Azureのセキュリティ対策は何をすべき?
基本概念・必須設定・運用のポイントを徹底解説
AzureはMicrosoftが提供するクラウドプラットフォームで、IaaSやPaaSを中心とした多彩なサービスを利用できます。
強固なセキュリティ基盤を備えていますが、ユーザー側の設定や運用次第で安全性は大きく変わります。多層防御・ゼロトラスト・責任共有モデルなどAzure特有のセキュリティ概念について理解し、効果的な対策を講じることが重要です。
本記事では、Azureにおけるセキュリティの基本から実践的な対策、さらには運用支援サービスにいたるまで徹底的に解説しているので、参考にしてください。

目次
Azure(アジュール)とは?
Azure(アジュール)とは、Microsoftが提供するクラウドプラットフォームで、正式名称はMicrosoft Azureです。仮想サーバーやデータベース、AI、セキュリティサービスなど、IaaS(Infrastructure as a Service)およびPaaS(Platform as a Service)を中心として幅広い機能を提供しています。
IaaSは、仮想マシンやストレージなどのインフラ環境をクラウド上で提供する形態で、ユーザーは自由にOSやアプリケーションを構成できます。一方、PaaSはアプリケーション開発に必要なプラットフォームを提供し、インフラの管理負荷を軽減するものであり、開発に集中することが可能です。
Azureは、オンプレミス環境や複数のクラウド環境、ハイブリッド環境、エッジ環境にも対応しており、あらゆるビジネスニーズに柔軟に応えられる点が特徴です。以下は代表的なAzure機能の一覧です。
| 機能名 | 概要 |
|---|---|
| Azure Portal | Azureのサービスを一元管理できる操作画面 |
| Azure Virtual Machines | 仮想サーバーを作成・運用 |
| Azure AI | 機械学習や自然言語処理を活用 |
| Azure Storage | 安全なクラウドストレージ |
| Azure Active Directory | クラウドサービスのアクセス管理 |
| Azure DevOps | アプリケーションの開発・運用支援 |
| Azure Functions | サーバーレスでコードを実行 |
| Azure Information Protection | クラウドのデータ保護 |
Azureにおける基本的なセキュリティ概念
クラウド環境ではサイバー攻撃の脅威が常に存在しているため、AzureではMicrosoftが万全なセキュリティ対策を講じています。
ここでは、Azureにおける基本的なセキュリティ概念について解説します。
多層防御
多層防御とは、セキュリティを1つの境界に頼るのではなく、複数の層に分けて対策を施し、安全性を高める戦略です。Azureでは7つのレイヤに分けて防御策を講じており、仮に一部の防御が突破されてもほかの層で攻撃を防ぎます。例えば、データセンターの物理セキュリティやアクセス管理、ネットワーク制御、OS更新、データ暗号化など、各レイヤで異なる保護が実装されています。
| セキュリティ層 | 概要 |
|---|---|
| 物理層 | データセンターの入室管理・設備保護 |
| IDとアクセス層 | Azure ADによる認証・権限管理 |
| ネットワーク境界層 | DDoS対策や不正通信の遮断 |
| ネットワーク層 | NSGなどによる通信の制御 |
| コンピューティング層 | 仮想マシンのOS更新・設定保護 |
| アプリケーション層 | SSL/TLSやセキュリティパッチの運用 |
| データ層 | ストレージ暗号化・データアクセス制限 |
このように、階層化された防御によって、Azureは高いセキュリティを実現しています。
ゼロトラストモデル
ゼロトラストモデルとは、社内/社外、ネットワーク境界だけでなく、すべてのアクセスを信頼しないという前提で、アクセスの都度、厳密な認証・認可を行うセキュリティ手法です。ネットワーク制御に加え、ID/アクセス管理やデバイスの状態、認証強度などを多角的に評価し、不正アクセスのリスクを最小化します。特にクラウドやリモート前提の環境では、従来の境界防御モデルでは対応しきれない脅威に対して高い効果を発揮します。
責任共有モデル
責任共有モデルとは、オンプレミス環境とは異なり、クラウド環境においてサービス形態(IaaS/PaaS/SaaS)ごとに、Microsoft Azureとユーザーとの間でセキュリティ上の責任を分担する考え方です。例えば、IaaS利用時には物理インフラや仮想化基盤の管理はAzureが担当しますが、OSの更新やネットワーク設定、アクセス制御、保存データの保護などの領域はユーザーの責任となります。クラウド提供者の責任範囲とユーザーの管理責任を明確に理解したうえで、適切な設定方法や対策を講じることが、安全かつ効率的なクラウド運用を実現するうえでは不可欠です。
Azureで講じるべきセキュリティ対策
Azureは高度なセキュリティ基盤を備えていますが、設定によってセキュリティ効果をさらに高められる可能性があります。
ここでは、Azure導入後に実施すべき具体的なセキュリティ対策について解説します。
多要素認証(MFA)の有効化
Azureの多要素認証(MFA)は、パスワード(知識情報)に加えて所持情報や生体情報などを組み合わせて行う2段階認証です。パスワード入力と本人確認の認証により、万が一IDやパスワードが漏えいしても不正アクセスを防ぐことが可能です。Microsoftは2025年10月から、Azure Resource Managerなどの操作においてMFAを段階的に義務化すると発表し、今後は必須の対策となります。
条件つきアクセスの設定
