少子高齢化により、日本企業はこれまでにない課題に直面しています。2030年には、後継者不足や市場縮小などが顕在化し、企業経営に深刻な影響を及ぼすと予測されています。
2030年問題は、特に人手に依存した業務体制やノウハウの属人化を抱える企業は、今後の事業成長を左右する要因となるでしょう。このような課題を乗り越える手段として注目されているのが、業務プロセスを根本的に見直すDXです。
本記事では2030年問題の影響を受けやすい業界や、DXを実施すべき理由、業界別の導入事例までわかりやすく解説します。
2030年問題への理解を深め、自社に合ったDXの方向性を検討していきましょう。
2030年問題とは少子高齢化にともなう人口減少により、日本が直面する社会問題を総称する言葉です。内閣府(※)によると、2024年の総人口は1億2,380万人で、そのうち65歳以上の人口が3,624万人と、高齢化率は29.3%に上ります。
2030年はさらに高齢化が進み、高齢化率(65歳以上の人口割合)が30.8%に達し、人口のおよそ3分の1が高齢者となる見込みです。
このような人口構造の変化により、2030年の超高齢化社会では労働力不足や国内市場の縮小が進み、経済活動にさまざまな課題が生じます。企業側は人材確保の難しさや、事業継承の停滞など、経営に直結するリスクへの対応が求められます。
2030年問題は日本の社会構造に変化をもたらすだけではなく、企業経営にも大きな影響を及ぼします。2030年問題が企業に及ぼす影響を具体的に解説します。
2030年問題により、生産年齢人口の減少が進むと予測されています。生産年齢人口とは15歳以上64歳未満の人口を指し、社会の生産活動を支える中心的な世代です。
2030年の生産年齢人口は6,875万人(※1)と予測されており、2020年の7,406万人から約531万人減少する見通しです。実際に、帝国データバンクの調査によると、正社員の人手不足を感じている企業の割合は51.4%(※2)と、すでに半数以上の企業が深刻な人手不足に直面しています。
(※1)参照:内閣府|令和7年版高齢社会白書「人口減少と少子高齢化」
生産年齢人口の低下は、購買力のある現役世代が減少するため、国内需要の減少に直結します。国内市場の縮小に対応するには、輸出や海外進出など新たな市場の開拓が求められます。
多くの企業がグローバル化に転換するなかで、今後国内市場の拡大が見込めない企業は統廃合される可能性が高いでしょう。実際に、中小企業数は2021年時点で336万社(※)となっており、2016年と比較すると年間4.3万社が減少しています。
帝国データバンクの調査では、中小企業の経営者の平均年齢は約60.7歳(※)で過去最高を記録しており、70代以上の経営者も増加傾向です。そのため、2030年には後継者不足に悩む企業がさらに増えるでしょう。
また、社内の高齢化が進む企業ではベテラン従業員の退職にともない、技術やノウハウが継承しづらいケースも増えています。その結果、サービス品質や競争力の低下につながる恐れもあります。
2030年問題が進む社会では、高齢者向けの市場が拡大し、消費者層や購買行動にも変化が生じます。シニア向けの商品需要が高まる一方で、若年層向けの需要は減少傾向です。
また、ECの普及により実店舗の利用が減少し、オンラインショップの需要は今後も拡大が見込まれます。そのため、消費者ニーズの変化に応じた、新たな施策が求められます。
2030年問題による労働力不足や国内市場の減少は、特定の業界に深刻な影響を及ぼします。2030年問題の影響を受けやすい業界と、DXが求められる背景を解説します。
2030年問題の影響を受けやすい業界と、企業が抱える課題を解説します。
| 2030年問題の影響を受けやすい業界 | 課題 |
| 建設業界 |
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| 医療・介護業界 |
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| 運輸・物流業界 |
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| 製造業界 |
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| 航空業界 |
