Azure AI Searchとは?
機能・特徴・料金体系から活用事例までわかりやすく解説!
MicrosoftのAzure AI Searchを利用すれば、従来の検索では不可能だった「意味的な検索」や「対話型の検索」を実現し、膨大なデータから最適な情報を素早く抽出できます。プログラミング知識がなくても導入できるほか、既存のAzureサービスとのシームレスな連携も可能です。
Azure AI Searchについてより詳しく知りたいという方に向けて、概要からできることや特徴、料金体系、ビジネス活用事例まで、わかりやすく解説します。

目次
Azure AI Searchとは
Azure AI Searchは、Microsoft Azureが運営するクラウドベースの検索サービスです。
2023年11月に「Azure Cognitive Search」から名称変更されましたが、サービス内容や料金体系に変更はありません。
Azure AI Searchは、企業が保有する大量の構造化・非構造化データから、AI(人工知能)技術を活用して価値ある情報を効率的に抽出する検索サービスです。従来のキーワードマッチングに依存した検索とは異なり、自然言語処理と機械学習を活用してユーザーの意図を深く理解します。
特に注目すべきは、Azure OpenAI Serviceと連携したRAG(検索拡張生成)システムの基盤としての役割です。生成AIアプリケーションの推奨検索システムとして位置づけられており、企業のデジタル変革を支える重要なツールとなっています。
Azure AI Searchでできること

Azure AI Searchを活用することにより、従来の検索システムでは解決することが難しかった4つの課題を効果的に解決できます。
「探している情報が見つからない」を解決する
Azure AI Searchは形態素解析とシノニムマップ、スペル補正機能を組み合わせることにより、入力された検索語を自動的に拡張します。
さらに、ベクトル検索機能により意味的な近似性も評価するため、完全一致しない関連文書でも適切に抽出できるようになり、情報の取りこぼしを軽減できます。
「あいまいな質問でも的確な答えが欲しい」を実現する
ハイブリッド検索機能では、キーワード検索とベクトル検索の両方のスコアを統合して最適な検索結果を提示します。ユーザーが具体的な検索語を思い浮かべられない場合や、意図を明確に言語化できない状況でも、高い関連度を持った結果を表示できます。
あいまいなお問い合わせ内容に対しても質問者の真意を読み取り、期待される精度での回答提供が可能です。
「ドキュメントの中身まで詳しく調べたい」を可能にする
Azure AI SearchはOffice文書、PDF、画像などの非構造化データも全文検索やベクトル検索の対象として処理できます。
組み込みOCR機能と言語検出機能により、スキャンされた契約書から特定の条項を検索したり、多言語で作成された資料を横断的に検索したりすることも可能です。
個別にファイルを開く必要がなくなり、目的とする記述や情報へ直接アクセスできるようになるため、業務効率の向上も期待できます。
「AIチャットボットと連携して対話したい」を実現する
Azure OpenAI Serviceとの連携により、検索結果を根拠として生成AIが自然な回答を生成するRAG(検索拡張生成)パイプラインを構築できます。ユーザーは専門用語を知らなくても自然文による追加質問を繰り返すことで、段階的に深掘り調査を進められます。
お問い合わせ対応や社内ヘルプデスクなどの生産性向上が期待でき、AIチャットボットによる高度な対話型の検索体験を実現することが可能です。
Azure AI Searchの特徴
Azure AI Searchは次世代の検索プラットフォームとして注目されています。代表的な特徴について、1つずつ説明します。
常に最新情報での検索
Azure AI Searchは、データソースの変更を検索結果に随時反映する自動更新機能を備えています。インデクサー機能により、Azure Blob Storage、SQL Database、Cosmos DBなど複数のデータソースから定期的にデータを取得し、検索インデックスを最新の状態に保つことが可能です。
また、スケジュール設定により定期的な自動更新が可能で、変更追跡機能により新規ドキュメントの認識だけでなく、既存ドキュメントの変更や削除も検出できます。そのため、システム担当者が手動でインデックス更新作業を行う必要はありません。
常に最新の情報に基づいた検索結果を提供できるため、業務効率と情報の鮮度の維持を両立できます。
RAG実装の標準プラットフォーム
Azure AI Searchは、RAG(検索拡張生成)アーキテクチャを構築するための実証済みソリューションとして位置づけられています。Azure OpenAI ServiceやAzure AI Foundryと連携することにより、検索結果を根拠とした生成AIによる回答システムを構築可能です。
従来の生成AIが学習データに限定された知識しか持たないことに対し、企業固有の最新情報やドキュメントを活用した高精度な回答の生成を実現します。幻覚(ハルシネーション)を軽減した信頼性の高いAIアプリケーションを構築することも可能です。
Azureサービスとのシームレスな連携
Azure AI SearchはAzureの他サービスと高い親和性を持ち、企業のクラウドインフラ全体を統合した検索システムを構築できます。データソースとして以下の多様なサービスからデータを取得できるため、単一のインターフェースで異なる形式のデータを横断検索できます。
