リファクタリングとは?
コードの目的やメリットをわかりやすく解説
IT分野におけるリファクタリングとは、ソフトウェアの外部的な振る舞いを変えずに、内部のコードを改善する作業を指します。本記事では、リファクタリングの目的やメリットについて、日本語で簡単に解説します。動いているコードをなぜわざわざ修正するのか、その必要性や具体的な進め方について理解を深めることで、より品質の高いソフトウェア開発を目指せます。
リファクタリングを正しく理解し、日々の開発活動に活かしていくための知識を学びましょう。コードとは何かという基本から、実践的な内容までを網羅します。

目次
リファクタリングとは?コードの振る舞いを変えずに内部を改善すること
リファクタリングとは、ソフトウェアの外部から見た動作はそのままに、ソースコードの内部構造を整理・改善する作業を指します。
プログラムの機能追加やバグ修正とは異なり、その目的はコードの可読性や保守性を高めることにあります。
この作業の原則は、振る舞いを一切変えないことです。
例えば、処理速度の改善や、将来の仕様変更に備えてソースコードの内容をよりシンプルで理解しやすい形に再構築します。
リファクタリングは、ソフトウェアの品質を長期的に維持するための重要な開発プラクティスの1つです。
リファクタリングとバグ修正・機能追加の明確な違い
リファクタリングは、機能の追加や不具合の修正(バグ修正)とは明確に区別される活動です。
バグ修正は、エラーや意図しない挙動といった具体的な問題を解決するための改修作業であり、プログラムの振る舞いを正しい状態に変更します。
一方、機能追加は、ユーザーに新しい価値を提供するために、新たな動作をプログラムに実装する作業です。
これらに対してリファクタリングは、既存の機能や外部から見た振る舞いを一切変えずに、内部コードの品質向上のみを目的とする対応である点が大きな違いです。
リファクタリングが重要視される3つの目的
ソフトウェア開発においてリファクタリングが重要視される背景には、長期的な品質と生産性を維持するという明確な目的があります。
なぜ動いているコードに手を入れるのか、その必要性は、システムの成長とともに複雑化・属人化していくコードが、将来の開発の妨げになるのを防ぐという考え方にもとづいています。
良い設計を維持し、ソフトウェアの価値を長く保つために、コードの品質を継続的に改善する文化が開発現場では不可欠です。
このセクションでは、リファクタリングが目指す3つの主要な目的について解説します。
目的1:コードの可読性を高めて理解しやすくする
リファクタリングの主要な目的の1つは、コードの可読性を高めることです。
第三者がソースの意図を容易に理解できない、あるいは作成者本人ですら後から読み解くのが困難なコードは、バグの温床となり保守コストを増大させます。
具体的には、意味が分かりにくい変数名を実態に即した名前に変更したり、処理の意図を補足するコメントを追加したりします。
また、if文のネストが深くなりすぎている構造を単純化したり、1つの処理が長大な関数を目的ごとに分割したりすることも可読性の向上につながります。
略語を多用せず、誰が読んでも理解しやすいコードを目指す作業です。
目的2:コードの保守性を向上させて変更を容易にする
保守性を向上させることも、リファクタリングの重要な目的です。
開発が進むにつれてコードが複雑化し、部品間の依存関係が強くなると、少しの変更が予期せぬ広範囲な影響を及ぼすことがあります。
このような状態では、機能追加や仕様変更に多大な時間とコストがかかります。
リファクタリングでは、オブジェクト指向の考え方にもとづき、関連性の高い処理やデータを1つのモジュールとしてまとめる「モジュール化」や、重複する処理を共通の関数として切り出すといった手法で、コードの構造を再構築します。
これにより、変更に強く、拡張しやすい柔軟なアーキテクチャを維持し、長期的な保守を容易にします。
目的3:開発チーム全体の生産性を維持・向上させる
リファクタリングは、開発チーム全体の生産性を長期的に維持・向上させる目的も担います。
可読性や保守性が低いコードは、それを書いた本人しか理解できない「属人化」した状態に陥りがちです。
このような状況では、経験の浅いエンジニアやプロジェクトに新しく参加したメンバーが、既存のコードを理解するのに多くの時間を要し、開発のボトルネックとなります。
コードを誰にでも分かりやすい状態に保つことで、メンバー間の知識のギャップを埋め、レビューや引き継ぎがスムーズに進むようになります。
結果として、チーム全体の開発スピードが向上し、安定した生産性を維持できます。
リファクタリングによって得られる4つのメリット
リファクタリングを計画的に実施することは、開発プロセスに多くのメリットをもたらします。
コードの品質向上はもちろんのこと、長期的な視点で見れば開発コストの削減やシステムの性能向上にもつながります。
