MSSの基礎知識|
セキュリティ運用における必要性とメリット・注意点を解説

DXやテレワークの加速により、企業を取り巻くサイバー脅威は高度化・巧妙化し続けています。しかし、セキュリティ人材の不足により、自社だけで十分な監視・防御体制を構築するのは困難な状況です。こうした課題を解決する手段として注目されているのが、セキュリティ運用を専門ベンダーにアウトソースできるMSS(Managed Security Service)です。

本記事では、MSSの概要や導入が求められる背景、メリット・デメリット、MDRとの違い、導入時の注意点までを整理し、自社に最適なセキュリティ運用体制を検討するためのポイントを解説します。

MSSの基礎知識|セキュリティ運用における必要性とメリット・注意点を解説

MSS(Managed Security Service)とは?

MSS(マネージドセキュリティサービス)とは、企業のセキュリティ対策の運用・管理を代行するアウトソーシングサービスのことです。

WAFやファイアウォール、IDS/IPS(不正侵入検知・防御システム)、エンドポイントセキュリティなど、サイバー攻撃の防御に不可欠な仕組みを24時間365日体制で監視します。何らかの異常やインシデントを検知した場合、アラートにて通知するのがMSSの重要な役割です。

MSSを提供するセキュリティベンダーによっては、監視や検知だけでなく、インシデント後の対応や助言、回復の支援などもカバーするケースもあります。

MSSを導入する必要性と時代背景

MSSを導入する必要性と時代背景

近年の急速なデジタル化とAIを利用したサイバー攻撃により、従来のセキュリティ対策では防ぎきれない状況に陥りつつあるため、各企業においてはそれらへの対策が急務です。

ここからは、企業がMSSを導入すべき具体的な理由と必要性について解説します。

サイバー攻撃の増加・高度化

DX化やテレワークなど、ITの普及にともない、デジタル環境が急速に発展している状況にあります。

総務省の「情報通信白書」によると、サイバーセキュリティ上の脅威が年々増加傾向にあり、2024年には過去最高の観測数を確認しています。特に、近年はランサムウェアを用いた攻撃やIoT機器を狙った攻撃が深刻化しており、国内でも社会経済に大きな影響をおよぼす事例が継続的に発生しています。

出典:
令和7年版 情報通信白書 サイバーセキュリティ上の脅威の増大|総務省
令和6年版 情報通信白書 サイバーセキュリティ上の脅威の増大|総務省

2025年9月~10月にかけて、アサヒグループホールディングスとアスクルで大規模なシステム故障が発生しました。いずれもランサムウェア攻撃によるもので、一時的な物流・受発注システムのトラブルや顧客情報の漏えいなどの被害が発生しています。

2025年11月27日には、アサヒグループホールディングスが約191万件もの情報漏えいが発生した可能性について公表しました。

ランサムウェアによる被害はサプライチェーン全体に波及し、企業活動に重大な影響を与えます。こうした背景から、24時間365日の監視体制の実施と、高度な分析能力を備えたMSSの需要が急速に拡大しているのです。

セキュリティ人材の確保が困難

サイバー攻撃が複雑化する一方で、企業が自社内に十分なセキュリティ人材を確保することは非常に困難になっています。なぜなら、セキュリティ機器やサービスを安全に運用・監視するには、高い専門性が求められるためです。

IT人材が不足した状態では監視体制が十分ではなく、インシデントの対応遅れや見逃しリスクが高まります。攻撃を封じ込めることができず、被害が拡大するおそれも否定できません。

自社で人材確保・運用体制を構築する代わりに、専門的な知識を持つベンダーのMSSを活用するニーズが高まっているのです。

MSSを導入する5つのメリット

MSSを導入する5つのメリット

企業がMSSを導入する、代表的な5つのメリットについて解説します。

自社のセキュリティ運用における最適解を把握可能

MSSでは経験豊富なセキュリティアナリストが対応しており、企業の環境や課題に応じた最適な運用方法を提案しています。

MSSを利用することで専門家の知見を活用できるため、セキュリティ運用における最適解を理解、実装することが可能です。また、MSSのスキルを持つ担当者とのコミュニケーションを通じて、会社の将来を見据えたステップアップ法を理解できます。

セキュリティ運用の負担やコストの削減

自社でセキュリティを運用するには、ファイアウォール、WAF、IDS/IPSなどの監視やメンテナンスが必要です。多数のアラート分析・対応作業など、セキュリティ運用・監視は非常に負担のかかる作業となります。

MSSにセキュリティ運用を委託することで、セキュリティ専任の人材採用・教育・維持にかかるコストや工数を削減できます。また、時間を取られる業務をMSSに任せられるため、自社はコア業務に集中できる点もメリットといえるでしょう。

24時間365日の監視体制を実現

MSSを導入すると、「24時間365日、ログ監視・異常検知・インシデントアラート」まで対応してくれます。そもそも自社で24時間体制の監視センターを構築するのは困難であるため、MSSが大いに役立つでしょう。

サイバー攻撃は、企業側の監視が手薄になる「休日や深夜帯」を狙うケースも少なくありません。24時間体制の常時監視でセキュリティが監視されているため、万一の侵入や攻撃に対して早期発見できる可能性も高まります。

