Cloud Adoption Framework(CAF)とは?
成功するクラウド戦略の実践ポイント

近年、企業にとってクラウド導入は必須の取り組みの1つとなりつつあります。DXを推進し経営変革を図る上で、クラウドシステムの利便性や効率性が不可欠な要素となっているからです。

一方で、既存システムをLift & Shiftでクラウドへ移行したために、セキュリティやガバナンスが追いついていないケースは少なくありません。あるいは現場主導でクラウド化を進めた結果、全社規模の設計が十分に想定されていないといった事態も起こり得るでしょう。こうした課題を解決するためのフレームワークがCloud Adoption Framework(CAF)です。

本記事では、CAFを活用するメリットや領域ごとの役割、クラウド導入の基本的な流れについてわかりやすく解説しています。成功するクラウド戦略の実践ポイントもまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

Cloud Adoption Framework(CAF)とは?成功するクラウド戦略の実践ポイント

Cloud Adoption Framework(CAF)とは

はじめに、Cloud Adoption Framework(CAF)の基本的な考え方を整理します。CAFを活用する意義やメリットへの理解を深めておきましょう。

戦略的なクラウド導入のためのフレームワーク

Cloud Adoption Framework(CAF)とは、クラウド導入を技術的な側面にとどまらず、経営変革プロジェクトの一環として推進するための考え方を体系化したものです。組織がクラウドを場当たり的に活用するのではなく、戦略的に活用していくためのフレームワークといえます。

CAFはいわゆる技術ドキュメントではありません。技術者に限らず、経営層や経営企画担当者をはじめ、クラウドの円滑かつ効果的な導入・活用を目指すすべての人が対象です。

主要クラウドベンダーによるCAFの定義

CAFの土台部分に相当する定義については、主要クラウドベンダー間でほぼ共通しています。一方で、注力しているポイントはそれぞれ少しずつ異なっています。各社に見られる主な傾向は次のとおりです。

クラウドベンダー 特徴
Microsoft Cloud Adoption Framework 戦略立案、計画、準備、導入、ガバナンス、管理の6つのフェーズで構成。組織運営やガバナンスを重視。
Amazon Web Services CAF ビジネス、人材、ガバナンス、プラットフォーム、セキュリティ、オペレーションの6つのパースペクティブ(視点)で構成。実践/運用/移行ノウハウを重視。
Google Cloud Adoption Framework クラウド成熟度を4段階(Tactical、Focused、Optimized、Transformational)で評価。データやアプリケーション変革を重視。

CAFを活用するメリット

クラウド導入に際して、CAFを活用する主なメリットは次の3点です。

  • ビジネス目標とクラウド導入目的を一致させられる
  • クラウド導入過程で生じるリスクが低減される
  • 導入・運用に伴うコストを最適化できる

クラウド戦略を成功させるには、組織変革やガバナンス、スキル開発といった各領域を総合的に捉える必要があります。CAFは情報システム関連部門、現場、経営層が共通言語として活用できるフレームワークのため、クラウド導入時に必要な検討事項を技術面に偏ることなく評価・検証できる点が大きなメリットです。

CAFの領域ごとの役割

CAFが果たす役割は多岐にわたります。ここではAmazon Web Services CAFが掲げる6つのパースペクティブを例として、CAFの領域ごとの役割を見ていきましょう。

ビジネス領域

クラウド導入がビジネス戦略と整合しているか、目的と合致しているか、といった視点で評価します。下記は具体的な視点の一例です。

  • 戦略管理:クラウドがビジネス目標の実現にどう寄与するのかを長期的な視点で検討する
  • ポートフォリオ管理:適切なクラウド製品と導入時期を戦略的に判断する
  • イノベーション管理:クラウドによる製品、プロセス、エクスペリエンスの改善を図る
  • 製品管理:製品ライフサイクルを考慮したデータやクラウド対応製品の管理
  • 戦略的パートナーシップ:ビジネス創出/拡大に寄与するプロバイダーとの協力体制構築
  • データの収益化:データを活用した長期的な収益化戦略の策定
  • ビジネスインサイト:インサイトにもとづく意思決定の改善、オペレーション最適化など
  • データサイエンス:高度な分析や機械学習を活用した複雑なビジネス課題の解決

