SaaSとは?
導入メリットや安全・快適な使用方法について
通信環境の高速化、大容量化に伴い、ソフトウェアはパッケージで購入する時代からダウンロードする時代へと移行しました。そして現在は、さらにソフトウェアをインストールすることなくサービスとして利用する「SaaS」への移行が始まっています。SaaSには、コスト削減、運用管理業務の効率化などさまざまなメリットがあり、製造業、小売業、サービス業など多種多様な業界においてDX化を実現する切り札としても期待されています。
そこで今回は、SaaSとは何か、どのような種類があるかをあらためて解説するとともに、導入のメリットやおすすめのSaaSソリューションについて解説します。業務効率化やDX化に課題を抱えている企業の皆さまは、ぜひ最後までお読みください。

SaaSとは
「SaaS」は「Software as a Service(ソフトウェア・アズ・ア・サービス)」の略で、「サース」または「サーズ」と読みます。クラウド上のソフトウェアを必要なときに必要なだけ「サービス」として利用する仕組みで、主にサブスクリプション型で提供されます。
従来のインストールが必要な「パッケージ型ソフトウェア」と比較すると、バージョンアップなどで買い直しをする必要がないためコスト削減が図れること、またユーザー数の増減に伴いID数やプランを変更できるという柔軟なスケーラビリティなどのメリットが評価され、業務での活用が拡大しています。
「SaaS」と似た言葉に、「PaaS」と「IaaS」があります。「PaaS」は「Platform as a Service(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)」の略で、「パース」と読むことが多いようです。クラウド上の開発プラットフォームを「サービス」として利用する仕組みで、開発環境を低コストで構築したい場合や、短期間で開発を進めたい場合などに適しています。
一方、「IaaS」は「Infrastructure as a Service(インフラストラクチャ・アズ・ア・サービス)」の略で、「イアース」または「アイアース」と読みます。クラウド上の仮想サーバーやネットワークと言ったインフラを「サービス」として利用する仕組みで、オンプレミス環境からクラウド環境に移行したい場合や、PaaSでは実現できない特殊な開発環境を構築したい場合に適しています。
「SaaS」「PaaS」「IaaS」は、すべてクラウドサービスであり、主にサブスクリプション型で利用するという共通点があります。総務省の「情報通信白書令和7年版」によれば、2024年時点で実に80.6%の企業がクラウドサービスを利用しているという統計が出ています。利用するサービスの内訳として「ファイル保管・データ共有」「社内情報共有・ポータル」「電子メール」「給与、財務会計、人事」「スケジュール共有」など各種SaaSが挙げられており、SaaSが積極的に業務に活用されている実態が見えてきます。
ちなみに、SaaSのうち、建設業で使用する工程管理ソフトウェアや、小売業で使用するPOSレジ管理ソフトウェアなど、特定の業界に特化したものを「バーティカルSaaS」と呼びます。それに対し、グループウェアや会計ソフトウェアなど、業界横断的に使用されるものを「ホリゾンタルSaaS」を呼びます。
また、近年では、生成AI機能や機械学習機能を備えた「AI SaaS」も登場しています。AI SaaSは、私たちが普段使用しているいわゆる「自然言語」による指示が可能であることに加え、機械学習機能により使用するごとに自社の業務に合わせて成長し、さらに自律的に業務を効率化できるため、今後の活用が期待されています。
経済産業省の「SaaS 向けSLA ガイドライン」では、SaaSは「大手企業と比較してIT投資力が低い中小企業にとっても、SaaS を利用することで比較的低コストで大手企業と同等のIT環境を整備すること」が可能と位置づけています。SaaSは大企業にとどまらず、中堅・中小企業にとっても有効なサービスと言えます。
SaaSの代表例
ホリゾンタルSaaSの代表例には次のようなものあります。
オフィスソフトウェア
文書やプレゼン資料を作成するソフトウェアです。SaaSに移行することで、従来のパッケージ型のオフィスソフトウェアと比較して複数人によるファイルの編集が可能となる、クラウド上での情報共有が可能となるなどのメリットがあります。代表的なものにMicrosoft 365やGoogle Workspaceがあります。
グループウェア
チーム内での情報共有を目的としたメールソフトウェア、スケジュール管理ソフトウェア、Wikiソフトウェアなどを指します。チーム編成の変更に応じて、SaaSの柔軟なスケーラビリティというメリットを生かすことができます。代表的なものに、メールではMicrosoftのOutlook、GoogleのGmail、スケジュール管理ソフトウェアではサイボウズ、WikiソフトウェアではNotionやNotePMなどがあります。
Web会議用ソフトウェア
Web上で会議を実施できるソフトウェアです。在宅勤務を始めとするリモートワークが普及した環境において、チームメンバー間で情報を共有する手段として急速に普及しました。代表的なものに、ZoomやTeamsなどがあります。
営業支援システム
