IoTプラットフォームとは?
仕組みや機能、選ぶ際のポイントを紹介

IoTプラットフォームとは?仕組みや機能、選ぶ際のポイントを紹介
IoTゲートウェイとは? 役割や活用事例を紹介
IoT環境におけるシステムの基幹部分として、IoTデバイスやソフトウェアなどと接続し、データの可視化や分析を担うIoTプラットフォーム。IoTデバイスの制御やソフトウェアの自動アップデートといった運用に便利な機能も備え、活用方法も業界に合わせて多種多様です。導入に際しては、活用方法の変更やデバイスの追加なども念頭に置き、拡張性の高い、「自社のニーズに合ったプラットフォームを選ぶ」ことが重要です。

ドコモビジネスでは、IoTのネットワーク通信を一元管理する「docomo IoT回線管理プラットフォーム」や、フルスタックIoTプラットフォームサービス「Things Cloud®」、より精密なIoTデバイスの制御を可能にする「docomo IoT 高精度GNSS位置情報サービス」などを通じて、IoTシステムに必要な機能をトータルサポートしています。
IoTの運用においては、IoTデバイスから得られた情報をどのように可視化し、活用するかが成否の鍵を握ります。IoTプラットフォームによって、IoTシステムの各構成要素を適切に管理すれば、膨大な情報を分かりやすく整理でき、新しいビジネスモデルの創出にも役立たせられるでしょう。
今回のコラムでは、IoTの根幹を担うIoTプラットフォームについて提供形態による種類ごとの強みや、活用事例、選定ポイントについて解説していきます。

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IoTプラットフォームとは?

IoTプラットフォームとは、IoTデバイスから得られたデータを集積・活用するためのシステム基盤のことです。大量のデータを可視化し、分析・制御を行う機能も持つため、IoTを効果的に運用していく上で、欠かせない存在と言えます。従来のオンプレミス型に加え、クラウド型の利用も進んでおり、開発環境を構築する際の自由度の高さが注目を集めている点も近年の特徴です。
広義にはIoTのシステム全体を指す場合もありますが、今回はシステム全体の中でIoTプラットフォームが果たす役割や機能について紹介します。

IoTプラットフォームの機能

IoTプラットフォームは、システム全体の中核を担い、IoTデバイスやIoTゲートウェイ、クラウドなどと連携する幅広い機能を備えています。

IoTプラットフォームとは?

後述する提供形態やベンダーによってサービスは変わりますが、代表的なものは下記の通りです。

IoTデバイスの接続・リモート制御

IoTデバイスと接続することで、稼働状況をリアルタイムで可視化します。双方向通信に対応したデバイスであれば、IoTプラットフォームからの遠隔制御も可能です。機器や設備のオンオフ、スケジュール設定などを一元的に行えます。

システムの監視・保守

IoTシステム全体と連携しているため、接続している機器の異常をすぐに検知できます。異常発生時にはアラートを発するほか、リモートでデバックする機能を備えているものもあります。

データの収集・保管

IoTデバイス、IoTゲートウェイから送られてくるデータを収集し、IoTプラットフォーム上に保管します。
IoTプラットフォームには、複数のセンサーを扱いデータ量が膨大になってしまった際に、負荷を軽減して可用性を高めるため「非同期処理」「分散処理」といった機能が備わっています。さらに、システムが読み取るために最適化されていない半構造化・非構造化データを構造化データとして保持する仕組みも持っており、これらによって、さまざまなデバイスの同時活用を可能にしています。また、加工前の形式をバックアップとして保管しておくために、データレイクを設けることも可能です。

データ分析

IoTデバイスから送られてきたデータをリアルタイムで分析し、その結果を接続している外部のシステムに転送します。データは、IoTプラットフォームを介して可視化され、日常業務の効率化や稼働状況の把握に役立ちます。AI(人工知能)と連携しているものもあり、統計処理やプログラムの実行まで自動で行えるものもあります。