人材領域

組織の文化やスキルセットといった視点から、クラウド導入に適しているか確認します。下記は具体的な視点の一例です。

  • 組織文化の評価と進化・体系化:現状の組織文化を評価し、段階的な進化と体系化を促す
  • 知見やスキルの向上:クラウドに関する知識・経験および使いこなすスキルの向上を図る
  • 組織設計:クラウド環境に適した働き方を実現するための組織設計を推進する
  • 組織の連携:部門間のサイロ化を防ぎ、成果を共同で追求できる組織体制を確立する

ガバナンス領域

リスク管理やコンプライアンスの体制を整備します。下記は具体的な視点の一例です。

  • ロードマップ検証:クラウド導入のロードマップを定期的に検証する
  • 利益管理:クラウド投資による費用対効果を定期的に追跡・評価する
  • リスク管理:オペレーションリスクおよびビジネスリスクの特定と低減策の検討を進める
  • 財務管理:クラウド関連の支出を計画、測定、最適化する
  • アプリケーションポートフォリオ管理:アプリケーションの無秩序な増加を抑制する
  • データガバナンス:データの所有者、スチュワード、管理者などを定義し、割り当てる
  • データキュレーション:メタデータの収集、整理、エンリッチ化を行う

プラットフォーム領域

技術基盤の整備と最適化を推進します。下記は具体的な視点の一例です。

  • プラットフォームアーキテクチャ:クラウド環境のガイドライン、原則、パターン、ガードレールを確立・維持する
  • データアーキテクチャ:目的に合ったデータとその分析アーキテクチャを設計する
  • プラットフォームエンジニアリング:コンプライアンスに準拠したマルチアカウントクラウド環境を構築する
  • データエンジニアリング:組織全体のデータフローを自動化し、オーケストレートする
  • プロビジョニングとオーケストレーション:コンプライアンスの維持と一貫したガバナンスを実現する
  • インテグレーションとデリバリー:継続的な取り組みによる俊敏性の向上とイノベーションの加速を実現する

セキュリティ領域

データ保護やアクセス管理の強化を図ります。下記は具体的な視点の一例です。

  • セキュリティガバナンス:セキュリティ上の役割、責任、説明責任、ポリシー、プロセス、手順の策定と伝達
  • セキュリティ保証:セキュリティ/プライバシープログラムの有効性を継続的に監視、評価、管理、改善する
  • アイデンティティと許可の管理:適切なユーザー、マシンが適切なリソースにアクセスできる環境を維持する
  • 脅威の検出:潜在的な設定ミス、脅威、予期しない動作を把握・識別する
  • 脆弱性管理:セキュリティの脆弱性を継続的に特定、分類、是正、緩和する
  • インフラストラクチャの保護:意図しない不正アクセスや潜在的な脆弱性からシステムやサービスを保護する
  • データ保護:データの可視性を管理・維持する
  • アプリケーションセキュリティ:ソフトウェア開発プロセスでセキュリティの脆弱性を発見し、解決を図る
  • インシデント対応:セキュリティインシデントに効果的に対応し、潜在的な被害を減らす

オペレーション領域

クラウドシステムの運用体制を確立し、効率的な運用を目指します。下記は具体的な視点の一例です。

  • 可観測性:ワークロードの内部の状態と正常性を把握するためのモニタリング
  • イベント管理:イベントの検出と潜在的な影響の評価、適切な対応の決定
  • インシデント・問題管理:迅速な復旧とビジネスへの影響を最小限に抑える対応
  • 変更およびリリース管理:本番環境へのリスクを最小限に抑えたワークロードの導入・変更
  • パフォーマンス・キャパシティ管理:パフォーマンスのモニタリングと今後の需要を満たすキャパシティの管理
  • 構成管理:ワークロードとその関係、構成の変更などを長期にわたり記録・保持
  • パッチ管理:ソフトウェアの更新をシステマティックに配布・適用
  • 可用性・継続性管理:ビジネスクリティカルな情報、アプリケーション、サービスの可用性を確保
  • アプリケーション管理:アプリケーションの問題を一元的に調査、是正