- Azure Blob Storage
- Azure SQL Database
- Azure Cosmos DB
- Azure Data Lake Storage Gen2
- Azure Files(プレビュー段階)
など
Azure OpenAI ServiceやAzure AI Foundryとの連携によるRAG実装、Azure AI Document Intelligence(旧Azure Form Recognizer)を使った高度なOCR処理などのAI関連サービスとの統合も容易です。
ノーコードから本格実装まで段階的に対応
Azure AI Searchは、プログラミング知識がないユーザーでも検索システムを構築できる直感的なポータル画面を提供しています。ウィザードを用いれば、GUI操作だけで基本的な検索システムを構築可能です。
同時に、REST APIやAzure SDK(.NET、Python、Java、JavaScript)を通じた本格的な開発にも対応しています。企業の技術レベルや要件に応じて段階的に機能を拡張することも可能です。
初期検証段階ではノーコードで迅速にプロトタイプを構築し、本格運用時には開発チームが高度なカスタマイズを実施する、といった柔軟な導入アプローチを採用できます。
自社データの所有権と管理権を主体的に保持
Azure AI Searchでは、企業が保有するデータの所有権と管理権を主体的に保持できる設計になっています。セキュリティフィルター機能を活用すれば、Microsoft Entra ID(旧Azure AD)と連携してユーザーごとに閲覧可能なドキュメントを制御することも可能です。
さらに、データの暗号化、ロールベースアクセス制御(RBAC)、IPアドレス制限、プライベートエンドポイント対応など、企業ごとのセキュリティ要件に対応した機能も充実しています。
機密情報の漏洩リスクを最小化し、コンプライアンス要件が厳格な業界でも安心して活用できる環境を構築可能です。
AI人材不足でも運用できる管理画面の充実度
Azure AI Searchは、AI人材が不足している企業でも安心して運用できる直感的な管理画面を提供しています。管理画面では、検索エクスプローラー機能を使って実際のクエリ実行とテスト、検索精度の監視、インデックスの状況確認、トラブルの特定と解決などを視覚的に行えます。
AI技術の専門的な知識がなくても、検索精度の調整やトラブルシューティングが可能な設計になっており、既存のシステム担当者でも段階的にスキルを習得しながら高度な検索システムを構築・運用していくことが可能です。
Azure AI Searchの料金体系

Azure AI Searchは、7つの料金プランと追加機能の従量課金制で構成される柔軟な料金体系を提供しています。
料金プラン | 料金 | ストレージ | 最大インデックス数 |
---|---|---|---|
Free | 0円/時間 0円/月 |
50MB | 3 |
Basic | 20円/時間 14,418円/月 |
15GB (最大45GB) |
15 |
Standard S1 | 66円/時間 48,131円/月 |
160GB (最大1.9TB) |
50 |
Standard S2 | 264円/時間 192,304円/月 |
512GB (最大6TB) |
200 |
Standard S3 | 528円/時間 385,042円/月 |
1TB (最大12TB) |
200または1,000/高密度モードのパーティション |
Storage Optimized L1 | 571円/時間 416,153円/月 |
2TB (最大24TB) |
10 |
Storage Optimized L2 | 1,140円/時間 832,198円/月 |
4TB (最大48TB) |
10 |
※2025年8月時点、リージョン:東日本、通貨:日本円、料金は小数点以下切り上げ
さらに、Agentic retrieval、セマンティックランカー、カスタムエンティティの参照、ドキュメント解読における画像抽出などの高度な機能は従量課金制で提供されており、必要に応じて追加できる設計となっています。
より詳しくは、公式ページをご確認ください。
Azure AI Searchのビジネス活用例

Azure AI Searchのビジネスにおける活用例を紹介します。従来の検索技術では実現が難しかったことも、Azure AI Searchなら解決することが可能です。
ECサイトの商品検索
ECサイトでは、商品名の表記揺れやあいまい表現によって検索結果が不足しやすいという課題があります。Azure AI Searchが持つベクトル検索とスペル補正機能を活用すれば、例えば「スニーカー」と「スニーカーズ」など類義語を含む関連商品を高精度に提示できます。
さらに、ファセット機能により在庫状況や価格帯による絞り込み検索も可能です。その他にも、セマンティックランカー機能により商品の特徴や用途から関連商品を推薦することによって、アップセルやクロスセルの機会が増加し、売上の向上も期待できます。
コールセンターのFAQ検索
お問い合わせ件数が多いコールセンターでは、オペレーターが膨大なFAQから回答を探すための時間が長くなりがちです。Azure AI Searchは自然言語クエリを理解して類似する質問を優先順位付けするセマンティックランカー機能を備えているため、回答候補を素早く提示できます。
検索結果の根拠となる文書リンクも同時に提示されるため、後工程の確認作業も短縮されます。お客さまの質問をそのまま検索クエリとして入力するだけで、関連度の高い回答が上位に表示されるので、平均対応時間の短縮が実現可能です。
