コールセンターのストレス対策
AIを活用した感情分析・ストレス計測

「ウェルビーイング」とは、身体的にも心理的にも、さらに社会的にも健康な状態をいいます。昨今では従業員満足度の向上や離職率の低下を目指してウェルビーイングを追求している企業が増加しています。中でも人手不足が慢性化しているヘルプデスク、サポートデスク、コールセンターなどを含むコンタクトセンター業界においては、重要キーワードになりつつあります。

「ウェルビーイング」とは、身体的にも心理的にも、さらに社会的にも健康な状態をいいます。昨今では従業員満足度の向上や離職率の低下を目指してウェルビーイングを追求している企業が増加しています。中でも人手不足が慢性化しているヘルプデスク、サポートデスク、コールセンターなどを含むコンタクトセンター業界においては、重要キーワードになりつつあります。

ウェルビーイングが注目される理由

身体面だけでなく、精神面や社会面を含めてバランスよく良好な状態であることを意味する言葉として、広く使われているのが「ウェルビーイング」(well-being)である。1948年に国際保健会議が採択した世界保健憲章の全文では、「健康」を身体的(肉体的)、精神的および社会的に良好な状態(ウェルビーイング)であるとしつつ、さらに「単に病気や疾病の存在しないことではない」と記述している。いわば身体的かつ精神的に健康な「ヘルス(health)」から踏み込んで、総合的に生活の質が高い状態である「ウェルネス(wellness)」を目指すのがウェルビーイングというわけだ。

このウェルビーイングで見逃せないのは、「精神的・社会的にも良好な状態である」としている点である。ちなみに厚生労働省が策定した、2018年4月から2023年3月までの5年間で実施すべき主な取り組みを示した「第13次労働災害防止計画」では、8つの重点施策の1つに職場におけるメンタルヘルス対策の推進を挙げている。その背景には、仕事や職業生活に関する強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合が高止まりしているという状況がある。つまり企業で働く従業員において、ウェルビーイングであると言い切れる人はそれほど多くないという現実がある。

そこで身体だけでなく心まで含めて従業員が健康的に働けること、あるいは従業員満足度の向上などを目指し、ウェルビーイングの考え方を取り入れる企業が現れている。従業員の幸福に重きを置き、福利厚生を充実させるといった経営に取り組む、あるいは従業員の仕事に関する価値観の変化をとらえ、従業員の心理的安全性を担保して常に満たされた状態を目指す。その集合体として組織の幸福度を向上させるような取り組みは、将来的に従業員の創造性や組織生産性を高めることにもつながるだろう。一方、社会面では、CSR(社会的責任)やSDGs(持続可能な開発目標)を実現するような活動が広まれば、ソーシャルグッドな企業と認識されることも期待できる。

昨今、さらにウェルビーイングを軸にオフィスなどを評価する性能評価システムとして「WELL認証」も登場している。WELL認証はウェルビーイングに影響を与えるさまざまな機能を評価するシステムであり、空気や水、食物、光、運動など10の項目で定められた必須の要件(パート)をすべて満たし、さらに必要な数の加点項目を取得することが求められている。具体的な要件として、たとえば空気では基本的な空気質基準や禁煙環境の整備、効率的に換気するための仕組みなどがある。

このWELL認証の世界全体での累計登録件数は9,547件に達しており、日本でも61件が登録されている。今後、ウェルビーイングに着目して従業員が働く上での安心感や安全性を重視した環境を整備する取り組みであるウェルビーイング経営は、多くの企業に広まっていくのではないだろうか。

オペレーターのストレス対策の重要性

精神的な負担の高いコールセンター業務

前述したように、ウェルビーイングは身体的だけでなく、精神的にも良好な状態であることが求められる。この精神面での負担が大きい職場の1つとして挙げられるのはヘルプデスク、サポートデスク、コールセンターなどを含むコンタクトセンターだろう。

