講演レポート
”ISOだけで十分”なわけないじゃん、ムリムリ!
~デジタル時代のサービスマネジメント~
監査のための証跡作りに寄ってしまいがちなISO/IEC20000準拠の対応ですが、そこで止まってしまうのはもったいない。「デジタル時代のサービスマネジメント」として、ISO/IEC20000の強みを生かしながら、ITIL® 4の考え方を先取りしサービスに“価値を生み続ける仕組み”へ進化させる。変化の速いデジタル時代に合わせてサービスの設計思想をアップデートし、現場のスピードと成果にちゃんと接続し直す仕組みづくりについて、明日から着手できる優先順位と進め方を今日も現場を支えているメンバーの講演を通してご紹介します。

ISO/IEC20000部会(SMSへの熱き思いのメンバー)
SOMPOシステムズ株式会社 岸 正之 氏
東京海上日動システムズ株式会社 佐野 大樹 氏
株式会社野村総合研究所 花崎 徹治 氏
株式会社インテック 原田 かおり 氏
エヌアイシー・ネットシステム株式会社 吉岡 大輝 氏
ISOを骨格、ITIL® 4をエンジン、DSSを人の型と捉える
登壇したのでは先述の5名から成るISO/IEC20000部会(SMSへの熱き思いのメンバー)。サービスマネジメントの国際規格であるISO・IEC 20000(以下、ISO)およびITIL® 4に関する研究活動、情報発信、普及活動を行っているチームです。本講演はAIチューバーを使った革新的なプレゼンテーション手法を用いて行われました。
ISOは何を満たすかを要求事項としてきっちり定められた規格である一方、どう実装するかは各社の裁量がとても大きいため、落とし穴もあるといいます。
「裁量が大きい分、設計の思想が弱いと、やることだけ増えるのに成果が増えない。この状態にあっという間にはまります。」現場としては「商標は増えた、証跡は増えた。でも楽になってないし、早くもなってない。いや、つらい。無理。」というループにはまりやすくなります。そのため、要求事項を満たしました、で終わらせず、現場で回る形にちゃんと具体化ところまで落とし込む必要があると強調します。
そこでISOを骨格、ITIL® 4をエンジン、DSSを人の型と捉え、この3つをつなげて1本の「流れ」にする必要がある。
骨格を守って流れで勝つ
旧規格のITIL v3と比べ、最新のITIL® 4は軸が価値共創にあり、状況に合わせて動ける柔軟なプラクティスとなります。そこがDevOps、アジャイル、SREともつながりやすく、現在の現場環境と相性がいい点です。
ただ、ここでは大事な注意点があるといいます。「価値って点で生まれるんじゃなくて、入口から出口までの流れで届くものだからです。なので、運用も流れで設計し直します。キーワードは、バリューストリーム。入り口から出口までを一気通貫で見て、手戻り・待ち時間をつぶしていく。ここができると運用の議論が、担当ごとの正しさから全体として速く強く安定して価値を届ける方向に変わります。」
ISOとITIL® 4を組み合わせる際に現場で直面する3つの壁
「ISOとITIL® 4を組み合わせようとすると、現場ではだいたい3つの壁にぶつかります。1つ目の壁。スピード感です。ITIL® 4の周辺って変化が早い。DevOps、アジャイル、SRE、クラウド。どんどん更新される。でも、ISOは改訂が数年単位です。このスピード差で追いつけない、合わせ方がわからないってなりやすい。2つ目の壁。監査の壁です。ISOは監査できることが大前提です。だから、柔軟さをそのまま持ち込むと、標準化が崩れて証跡が残らなくて、監査で詰む。3つ目の壁。抽象度です。文化、マインド、価値共創。言葉はめちゃくちゃ良い。大賛成。でも運用に落とさないとふわっとしたまま残る。結果、現場が動けない。これが本当に無理。」
そこでどのような戦略を立てるか。答えは1つだといいます。「改訂を待たないITIL® 4の要点は、監査できる言葉に翻訳して、ISOの枠組みに実装する。つまり良いこと言ってるよね、で終わらせず、決める、残す、レビューできる形に落とす。この翻訳ができた瞬間、ITIL4はふわふわ理想論じゃなくなって、監査にも強くて現場にも効く武器になります。」
骨格を守りながら、運用価値が届く形に進化させて、さらに回り続ける状態まで作る
ITIL® 4の要点を監査できる言葉に翻訳すると、6つのカテゴリによる世界観が見えてきます。「1つ目、システム/SVSそしてバリューストリーム運用部分の寄せ集めじゃなくて、全体設計として捉える話です。2つ目、カルチャー、共同と組織文化、空気じゃなくて、ちゃんと仕組みとして回る形にする話です。3つ目、プリンシプル、従うべき原則。迷った時の判断軸を揃えてブレを減らす話です。4つ目、DevOps、DevSecOpsも含めて統合の話。スピードと品質を両立させるための土台になります。5つ目、XLA体験サービスエクセレンスのことです。数字が良くても不満が出る問題に真正面から向き合う話です。6つ目DSSデジタルスキル標準です。回し続けるための人の型再現性の話です。」
これらを運用の現場に引き寄せて整理してみると、以下の問いによって今の運用に足りないピースが見えてくる。
- ・構造/全体設計があるか
- ・流れ/価値が通る道が見えているか
- ・判断/原則で迷わず決められるか
- ・統合/DevSecOpsでつながっているか
- ・体験/XLAで届き方を磨けるか
- ・人材/DSSで回せる状態か
改めて、ISOは守るべき骨格、ITIL® 4は進化させるためのエンジン、DSSは回し続けるための人の型。この3つが機能し流れをつくりはじめると、準拠しているだけの運用から価値を生み続ける仕組みへ変化を遂げると改めて強調しました。
そして、いよいよ内容は「使える形への落とし込み」、具体化への話題へと移っていきます。
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