LCM(Life Cycle Management)とは?
LCMサービス導入で実現する業務効率化とコスト削減

企業のIT資産管理において、効率的な運用と適切な管理は重要な課題の1つです。特にデバイスの多様化やシステムの増加にともない、IT資産の管理負担は年々大きくなっています。そのなかで近年注目されているものが、LCM(Life Cycle Management:ライフサイクルマネジメント)サービスです。

LCMサービスは、IT製品や機器の導入から設計、運用・保守、更新に至るまでの各フェーズを効率的に管理し、必要に応じてアウトソーシングすることで、企業のIT部門の負担を軽減します。特にトラブルや故障時にも迅速な対応が可能となり、システム停止などのリスクを最小限に抑えられます。また、各プロセスにおける専門的な支援を受けることで、より戦略的なIT活用が可能になります。

さらに、LCMはセキュリティやコスト最適化など関連領域とも密接に関わっており、組織全体のIT基盤強化にも寄与します。サービス導入のイメージが具体化しやすくなることで、経営層の理解や意思決定もスムーズに進みます。

この記事では、LCMの基礎知識からLCMサービスを導入するメリット、サービス導入のロードマップ、選定のポイントなどについて解説します。

LCM(Life Cycle Management)とは?LCMサービス導入で実現する業務効率化とコスト削減

LCM(Life Cycle Management)とは?基本概念と重要性

はじめに、LCMの概要から必要とされる背景・重要性について解説します。

IT資産の調達から廃棄までの一連のプロセス

LCMとは、企業においてIT資産の調達から廃棄までのライフサイクルをトータルで管理する考え方で、ライフサイクルマネジメント(Life Cycle Management)の略です。このライフサイクルは主に「調達」「導入」「運用・管理」「廃棄・処分」といった4つの工程から構成されます。

LCMサービスとはこれらのライフサイクルマネジメント全体、または1部の業務を専門業者が代行するアウトソーシングサービスです。このサービスを活用することにより、企業はIT資産管理の負担が軽減され、本来の業務に集中できるようになります。

LCMが必要とされる背景

LCM・LCMサービスが必要とされる背景には、いくつかの要因が考えられます。

まず1つ目は、働き方改革やコロナ禍によるリモートワークの普及にともない、モバイルデバイスの利用が増加したことです。いつでもどこでも業務を行なえるモバイルデバイスの台数が増えるほど、その管理は煩雑になるため、モバイルデバイスを適切に管理する必要性が高まっています。LCMサービスを導入することにより、情報漏えいリスクへの対策にもなります。

2つ目が、少子高齢化による人手不足とアウトソーシング需要の高まりです。企業内で利用するデバイスやシステムの数が増える一方、IDやパスワードなどの管理が追いつかなくなっています。

IT資産管理の課題とLCMサービスによる解決

IT資産管理の主要な課題としては「業務負担の大きさ」「運用の困難さ」「情報漏えいのリスク」などが挙げられます。特に管理する端末の台数が多い場合、その運用・管理に多くの時間とリソースが必要です。

このような課題に対して、LCMサービスは有効な手段となります。それは専門知識を持った業者が端末を一貫して管理することによって、業務効率化とセキュリティ強化を同時に実現できるからです。

LCMサービスを利用するほかにも、IT資産管理ツールを活用する方法などもあります。IT資産管理の重要性や、IT資産管理ツールに必要な機能などについて知りたい方は、こちらの記事も合わせてご覧ください。
「IT資産管理ツールに求められる機能とは」

LCMサービス導入による具体的なメリット

LCMサービスを導入することによって、企業はIT資産管理の効率化やコスト削減、セキュリティ強化まで多岐にわたるメリットを得られます。ここでは、それらのメリットについて1つずつ解説します。

IT資産管理の効率化

社内におけるIT資産の管理を一元化することにより、機器の利用状況監視や資産棚卸などの定型業務を効率化し、その作業時間を削減可能です。特に企業規模が大きくなるほど管理すべきIT資産の数が増加し、その管理負担も大きくなるため、効率化による効果を得られやすいでしょう。

近年ではIT資産が急激に増加しているため、従来のExcelなどによる手動管理ではデータの入力ミスや更新漏れが発生しやすく、正確な資産状況の把握が困難になりがちです。LCMサービスの導入により資産管理システムによる自動化が実現すれば、管理作業の工数が大幅に削減されます。

コスト削減と資産の最適化

近年は人手不足が常態化しており、IT機器の適切な選択や効率的な管理といった専門スキルを持った人材の確保が困難な状況です。その点、LCMサービスを活用してIT資産管理業務をアウトソーシングすれば、専門的な知識・技術を持った人材の採用・教育にかかるコストを削減できます。