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| IT業界 |
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| 教育業界 |
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2030年問題は、建設業界をはじめ、医療・製造・IT・教育など幅広い業界に影響を及ぼします。IT化が進んでいる業界でも、デジタル人材の不足に悩む企業は少なくありません。
また医療現場では、5GやWi-Fiの普及により医療用PHSの新規需要は減少しているものの、現在も多くの施設でPHSが利用されています。今後PHSの周波数再編が行われた場合は、公衆網の携帯電話サービスを活用した仕組みへ移行しておく必要があります。
事前に対策をしておくことで、通信世代が変わっても継続利用が可能です。2030年問題への対策は人材不足だけでなく、将来を見越した働く環境の整備も求められます。
(※1)参照:厚生労働省|介護人材確保に向けた取組
2030年問題で若手人材の確保が困難になるなか、限られた人員で生産性を維持、向上するには、デジタル技術による業務効率化や自動化が必要です。
DXが加速する背景には、通信機器の普及も大きく影響しています。世界のIoT(モノのインターネット)デバイスは、2024年の420億台から2027年には583億台(※)への増加が見込まれ、2031年の市場規模は4,280億米ドルに達すると予測されています。
特に医療、自動車、航空などの業界で急成長がみられているのが特徴です。ただし、DXの推進には、デジタル人材の不足や既存システムの統合、セキュリティリスクなどさまざまな課題もあります。
次章では、DXによる課題と対策を詳しく解説します。
(※)参照:総務省|情報通信白書令和7年版 データ集
DXを進めるうえで、多くの企業が直面しやすい3つの課題と対策案をご紹介します。
DXでは、あらゆる業務がインターネット接続に依存するため、ネットワークの安定性が課題になりやすい傾向です。IoTデバイスやクラウドシステム、遠隔監視などあらゆる業務がインターネット接続を前提としているため、ネットワークが不安定になると業務そのものが停止するリスクが生じます。
例えば、医療業界では電子カルテシステムや画像管理システムなどのネットワーク化が進んでいますが、ネットワーク障害が発生すると患者情報にアクセスできず、診察履歴や検査結果を迅速に確認できなくなる恐れがあります。
また、既存システムとの連携も重要な課題です。長年運用してきた基幹システムと新たに導入するIoTシステムを安定して連携するには、通信環境を含めたネットワーク基盤の見直しが必要です。
DXを円滑に進めるには、処理能力や通信速度に配慮したネットワーク環境の整備が不可欠です。ネットワーク機器は経年劣化によって性能が低下しやすく、故障リスクも高まります。
さらに、DXにより社内のIoT機器やモバイル端末が増加すると、既存のネットワーク環境では処理が追いつかず、通信速度の低下を招く恐れがあります。
そのため、処理能力の高い機器へのアップグレードや、通信速度・回線領域の契約の見直しをおこない、安定したネットワーク環境を整えることが重要です。
DXによるセキュリティリスクも、企業が取り組むべき課題の一つです。これまで紙や社内サーバーで管理していた情報がクラウドやネットワーク上に移行し、外部からのアクセスが可能になります。
また、IoT機器の増加、リモートワークの普及によりサイバー攻撃の侵入経路が多様化し、セキュリティリスクが一層高まっています。例えば、工場システムがサイバー攻撃を受けた場合、生産ラインの停止や品質の低下を招くだけでなく、生産プロセスに関わる重要なデータが外部に漏洩するリスクもあるでしょう。
総務省(※)では、IoT機器のソフトの脆弱性を狙ったサイバー攻撃や、機器を悪用した被害の増加について注意喚起をおこなっています。このような背景から、DXを進める企業では、セキュリティ対策の強化が不可欠です。
DXにともなうセキュリティ対策では、データの暗号化と認証システムの強化が欠かせません。IoTデバイスやクラウドを通じて送信されるデータを暗号化することで、万が一データが傍受された場合でも、機密情報の漏えいリスクを低減できます。
