「ゼロタッチオペレーション」を見据えた
IT運用のデジタルトランスフォーメーション(DX)

「企業が生き残るための鍵」として語られることの多いDXですが、DXを推進することで、IT環境が複雑化し、運用の負担が増大するといったことが起こり得ます。この負担を軽減するために、ITオペレーションのあるべき姿として目指したいのが「ゼロタッチオペレーション」です。

「企業が生き残るための鍵」として語られることの多いDXですが、DXを推進することで、IT環境が複雑化し、運用の負担が増大するといったことが起こり得ます。この負担を軽減するために、ITオペレーションのあるべき姿として目指したいのが「ゼロタッチオペレーション」です。

DXの加速で運用管理の負担が増大、目指すべきは「ゼロタッチオペレーション」

新型コロナウイルスの感染拡大がビジネスにさまざまな影響を及ぼしたことで、既存事業の強化や新規事業の創出、業務効率のさらなる向上など、企業は大きな変革を迫られている。その変革を実現するものとして、期待されているのがビッグデータやIoT(Internet of Things)、AIといった最新技術を活用したDXである。

実際、新型コロナウイルスの影響によりDXが加速すると考えている企業は多い。一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会が実施した「企業IT動向調査2021(2020年度調査)」によれば、新型コロナ禍の影響でDXが「短期的(1年以内)」に加速すると回答した企業が61%、「中長期的(3~5年以内)」に加速すると回答した企業は75.4%に達しており、減速すると回答した企業はほとんどなかった。

しかしながら、実際にDXを進めるうえで課題となってくるのがシステムやネットワークの運用保守である。DXによってこれまで以上に幅広い領域でシステムが使われるようになり、それに伴ってネットワークをはじめとするインフラの複雑化が進めば、運用保守に関わる稼働も増大するためだ。

またDXに関わるシステムは、事業を直接的に支えるもの、あるいはプロフィットに直結するものとなる可能性が高く、これまで以上に高い信頼性や可用性、セキュリティ確保が求められる。これも運用保守の負担が大きくなる要因となるだろう。

こうした運用保守における課題解決を考える際、目指すべきゴールとして考えられるのが「ゼロタッチオペレーション」である。

IT運用を根底から変える「ゼロタッチオペレーション」

ゼロタッチオペレーションとは、トラブルが発生したときに自動的に復旧するなど、人手を介さずに運用を行うことを指す。似た意味を持つ用語として「NoOps(No Operations)」や「AIOps(Artificial Intelligence for IT Operations)」も広まりつつあり、自動化は運用保守における新たなトレンドになりつつある。なお、自動化は運用保守の人的な稼働を削減するだけでなく、昨今のIT技術者不足という社会的課題に対する解決策としても大いに期待されている。

もちろん、現状において人手を完全に排除してシステムを運用することは難しいが、運用の自動化を可能にする技術は数多く登場している。システムの負荷を監視し、高負荷状態になると自動的にリソースを追加するオートスケールや、仮想サーバーに故障が発生した際に自動復旧する仕組みはその代表的な例だろう。

とはいえ、これらの機能や仕組みを使った部分的な自動化では、大きな負担軽減にはつながらない。故障が発生したシステムの復旧など、個々の運用業務は数多くの手順から成り立っており、その一部分だけを自動化しても効果は限定的だ。

このようにゼロタッチオペレーションの実現は決して容易ではないが、その実現に向けた取り組みを積極的に進めている企業も少なくない。たとえばNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)では、自社で提供しているクラウドソリューションにおいて、サーバー故障時の復旧作業の完全自動化を実現している。

NTT Comのゼロタッチオペレーションを支えるServiceNow

クラウドソリューションで利用しているサーバーに故障が発生した際、自動的に復旧を行うため、NTT Comでは「ServiceNow」を利用した独自のシステムを構築している。このシステムは、運用にかかわるマスタデータをServiceNowのCMDB(構成管理データベース)で管理しつつ、通知システムやチケットシステム、監視システムなどと「IT Service Management」の「Incident」をAPIで連携、さらに「IT Operation Management」の「Orchestration」機能でサーバーなどの各種インフラの復旧を実行する構成となっている。

図:NTT ComではServiceNowを軸にゼロタッチオペレーションを実現するシステムを構築

NTT ComではServiceNowを軸にゼロタッチオペレーションを実現するシステムを構築

このシステムを使うことで、NTT Comは故障が発生したサーバーの復旧処理においてゼロタッチオペレーションを実現。これによりプロセス復旧時間を従来の15~30分から1分に短縮している。

注目したいのはサーバー復旧処理のフロー全体を自動化し、人手を完全に排除している点である。もし一部分でも人手で作業するプロセスが残っていれば、負担軽減の効果は限定的になるだろう。またプロセス復旧時間の大幅な短縮も難しくなる。

このように運用保守業務におけるフロー全体の自動化を目指す際、ITシステムの運用保守のための機能を数多く利用できるServiceNowがもたらすメリットは大きい。

なおNTT Comでは、このServiceNowをクローズドVPN経由で利用できる「ServiceNow Secured over VPN」を提供している。ServiceNowをセキュリティが担保された環境で利用したいのであれば、ServiceNow Secured over VPNは最適なソリューションとなるだろう。

そのほかゼロタッチオペレーションの取り組みを進める際に有用なソリューションとして、オンプレミスとパブリッククラウドを統合して管理できるICT運用基盤プラットフォームである「X Managed Platform®」や、次世代監視基盤として高く評価されている「Datadog」とNTT Comの運用ノウハウを融合した「マルチクラウドマネジメント」なども提供している。

いずれにしてもDXで運用保守の負担が増大する可能性は極めて高い。そこで最終的なゴールとしてゼロタッチオペレーションを見据えつつ、効率化や負担軽減を見据えた「運用保守のDX」に向けた取り組みをすぐにでも始めるべきだろう。

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