ソフトウェアの自動アップデート

大規模なIoTシステムの場合、1つひとつのIoTデバイスをどのように管理するかが、課題となります。IoTプラットフォームで複数のIoTデバイスを集中管理することで、管理にかかる手間やコストを大幅に削減できます。たとえば、内蔵されるソフトウェアを自動でアップデートするよう設定しておけば、効率的なセキュリティ対策が可能でしょう。

IoTゲートウェイ、クラウド上の外部システムとの関係性

IoTデバイスの通信負担を軽減するために、IoTゲートウェイから一括でデータが送られてくる場合もあります。IoTゲートウェイとの通信では、さまざまな通信規格(ローカル5G、LTE/LTE-M、LPWA、WAN/VPNなど)を選択でき、コストと安定性に見合ったシステムの構築が可能です。

また、IoTプラットフォームが収集したデータをクラウド上の外部システムに保存すれば、業務アプリケーションから場所を問わず、IoTデバイスの稼働状況を確認できます。AI(人工知能)を用いてデータを自動で分析する機能を備えているサービスもあり、目的に合わせてアクセス権を設定すれば、より柔軟な運用も見据えられるでしょう。

IoTプラットフォームの提供形態

IoTプラットフォームは、サービスの提供形態と展開方式(業界特化の度合い)によって、いくつかのタイプに分類できます。導入する際は下記に紹介するタイプの特徴や強みを把握し、ビジネスモデルに合った形にカスタマイズして構築すると良いでしょう。

一般的にはデータを収集するサーバ・クラウドを指すことが多いですが、IoTデータを送信するIoTゲートウェイやネットワーク、データ分析ツールも含めてIoTプラットフォームとして扱うケースもあります。

さまざまな業界に導入可能な汎用性を備えたIoTプラットフォームは、開発基盤やソフトを提供するクラウド型と、ネットワークも込みで提供するオールインワンタイプの提供形態に大別され、特定の業務に特化したプラットフォームも提供されています。

クラウド型

アプリケーションの開発環境やサーバーをクラウドで提供する形式のIoTプラットフォーム。IaaSやSaaS、PaaSとも呼ばれており、独自のIoTシステムを構築しやすい拡張性の高さが強みです。

オールインワン型

上記に加え、ネットワーク環境やSIMをセットで提供する形式のIoTプラットフォーム。ネットワーク接続性(コネクティビティ)に優れるため、種類が異なる多数のIoTデバイスをつなぐ環境でも、安定して運用できます。

産業特化型

製造業や土木建築業などの、導入先の業界におけるデータ収集・活用に特化したIoTプラットフォーム。業界特有のIoTデバイスやデータに対応しており、既存の業務システムとスムーズに連携させることが可能です。

IoTプラットフォームの活用事例

IoTプラットフォームの活用事例

IoTシステムの基幹部分に相当するIoTプラットフォームは、さまざまな業界に導入されています。各業界の具体的な利用方法と、得られるメリットは次の通りです。

製造業:デジタル移行で生産性を向上

アナログからデジタルへの移行が、特に推進されている業界では、生産性の向上を目的にIoTプラットフォームが活用される事例が多く見られます。デジタル上で日報や生産状況・工場における生産ラインの稼働監視などを一元管理して生産性向上を図るケースや、さまざまなセンサーと連携して従業員の心拍・暑さ指数を把握し、安全管理リスク回避に活用するケースなどもあります。 また、ビッグデータの活用によって、従来は職人の才覚によるところの大きかった、スキルやノウハウのマニュアル化に挑戦している事例も生まれています。

製造業は、他業種と比べ、IoTの活用の幅がとりわけ広い業界とも言えます。導入の際には、十分な拡張性を備え、都度コストと機能性の調整が可能なIoTプラットフォームがおすすめです。

商業施設・不動産業:データの可視化で業績改善

商業施設や不動産業では、業績と直結するという理由で、IoTプラットフォームでデータを可視化して業務改善につなげているケースがあります。商業施設では、日別・月別の訪問客数を分析して、より多くの客数が見込まれる時間帯に効果的な施策を打つ事例、ビジネス向けの不動産業では、人感センサーによってリアルタイムで利用状況の確認を行い、スムーズな利用案内を実現する事例があります。
また、商業施設や不動産業では、GXの観点から、使用電力の可視化も求められていますが、電流センサーやCO2センサーの情報をもとに、使用電力削減に向けた計画を立てることにも、IoTプラットフォームが活用されています。
GXについては、下記の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。

