ネオクラウドとは?
AI時代を支える次世代クラウド市場と注目企業・市場動向を解説

生成AIの学習や推論が急拡大する昨今、従来型クラウドでは処理能力が不足している状況です。そこで注目されているのが、AIワークロードに特化して設計された「ネオクラウド」です。

ネオクラウドはGPU や高速ネットワークを前提に構築され、大規模モデルの学習・推論、HPC、分散データ処理など高度な計算処理を効率的に実行できます。近年は GPU 供給不足やAIデータセンターの逼迫にともない、AI開発を行う企業にとってネオクラウドは高性能なリソースを確保できる貴重な場となります。

本記事では、ネオクラウドの仕組みや技術的な特徴、国内外の主要企業6社の特徴、今後の市場動向についてわかりやすく解説します。

ネオクラウドとは?AI時代を支える次世代クラウド市場と注目企業・市場動向を解説

ネオクラウドとは?

ネオクラウドとは、従来型クラウドとは異なり、AIワークロードに特化して設計された次世代型クラウドインフラのことです。

従来のクラウドは、Webサービス運用、業務システム、ストレージなどのワークロードを幅広くカバーする「汎用型」の設計が中心でした。一方、ネオクラウドはAI時代に必要とされる以下の処理に最適化されています。

  • 機械学習モデルの推論や学習
  • 大規模言語モデル(LLM)、画像認識
  • HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)
  • GPU を中心とした高性能AIインフラの提供

従来のクラウドではAI需要に対応できないため、新しいクラウドカテゴリとしてネオクラウドが注目されているのです。

ネオクラウドの技術的な特徴

ネオクラウドの技術的な特徴

ネオクラウドは、従来のクラウドサービスとは異なり、AI時代に求められる高度な計算処理や分散アーキテクチャー、データ主権への対応を重視した新しいクラウド形態です。

次に、ネオクラウドならではの技術的な3つの特徴を解説します。

AIワークロードに特化

ネオクラウドの最大の特徴は、AI・機械学習・HPといった演算負荷の極めて高いワークロードに最適化されている点です。AIモデルの学習・推論用に適したGPU やTPUなどのアクセラレータを標準提供するアーキテクチャーを採用しています。

従来のクラウドでは不足するGPUリソース、転送帯域、ハードウェアを最適化することで、AIタスクを高効率で実行することが可能です。

分散性に優れる

従来型の中央集中型クラウドに対し、ネオクラウドでは分散アーキテクチャーを採用し、マルチクラウドやハイブリッドクラウドなどの構成を取っています。そのため、故障に強いのがネオクラウドの特徴の1つです。

複数の拠点でAI 処理を行う企業にとって、故障耐性が高く、かつ地域分散したデータ処理にも強いインフラとしてメリットがあります。

データ主権とセキュリティ対策

ネオクラウドは、AIインフラとしての性能だけでなく、「データ主権(データレジデンシー)」やセキュリティ規制への対応も重視して設計されています。

データ主権とは、国家や地域が自国のデータに対し、管理権を持つという概念です。企業や組織がデータの収集や処理、保存をする場合、国の法律や規制に準拠する必要があります。

クラウドサービスの利用によって、データが複数の国に分散して保管されるようになります。ただし、その際に問題になるのが「どの国の法律でデータを守るのか」が曖昧になり、その結果法的なリスクが生じる可能性です。そのため、自国の法律や規制にもとづいてデータを保管するデータ主権の重要性が増しています。

また、このデータ主権の考えは、セキュリティ対策の視点でも重要です。データ主権を確保するための有効対策の1つとして、データを国内で管理することが挙げられます。そうすることで、先述の法的リスクの回避のほか、データが国境を越えて移動する際に起こり得るサイバー攻撃や情報漏えいなどのリスクの低減が見込まれます。

さらに、ゼロトラストによるアクセス制御や、分散暗号化による安全性の確保で、不正アクセスなどの脅威への対応が可能です。

ネオクラウドは国内でのデータの管理をはじめ、ゼロトラストや分散暗号化などを組み合わせることによって、より高い安全性を確保した運用が期待できます。

ネオクラウドが注目されている3つの理由

ネオクラウドが注目されている3つの理由

ネオクラウドが急速に存在感を高めている背景には、AI時代特有の課題と需要の変化があります。ネオクラウドへの注目が集まる、代表的な3つの理由について解説します。

GPUリソースの供給不足

現在、GPUの需要が世界的に急増しており、クラウドサービス提供者であっても十分な確保が難しい状況です。Microsoftのような巨大ハイパースケーラーであってもそれは同様で、GPUリソースを安定的に供給することが困難といわれています。

こうした状況のなか、ネオクラウド事業者はGPU特化型のインフラを大規模に構築し、外部企業に向けてGPUリソースを提供することで存在感を高めています。クラウドサービス提供者はネオクラウドのリソースをレンタルすることで、GPU調達難を解消できるだけでなく、自社のデータセンターのリソースを社内や主要顧客に提供することが可能です。

Microsoftは複数のネオクラウド企業に数兆円規模の投資を行なっており、外部インフラへの依存が強まっている状況にあります。

AI需要の急増

生成AIやLLM(大規模言語モデル)の普及により、AIワークロードに必要な計算能力の需要がかつてないほど拡大しています。AIモデルのトレーニングや推論に必要な演算処理能力が急激に増大し、既存クラウドの計算リソースでは不足するケースが増えています。