CAFによるクラウド導入の基本的な流れ

CAFを活用したクラウド導入の基本的な手順を紹介します。各フェーズで取り組むべきことも合わせて例示していますので、クラウド導入時に役立ててください。

CAFによるクラウド導入の基本的な流れ

1. 戦略立案

第一に取り組むべきことは、クラウド戦略の立案です。ビジネス目標およびクラウド導入の目的を明確化し、双方を一致させておく必要があります。クラウド導入はあくまでもビジネス目標を達成するための手段の1つです。手段が目的化することのないよう、クラウド導入の先にあるビジネス目標を見据えておかなくてはなりません。

具体的に取り組むべきこととして、KPIやROIの設定が挙げられます。解決を目指す課題とゴールを設定し、クラウド導入によって解消されるべき目標値を明確に決めておきましょう。

2. 計画策定

次に、クラウド導入の計画を策定します。既存資産の棚卸しと評価を実施した上で、クラウドの導入・運用に向けたロードマップを作成しましょう。すぐにクラウドへと移行するシステム、将来的にクラウドへ移行する予定のシステム、オンプレミスのまま運用するシステムを明確にしておくことが大切です。

計画策定の段階で、ステークホルダーの合意を得ておくことも重要なポイントといえます。経営層、IT/システム担当者、現場、法務部門など、クラウド化に関わる関係者間で期待値や懸念点にずれが生じないよう、合意形成を図っておかなければなりません。

3. 準備

クラウド基盤のセットアップを進めます。必要なリソースを設計・構築するにあたり、ネットワーク設計やデータ保存方法、データベースの種類などを決めておかなければなりません。また、IAM(Identity and Access Management)、暗号化、ファイアウォール設定といったセキュリティ対策も重要です。さらに、定期的にバックアップを行うためのスケジュール設定やリストア手順も確立しておく必要があります。

4. 導入

実際にクラウドシステムを導入し、システムの移行と最適化を進めます。クラウドへ移行するシステムの規模に応じて、段階的に移行を進められるよう計画を立てておくことが重要です。

まずは既存のデータやシステムをクラウドへ移行した上で、問題なく動作するかテストを実施しましょう。データの整合性やアプリケーションの設定を確認し、機能テストやパフォーマンステスト、セキュリティテストを実施します。テストを通じて判明した問題を修正し、再度テストを実施して問題が解消されているか確認する作業を積み重ねていきます。何らかの異常が発生した際には、アラートで通知されるようあらかじめ設定しておきましょう。

5. 運用

運用開始後は、システムを継続的に監視するための体制を整えておくことが大切です。各クラウドサービスプロバイダーは、AWS CloudWatch、Azure Monitor、Google Cloud Monitoringといったモニタリングサービスを提供しています。こうしたサービスを活用して、パフォーマンスやセキュリティログの監視、異常検知を行い、必要に応じてリソースの調整を実施しましょう。

リソースの利用状況に応じて、継続的に最適化を図っていく必要があります。このように、クラウドシステムの運用開始をゴールと捉えるのではなく、運用開始後の監視と調整、最適化を見据えて計画を立てておくことが重要です。

成功するクラウド戦略の実践ポイント

クラウド戦略を成功へと導くには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。クラウド導入時に失敗しやすいポイントでもあるので、次の4点を念頭に置いて導入・運用を進めていきましょう。

ポイント1:自社適合>ベストプラクティス

各ベンダーが提示しているベストプラクティスは、試行錯誤を経て確立された方法論です。よって、クラウド戦略を策定する際に参照しておく意義は十分にあるでしょう。

ただし、ベストプラクティスが他社の事例であることに変わりはありません。あくまでも自社の経営課題・事業課題との整合性を優先することが最重要ポイントです。クラウド導入が自社におけるビジネス戦略上の課題解決につながるか、慎重な検証・判断が求められます。

ポイント2:クラウド移行に向けたプロセスの明確化

既存のシステムからクラウドへの移行プロセスを明確にしておくことが重要です。当面クラウドへ移行すればよい、といった短期的視点で進めることのないように留意しましょう。

たとえば、クラウドシステムへ移行する範囲に関して、段階的に導入するべきか、完全移行するべきか、移行の規模に応じて判断する必要があります。また、移行の手法も重要なポイントです。中長期的な運用を見据えて、自社に合った移行範囲・手法を選択しましょう。