リース業:貸し出し中の備品もまとめて管理

リース業も情報の可視化と業務効率化のために活用されるケースが多く見られます。一般にレンタル業と比べて、貸し出し期間が長期に渡り、他社に貸し出し中の在庫管理も求められるリース業。在庫状況をリアルタイムに共有し、返却時期やメンテナンスの手順などを一元的に可視化できれば、効率的な運用に役立つでしょう。貸し出し回数などのデータを分析すれば、人気商品の在庫補充も容易です。

インフラ:供給のあらゆる側面でセンサーを活用

インフラのIoTは発電所や浄水場などの施設稼働状況や、送電線の管理、メーターの測定など、供給のあらゆる側面で利便性を発揮します。IoTプラットフォームによって長期にわたりデータを蓄積することで、より効率的な運用や老朽化の把握なども可能になるでしょう。

インフラ:供給のあらゆる側面でセンサーを活用

▲除雪車の遠隔操作における、除雪車の位置情報をdocomo IoT 高精度GNSS位置情報サービスおよびThings Cloud®を活用し可視化

農業:多様なセンサー類と連携、大型農機のロボット化で人手不足を解消

農業のIoTには温湿度センサーや光量センサーなど、複数のセンサー類が使用されます。さまざまな通信規格に対応したIoTプラットフォームであれば、一律でデータを可視化し、植物の生育状況を一目で確認できるように。また、大型農機のロボット化と遠隔制御による、人手不足の解消にも期待が寄せられています。

IoTプラットフォームの選定ポイント

IoTプラットフォームの選定ポイント

上記のように、IoTプラットフォームには多様な活用方法があり、自社に最適なものを選択しなければ、効率的な運用は難しいものです。選定時に押さえておくべきポイントを覚えておきましょう。

セキュリティ対策

IoTの普及に伴い、IoTデバイスやネットワーク通信を標的にしたサイバー攻撃事例は急増しています。IoTプラットフォームはデータの集積地であると同時に、基幹システムやクラウドとの連携を行っている場合もあるため、セキュリティ対策にはより慎重に備えておくことが大切です。
選定のポイントは、ネットワーク通信にVPNや閉域網を採用し、IoTデバイスとのやり取りで暗号化機能を利用できるものを選ぶこと。各種セキュリティ対策を万全にできるものであるかを注視してみましょう。
IoTのセキュリティについては、下記の記事で詳しく紹介しています。

さまざまな通信規格への対応

複数のIoTデバイスを並行して使用するIoTの構築において、多様な通信規格に対応しているかどうかは重要です。IoTプラットフォーム側の通信規格が制限されてしまうと、システムに組み込むことのできるIoTデバイスの種類も狭まってしまいます。より多くのIoTデバイスとの連携を念頭に置く場合には、コネクティビティに優れたネットワーク連動型のIoTプラットフォームを検討してみましょう。

開発・管理コスト

IoTプラットフォームは、データの種類に合わせてカスタマイズすることでより効率的に運用できます。その際の開発や、運用時の管理にコストがかかることを留意しておきましょう。なるべく安価に抑えたい場合には、サーバーや開発環境を提供するクラウド型のIoTプラットフォームがおすすめです。

将来的な拡張性

IoTプラットフォームは事業の成長に合わせて、拡張可能な余裕を備えておくことも大切です。IoTデバイスの数を増やせるか、処理するデータ量が増えた際にも問題なく通信速度を維持できるかなど、中長期の利用にも対応しているIoTプラットフォームを選びましょう。

