自社製品を自ら利用して改善し品質を高める
「ドッグフーディング」

自社製品を社内で利用することを指す言葉として、IT業界で広く使われているのが「ドッグフーディング」です。英語で「Eat your own dog food」というフレーズは、IT業界の製品開発の現場で使われているようです。このドッグフーディングの由来は、そしてそのメリットとはどんなものなのでしょうか。

自社製品を自ら利用して改善し品質を高める「ドッグフーディング」:自社製品を社内で利用することを指す言葉として、IT業界で広く使われているのが「ドッグフーディング」です。英語で「Eat your own dog food」というフレーズは、IT業界の製品開発の現場で使われているようです。このドッグフーディングの由来は、そしてそのメリットとはどんなものなのでしょうか。

自ら試して迅速に改善する「ドッグフーディング」

IT業界では、自社で開発した製品やソリューションを社内で日常的に使用することを「ドッグフーディング」と呼ぶ。このように自ら使用・体験することによって製品・ソリューションの使い勝手などを把握し、必要に応じて改善することで品質を高めていこうというわけだ。この言葉の由来には、「営業マンが自分の販売しているドッグフードの安全性を証明するために自ら食べた」など、複数の説がある。

たとえば業務用アプリケーションを開発している場合、それを自社の業務の中に取り入れて使用することにより、開発を担当したエンジニアが気づかなかった顧客目線での製品チェックが可能となる。それによって把握できた使い勝手の悪い部分や機能が不足しているところを修正・改善することで、品質を高めることがドッグフーディングの大きな目的だ。

もちろん顧客からのフィードバックが重要であることは変わりないが、そのためには製品やソリューションを1度リリースしなければならない。しかしドッグフーディングであれば、リリース前の状態であっても製品・ソリューションの使い勝手などをユーザー目線で検証することができ、迅速にフィードバックを得て改善できるという大きなメリットがある。

自社であれば率直な意見が得られることも、ドッグフーディングの見逃せないメリットである。多くの場合、フィードバックを返してくれる顧客は一部に過ぎず、また多少使いづらい部分があっても我慢して使用し続けるといったことも十分に考えられる。しかし自社であれば、使いづらい部分があれば積極的にフィードバックしてもらえる可能性があるうえ、開発エンジニアチームから意見を求めるような活動も取り組みやすい。このようにドッグフーディングによって問題や課題を修正・改善することができれば、競合に対するアドバンテージにもつながるだろう。

自社で活用している製品をソリューションとして提供

自社で使用していた製品をベースに独自のソリューションを開発し、一般に販売するケースもある。たとえばNTT Comでは、自社のコンタクトセンターやクラウド製品の運用現場で利用している「ServiceNow」をベースに、セキュアなVPN環境で利用できる「ServiceNow Secured over VPN」として提供している。

ServiceNowはServiceNow社が提供するSaaS型のマネジメントツールである。NTT Comはソリューションとして提供することを見据え、法人向けモバイルのコンタクトセンター用システムなどでServiceNowを利用、それによって評価・検証を行い、さらに独自のノウハウを蓄積したうえで独自ソリューションとしてServiceNow Secured over VPNを開発した。

画像:ServiceNow社が提供するSaaS型のマネジメントツール「ServiceNow」

実際にNTT Comでは、さまざまな領域でServiceNowを活用し、そこで体験した知見やノウハウを蓄積している。その1つとして、自社のクラウド製品の保守運用での活用事例がある。ServiceNowの導入によって1,700件のプロセスを自動復旧処理に変更、平均プロセス復旧時間を1分に短縮するゼロタッチオペレーションを実現したというものだ。こうした知見やノウハウを顧客に提供することなどにより、NTT ComはServiceNowを活用した高度なIT運用管理の実現をサポートしている。

長年の経験を生かしてコンタクトセンター運営を支援

自社のノウハウを活用してソリューションを開発、さらにドッグフーディングを続けることでブラッシュアップしているソリューションもある。それがNTT Comの「コンタクトセンターKPI管理ソリューション」だ。

コンタクトセンターKPI管理ソリューションは、NTT Com自身のコンタクトセンター運用の実績やノウハウと、コンタクトセンターの国際品質基準であるCOPC認証のベストプラクティスを反映したものである。

現在のコンタクトセンターは、オペレーターの定着率低下やオペレーターの採用難に伴う人員不足や稼働のひっ迫といった課題を抱えている一方、顧客満足度の向上も果たさなければならないなど、さまざまな課題を抱えている。これらの課題の解決を支援するのがコンタクトセンターKPI管理ソリューションであり、AIを用いたオペレーターおよび顧客の感情分析を独自開発のダッシュボードで可視化(特許申請中)させたり、専門アナリストによるコールリーズン分析などを提供している。

ドッグフーディングの観点で注目したいのは、このソリューションをNTT Com自身でも活用し、カスタマーサポートの向上を果たしている点だ。また開発に対してもフィードバックが行われており、ユーザーインターフェイスの改善や新機能の追加開発などにつなげられている。

ServiceNow Secured over VPNやコンタクトセンターKPI管理ソリューションのように、自社で開発したソリューションを自ら使用し、改善を重ねていることがわかれば、安心して導入できるのではないだろうか。製品やソリューションを選定する際、こうしたドッグフーディングの取り組みにも着目してみたい。

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