従来のID・パスワードだけでは不十分なケースも増えており、多要素認証の導入が求められます。例えば、ネットバンキングでは、パスワード入力後にスマートフォンへ送信されるワンタイムパスワードを用いるなど、複数の認証を組み合わせた仕組みが一般的です。
このように、暗号化や多要素認証など複数の認証方法を組み合わせた対策を講じましょう。
DXを円滑に進めるには、ITスキルやデータ分析能力など専門知識を備えた人材の確保に加え、社内の人材育成が必要です。十分な知識やスキルが社内に蓄積されていない企業に新しいツールを導入しても現場に定着せず、DXの効果を十分に発揮できない可能性があります。
特に、長年アナログな業務を続けてきた企業では、「今までのやり方で十分」という意識が障壁となり、新システムへの移行がスムーズに進まないケースも少なくありません。さらに、既存システムを前提としたままDXを導入すると、かえって非効率を招く恐れがあるため、組織文化や業務プロセスの抜本的な見直しが求められます。
組織的な課題が残る企業でDXを進めるには、段階的な導入と外部支援の活用が効果的です。まずは、既存社員を対象に、デジタルリテラシー向上に関する研修を実施し、基本的なITスキルからデータ分析、クラウドサービスの活用方法まで、段階的にスキルアップを図りましょう。
DXツールを導入する際は、一度にすべてを切り替えるのではなく、小規模な取り組みから始めることが重要です。例えば、クラウドの会計ソフトの導入からスタートし、運用が定着してきたらCRM(顧客情報の一元管理)や在庫管理システムなどへと拡張することで、現場の混乱を抑えながらDXが進められます。
DX推進パートナーやITコンサルタントなど外部支援の活用も有効な手段です。専門家に依頼すると、自社だけでは気付きにくい課題を把握でき、より実効性の高いDX導入が期待できます。
2030年問題に備えるうえで、DXが企業にもたらす主なメリットを3つ解説します。
DXにより、これまで人手でおこなってきた定型業務の自動化が可能です。例えば、経理部門では、帳簿や請求書をデータ化することで、ペーパーレス化による書類保管スペースの削減や業務効率化が図れます。
また、インフラを扱う公共分野では、電力メーターの測量値を自動取得する仕組みを導入することで、現地作業員の省人化やコストカットにも寄与できます。
また、ヒューマンエラーによるミスを防ぎ、省人化を実現できるため、生産性が向上する点もメリットです。さらに、担当者個人に頼っていた知識やスキルへの依存が減り、属人化の解消にもつながります。
DXが進むと、競争力の強化が図れる点がメリットです。例えば、購買行動の分析や蓄積したデータを活用することで、消費者のニーズに合った商品開発やサービスの改善につながります。
地方企業においても、ECサイトやSNSの利用により地域の制約を超え、新たな顧客層へのアプローチが可能です。さらに、現場や各部門のデータを共有、可視化できるため、これまで段階を踏んでいた意思決定が、より迅速かつ的確におこなえるようになります。
業務効率化によって生まれた時間は、販売戦略などのマーケティング施策に注力できるので、他社との差別化が図れるでしょう。
DXは既存業務の効率化にとどまらず、新たなビジネスモデルの創出にもつながります。例えば、建設業界ではIoTを活用したビルメンテナンス事業が進んでいます。
IoTセンサーとAI技術を活用して建物や設備の状態を常時監視するシステムでは、故障の予兆を事前に検知できるため、適切なタイミングでのメンテナンスが可能です。予防保全サービスとしての付加価値の提供や、収益化も期待できるでしょう。
DXの必要性が高まる業界として、建設業界、医療・福祉・介護業界、物流・運輸業界が挙げられます。業界ごとのDXの取り組みと、NTTドコモビジネスが提供する具体的な導入事例を紹介します。
建設業界では、従業員の高齢化にともなう人材不足が深刻化しています。加えて、重機による接触事故や高所作業での転落リスクなど、常に危険と隣り合わせの現場では、これまで以上に徹底した安全管理が欠かせません。
こうした課題を背景に、建設業界ではマシンガイダンスによる高精度な施工作業をはじめ、作業員の安全性対策や高所点検の省人化、定点カメラを活用した遠隔モニタリングなどのDXが進んでいます。