条件つきアクセスとは、IDとパスワードだけに依存せず、複数の要素を組み合わせてアクセス制御を行う仕組みです。ログインを行なった場所やデバイスの状態、ユーザーのリスクレベルなどを自動判定し、アクセス可否や多要素認証の要求を柔軟に制御できます。この機能はMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)で設定可能で、ゼロトラスト型のセキュリティ強化に欠かせません。
ネットワークの保護
Azureには、仮想ネットワーク内外の通信を制御する多様なセキュリティ機能が用意されています。
ここからは、代表的なネットワーク保護機能について解説します。
Azure Firewall
Azure Firewallは、Microsoftが提供するクラウドベースのファイアウォールセキュリティです。インターネットとの境界に配置され、不要または危険な通信をブロックすることにより、必要な通信だけを許可する役割を果たします。機能や用途に応じてBasic・Standard・Premiumの3種類があり、利用シーンやセキュリティ要件に合わせた選択が可能です。それぞれのおもな用途と機能については以下のとおりです。
| 種類 | おもな用途 | おもな機能 |
|---|---|---|
| Basic | 小規模用途・低コスト | 基本的なトラフィック制御、FQDN/IPフィルタリング |
| Standard | 中規模用途・標準的な保護 | アプリケーションルール、脅威インテリジェンスベースのフィルタリング、DNSプロキシー対応 |
| Premium | 高セキュリティ用途 | TLSインスペクション、IDPS、URLフィルタリング、Webカテゴリ制御 |
ネットワークセキュリティグループ(NSG)
ネットワークセキュリティグループ(NSG)とは、Azureの仮想ネットワーク上で機能するファイアウォールのようなものです。仮想ネットワーク内のサブネットやNICに対して、通信の許可・拒否をルールで設定できるため、ネットワーク層での通信制御を実現します。ネットワーク層でのフィルタリングを担うため、Azure FirewallやWAFと併用することによって、より強固な多層防御が可能になります。
WAF設定
WAF(Web Application Firewall)は、Webアプリケーションやサービスへのサイバー攻撃を検出・防御するファイアウォールです。Azure上でWAFを設定することにより、SQLインジェクションやXSSなどの攻撃に対応可能となり、セキュリティリスクの可視化や対策の自動化が実現します。ネットワーク層で防ぎきれない脆弱性を補完し、Webアプリケーションサービスの安全性を高められます。
RBAC(ロールベースアクセス制御)による権限設定
ロールベースアクセス制御(RBAC)とは、あらかじめ定義した役割に基づいて、ユーザーのアクセス可能範囲を制御するモデルです。RBACではユーザーごとにロール(役割)を割り当てることによって、閲覧・編集・管理などの権限を細かく管理できます。特に管理者ロールを必要最小限に制限できるため、特権アカウントの誤操作や悪用によるリスクを低減可能で、安全かつ効率的なアクセス管理が実現します。
Azureにおけるセキュリティ上の脅威を検知する
Azureなどクラウド環境では、多数のリソース(仮想マシン、ストレージ、DB、コンテナなど)が動作し、仮に1つに不正や脆弱性があれば全体に影響が広がる可能性があります。そのため、設定ミスや脆弱性の存在、マルウェア、不正アクセスなどの見えづらい脅威に対し早期に検知・対応できる仕組みを導入することが重要です。Azureにおけるセキュリティ上の脅威を検知するサービスは以下のとおりです。
| サービス名 | 概要 | おもな機能 |
|---|---|---|
| Azure Defender for Cloud | Azureを含むマルチクラウドやハイブリッド環境でのセキュリティを一元管理するCNAPPプラットフォーム | 脆弱性スキャン、設定ミスの検出、セキュリティスコア提供、不正アクセス・マルウェアに対する警告など |
| Microsoft Sentinel | クラウドネイティブなSIEM/SOAR。多様な環境のログを統合し、脅威検知から自動対応までを実施 | 不審な挙動の検知、ログ分析、アラート通知、自動インシデント対応(プレイブック)など |
Azureのセキュリティ対策はAzureマネージドサービスがおすすめ!
クラウド環境では、セキュリティ対策の一部をプロバイダーに委ねることになります。Azureでは、責任共有モデルを採用し、ユーザーとの間でセキュリティ上の責任が明確に線引きされています。しかし、多くの企業、特にAzureを初めて利用する組織では、「自社の責任範囲で何をどこまでやれば良いのか判断できない」と悩むケースが少なくありません。
そこで有効な手段が、Azure導入から運用、継続的なクラウドソリューションの活用までを一括で支援するAzureマネージドサービスの導入です。Azureマネージドサービスを利用すれば、専門的なセキュリティ設定や運用の不安を軽減し、最適なクラウドソリューションの活用を実現できます。また、運用負荷も軽減されるため、本来の業務に集中しながら安全にクラウド利用を開始できる点が大きなメリットです。
セキュリティ面での不安を解消したい企業にとって、Azureマネージドサービスは心強い選択肢といえるでしょう。
まとめ
Azureは、IaaSやPaaSなどを通じて柔軟なシステムの構築が可能ですが、セキュリティの一部はユーザー責任となるため、基本概念を理解したうえで適切な対策が不可欠です。
Azureマネージドサービスでは、専門チームの支援によりベストプラクティスに沿った安全な構成を実現するため、安心してAzureを活用できます。自社でのセキュリティ運用に不安を感じる場合には、Azureマネージドサービスの導入をぜひご検討ください。

