GNSSとは?
衛星測位システムの
種類やGPSとの違いを解説!

GNSSとは?衛星測位システムの種類やGPSとの違いを解説!
米国のGPSやEUのGalileoなどに代表される、衛星測位システム「GNSS」。測位方式の発達によって、その誤差は数センチメートル以内に収まり、ドローンやロボットの性能を大幅に向上させるものとして建設業や一次産業を中心に注目を集めています。
ドコモビジネスでは、全国を幅広くカバーする「docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス」や、名刺箱サイズにまで端末を小型化することで携行性を大幅に高めた「Mobile GNSS」などを通じて、お客さまのDX推進をサポートしています。
近年、テクノロジーの発達によって、さまざまな業界でドローンやロボットの導入が進んでいます。従来、それらはオペレーターの操縦を前提に設計されていましたが、人手不足が顕在化するなかで、自動運転、遠隔監視のニーズが増大。完全自動化に向けて、機器が現在地を正確に把握するための位置情報取得サービスが重要になってきています。

本記事では、複数の衛星を活用して位置情報を取得する「GNSS」の定義や仕組みを解説。その中でも、高精度な位置測定をリアルタイムに行える側位方式として注目されている「ネットワーク型RTK測位」にフォーカスして各業界の活用事例を紹介します。

GNSS(全地球航法衛星システム)
とは

GNSS(全地球航法衛星システム)とは

GNSSは「Global Navigation Satellite System」の頭文字をとったもので、全地球航法衛星システムと訳されます。人工衛星を利用して現在位置を計測する衛星測位システム(NSS)*の中でも、全地球を対象とするシステムの総称です。

GNSSには、米国のGPS、EUのGalileo、ロシアのGLONASS、中国のBeiDouなどが該当し、国や地域によって独自の運用管理システムが構築されています。また、近年は測位方式の改善に伴い、地上に設置された基準点や測量機の重要性も上がっており、民間の観測データも積極的に活用されています。

*衛星測位システムは、多角測量方式という手法で4機以上の衛星との距離および角度から、地球上の現在地を割り出すシステムを指します。測定の精度は測位方式によって左右され、誤差は数センチから数百メートルまでさまざまです。

GNSSが必要とされている背景

GNSSのニーズが高まっている背景には、ドローンやロボットの登場や、人手不足解消を目的とした無人化・省人化・業務効率化施策の拡大といった時流があります。たとえば、農業における畝立ての自動化や、物流の自走配送実現のためには、数センチメートル単位の高精度な位置情報をリアルタイムに取得することが求められます。

GPSなどに代表される従来のGNSSは、その日の天候に左右され、誤差も数メートルから数十メートル単位とブレの大きいものでした。しかし、新しい測位技術である「RTK測位」の確立によって、数センチメートル単位での安定した制御が実現し、さまざまな業界の効率化が進んでいます。

GNSSの精度が向上した理由

GNSSの高精度化には、衛星からの電波を受信した正確な時刻が必要です。その際に求められる基準は高く、わずか1マイクロ秒のズレがある場合でも約300メートルもの誤差が発生してしまいます。

受信機の時計を正確に合わせる方法では限界があるため、高精度のGNSSにおいては、あらかじめ位置がわかっている基準点の観測データを用いて、受信機のズレを補正します。情報インフラの発達によって、日本全土に電子基準点*が設けられ、位置情報の精度が飛躍的に向上しました。

*国土地理院が管理する国家基準点の1つ。測量法によって基準が定められている「国家座標」に整合し、受信機のズレを補正するための位置情報データをリアルタイムに取得します。