6.1.1.導入事例
NTTドコモが提供する docomo IoT 高精度 GNSS 位置情報サービスを活用したユースケースの一つに「ICT 建機」があります。3D の設計データ、アーム制御システムも併せて活用することで、以下のような機能を実現しています。
● マシンガイダンス
● マシンコントロール
● 機器同士の所在把握
電子基準点とドコモ基準点を活用しているため日本全国で利用できるうえ、cm精度で位置情報を把握できるため、高精度な施工が可能です。
経験の浅いオペレーターでもマシンガイダンスに従って操縦することで、安定した施工を実現できます。また、機器同士の所在を把握できるため、建設機稼働の効率化にもつながるでしょう。
熟練オペレーターに依存した施工や機械操縦者の人材不足といった課題が残る建設業界では、「ICT建機」の導入により安定した施工品質の確保と省人化を後押ししています。
人手不足が深刻化するなか、業務効率化を目的とした病院のDX推進は、国会でも議論されるほど重要な課題となっています。2030年を迎える前からDXを本格的に加速させ、業務の省力化と「働き手に選ばれる病院づくり」を進めることが求められるでしょう。
病院経営が厳しい時期だからこそ、投資対効果を明確にするDXが不可欠です。
6.2.1.導入事例
NTTドコモビジネスは全国393の医療機関(※)に、内線サービス「オフィスリンク®」を導入し、その日の出勤状況がリアルタイムでわかるクラウド電話帳「メディカルパック」とともに、スマートフォンを活用した医療DXを推進しています。
オフィスリンク®は、電話交換設備(PBX)とドコモのネットワークを接続し、ドコモの携帯電話をオフィスの内線として利用できるサービスです。具体的な導入事例は以下のとおりです。
医療機関では従来のPHSからiPhoneへの切り替えが進み、カルテ情報への常時アクセスをはじめ、チャットやクラウド電話帳、インカムを活用した院内オペレーション改革を実現しています。
さらに、iPadを活用したデジタル問診では、問診内容をクラウドに保存しペーパーレス化を実現。またAIを活用し、症状により質問を変えるなど、詳しい質問にも対応できるのが特徴です。
そのため、医療現場の業務効率化だけでなく、スタッフの働きやすさ向上や、持続可能な医療体制の構築に貢献しています。
(※)2025年12月末時点
運輸・物流業界では、「2024年問題」による労働時間規制の強化に加え、慢性的なドライバー不足や高齢化、長時間の荷待ちといった課題などを背景に、業務の効率化がこれまで以上に求められています。
こうした状況を踏まえ、運行状況の可視化や日報、配送計画の自動作成などDX化による業務改善がますます重要となっています。
6.3.1.ユースケース
NTTドコモビジネスでは、運送事業者向けに特化したサービスとして「LINKEETH スマート運送」を提供しています。主な機能は以下のとおりです。
● 配送計画を取込み、予実管理
● 荷主・配送担当者・ドライバー間での車両位置の共有
● 荷待ち・荷役・休憩等の作業ステータスの確認、労働状況の可視化
● 日報作成
日報作成の効率化により、1日あたり約16.7時間、月間367時間もの業務時間の削減を実現します。時間単価1,500円換算で、月間約55.0万円のコスト削減(※) につながり、業務効率の向上と負担軽減が期待できます。
(※)ドライバー100人、1日あたり日報作成時間10分/人の短縮として計算
その他の業界の導入事例は、以下からご確認いただけます。
日本は2030年に向けて、労働人口の急激な減少という深刻な課題に直面しています。建設業界、物流・運輸業界をはじめとする多くの産業で、熟練技術者や労働力の不足が加速し、従来のやり方では事業の継続すら困難になると予測されています。
この「2030年問題」を乗り越えるカギとなるのが、DXによる業務変革です。
NTTドコモビジネスは、日本全国をカバーする高精度位置情報サービスをはじめ、IoT、クラウド、5Gなど、包括的なソリューションで、お客様のDXを強力にサポートします。業界が抱える課題を解決し、新たなビジネスチャンスをつかむために、今こそDXの一歩を踏み出してみましょう。
DXをご検討中の企業様は、NTTドコモビジネスまでお気軽にご相談ください。