新規顧客開拓を支援するSFA(Sales Force Automation:営業支援システム)、既存顧客の情報を管理するCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)などです。代表的なものに、SalesforceやHubSpotがあります。
基幹業務システム(ERP)
ERP(Enterprise Resource Planning:企業資源計画)は、企業の保有する経営資源(ヒト、モノ、カネ)を効率的に活用するための計画を指します。具体的には、営業支援システム、財務会計ソフトウェア、生産・在庫管理機能、人事・給与管理機能などが「ERPパッケージ」としてSaaSで提供されています。代表的なものにOracle Fusion Cloud ERP、奉行クラウドなどがあります。
セキュリティ対策サービス
SaaS形式でファイアウォール、ウイルス対策、Webアプリケーション防御(WAF)などのセキュリティ対策機能を提供します。そうした機能をまとめて提供するUTM(Unified Threat Management、統合脅威管理)もあります。代表的なものにZscaler、Cloudflareなどがあります。
基盤系サービス
SaaSのうち、ID管理・認証などの基盤を提供するものを「IDaaS(ID as a Service:アイダース)」と呼びます。一度ログインすれば複数のクラウドサービスを利用できる「SSO(Single Sign On:シングルサインオン)」機能により業務を効率化できるとともに、多要素認証機能やアクセス制御機能によりセキュリティを向上することができます。代表的なものにZscalerやGoogle Cloud Identityがあります。
SaaSを導入するメリット・デメリット
導入を検討する際には、次のようなSaaSのメリット、デメリットを押さえておくことが重要でしょう。
SaaSのメリット
従来のインストール型のソフトウェアと比較すると、次のようなメリットがあります。
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導入コストを抑えることができる
新たな機器の購入が必要ないため、導入コスト(初期費用)を抑えることができます。また、ユーザー数を絞ってスモールスタートからの本格導入も可能です。 -
迅速な導入が可能
一般的にブラウザベースで動作するため、操作習熟の必要がなく、迅速に導入し利用を開始することができます。 -
ランニングコストを抑えることができる
多くのSaaSは、共通の基盤を複数ユーザーで共用する「マルチテナント」方式を採用しています。そのため、アカウント数や利用状況によりますが、一般的にランニングコストを抑えることができます。 -
柔軟なスケーラビリティ
社員やチームメンバーの増減に合わせてユーザー数を速やかに変更できるため、コストを抑え、効率的に利用できます。 -
ソフトウェアアップデートの必要がない
ソフトウェアのアップデートはベンダー側が実施します。そのため、ユーザー側は常に最新バージョンのアプリケーションを利用可能で、新機能が追加されれば即座に利用できます。 -
運用保守負担が軽減される
ソフトウェアの管理、運用、ヘルプデスクはベンダーが担当します。そのため、自社のIT担当者の負担を軽減することができます。 -
セキュリティ対策負担が軽減される
クラウド環境(ハードウェア、プラットフォーム)のセキュリティ対策はベンダーが実施します。また、ソフトウェアに脆弱性などが発見された場合の対応もベンダーが対応します。 -
遠隔地からも利用可能
SaaSは在宅環境や支社・支店などの遠隔地からも利用できるため、リモートワークなどでもオフィス同様の利用が可能です。
SaaSのデメリット
一方で、次のようなデメリットもあります。
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カスタマイズ性が低い
前述したように、SaaSはマルチテナント方式で提供されているため、ユーザーごとにカスタマイズできる範囲は限られます。大幅なカスタマイズが必要な場合は、PaaSやIaaSを利用した自社開発も検討しましょう。 -
サービス停止時に業務が滞る恐れがある
SaaSの運用はベンダー側に委ねられています。たとえばサービスが停止した場合、復旧に向けてユーザー側でできる対策はほとんどありません。予めサービス停止時の業務継続性について検討しておきましょう。 -
ベンダーロックインが起きやすく、乗り換えが困難
一般的にSaaSは同種の別サービスへの移行は想定されていません。特にグループウェアやERPなど、規模の大きいサービスを導入する場合には、データの書き出しや移行支援サービスがあるかどうかも確認しましょう。 -
サービス終了時にデータが消失する場合がある
サービスによっては、利用終了と同時にデータが削除される場合があります。クラウドストレージやグループウェアを導入する際には、利用終了時のデータの扱いについて確認しておきましょう。 -
セキュリティに課題が生じる場合がある
SaaSではソフトウェアおよびソフトウェアの動作基盤に対するセキュリティ対策はベンダーに委ねられます。そのため、ベンダーのセキュリティ対策が不十分だった場合、自社の保存データが漏えいしたり、改ざんされたりする恐れがあります。
SaaSを安全・快適に使用するには
SaaSを安全・快適に使用するため、導入前に次の2点について確認しておくと良いでしょう。
パフォーマンスは十分か