最新技術によるセキュリティレベルの向上

クラウド、IoT、リモートワーク環境、SaaSなどデジタル環境が複雑化するなか、最新のセキュリティ対策を自社で講じるのは困難です。

MSSベンダーは専門知識を持ったセキュリティ技術者集団であり、最新の動向や最新技術の知見を持っています。最新のセキュリティ技術を活用できるため、自社でセキュリティ対策するときと比べてインシデントの対応力の底上げが期待できます。

インシデントの早期検知とスムーズな初動対応

MSSは24時間体制での監視により、異常なログや攻撃の兆候をリアルタイムで検知します。インシデントが見つかった際にはアラートが通知されるため、被害の拡大を最小限に抑えることが可能です。

また、MSSの導入で攻撃を「見逃すリスク」が大幅に低減されるため、企業のセキュリティ体制を強固にできます。

MSSに関する3つのデメリット

MSSに関する3つのデメリット

MSSは企業のセキュリティ運用を支える有効なサービスですが、導入にあたって注意すべきデメリットも存在します。ここでは代表的な3つのデメリットを解説します。

MSSの導入で運用コストが高くなる可能性がある

MSSを導入した場合、サービス契約費用や監視・運用委託費用、ログ収集やログ連携、機器連携などのコストが発生します。

MSSに依頼するサービスの利用範囲が広くなると運用コストも高くなるため、すべての業務を外部に任せるのではなく、自社で賄う範囲を見極めることが適切です。

未知の脅威には対応できない

MSS は、既知の脅威・ログ監視・パターン検知にもとづくサービスが中心です。未知の攻撃など、対応できる内容に限界があります。

また、対象機器・ログ種類・分析深度など、範囲が限定されている場合、自社が想定する攻撃シナリオをカバーできない可能性があります。

そのため、MSSだけで完全なセキュリティを実現することはできず、自社の想定するリスクをカバーできているかを確認することが不可欠です。

MSSにセキュリティ運用を「丸投げ」できない

多くの企業が誤解しがちですが、MSSを導入したとしても、セキュリティシステムの運用や監視を「丸投げして終わり」になるサービスではありません。

MSSはセキュリティ機器の監視・ログ分析・アラート通知が中心です。そのため攻撃を検知した際の対応方針は自社で資料として明文化しておくべきでしょう。

また、以下の内容などは各MSSが展開するサービス内容によって対応の可否が異なります。

  • 脅威に対する早期の検知や遮断
  • 発生したインシデントに対する復旧作業
  • アプリケーションに対するパッチ適用

MSSを導入したとしても、セキュリティに関するすべてを担ってもらえるわけではありません。社内でもセキュリティに関するリテラシーを向上させることが大切です。

MSSを導入するときの注意点

MSSを導入する場合、サービスの特性や役割を理解したうえで、自社の課題に適したプランを選ぶことが重要です。以下に、MSSの導入前に必ず確認しておきたい、2つの注意点について解説します。

対応範囲を事前に確認する

MSSはベンダーごとにサービス範囲が異なるため、「どこまで対応してくれるのか」を事前に明確にしておく必要があります。MSSは、以下のように対応範囲が限定される場合があるので確認が必要です。

  • 特定のセキュリティ機器のみ監視対象になる
  • 検知と一次対応のみ提供し、復旧は対応範囲に含まれていない

契約によってできる業務が大きく異なるため、「やってほしい作業が実は対象外だった」という状態が起きかねません。MSSの導入を検討する際は、以下の項目を確認しましょう。

  • 24時間365日など監視の対応時間
  • 対応の即時性やお問い合わせ方法
  • 監視以外のサービスの展開範囲、サービス内容のカスタマイズ性
  • 解約時の対応や違約金の有無

MSSとMDRの違いを把握する

MSSの役割は、企業のセキュリティ対策の運用・管理を代行し、インシデント発生を未然に防ぐことです。一方、「MDR」は未知なる脅威の検出が可能で、初動対応や封じ込め、インシデントの復旧支援までを提供します。

MSSとMDRの違いについての概要は次の一覧のとおりです。

比較項目 MSS MDR
目的 監視・予兆検知による予防 侵害発生後の早期検知・対応
おもな対応範囲 ログ監視・アラート通知 脅威ハンティング・初動対応
対応できる脅威 既知の攻撃が中心 未知の攻撃・高度な脅威にも対応
インシデント対応 対応しない(通知が中心) 封じ込め・原因分析まで支援
提供される技術 ファイアウォールなどの運用保守、ログ分析など EDR・脅威分析など

上記のように、MSSの未対応範囲をMDRで補完することにより、セキュリティ対策をさらに強固にできます。MSSとMDRの違いを把握したうえで、自社の課題や必要な対応レベルに合ったサービスを選ぶことが適切です。

まとめ

MSSは、ファイアウォールやIDS/IPSなどのセキュリティ機器の監視・運用を専門家に委託し、24時間365日の監視体制やインシデントの早期検知を実現できるソリューションです。人材不足や攻撃の高度化が進むなか、自社だけでセキュリティ対策を担うことは現実的とはいえません。MSSとMDRを組み合わせて多層防御を構築することが、これからの企業に求められるセキュリティ戦略といえるでしょう。

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