社内のIT機器が効率的に管理・運用されれば、余剰なライセンスや未活用のハードウェアを見つけ出し、経費のムダを効果的に削減することも可能でしょう。

また、リース期限や保証期間が厳格に管理されるため、契約切れなどの追加費用や保証外修理のリスクを防ぎ、IT資産の費用対効果を最大化できます。

メイン業務への集中と人材の有効活用

LCMサービスを活用することによって、情報システム部門はITデバイスのキッティングや撤去、トラブル対応などの煩雑な業務から解放され、より戦略的で付加価値の高い業務に集中できます。

人的・時間的余裕が生まれることによって、DXの推進やビジネス戦略に直結するIT施策の立案・実行など、より重要な業務で人材を有効に活用することが可能です。これは業務効率化だけにとどまらず、企業の競争力強化にも直結する重要なメリットといえます。

IT投資コストの適正化と見える化

LCMサービスを導入することで、IT投資の「見える化」が実現します。従来は把握しにくかったIT資産のTCO(総所有コスト)が明確となり、月々の支出を平準化することよって予算計画の立案と実行が容易になります。

また、調達から廃棄までのライフサイクル全体にわたるコストを可視化すれば、中長期的な視点でのコスト管理も実現可能です。

セキュリティとコンプライアンスの強化

LCMサービスを活用すれば、使用中のデバイス全体に最新のセキュリティ対策を適用できます。古い資産や未更新のソフトウェアなどによるセキュリティリスクを回避するためにも、セキュリティ対策のアップデートは有効です。

またセキュリティ面だけではなく、ライセンス管理を徹底することでソフトウェアライセンス違反などの法的リスクも防止できます。コンプライアンス要件の変化にも迅速に対応できるため、常に最新の法令や規制に準拠したICT環境を維持することが可能です。

LCMサービス導入のロードマップ

LCMサービスを効果的に導入するためには、計画的なアプローチが不可欠です。ここでは、LCMサービス導入のステップとポイントについて解説します。

LCM導入前の現状分析と課題抽出

LCMサービス導入の第一歩は、社内におけるIT資産の管理状況を正確に把握することです。現在保有するIT機器の数量、種類、使用状況、管理方法などについて詳細に調査します。調査の際には、デバイスの総数だけでなく、OSやアプリケーションのバージョン、ライセンス状況なども確認しましょう。

これらの調査と合わせて、現在のIT資産管理における課題を明確にすることも重要です。特にリモートワークの普及により増加したモバイルデバイスの管理状況や、IT担当者の業務負担について分析することにより、LCMサービス導入の必要性と方向性が定まります。

LCM導入目標と成功指標の選定

現状分析と課題抽出が完了したら、LCMサービス導入によって達成したい具体的な目標を設定します。例えば、IT運用コストや業務効率化による工数の削減などです。目標設定においては、定量的かつ測定可能な指標を用いることが重要です。

そこで、目標達成度を測定するKPI(重要業績評価指標)も合わせて設定しましょう。業務効率化にかかわるKPIの例としては、トラブル即日起票率やインシデント初期対応時間遵守率などが挙げられます。

これらの指標を定期的に測定し、定期的に数値結果の評価を行うことによって、PDCAサイクルを意識した継続的な改善が可能です。

KPIについて解説しているこちらの記事も合わせてご覧ください。
「KPI管理とは?概要や基本手順、成功のポイントなど紹介!」

段階的導入計画の策定

一度にすべてのIT資産管理をLCMサービスに移行すると、業務に支障をきたす場合もあります。そのため、段階的な導入計画を策定しましょう。

まずは、特定の部門や1部のデバイスを対象とした小規模なパイロット導入から始めることを検討します。パイロット導入では、比較的影響範囲が限定される部門や、IT資産管理における課題が顕著な部門を選定するとよいでしょう。

この段階で発生した問題点や改善点を洗い出し、次のステップに活かすことができます。効果測定を行ないながら導入対象を順次拡大していくことにより、リスクを最小限に抑えつつ効果の最大化を図ることが可能です。

全社展開のタイミングと注意点

パイロット導入による成果を確認したのち、全社展開のタイミングと方法について検討します。全社展開においては、部門間の連携や社内教育が重要なポイントとなります。従業員への周知と理解の促進は、スムーズな移行のために欠かせない要素です。

全社展開の際には、まず詳細移行計画を策定します。部門ごとの特性や繁忙期などを考慮して、業務への影響を最小限に抑えられる移行タイミングを選定することが重要です。

合わせて、LCMサービス事業者との連携体制を構築し、トラブル発生時の対応フローも明確にしておきましょう。

導入後の効果測定と継続的改善

LCMサービス導入後は、設定したKPIに基づいて定期的に効果を測定し、PDCAサイクルを回しながら継続的に改善を図ることが重要です。効果測定の結果は、経営層や関係部門と共有し、さらなる改善点や追加施策の検討のために活用します。