IoTプラットフォームの構築に有用なサービス

ドコモビジネスでは、通信事業のノウハウを活かしたIoT・DX化支援に取り組んでおり、お客さまのIoTシステムをより効率的に活用するための、IoTプラットフォームおよび関連サービスをご提供しています。

docomo IoT回線管理プラットフォーム:複数拠点の通信を一元管理して、コストを削減

docomo IoT回線管理プラットフォームとは、「IoT向け通信回線(SIM+ドコモ通信網)」「回線管理機能(カスタマーコントロール)」からなる、IoT NWサービスです。
国内外問わず、複数のIoTデバイスに対しての回線を一元的にコントロールしたい場合に活用できます。カスタマーコントロール上で回線の開通や解約などの通信制御を簡単に行うことができ、任意のイベントルール※に基づく自動処理機能も具備しているため、大量回線の運用を効率化します。

※ルール例:予め設定したデータ通信量を超過した場合の通信停止、許可されていないデバイスでSIMが使用された場合にメール通知

また、回線の接続状況とデータ量の監視を通じて、利用実態に合わせた通信利用料の最適化や緊急時へのタイムリーな対応を可能にします。docomo IoT回線管理プラットフォームのアクセス回線は、インターネット接続または閉域接続を選択可能で、セキュアなネットワーク環境の構築にも寄与。安心安全な環境で、さまざまな効率化を実現できるサービスとなっています。

Things Cloud®:手軽にDXを実現! 用途に合わせてデータを可視化

Things Cloud®は、簡単な設定だけで、すぐにデータ収集・可視化を行えるフルスタックIoTプラットフォームです。多様なセンサー・IoTデバイスにも対応する、一気通貫型のソリューションを直感的なUIでご提供しています。1テナントあたりの基本料は月額5,060円(税込)、1デバイスあたり月額550円(税込)から始められ、導入の段階では機能を抑えてスモールスタートでコストを抑えられます。IoTの活用が軌道に乗り始めてから拡張するといった運用も可能で、拡張性の高さを備えている点は魅力的なポイントの1つです。また、閉域網接続でプラットフォームを専有するプランもあり、セキュリティ対策もとれます。

Things Cloud®

▲用途に合わせて収集したセンサーや映像データを直観的UIで可視化

docomo IoT 高精度GNSS位置情報サービス:高精度な位置情報で機器などの自動操縦が可能に!

測位衛星システムGNSSからの測位情報を、国土地理院が提供する電子基準点に加えてドコモ基準点を活用して観測し、全国ほぼ全てのエリアを対象に、センチメートル精度の測位が可能となる位置補正情報を提供するサービスです。IoTプラットフォームと連携し、各デバイスの正確な位置情報を捉えながら制御することで、これまでIoTを活用できなかった領域への導入も可能になります。 たとえば、日本の農業ではアメリカやブラジルなどの大規模農業に比べると、農地が小さく区分けされているという特徴があり、そのような農地に対して大型の農機を自動操縦するには、より高い精度で機体の走行位置を把握する必要があります。位置補正情報を利用することでセンチメートル精度での機体位置把握が可能となります。

IoT Connect Gateway

まとめ

  • IoT プラットフォームとは?

    IoTプラットフォームとは、IoTデバイスから得られたデータを集積し、活用するためのシステム基盤です。IoTの中核を担い、IoTデバイスやIoTゲートウェイ、クラウド、基幹システムなどと連携する幅広い機能を備えています。

  • IoTプラットフォームの提供形態とメリット

    IoTプラットフォームは提供形態によって3種類に分類できます。コネクティビティに優れたネットワーク連動型、アプリの開発環境やサーバーを提供するクラウド型、導入先の業界に特化した産業特化型の3つです。

  • IoTプラットフォームの活用可能性は多岐にわたる

    IoTプラットフォームはさまざまな業界でデータの可視化・分析に役立てられています。商業施設・不動産業といった既存のビジネスをより効率化する事例のほか、インフラ・農業のように新たなビジネスモデルを創出するケースもあり、活用可能性は多岐に渡ります。

  • 自社の要件に合ったIoTプラットフォームを選定しよう

    IoTプラットフォームは、セキュリティ対策や通信規格の幅、開発・管理コストなど自社の状況に合ったものを選択することが重要です。また、今後の事業成長を見据えて、十分な拡張性を備えているか確認しておきましょう。

ドコモビジネスは、これからも社会やみなさまの普段の暮らしが、より一層豊かで充実したものとなるよう、IoTを通じて貢献してまいります。

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