ネオクラウドはこうしたAI需要に合わせて最適化されており、GPUや高帯域ネットワークを前提としたアーキテクチャーを採用することで、複雑なAIモデルの処理を高速に実行できます。

大規模なテック企業だけでなく、AIモデルを迅速に開発したいスタートアップや中小企業がネオクラウドを利用するケースも増えています。従来のクラウドと比べて、手軽にAIリソースを確保できる点も、ネオクラウドが評価されている要因の1つです。

AIデータセンターの逼迫

Microsoft をはじめとした巨大クラウド企業では、自社でデータセンターを運営しています。

しかし、急増するAI需要に対応できる演算能力を、自社だけで確保することが難しい状況にあります。既存のデータセンターでは供給が追いつかず、AIインフラ全体のキャパシティも逼迫している状況です。

こうしたギャップを埋める存在として登場したのが、AI特化型のデータセンターを構築するネオクラウド事業者です。高い発熱や負荷に対応するGPUサーバーなどを備えた、AIに最適化したデータセンターを立ち上げることで、AIの需要と環境のギャップを埋めることが期待されています。

AIモデルのトレーニングをすぐに開始したい企業にとって、ネオクラウドは貴重なインフラの供給先となりつつあります。

主要なネオクラウド企業6選

ネオクラウドを提供する企業はアメリカや欧州が中心ですが、日本国内でもAI特化型インフラを展開する企業が登場しつつあります。アメリカや欧州では、CoreWeave や Nebius Group、Nscale、IREN、Crusoe Energyが、そして日本企業ではFRONTEOが国際的にも注目される主要企業です。

6社の国/地域、ネオクラウドの特徴は次のとおりです。

企業名 国/地域 特徴
CoreWeave アメリカ
  • GPU 特化型クラウドの代表格
  • NVIDIA と強力な提携でGPU の供給を確保し競合他社に対し優位性を持つ
  • AI ワークロードに最適化された独自サービスを展開
Nebius Group 欧州(EU圏中心)
  • CoreWeaveの最大の競合企業
  • 欧州やアメリカなど世界の各地にデータセンターを展開
  • 大手企業との提携により計算資源を提供、慢性的な計算資源不足の解消を目指す
Nscale イギリス
  • 高電力なAIとHPCをサポート、最大90MWまで対応するデータセンターを2026年に稼働予定
  • NVIDIAとの提携でイギリスのデータセンターに多くのGPUを導入、イギリスの主権AI成長の加速への寄与を目指す
IREN オーストラリア
  • 再生可能エネルギーによって稼働するデータセンターを運営
  • AI 向け計算リソースを強化
Crusoe Energy アメリカ
  • 余剰ガス(フレアガス)を電力に変換、データセンターの電力として稼働させる独自モデルで注目される
  • 環境負荷を抑えつつ、大量な電力を要する計算処理を安価で提供するクリーンAIクラウド企業
FRONTEO 日本
  • 自社開発の特化型AI「KIBIT」を活用したデータ解析基盤を提供
  • リーガルテック・メディカル分野に強みを持ち、かつハルシネーションのリスクを低減

ネオクラウドの市場予測

ネオクラウドの市場予測

AIインフラへの需要が急拡大するなか、ネオクラウド市場は2025年以降も大きな成長が見込まれています。次にネオクラウドの市場規模と成長予測、日本国内の動向について見ていきましょう。

ネオクラウドの市場規模と成長予測

2025年時点で、ネオクラウドの売上規模はすでに数百億ドルに達しており、クラウド市場のなかでも急成長を遂げる領域の1つです。特に、GPU特化型のAIインフラ需要が急増したことで、各社がデータセンター拡張やGPUサーバーの大量導入を進めたことで市場全体を押し上げています。

ネオクラウドの成長はさらに加速し、2030年には1,800億ドル、日本円にして約27兆円規模までに成長すると予測されています。

現在のクラウド市場では驚異的な成長率であり、AIインフラが今後のクラウド市場を牽引する中心となることを示唆しています。

前述したネオクラウド主要企業のうち、CoreWeave/Nebius Group/IRENは「ネオクラウド三銃士」と呼ばれています。これらの企業はデータセンター拡大やGPU調達力で急速に優位性を確立し、AI需要に対応できる体制を整えている点が特徴です。

その一方で、データセンター拡大によって利益が増加しているものの、電力消費や冷却設備の負荷が大きく、AIインフラ特有の運用コストやエネルギー管理の課題も浮き彫りになりつつあります。

日本国内の動向

日本国内でも、政府によるAIインフラへの投資や国内データセンター拡張の支援により、ネオクラウド関連の需要が急速に高まっている傾向です。

また、データ主権によるリスク対策の観点から、海外勢と差別化できる国内のデータセンターの利用や、ハイブリッドクラウド構成が有効な手段として注目されています。

ネオクラウドを扱う際には、運用管理やセキュリティ対策を講じなければならず、その複雑性が増す可能性もあることから、利用する企業側にはより高度なクラウド運用体制が求められます。

まとめ

ネオクラウドは、AI・機械学習・HPCといった高負荷ワークロードに最適化した次世代型クラウドです。GPU不足やAIデータセンターの逼迫という世界的な課題を背景に、CoreWeave や Nebius Group をはじめとした特化企業の台頭が続き、市場規模は2030年に27兆円まで拡大すると予測されています。その一方で、ネオクラウドを含む複数クラウドを組み合わせた環境では、構築・運用・セキュリティなど体制整備が求められます。

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