INTERVIEW

2021.03.11

“本質的な価値”をどう提供する?ホテルプロデューサー・龍崎翔子さんと考える、これからの日本

<C4BASE総合コーディネーターと考える明日のイノベーション vol.4 後編>


前編に引き続き、ホテル業界に新しいムーブメントを起こしている若き実業家、龍崎翔子さんが登場。
後編では新型コロナウイルスによって見えてきたこと、組織経営者としての課題や意識していること、今後挑戦していきたいことなどについて話していただいた。

ニューノーマル時代でこれから意識すべきこと

――ニューノーマルを念頭に、改めて感じたことやこれから取り組もうとしていることなどあればお聞かせください。

龍崎:私はニューノーマルに一切興味が無いんです。
コロナが流行しているからといって人の根本の価値観が変わるわけではありません。行きたいと思っていた宿には、ニューノーマルであろうが引き続き行きたいと思うし、行きたくないところには行きたくないですよね。結局は私たちのプロダクトに愛を持って向き合って、その結果顧客に愛してもらう以外にないです。

――コロナによってより本質があぶり出された。宿泊業界にとってはインバウンドの減退で下駄が外れたという感じですね。

龍崎: その通りだと思います。業界ではGoToトラベルキャンペーンをどう活用するかというセミナーなども存在しているけれど、それって一時的なものですよね。GoToキャンペーンで集客をしようとしている施設さんもいらっしゃると思うのですが、本質的な価値で勝負をしていくための変化する機会だと捉えてもいいかもしれません。実際、周りの事業者さんを見渡しても、「本当に自分たちがやりたいビジネス」の解像度を高めたり、より本質的でクリエイティブな営みを考えるきっかけになっているように感じています。

――何かご苦労や課題を感じていることはありますか?

龍崎:組織づくりが難しいと感じています。今までは会社も右肩上がりで成長してきましたが、やはり今回のコロナショックによるダメージがないわけではありません。 業績不安や、メンタルの落ち込み、そもそも観光業界は大丈夫なんだろうか、という閉塞感がなんとなく漂っている中、そういう雰囲気を打破できるような組織づくりには、まだ至っていないなと感じます。

――チームを作る上で意識されていることはありますか?

龍崎:ホテルのオペレーションって、単純作業と思われがちだったり、社会的に誇れる仕事と思われていなかったりする節がありますよね。だけど、オペレーションの先にクリエイティブな営みがあることを伝えられていなかったり、昇華してもらうところまでいけていなかったりしていると反省しています。ホテルオペレーションを単純作業と思うか、クリエイティブと思うかは人それぞれではありますが、これは組織としてホテルづくりに取り組む上での私の課題だと捉えています。

――鶴巻温泉の旅館陣屋はもともと典型的な旅館でしたが、経営危機からITを駆使した経営改革が始まり、昔ながらの考えを持つ従業員は離職してしまったと言います。しかし、実際は顧客の様々な情報が可視化され、顧客満足度が高まると、仕事の楽しさや働きがいだけでなく効率も上がって、週休3日も実現できたという例があります。

龍崎:ホテル従業者としてスキルは申し分のない人でも、与えられた業務から、自分の力でクリエイティブな営みに変えていくことができないと、働きがいを感じられない人もいます。そのことは今回のコロナショックでさらに鮮明化したように思います。

――龍崎さんはまさにZ世代の女性ですが、世代の代表として何か目指すものはありますか?

龍崎:私がZ世代の代表という感覚もないし、同世代の気持ちを社会に反映する、という意図もないです。ただ、世代の一員としてインサイトは把握していて、産後ケアに興味をもっているのもそれが理由です。私の上の世代の話を聞いていると、産後は本当に大変そう。できれば大変な経験はしたくないし、いかに迂回できないかなと考えています。その迂回路を自分でつくることができるのなら、後から通る人がその迂回路を通れるのでいいじゃん、と思っています。
大変有難いことに、実際に出産ケアを経験した方の多くが私の想いに共感してくださっており、応援の言葉もいただいています。年代は違うと言っても、同じ時代に同じ国で生きているので、自分がいいなと思うものが実現されていけば、他にもいいと思う人はいるだろうと思います。それが結果、生きやすい社会につながるのではないでしょうか。

――SDGsも、自分ごと化できないSDGsは意味がない。自分が心から思っていないと、発想につながらないですよね。

龍崎:人の気持ちを理解するのって、難しいですよね。言葉も本心かはわかりませんし。だから、自分の本心の解像度を上げるということが重要なのかと思います。自分の欲しいものに対して、なぜ無いのだろう?と思ったものから実現させていくことが重要と考えています。

【番外編】C4BASE事務局の中川が聞く!

