講演レポート

事前期待
~リ・プロデュースから始める顧客価値の設計図~

目に見えない「サービス」の取り扱いは、個人のセンス・経験に頼ったサービスマネジメントや顧客との価値共創になりがちですが、サービスの本質を捉え、付加価値サービスをモデル化できれば、組織のサービスマネジメント力や価値共創力は格段に高まります。

松井サービスコンサルティングの代表でありサービスサイエンティスト 松井拓己氏は、これまでも多くの著書や講演で「再現性の向上と事業の再プロデュース(リ・プロデュース)」の重要性ついて説いてきました。

今回はサービスサイエンスの実践論の中から、中核を担う「事前期待」に関する理論と事例にフォーカスし、サービスマネジメントのレベル向上と組織的なサービス価値向上への道しるべとなる基礎的な考え方について講演を通してご紹介します。

松井サービスコンサルティング
サービスサイエンティスト・代表
松井 拓己 氏

サービスを科学する

講演の冒頭で松井氏は「サービスはロジカルに捉えないと組織的な取り組みは進まない」と指摘しました。

サービスを科学するというような言葉を聞くと、B to C向けの話と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、松井氏の支援先は全体の半分がB to Bのビジネスの企業さま、全体の3分の1ぐらいがモノづくりの企業さまが占めるといいます。

「サービスとは一体どういうことなんだということをロジカルに捉えないと、なかなか組織的な取り組みが進んでいかないという共通の課題をお持ちです。今日は業種業界の枠を超えてお役立ていただいている考え方をエッセンスとしてお伝えしたいなというふうに思っております。」と、本日の主旨について説明がありました。

日本サービス大賞(革新的な優れたサービスを表彰する日本最高峰の表彰制度)の立ち上げから現在まで選考に関わっている松井氏は、サービスの定義について次のように説明します。

「日本サービス大賞は毎回、800件前後のさまざまな業種からの応募があるんですね。で、業種業界が違うのにどうやって一律の指標で評価するのかというのがなかなか難しいところでした。そこで日本サービス大賞でサービスが優れてるというのはどういうことなのかというのを以下の図のように定義しています。つまりサービスが優れてるというのは、顧客の期待を超えることだというように一旦定義をしています。」

優れたサービスとは

紙飛行機を投げる人を聴講者として、「クライアントにとって価値の高いものにするためには、この紙飛行機を飛ばさなきゃいけない。で、この絵を見ると、どうやったら遠くに飛ばせるかなということを考えたくなると思うんですね もちろんそれは大事です。ただ、この絵には2つ意味があってですね。1つは紙飛行機、遠くに飛ばしましょう。でも、今日一番皆さんにお伝えしたいのはですね、遠くに飛ばすだけでサービスが優れてるということになるのか、ということです。講演が終わった時には遠くに飛ばすよりも大事なことって何だろうかというところが皆さんの中でぼんやり見えてきてると嬉しいなというふうに思いますので、ちょっと2つ目の意味は今は解説しないまま中身に入りたいなというふうに思います。」

サービス事業化の背景と時代の変遷に伴うニーズの変化

時代と共に顧客のニーズも変わるため、現在について「サービスで事業を伸ばす時代になってきた」と松井氏は指摘します。

また、「サービス」という言葉の指し示すものについても変化してきているとも。

「昔はサービスってオマケだと無料だと思われてましたよね。これサービスしときますね、みたいな意味合いでサービスという言葉を使ってました。でも、今ではサービスで収益を伸ばす会社が増えてきています。あるいはサービスで差別化しようと、もう機能とかメニューの開発をしても他社と差がつかないので、どうやってサービスそのもので差をつけていくのかということに熱心な企業も増えてきています。サービスで事業を伸ばす時代になってきた。あるいはサービスで競争力を高める時代になってきたと。こんな形でサービスという言葉が、事業の競争戦略や成長戦略の中心を担うようになってきました。」

これがさまざまな産業がサービス事業化してきている、サービスを科学するということに取り組む企業が増えている背景になっていると松井氏は言います。

ビジネススタイルの変化

「またちょっと違った観点で言うとですね、顧客のニーズはだいぶ変わってきてますよね。何でも単純なシステムでいいので導入したいという不足してた時代から、そこが充足してくると良いものが欲しいと多様化の時代へと移り、顧客のニーズそのものがどんどん変化していく時代がやってきて、で、モノもサービスも情報も溢れている。現在でいうと、改めて不足の時代ということで、先が読めない顧客自身も欲しいものがわからない、こういう時代になってきました。」

この各時代で我々のビジネススタイルというのを当てはめてみると「待ちの受け身型のスタイル、受け身型のビジネスサイクルからスタイルから脱却、続いて多様化の時代には提案型。我々がいいと思うものをクライアントよりも先回りをして、どんどん提案をしていきましょう。でも、最近は欲しいものがわからない。そんなクライアントが増えている中で、勝手に提案してもフィットしない、提案型からも脱却しなきゃいけない。ちなみに変化の時代には適応型と言っていて、クライアントがどんどん変化していきますので、その変化に柔軟に追随して対応していきます。こういった形で変化対応力というのを上げていこうというようなことに熱心な企業さんも多かったかと思います。でも、最近はクライアント自身が欲しいものがわからないので、欲しいものがわからないクライアントからの指示を待っていたり、我々が勝手に提案をしたり、あるいは変化を待っていてはなかなか対応ができず価値を感じてもらえません。ということで、これからは一緒に探しましょうという探索型。顧客が抱えている課題やニーズを探し出すところからご一緒しますよ、といった探索型のパートナーに選んでもらえるかどうかが、非常に今問われていると感じます。 一言で言うと、ビジネスもサービス化し、我々のビジネススタイルも探索型にガラッと変えなきゃいけない、こんな変化の過渡期にあります。」

製造業とサービス業の転写プロセスの違いから見る今後の課題

では、現在地からサービスをどう変えていけばいいのか。その問いに対して松井氏は「じゃあサービスのビジネスをどう変えていったらいいか。東京大学の藤本先生という方が提唱されている産業の情報転写モデルというものをベースに絵を起こして比較をしたものになるのですが、これでサービスを書いてみるとどうなるか。ものづくりとサービスを比較してみると、大きく2つの伸び代が見つかりました。1つは転写の部分。サービスの人への転写教育トレーニングは秒単位で育成なんかできない。サービスというのは転写が命だと分かります。」

設計・転写・価値

「現場任せ個人任せの育成しかできていないという企業さんが非常に多いので、この人材育成をもっと組織的にてこ入れできたら、サービス事業をもっと伸ばせるんじゃないかと。サービスの価値、もっと組織で高められるんじゃないかと。もう1つ大事なところ、設計のところ。ものづくりの場合、命がけで製品設計やっています。その点、サービスの設計ってどうなってますか。加価値型のサービスを設計するという役割だとか、取り組み自体が存在してないっていうケースが非常に多いんです。なので、このサービスを付加価値型で設計するということが組織でできたら、それをもっともっと人材育成に活用したり、サービスの価値向上に生かしていくことができます、ということが今回の講演での重要なメッセージになります。」

次章からは、この付加価値型でサービスを設計するというアプローチの深堀をしていきます。

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