【移行方法の主な種類】

  • リホスト:システムの基幹部分だけをクラウド環境へ移行する手法
  • リプレイス:既存システムをクラウド環境に置き換える手法
  • リプラットフォーム:OS、データベース、ミドルウェアなどのインフラをクラウド環境に最適化する手法

ポイント3:組織文化への浸透

クラウド導入は、技術的な課題の解決だけでは十分に達成できないおそれがあります。クラウドをいかに組織文化として浸透させ、定着させていくかが重要な課題です。

クラウドシフトの重要性に関しては、トップダウンで浸透させていくのが望ましいでしょう。その上で、クラウド戦略のビジョンを現場と共有し、従業員間のスキルギャップを解消していく必要があります。基本的な操作方法などに関するレクチャーを実施するほか、CCoE(Cloud Center of Excellence)を社内に設置するなど、継続的なサポート体制を構築しておくことが大切です。

ポイント4:属人化を防ぐ運用設計

クラウドシステムを特定の担当者だけが使いこなせる仕組みにしないことも大切です。業務プロセスの可視化・標準化や、ナレッジ共有の仕組み化をクラウドシフトと並行して推進しましょう。

また、自動化の推進もシステムの属人化を防ぐ上で重要な視点の1つです。オペレーションを担う従業員の考え方やリテラシーに依存しない仕組みを確立することで、属人化しにくい運用体制を構築できます。さらに、継続的なトレーニングやレクチャーを実施可能な体制を整備し、従業員間のスキルギャップを埋めていく必要があるでしょう。

X Managed®の特長

これまで見てきたとおり、クラウド導入には多くの手順と留意点があります。クラウド導入時によくある失敗を未然に防ぎ、スムーズな導入・運用を実現するには、運用業務のベストプラクティスを標準化したマネージドサービスの活用がおすすめです。ここでは、NTTドコモビジネスのトータルマネージドサービス「X Managed®」の特長をご紹介します。

デザイン・デリバリ・オペレーションをワンストップ提供

X Managed®は、監視基盤と運用業務の標準化により、効率的な運用を実現するための仕組みを提供します。運用効率化を意識したデザインからオペレーションまで、一気通貫で対応可能です。

具体的には、要件(基本/詳細)の整理・設計から導入・運用までのベストプラクティスを一体提供します。継続的な問題管理と継続的改善活動(CSI)を実施することで、運用の高度化・効率化につながる点が大きな強みです。

コンポーザブルなサービス体系

X Managed®には、「スタンダードメニュー」「オプションメニュー」「プロフェッショナルメニュー」の3つのサービスメニューがあります。

  • スタンダード:各サービスにおける必要不可欠な標準プロセスを一式で提供
  • オプション:頻出要件を定型メニュー化し選択式で提供
  • プロフェッショナル:より複雑で高度な要求に対応するための機能を提供

さらに、ネットワーク/クラウド/セキュリティのテクノロジーレイヤを組み合わせることで、お客さまのご要望に応じたサブコンポ―ネットの提供や、一元運用の実現も可能です。必要とするアウトソーシング範囲を、柔軟に組み合わせてご活用いただけます。

デジタルオペレーションを支えるプラットフォーム

X Managed®は、NTTドコモビジネスの標準監視基盤である「X Managed Platform®」と運用業務のセットでのご提供となります。X Managed Platform®とは、IT監視、自動化、チケット管理、構成管理、セキュリティ管理、データ分析の6つの機能分野を統合したICTプラットフォームのことです。自動化や人工知能(AI)活用といった先端技術をはじめ、トレンドに応じた多彩なコンポーネントをご利用いただけます。さらに、業務負担を軽減する統合ダッシュボードや自動化機能を標準搭載している点も大きな特長です。

まとめ

クラウド化は技術導入のみならず、経営/事業課題や組織文化とも深く関わる施策です。CAFは組織変革やガバナンス、スキル開発を総合的に捉え、ビジネス目標とクラウド導入目的を一致させるためのフレームワークといえます。クラウド導入に伴うリスクを低減し、コストの最適化を図るためにも、CAFを活用してみてはいかがでしょうか。今回ご紹介したCAFによるクラウド導入の流れや実践ポイントを参考に、スムーズかつ効果的なクラウド導入を実現してください。

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