単なる自己満足の作業ではなく、ビジネス価値を高めるための投資として、その費用対効果は非常に高いと言えます。
コードの最適化を通じて、ソフトウェアの寿命を延ばし、変化に強いシステムを構築することが可能になります。
ここでは、リファクタリングによって得られる具体的な4つのメリットについて詳しく見ていきます。
メリット1:コードの保守性が向上し、改修が容易になる
リファクタリングによる最大のメリットは、コードの保守性が向上し、将来の改修作業が容易になる点です。
適切に構造化されたコードは、修正箇所や影響範囲の特定がしやすく、仕様変更や機能追加に迅速かつ安全に対応できます。
これは、システムのモダナイゼーション、例えばオンプレミス環境からクラウド環境へのマイグレーションなど、大規模な技術刷新を行う際の基盤としても重要です。
古い構造のままでは現代的なアーキテクチャへの移行は困難ですが、日頃からリファクタリングでコードを健全に保つことで、将来の技術적負債を減らし、システムの寿命を延ばすモダナイズにつながります。
メリット2:可読性が高まり、チーム開発がスムーズに進む
コードの可読性が高まることも、リファクタリングの大きなメリットです。
誰が読んでも処理の意図を理解しやすいコードは、チーム開発の効率を大幅に向上させます。
例えば、コードレビューの際に、レビュアーがロジックを理解するのにかかる時間が短縮され、より本質的な議論に集中できるようになります。
また、新しくチームに加わったメンバーが早期にコードを把握し、開発に参加できるため、教育コストの削減にも貢献します。
このように、リファクタリングは単なる技術的な改善に留まらず、チーム内のコミュニケーションを円滑にし、開発プロセス全体をスムーズにします。
メリット3:バグの原因特定が迅速になり、故障対応が早まる
リファクタリングによって整理されたコードは、システムに不具合が発生した際の対応速度を向上させるメリットがあります。
複雑に絡み合ったコードでは、1つのエラーがどこに影響を及ぼすのかを特定するのが困難で、問題解決までに多くの時間を要します。
一方、リファクタリングされたコードは、各モジュールの役割が明確で依存関係も整理されているため、不具合の原因となっている箇所を迅速に特定できます。
これにより、エラー発生から修正までの時間が短縮され、ユーザーへの影響を最小限に抑えることが可能となり、システムの安定稼働に直接的に貢献します。
メリット4:隠れたバグを発見し、将来の重大な問題を未然に防ぐ
リファクタリングの過程で、これまで表面化していなかった潜在的な不具合や設計上の問題を発見できるという副次的なメリットがあります。
コードの内部構造を改善しようと深く読み解く中で、「なぜこのような実装になっているのか」を再検討することになります。
その際、特定の条件下でしか発生しないエラーの種や、将来的に大きな問題に発展しかねない矛盾点に気づくことがあります。
このように、リファクタリングは既存のコードを健全化するだけでなく、将来発生しうる重大な不具合を未然に防ぎ、ソフトウェア全体の品質を向上させる予防的な保守活動としての側面も持ち合わせています。
リファクタリングを実施する前に知っておきたいデメリット
リファクタリングは多くのメリットをもたらす一方、実施には注意点も存在します。
無計画に進めると、かえって品質を低下させたり、開発スケジュールを圧迫したりするリスクがあります。
特に、直接的な利益に繋がらないため、リファクタリングに割く時間や費用について、ビジネスサイドの理解を得るのが難しい場合もあります。
リファクタリングをするな、と言われる状況や、あえてしないという戦略的判断が求められるケースも存在します。
ここでは、リファクタリングを始める前に理解しておくべきデメリットと、それらを回避するための計画の重要性について解説します。
開発工数がかかり、直接的な利益にはつながりにくい
リファクタリングの最大のデメリットは、直接的な売上や利益に結びつかないにもかかわらず、開発工数がかかる点です。
ユーザーから見える機能が増えるわけではないため、リファクタリングのための時間や費用を確保することの重要性が、非エンジニアには理解されにくい傾向があります。
短期的な視点では、その工数を新機能の開発に充てるべきだという判断になりがちで、開発リソースの配分において優先順位が低く設定されることも少なくありません。
このため、リファクタリングの必要性を説明する際は、長期的な保守コストの削減や将来の開発速度の維持といった、間接的な費用対効果を明確に提示する必要があります。
意図しないバグを生む可能性があり、慎重なテストが必要になる
正常に動作しているコードに手を入れるため、リファクタリングには意図しない不具合を新たに生み出してしまうリスクが常に伴います。
コードの変更箇所が他の部分に予期せぬ影響を与え、これまで問題のなかった機能でエラーが発生する可能性があります。