衛星測位システムの種類

衛星測位システムの種類

ここでは、GNSSをはじめとする衛星測位システムの種類を紹介します。

GNSSを利用した測位方式

GNSSを利用した測位方式の中から代表的な方法をご紹介します。

単独測位
GPSのカーナビなどで多く採用されている基本的な測位方式です。衛星の信号を1台の受信機で受け取り、地球上の座標を計算して特定します。誤差は約10メートル。単独測位は受信機1台で簡単に利用できる反面、天候や時刻のズレ、障害物の影響を受けやすいという特性があります。
相対測位(DGNSS方式/RTK方式)
2台以上の受信機で同時測位することで、天候などの影響を軽減し、精度を高める方式です。DGNSS(デファレンシャルGNSS)方式は、位置の異なる2点から単独測位を行い、その結果を位置がわかっている基準点の補正情報をもとに修正する測位方式で、多くの観測データから衛星の位置をより正確に把握でき、誤差は数メートル単位に収まります。
より新しいRTK(リアルタイムキネマティック)方式は、測位時に基準点を設置し、その位置データを基準として相対的な位置関係を計測する方式です。受信機を移動させながら計測できるのが特徴で、数センチメートル単位での測位が可能です。
ネットワーク型RTK測位
ネットワーク型RTK測位は、相対測位のRTK方式をより実用的に発展させた高精度の測位方式です。全国に設置された電子基準点のリアルタイム観測データで、受信機の誤差を補正。数センチメートル単位の測位をリアルタイムかつ効率的に行えます。
単独測位の手軽さと、相対測位の高精度を併せ持つのがネットワーク型RTK測位の特徴です。受信機が移動している場合にも問題なく使用できるため、IoT機器やドローン、無人建機・農機などの制御に向いています。

RNSS(地域航法衛星システム)

RNSSは、「Regional Navigation Satellite System」の略称で、地域航法衛星システムと呼ばれます。日本のQZSSや、インドのNavlCが該当し、特定地域のGNSSを補完する働きを担っています。

日本の衛星「みちびき」は、アジア・オセアニア地域をカバーするQZSS(準天頂衛星システム)に組み込まれています。みちびきは日本のほぼ真上(準天頂)に長時間留まるため、衛星からの信号が届きにくい高層ビル街や山間部でも、正確な位置情報の取得が可能です。

SBAS(静止衛星型衛星航法補強システム)

SBASは、「Satellite Based Augmentation Systems」の略称です。航空機の安全かつ効率的な航法を確立する目的で導入されたシステムで、静止衛星の補正信号を利用し、GNSSの精度や信頼性を高めます。

【業界別】
GNSSの活用事例

【業界別】GNSSの活用事例

ネットワーク型RTK測位方式のGNSSがどのように活用されているか、また今後どのような活用が期待されているか、業界別に紹介します。

建設業:ICT建機の自動制御・測量に活用

建設業では、人手と施工時間を短縮する手段として、ICT建機が注目を集めています。ネットワーク型RTK測位のGNSSが登場したことで、建機とは別に基準点を設置する必要がなくなり、広範囲の施工にも活用しやすくなりました。
位置情報はICT建機の自動制御に加え、施工前の測量と3Dモデルの作成にも利用されています。雨天でも精度がブレにくく、複数の建機を同時に設置できるため、現場の業務負担を大幅に軽減しています。

農業:農業用ロボットで耕作・収穫が自動化

スマート農業においても、高精度の位置情報サービスは有用です。トラクターの操縦補助による疲労軽減や夜間作業の安全性確保、ドローンを用いた正確な農薬散布など、作業の効率化・省人化に幅広く役立ちます。
従来の農機に自動操縦を追加するサービスも登場しており、高精度なGNSSと組み合わせることで、田端の耕作やトラクターによる収穫の自動化が進んでいます。

運輸業:ドローン配送で人手不足を解消

ドローンを配送に活用するためには、リアルタイムかつ正確な位置情報の取得が不可欠です。GNSSの精度が上がったことで、荷物を傷つけない安全な着陸や雨天での配送も実用が期待される段階に入りました。日本でも、ゴルフ場や地方市街、離島などの開けた場所で、盛んに実証実験が行われています。

公共事業:芝草刈りや除雪などの地域課題解決に貢献

国の管理地や公共事業においても、GNSSを利用したICT機器の実験的な導入がスタートしています。たとえば、国営の鹿児島空港、那覇空港などでは自動芝草刈機を導入。定期的な維持業務を省人化し、担い手不足の解消を図っています。