場合によっては、オペレーターが顧客から罵声を浴びせられて心理的に追い詰められたり、あるいは理不尽な要求を突きつけられたりするケースもあり、その負担は極めて大きい。また周囲からのサポートが適切に得られないことや、特にアウトバウンドコールを行っている場合はノルマを達成できないこともストレスの原因となり得る。このような状態で働き続けることは、ウェルビーイングとは言い難い。

10年前と比較した調査はストレスの高まりを指摘

オペレーターのストレスが以前よりも高まっていると指摘する調査もある。コールセンターに特化したストレス調査を実施するアクティブワークケアと関西福祉大学心理科学部は、共同研究で「コールセンターストレス調査」を実施した。この調査ではストレス原因が多くストレス反応も高い人を「くたくた」さんと分類しているが、10年前の同内容の調査と比べたところ、「くたくた」さんの割合が10.6%から33.9%へと大幅に増えているとしている。

コールセンターストレス調査の総合結果(n=2507)

画像:2020年度コールセンターストレス調査

調査名/「2020年度コールセンターストレス調査」
調査主体/一般社団法人アクティブワークケア、関西福祉科学大学心理科学部、株式会社ミスキィの共同研究
調査趣旨URL/https://active-workcare.com/

多くのコンタクトセンター(ヘルプデスク、サポートデスク、コールセンターなど)はオペレーターを募集しても思うように応募者が集まらない人材難の状況であり、さらにストレスの大きさから離職するオペレーターも多い。こうした状況が続き、コンタクトセンターの運営そのものが難しくなれば、ビジネスへの影響は十分に考えられる。そこで検討したいのが、オペレーターのストレスマネジメントへの取り組みである。

AIによる感情分析、音声マイニングによりオペレーターの精神状態を測定

適切な声かけによるストレスマネジメントの重要性

オペレーターのストレスを軽減するための手立ては、いくつか考えられる。たとえば応対が難しいとオペレーターが感じたとき、即座にスーパーバイザーにエスカレーションする仕組みを整える、困りごとや悩みごとを周囲に相談できる環境を整える、あるいはクレーム対処の方法を研修などでしっかり伝えるといった方法がある。

また、オペレーターの状態を把握し、適切なタイミングでスーパーバイザーなどから声がけをするのも有効だろう。ストレスが蓄積されているとき、自分の状態を話すことができればそれだけでも心が晴れる可能性があるうえ、ストレス軽減のための具体策を提示できる。そのようなコミュニケーションが取れる就業環境や組織の在り方は、従業員のモチベーションやエンゲージメントの向上につながるだろう。

とはいえ、勤務状態や表情からオペレーターの心理を把握することは難しい。さらに最近ではテレワークを取り入れているコンタクトセンターも増えているため、これまで以上にオペレーターの状態を把握することが難しくなっている。そこで活用したいのが、NTT Comの「コンタクトセンターKPI管理ソリューション」である。

AIによる感情分析、音声マイニングによりオペレータの精神状態を測定

同ソリューションの「Dashboard」メニューには、コンタクトセンターの状況を可視化するAmazon Connectに特化した特許出願中の独自ダッシュボードが提供されているうえ、テクノロジーによりオペレーターの精神状態を測定する仕組みも備えている。クラウド上でAIが感情分析や音声マイニングを行うことで、テレワークで働く人も含めてオペレーターの状態を素早く把握でき、適切なタイミングで声かけなどが行えるようになる。このようにしてオペレーターのストレスを軽減し、離職率の低下にもつなげている事例も現れつつある。

現在、多くの企業が「健康経営」を打ち出し、従業員の健康状態をチェックしたり、健康増進のための取り組みを進めているが、精神的、あるいは心理的な健康は見過ごされていることが少なくない。特にコンタクトセンター(ヘルプデスク、サポートデスク、コールセンターなど)はストレスが多い職場であることが多いため、精神面にまで視野を広げて、ウェルビーイングに働ける環境の整備を進めたい。

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