例えば、ある企業ではLCMサービス導入後にインシデント件数が一時的に増加していることがわかりました。しかし、これはすべてのインシデントを記録可能な体制が整ったためであり、継続的な改善策の実施により2年後にはインシデントを47%も削減することに成功しています。

このように運用業務の改善結果を見える化することは、運用要員のモチベーション向上にもつながり、継続的改善の活動に弾みがつきます。

LCMサービス選定のポイントと比較方法

LCMサービスの提供事業者は数多く存在しており、それぞれのサービスにより特徴や強みが異なります。自社のニーズにとって最適なサービスを選定するためには、それらの違いを把握したうえで比較検討することが重要です。ここでは、サービスを選定する際に比較検討を行うポイントについて解説します。

機器の適応範囲と互換性の確認

LCMサービスを選定する際には、まず自社で使用しているIT機器の種類に対応しているかについて確認することが不可欠です。サービスによってはPCのみを対象としたものもあれば、スマートフォンやタブレット、周辺機器など幅広い機器に対応しているものもあります。

長期的な視点では、現状だけでなく将来的な機器の追加や変更も見据え、柔軟に対応できるサービスを選定することが重要になります。

サービス内容の充実度、自社ニーズとの整合性

LCMサービスごとに得意なことや強みが異なるため、自社が必要とする業務をカバーしているかの確認は重要です。例えば、IT機器の構成設定や保守管理、ユーザーサポートなどの運用業務を最優先する場合には、運用管理に特化したサービスの導入が最適な選択となります。

一方、機器の調達から廃棄までのライフサイクル全体を管理したい場合は、総合的なサービスを提供する事業者を選ぶべきでしょう。自社のIT資産管理における課題を明確にし、そのうえで課題解決に最適なサービス内容を提供する事業者を選定することがポイントです。

サポート体制の質と対応範囲

事業者ごとにサポート体制にも大きな違いがあり、24時間365日対応のサービスもあれば、特定の時間帯のみのサービスもあります。自社の業務時間や緊急対応の必要性に応じて、適切なサポートが受けられるサービスを選びましょう。

サポート体制もさまざまで、電話・メール・チャット・リモートサポートなど、複数の手段で対応しているサービスもあります。トラブル発生時に迅速に対応してもらえるように、対応方法や対応時間、対応言語などを事前に確認しておくことが重要です。

運用サポート内容と対応レベル

運用時のサポートは、どのような内容やレベルまで対応してもらえるのかについて事前に確認しておくことも大切です。

例えば、ユーザーからの操作方法に関するお問い合わせ対応、トラブル発生時における原因の切り分け作業、定期的なメンテナンス、セキュリティアップデートの適用など、サポートの内容やレベルはさまざまです。自社のIT部門の体制や専門性に応じて、必要なサポートレベルを見極める必要があります。

特に専門的なIT人材が不足している企業では、手厚いサポート体制を持ったサービスを選ぶことにより、安定したICT環境を維持できます。

サービス提供事業者の実績と信頼性

サービス事業者のLCMサービスやIT業務に携わってきた年数、導入実績なども選定のポイントです。

長年の実績を持つ事業者であれば、さまざまな課題に対応してきたノウハウがあり、予期せぬトラブルにも適切に対応してくれるでしょう。自社と同規模・同業種の企業への導入実績があれば、業界特有の課題や要件に対応できる可能性も高まります。

また、サービス提供事業者との相性も重要であり、担当者の対応の丁寧さやお問い合わせへの迅速な対応、提案力なども長期的な関係を構築するうえでは欠かせません。

LCMを実現するワンストップのトータルマネージドサービス「X Managed」

NTTドコモビジネスのMSPサービス「X Managed」は、運用業務のベストプラクティスを標準化した「セミオーダー型」のマネージドサービスです。デザイン・デリバリー・オペレーションをワンストップで提供し、SOCサービスと連携してIT機器監視運用、セキュリティ運用を実施します。

1,000件以上の導入実績、1,000名を超えるSE体制でお客さまのICT環境を最適化します。トータルマネージドサービスのため、運用効率を意識したデザインからオペレーションに至るまで、一気通貫で対応可能です。

お客さまが必要とするサービスレベルに応じて自由に選択し組み合わせることが可能なサービス/メニューを用意しており、お客さまの要望や時代の先端技術・トレンドに応じて多彩なコンポーネントをご利用いただけます。

NTTドコモビジネスのMSPサービス「X Managed」

まとめ

LCMは、企業が所有するIT資産の調達から廃棄までのライフサイクルをトータルで管理する考え方です。昨今、企業のIT資産管理は複雑化・煩雑化しており、IT資産管理におけるさまざまな課題を解決するための手段として注目されています。

LCMサービスを活用してIT資産管理業務をアウトソーシングすれば、業務効率化だけでなくコスト削減や人材の有効活用、セキュリティ強化などのさまざまなメリットが得られます。

この記事で解説したサービス導入のロードマップや選定のポイントなどを参考に、LCMサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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