GNSSサービス・ソリューションの
紹介

ドコモビジネスでは、通信事業のノウハウを活かしたIoT・DX支援に取り組んでおり、誤差数センチメートル以内の位置情報取得を可能にする高精度GNSSサービスを提供しています。

docomo IoT高精度GNSS位置情報サービス

全国に設置された電子基準点に加え、ドコモ基準点で全国の広い範囲をカバーする位置情報サービス。各基準点の境界付近における位置の揺らぎを抑えるロジックを搭載しているため、いつでも安定した測位を実現します。

〈活用事例①〉 レフィクシア株式会社
iPhoneに取り付けるだけで高精度な位置情報が得られるデバイス「LRTK Phone4C」を開発。電子基準点+ドコモ基準点による補正情報で、全国どこでも手軽に測位が行えます。iPhoneで撮影した写真や点群への位置情報付与や撮影場所へのナビゲーション機能、屋外現場と3Dモデルを重ね合わせて測位できるAR機能*など、現場で扱いやすい機能がそろっているのもポイントです。

*タブレットやスマホ、スマートグラスなどの端末を通じて、現実の風景に情報(CG・ポインター・数値など)を付け加える技術。
参照:LRTK Phone詳細 | Lefixea LRTK

〈活用事例〉 株式会社ドコモCS九州 ネットワーク運営事業部
〈活用事例②〉 株式会社チュウブ

造園・緑地管理の現場に、NTTドコモの4G LTEデータ回線とIoT高精度GNSS位置情報サービスの両方を活用した、業務用ワイヤレス型ロボット芝刈機を導入。作業区域をセンチメートル単位で正確に判断するため、区域制限用のワイヤー埋設が不要に。芝地が分散している公園や競技場などの芝刈り作業を、より手軽に行えるようになりました。人手不足の解消や事故率低減のほか、作業者の熱中症および長時間労働対策に役立っています。排ガスを出さない点も、地球温暖化(脱炭素)対策として重宝されています。

〈活用事例〉 化学プラント業界
〈活用事例③〉 井関農機株式会社
日本の農地は小さく区分けされているため、誤差10数メートルに及ぶ従来のGPSでは自動化が不可能。本サービスを利用することで、トラクターと田植え機のロボット化が実現しました。省人化はもちろん、まっすぐ精密な畝立てによって、単位面積あたりの収穫量増加にも効果を発揮しています。
〈活用事例〉 株式会社ドコモCS九州 ネットワーク運営事業部

Mobile GNSS

〈活用事例〉 東京ガス株式会社
NTTコミュニケーションズが提供する超小型受信端末を活用した高精度位置情報測位サービス。ネットワーク型RTK測位の携行性が大幅に向上し、建設現場などにおける利便性・安全性向上に貢献します。
超小型のGNSS受信端末(アンテナ・バッテリー・LTEモジュール内蔵)、通信サービス、docomo IoT高精度GNSS位置情報サービスをワンパッケージで提供するので、煩雑な設定を必要とせず、スムーズな利用開始が可能です。

まとめ

  • GNSSとは?

    4機以上の衛星から発信されたデータをもとに、地球上の現在地を測定する衛星測位システム。地球全土を対象としているものを指し、米国のGPSやEUのGalileo、ロシアのGLONASS、中国のBeiDouなどが該当します。

  • GNSSが必要とされている背景

    人手不足によって無人化・省人化のニーズが高まっており、機器が安全に稼働するためには高精度位置情報取得サービスが必要とされています。天候や地形に左右されない新たな測位方式の登場で、さまざまな業務への実用的な導入が可能になりました。

  • 測位方式によって4種類に分かれる

    GNSSは、カーナビに代表される使い勝手の良い単独測位、より精度を高めた相対測位(DGNSS方式/RTK方式)、そして両方の利点を同時に実現するネットワーク型RTK方式と、採用している測位方式から4種類に大別できます。

  • GNSSの活用事例と今後の展開

    ネットワーク型RTK方式のGNSSは、高精度の地形把握が重要な建設業や農業などを中心に活用が進んでいます。また、ドローンを活用した自動配送の実証実験も盛んに行われており、物流の負担軽減に大きな期待が寄せられています。

NTTコミュニケーションズは、これからも社会やみなさまの普段の暮らしが、より一層豊かで充実したものとなるよう、ネットワークをはじめ、関連するさまざまなサービス・ソリューションを全国で展開していきます。

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