社員としてはボランティアであろうが、業務扱いであろうが、やるからには一生懸命やるという意気込みで参加するものだと思います。しかし実際のプロボノ活動においては、NTTコミュニケーションズの社員としての立場やリソースを利用できないことに不便を感じた場面が多々あり、それなら会社としてボランティアをすればよいのではと考えたこともありました。また、プロボノの参加者は、活動を通じて自分自身の成長につなげたいという思いがあります。そういう意味では、あまり継続的に同じプロジェクトに関わるよりは、一期一会で期間を区切り、次の募集があれば新たなところに挑戦するといった形の方が、常に新鮮な思いをもって取り組めるように感じます。
山口
今回のダイアログのテーマであり、サステナビリティ重点活動項目の1つである「コーポレートシチズンシップの推進」を実現していくためには、社員一人ひとりが自社における社会貢献活動のあり方を受け止め、それぞれの思いをもって実行する中で、自然な形で活動が広がっていくことが重要だと思います。そうした動きの一環として、この情報発信の機会に携われたことをうれしく思います。本日いただいたさまざまな情報を今後の自らの活動に活かしていきたいです。
和田
今回のプロボノに参加するまで、私はいわゆる社会貢献活動の経験がほぼなかったのですが、どんな形であっても、自分が社会の役に立てたという事実は本当にうれしいことだという実感がありました。実のところ参加の動機としては、社会貢献というより越境学習に興味が偏っていたのですが、 4Heartsの方々と共に活動するうちに、自分のスキルを客観視したり、自分のやりたいことを改めて見つめ直したり、またこれまでの自分になかったモノの見方などを知ることができ、本当に学ぶことがたくさんありました。こうした活動はぜひこれからも広めていってほしいと思います。
嵯峨
皆さんの本音の部分も含め、さまざまなお話を聞けて大変参考になりました。リモートでなければ、このまま一緒に飲みにいきたいくらいです(笑)。この社会で暮らしている限り、何かしらの社会課題の当事者ではない人はいません。高齢化ひとつを取っても、その奥行には相当な数の社会課題が広がっています。本来、ビジネスは市場があって参入するものですが、NPOの場合はニーズがあっても市場がないというのが通常です。今や企業が事業を通じた社会課題の解決を謳う時代ですが、そういう意味では、“社会課題への対応力”を備えた人材は、会社の資産として考えていくべきだと思います。何も社員全員を熱心なボランティアに育て上げようということではなく、1部署に1人くらいはある分野の社会課題に詳しい人や、プロボノを経験した人がいる――そのような環境を作り上げ、さらにはそうした人たちのつながりを活かしたコミュニティができれば、今後のソリューションビジネスにも活かされていくのではないでしょうか。プロボノをサステナビリティ推進の1つの 軸として、ビジネスのあり方を探るための有効な投資としていただければと思います。
安藤 友裕
安藤
本日はさまざまな角度から、貴重な、また示唆に富むお話、ご提案、体験談などをいただき、誠にありがとうございました。「社会に応える」は、私たちの信条であり、お客さまやパートナーの皆さまをはじめ、さまざまな方との共創を通じて社会課題の解決を目指しています。プロボノ活動への取り組みは、まだまだこれからではありますが、試行錯誤、そして改善を重ねながら、よりよい機会、取り組みとしていければ、と思っているところです。これからもいろいろな面で、お力添えいただければ、幸いです。本日は誠にありがとうございました。

認定NPO法人 サービスグラント代表理事
嵯峨 生馬 氏

東京大学教養学部卒。シンクタンク研究員を経て、2005年、日本におけるプロボノの草分けとして「サービスグラント」の活動を開始。2009年にNPO法人化、代表理事に就任。企業人等の経験・スキルを活かした社会貢献活動「プロボノ」のコーディネートを通じて、NPO・地域団体等の基盤強化を支援。企業・行政・財団・研究機関等と連携し、さまざまなプロボノ活動のモデルの開発に取り組んでいる。現在、東京および関西を拠点に 7,800人以上のプロボノワーカーの登録を集め、累計1,200件以上のプロボノプロジェクトの運営実績を有する。あわせて、オンラインでプロボノ等の人材マッチングを促進する社会参加プラットフォーム「GRANT」の開発を推進している。著書に『プロボノ~新しい社会貢献、新しい働き方』(勁草書房 2011年)ほか。

お問い合わせ

このページのトップへ