このリスクを最小限に抑えるためには、リファクタリングの前後で徹底的なテストを実施することが不可欠です。
しかし、テストの設計や実施にも相応の工数がかかります。
テストが不十分なままリファクタリングを行うと、システムの品質を向上させるどころか、逆に不安定にしてしまう危険性があるため、慎重な進行が求められます。
既存の仕様を正しく理解していないと、挙動が変わってしまう恐れがある
リファクタリングを行う上で、対象となるコードの仕様を完全に理解していることが大前提となります。
特に、長年運用され、ドキュメントが整備されていないシステムでは、一見非効率に見えるコードが、実は特定の条件下でのエッジケースに対応するための重要な役割を担っている場合があります。
担当者がその背景や設計思想を理解しないまま、コードの見た目だけを綺麗にしようと変更を加えると、隠れていた仕様が失われ、外部から見た挙動が変わってしまう問題を引き起こしかねません。
表面的な理解での安易な変更は、システムの信頼性を損なう深刻な結果を招く恐れがあります。
リファクタリングを検討すべき適切なタイミング
リファクタリングは、いつ行っても良いというわけではありません。
効果を最大化するためには、開発プロセスの中で適切なタイミングを見計らって戦略的に実施することが重要です。
場当たり的に手をつけるのではなく、「技術的負債」の返済計画として、日々の開発サイクルに組み込んだり、特定のイベントをきっかけに行ったりするのが一般的です。
ここでは、リファクタリングを検討すべき代表的なタイミングをいくつか紹介し、より効果的な実践方法を探ります。
機能追加や仕様変更を行う前
新しい機能追加や既存機能の仕様変更を行う前は、リファクタリングを実施する絶好のタイミングです。
改修対象のコードが複雑で理解しにくい状態のまま作業を始めると、変更による影響範囲の調査に時間がかかり、新たなバグを埋め込むリスクも高まります。
そこで、本格的な開発に着手する前に、まず関連箇所のコードを整理し、見通しを良くしておくのです。
この準備作業により、コードの構造が明確になり、安全かつ効率的に機能追加の作業を進めることが可能になります。
これは「ボーイスカウト・ルール(来た時よりも美しく)」の実践とも言えます。
コードレビューで改善点が見つかった時
コードレビューは、リファクタリングのきっかけとなる重要なプロセスです。
自分では気づかなかった冗長な処理、分かりにくい変数名、より効率的な実装方法など、第三者の客観的な視点から改善点が提案されることがあります。
このようなフィードバックは、コードの品質を向上させる絶好の機会です。
レビューで指摘された点を単に修正するだけでなく、なぜそのような提案がされたのかを考え、根本的な構造改善の必要性がないかチェックする習慣をつけることが望ましいです。
小さな改善提案をきっかけにリファクタリングを行う文化をチームに根付かせることで、コード全体の品質を継続的に高めていけます。
同じようなコードが複数箇所に存在する場合
ソースコード内に、コピー&ペーストしたような同じ、あるいは非常によく似たコードが複数箇所に存在している場合、それはリファクタリングを検討すべき明確なサインです。
このような重複コードは、将来仕様変更が必要になった際に、すべての該当箇所を漏れなく修正しなければならず、修正漏れによるバグの温床となります。
リファクタリングでは、これらの重複部分を1つの共通関数やメソッドとして抽出し、それぞれの場所からはその関数を呼び出す形に修正します。
これにより、コードの総量を削減できるだけでなく、修正箇所が一元化されるため、保守性が劇的に向上します。
失敗しないためのリファクタリングの基本的な進め方
リファクタリングを成功させるためには、思いつきでコードを書き換えるのではなく、確立された基本の手順に沿って慎重に進めることが重要です。
リスクを最小限に抑えつつ、確実にコードの品質を向上させるためには、体系的なアプローチが不可欠です。
ここでは、多くの開発現場で実践されている、失敗しにくいリファクタリングの基本的な進め方とテクニックを4つのステップに分けて解説します。
この手順を守ることで、安全かつ効果的な方法でリファクタリングを実践できます。
ステップ1:改善したい範囲を明確に特定する
リファクタリングを始める最初のステップは、作業範囲を明確に特定することです。
一度にシステム全体のような広範囲を対象にすると、変更が多岐にわたり、リスク管理が困難になります。
そうではなく、「このクラスの可読性を上げる」「この関数の重複コードをなくす」といったように、具体的で小さなタスクに分割することが重要です。
改善の目的とゴールを明確にし、スコープを限定することで、作業の見通しが立ちやすくなります。
また、小さな単位で進めることで、もし問題が発生しても原因の特定が容易になり、安全に作業を進めることができます。