――ご自分の想いに共感する人を増やしていって、それを集めたものがサービスであったり商品につながるのだろうと思います。自分の想いに共感してもらうために、工夫をしていることはありますか? たとえば自分の意見を発表するなどあると思いますが……。

龍崎:特に発表するなどはしていなくて、社内で雑談の時に話すとか。あとはTwitterで発信したりといった程度でしょうか。

それにアイディアの筋が良いか悪いかも、Twitter上の反応で明らかになります。Twitterは正直で、良いアイディアには多くのリアクションがきて、そうでないものには反応が無い。コメントや引用RTで「こういう○○がある」、とか忖度せずわがままに伝えてくれるので、市場観を把握できますね。

――アイディアに対して、Twitter上で一緒にやりましょうというパートナー候補からの話も来ると思いますが。

龍崎:来ますね。やりたいことを発信すると、一緒にやりましょうとDMが届いたり。普段からSNSで発信することで、オープンイノベーションが体現できているかと思います。

――大企業でやりたいことを実現できないケースで悩んでいる方がたくさんいますが、助言などありますか?

龍崎:企業の大きさはあまり関係ないと思っていて、企業で実現したいことと個人で実現したいことが一緒で、社会をポジティブに進める方向性へ持っていけるか、関わる個人がその仕事に誇りを持てるか、課題認識があることが大切だと考えています。

――産後ケアの企画が気になったのですが、そのような企画が生まれたきっかけをお教えいただけますか?

龍崎:自分よりも年上の人の出産、産後の話を聞かせていただく機会が増えてきた時に、将来子供を生む可能性がある身として全く他人ごとではなく大変そうだなと感じました。多くの方々が大変な思いをして乗り越えた壁なのだと思うのですが、たとえその倍の労力がかかったとしても迂回路をつくることができれば、私自身のみならず今後出産される多くの方々にとっても意味あることなんじゃないかと思いまして。
そもそもホテルビジネスは売上のキャップがあるビジネスなので、そこをどう突破していくかが永遠のテーマになっていて、付加価値をつけて、唯一無二の価値提供ができないか思考しています。
タレントの小雪さんが韓国で産後ケアを受けた話を聞いて、ホテル業界でもできることがあるのではと感じました。外国でそのようなビジネスモデルが成立していて、なぜ日本では成り立たないのか、子供を持ちたいと思った方々がかえって苦しい思いをしたり、パートナー間の信頼関係を損ねたりすることは決してヘルシーではないと課題意識を感じたところから始まっています。。このようなチャレンジ・取り組みは小さい会社であればこそ、リスクを取って取り組んでいけるのではと思い立ちました。

――社会課題と、ご自身の実現したいことの掛け算が、企画につながっているように感じます。

龍崎:私は、“世の中”には社会課題はないと考えていて。普遍的なパーソナルな課題が社会課題なんだと捉えています。だから、私が個人的に必要だと思ったサービスが、結果的に他の多くの方々の課題を癒すサービスでもあったからこそ、社会課題の解決に向かえるのではないのでしょうか。 また、「消費者」「経営者」「メディア」「神(俯瞰的、社会的)」のそれぞれの視点から見えている課題を一刀両断で解決できるのが良い企画だと考えていて、この4つの視点が自分のアイディアの整理軸になっています。

――ホテル業態以外に、挑戦したい領域などありますか?

龍崎:それが、人々のライフスタイルにおける選択肢を広げるものであれば、何でも挑戦していきたいです。
たとえば最近では、ブライダル業界とコラボして、新しい結婚の形を提案することにもチャレンジしています。結婚式って表層的ですよね。2人が夫婦になる過程を、ワークショップ形式で取り組むことで、お互いを良く知っていって、それに取り組む過程で本当の夫婦になっていくサービスなのですが、ありがたいことに好評をいただいていて、より洗練させ多くの方々にご提供できればと思っています。 また、教育にもチャレンジしたいです。私自身が地方出身なので、出生地にとらわれずに良質な教育が受けられるようなサービスを、ホテルと掛け合わせて提供できないかなども考えています。

藤元後記
「消費者」「経営者」「メディア」「神(俯瞰的、社会的)」の4つの視点で考えるなど具体的な龍崎流の思考のフレームワークまで披露してもらい、気づきの多い対談であった。彼女はおそらく自分を「ホテル業」の人とは考えていないのだろうなと感じた。自分が欲しい空気感やサービスを突き詰めれば彼女は衣食住生活全般の様々なサービス全てがプロデュースの対象になる。 しかし、それこそが生活者視点であり、提供者視点で行き詰まっている既存ビジネスの人達の弱点だ。まずは彼女のTwitterのつぶやきに何を感じるか。そんなところから是非感じて欲しい。 今後龍崎さんの生み出す様々なサービスに注目だ。

中川総括
私たちはホテルに泊まる際、ロケーション、部屋の雰囲気、宿泊料などを気にすることが多いのではないでしょうか。
しかし、今回お話を伺ってみると、龍崎さんは、その周りにある付加価値(衣食住)にどれだけ関心を持ってもらい、体験してもらうのかに着目してビジネスを考えていらっしゃることに改めて気づきました。 まさに、ホテルという既存のビジネスに新しい意味付けをされているのだと感じ、大変勉強になりました。
C4BASEでは、会員の皆さまが新しいビジネスを考えたり、既存のビジネスのDXを考えたりする際に重要な観点として「意味のイノベーション」を紹介しています。テクノロジーを使うことはDXの目的ではなく、あくまで手段であり、「新しい意味」を生み出すことに注目することが重要だという考え方です。
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