サービス選択時には、各種パフォーマンス(可用性、スケーラビリティ、応答速度・操作性など)を確認しておきましょう。併せて、サポート提供体制(電話によるお問い合わせが可能か、日本語によるお問い合わせが可能かなど)、故障対応なども確認しておきましょう。また、SaaSはネットワークを介して利用するため、自社の通信環境によって使用感が異なります。利用による通信量の増加を勘案し、必要に応じて回線を増強することも検討しましょう。
提供するサービスの品質を取り決めた「SLA(Service Level Agreement)」というものがあります。SLAでは、例えば次のような項目についてベンダーは契約前に数値を明示します。
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可用性
サービス提供時間(「24時間365日」など)、サービス稼働率(「99%以上」など)、アップグレード方針(「年2回」など) -
信頼性
平均復旧時間(「12時間以内」など)、故障発生件数(「3回」など)、ログの取得(「あり」など) -
性能
応答時間(「データセンター内応答時間3秒以内」など)、遅延(「データセンター内の応答時間が3秒以上となる遅延の継続時間が1時間以内」など)、バッチ処理時間(「4時間以内」など) -
拡張性
カスタマイズ性(「メニュー項目の並べ替え、項目の編集可」など)、外部接続性(「API公開」など)、同時接続利用者数(「50ユーザーまで」など) -
サポート
故障対応(「24時間365日の電話対応」など)、一般的なお問い合わせ(「営業時間内のメール対応」など) -
データ管理
バックアップの方法(「日次で差分バックアップ」など)、バックアップの保存期間(「5年間」など)、データ保護のための暗号化要件(「あり」など) -
セキュリティ
通信の暗号化レベル(「AES-128-GCM」など)、ウイルススキャン(「週次」など)
上記は、2010年に経済産業省が国際基準に先んじて公表した「SaaS向けSLAガイドライン」の項目です。公表から10年以上が経ちますが、現在でも多くの企業がこのガイドラインをベースにSLAを決定しています。SaaSを快適に利用するため、導入前に、SLAの内容を確認しておきましょう。
また、複数のSaaSを利用する場合には、API連携や基盤系サービスの導入も検討すると、より快適に使用することができるでしょう。
セキュリティ対策は十分か
セキュリティに関しては、ISMS(Information Security Management System:情報セキュリティマネジメントシステム)認証を受けているかが1つの目安となります。ISMS認証は、ベンダーが国際規格であるISO/IEC 27001の安全基準に適合していることを認証する制度です。特にリモートワークでSaaSを利用する場合には、情報漏えい対策としてISMS認証を受けているかを確認しましょう。
ISMS認証を受けた企業は、具体的には次のようなセキュリティ面の基準を満たしていることが保証されているため、安心して利用することができます。
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厳格なユーザー管理
多段階認証、適切なアカウント発行・削除によるユーザー管理 -
アクセス管理
デバイス管理、アクセスログ保存・分析によるアクセス管理 -
セキュリティ対策
脆弱性対策などのセキュリティ対策 -
インシデント対応
インシデント発生時の迅速な復旧対応
そのほか、自社が使用するスマートフォンやタブレットPCなど、モバイル対応について、またクラウド基盤は提供者側の管理となるため、データ保護の観点から自社でバックアップを取ることなどが必要となります。セキュリティインシデントを避けるため、社員のコンプライアンス向上を目的とした教育を実施することも必要でしょう。
ここでは、おすすめのSaaSとしてNTTドコモビジネスの「X Managed Platform®」を紹介します。「X Managed®」は、ICTインフラ管理業務をアウトソーシングできるセミオーダー型のサービスです。システムの要件定義・設計、機器実装・展開、ICT運用を一貫して担当することで、運用負荷を軽減します。X Managed®を支えるAI・自動化基盤としてSaaS型の「X Managed Platform®」を組み込んでおり、故障対応自動化、アップデート自動化などを行います。また、セキュリティ機能も豊富に取りそろえています。ITの運用管理業務に課題を感じている場合は、導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、クラウド上のソフトウェアをサービスとしてサブスクリプション形式で利用する「SaaS(Software as a Service)」について解説しました。
SaaSにはオフィスソフトウェア、グループウェア、Web会議用ソフトウェアなど、さまざまな種類があり、用途に合わせて選択し導入することができます。
また、「コストを抑えることができる」「迅速な導入が可能」「柔軟なスケーラビリティ」などのメリットがある一方、導入する際には「パフォーマンスは十分か」「セキュリティ対策は十分か」など確認すべき事項もあります。
今回の記事を参考に、SaaSの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