社内文書管理
Azure AI Searchは、AIエンリッチメント機能によりPDFやOfficeファイルの本文を抽出してインデックス化し、章や条項単位での高速検索を可能にします。そのため、契約書や技術資料が各部署に散在し、必要な文書の所在が不明になるような課題を解決できます。
さらに、OCR機能により手書きメモやスキャンした文書も検索対象に含められるため、長年蓄積された紙資料も活用可能です。Microsoft Entra ID(旧Azure AD)と連携したロールベースアクセス制御により、機密保持の観点からも安心して利用できます。
部門をまたがった知識の共有が促進されるため、業務効率の向上が期待できます。
製造業の品質管理
製造現場では、過去の検査成績書や不具合レポートを検索して原因を特定する業務が日々発生しています。Azure AI Searchは時系列データや画像から抽出したメタデータも横断的に検索できるため、不良発生の類似パターンを素早く提示できます。
製品番号、製造条件、品質データなどを組み合わせた複合検索により、過去の類似事例を迅速に特定し、対策を立案する時間を短縮します。また、Azure AI Visionと連携することによって、検査画像から自動抽出した特徴量をベクトル化し、視覚的に類似した不良パターンを検索することも可能です。
求人情報やスキルマッチングの高度化
人材サービスでは、職種名と応募者スキルの表現揺れによるマッチング精度の低下が課題として挙げられます。このような課題に対して、Azure AI Searchのベクトル検索によって表現の差異を吸収して適合度を数値化すれば、最適な候補者を提示することが可能です。
例えば、「JavaScript」と「JS」、「機械学習」と「ML」といった同義語を自動的に認識し、見落としを防げます。シノニムマップを活用した同義語の登録により検索漏れを防ぐことも可能です。
規制文書や判例の迅速な調査・分析
金融・法務分野で求められる最新の法令や判例検索に利用すれば、「趣旨が近い判例」を意味的に抽出し、条文引用もハイライト表示することが可能です。非構造化テキストをベクトル化したことにより、キーワード不一致による見落としを抑制し、調査期間を短縮できます。
Azure AI Searchの活用により、企業の法務部門が2,600万件以上の法務文書から情報を容易に見つけられるようになり、業務の効率化を実現している事例もあります。
AIチャットボットの検索コアとしての活用
社内ヘルプデスクやお客さま対応用チャットボットにAzure AI Searchを組み込むと、お問い合わせ文を検索クエリに変換して関連ドキュメントを取得し、回答候補を提示できます。
自然言語での質問をそのまま処理できるため、従来のキーワード検索では対応が難しかった複雑な質問にも適切に回答することが可能です。RAG構成を採用すれば、回答の根拠も同時に提示できるため信頼性が向上します。
Azure AI Searchを検索コアとすることにより、ユーザーは回答の妥当性を確認しながら情報を活用することが可能です。
生成AIアプリと連携したRAGによる業務改善
Azure AI SearchはAzure OpenAI ServiceやAzure AI Foundryとネイティブに連携し、検索結果を根拠に生成AIが回答を生成するRAGパイプラインを構築できます。
RAGパイプラインを構築することにより、企業固有の知識や最新情報をもとに質問に対して正確で詳細な回答を自動生成できるようになります。これを活用すれば、従来専門家が行っていた調査・報告書作成を半自動化できるでしょう。
ナレッジの共有スピードを高めることが可能になるため、組織全体の知的生産性向上に効果が期待できます。
Azure AI Searchの導入ならNTTドコモビジネスの「Azureマネージドサービス」
NTTドコモビジネスでは、Azureの導入から運用まで一気通貫でサポートする「Azureマネージドサービス」を提供しています。
なかでも「社内情報検索&生成アプリ」は、Azure OpenAI Serviceが提供する生成AIを導入したいお客さま向けの高品質なソリューションです。日中英の3カ国語に対応した質問・回答機能を提供しており、グローバル企業のニーズに対応できる体制を整えています。
RAG(検索拡張生成)参照先データの参照権限分けにより、部署や役職に応じたセキュアなアクセス制御を実現し、機密情報の適切な管理を支援します。また、プロンプトエンジニアリングの補助機能により、AIに関する専門知識がない担当者でも効果的な生成AIの活用が可能です。
Azure AI Searchの利用を検討されている場合は、ぜひ一度お問い合わせください。
まとめ
Azure AI Searchは、Microsoft Azureが提供するクラウドベースの検索サービスです。従来のキーワード検索では実現困難だった、意味的な検索や対話型検索を可能にします。
特徴としては、常に最新情報での検索、Azureサービスとのシームレスな連携、ノーコードから本格実装まで段階的な対応、自社データの所有権保持、AI人材不足でも運用可能な管理画面などが挙げられます。
ビジネスでの活用も増えており、将来的には企業のデジタル変革を支援する重要なプラットフォームとなるかもしれません。生成AIの活用について検討されている場合には、Azure AI Searchの活用も検討してみてはいかがでしょうか。
Azureの導入から詳しく知りたい、という方向けの記事もご用意しています。導入のメリットや注意点、活用方法について知りたい方はこちらの記事もご覧ください。