ステップ2:変更前の状態でテストを確実に実行する
コードに手を加える前に、現在の振る舞いを保証するためのテストコードを準備し、実行することが不可欠です。
リファクタリングは外部の挙動を変えないことが原則であり、その原則が守られているかを確認する客観的な指標がテストです。
特に、細かい単位で機能を検証できる単体テストが整備されていると、変更による意図しない影響(デグレード)を検出しやすくなります。
もし対象範囲のテストがなければ、まずテストを作成することから始めるべきです。
このステップを省略すると、リファクタリングが成功したかどうかを自信を持って判断できません。
テスト駆動開発はこのプロセスを体系化したものです。
ステップ3:コードを少しずつ段階的に修正する
テストの準備ができたら、実際にコードを修正していきますが、その際は必ず少しずつ段階的に進めることを心がけます。
例えば、「変数名を1つ変更する」「if文の条件式を1つ単純化する」といった非常に小さな単位で変更を加え、その都度コンパイルが通り、テストが成功することを確認します。
この継続的なフィードバックループを回すことで、万が一バグを埋め込んでしまっても、直前の小さな変更が原因であるとすぐに特定でき、容易に元に戻せます。
大規模な変更を一度に行うと、問題発生時の原因究明が困難になるため、時間はかかっても着実に進めるアプローチが重要です。
ステップ4:修正後に再度テストを行い、動作を確認する
一連のコード修正が完了したら、最後のステップとして、ステップ2で実行したすべてのテストを再度実行します。
この最終テストにすべて合格することで、リファクタリングの前後でソフトウェアの外部的な振る舞いが変わっていないことを客観的に証明できます。
ここでの評価をもって、一サイクルのリファクタリングが安全に完了したと判断できます。
この最終確認を怠ると、気づかないうちにバグが混入したままコードがリリースされてしまう危険性があります。
修正、テスト、評価のサイクルを繰り返すことが、リファクタリングを成功に導く鍵です。
リファクタリングに関するよくある質問
リファクタリングは、概念の理解から実践に至るまで、多くのエンジニアが疑問を抱くテーマです。
ここでは、リファクタリングに関して特によく寄せられる質問をいくつか取り上げ、簡潔に回答します。
どこから手をつければ良いのか、いつ終わるのかといった実践的な悩みから、スキルアップの方法まで、専門的な内容を分かりやすく解説します。
これらのQ&Aを通じて、リファクタリングへの理解をさらに深めるための支援となる情報を紹介するサイトもあります。
リファクタリングに終わりはありますか?
結論として、ソフトウェアが存続し、変更が加えられる限り、リファクタリングに明確な終わりはありません。
機能追加や仕様変更によって、最適だったはずのコードは少しずつ劣化していくため、品質を維持するには継続的な改善活動が不可欠です。
リファクタリングは一度きりのイベントではなく、日々の開発に組み込まれるべき継続的なプロセスと捉えるのが適切です。
どこから手をつければ良いかわからない場合はどうすれば?
まずは、変更による影響範囲が限定的で、改善効果が分かりやすい箇所から着手するのがおすすめです。
具体的には、意味が不明確な変数名の変更、長すぎる関数の分割、深いネスト構造(if文の多重化など)の単純化といった、比較的小さなリファクタリングから始めると良いでしょう。
これらは「コードの臭い」とも呼ばれ、改善の分かりやすい出発点となります。
リファクタリングのスキルを向上させるにはどうすれば良いですか?
Martin Fowler氏の著書に代表されるリファクタリングのカタログを学び、さまざまな改善パターンを知識として身につけることが基本です。
また、IntelliJやVSCodeなどの高機能なIDEが持つリファクタリング支援ツールを積極的に活用し、機械的に行える改善に慣れるのも有効です。
最近では、Amazon CodeWhispererやGitHub Copilot、ChatGPTといった生成AIにコードの改善案を相談しながらコーディングするのもスキル向上につながります。
まとめ
本記事では、リファクタリングの基本的な概念から、その目的、メリット・デメリット、具体的な進め方までを解説しました。
リファクタリングとは、単にコードを綺麗にする作業ではなく、システムの保守性を高め、将来の変更に強い構造を維持するための不可欠な投資活動です。
効果的なリファクタリングの実践は、バグの発生を抑制し、チーム全体の開発効率を向上させます。
長期にわたり安定したサービスやアプリを提供していく上で、リファクタリングの重要性を理解し、日々の開発プロセスに組み込んでいくことが、ソフトウェアの価値を最大化する鍵となります。
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