動脈硬化について

概要
動脈硬化とは、動脈(心臓から全身に血液を送る血管)の壁が硬くなり弾力性が失われた状態を指します。血管内部にコレステロールなどの沈着物(プラーク)がたまり、血管が狭くなって血液が流れにくくなります。その結果、血管内で血栓(血のかたまり)が生じて詰まりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞など命に関わる病気を引き起こす原因となります。 日本人のおよそ10人に1人は動脈硬化による心臓や脳の病気で亡くなることが言われています。
原因
動脈硬化はさまざまな危険因子(リスク要因)の積み重ねで起こります。まず加齢(年をとること)が最大の要因で、年齢とともに動脈硬化は進行します。そのほか男性、喫煙、肥満や運動不足(メタボリックシンドローム)、脂質異常症、高血圧、糖尿病、多量の飲酒など生活習慣に関わる要因が大きく影響します。これらのうち加齢や性別といった要因は変えられませんが、それ以外の生活習慣に関わる危険因子は改善が可能です。なお、家族歴(血縁者に若くして心筋梗塞や脳卒中を発症した人がいること)など遺伝的素因も動脈硬化のリスクを高めるとされています。
症状
動脈硬化は初期のうちは自覚症状がほとんどありません 。血管が徐々に狭くなっても、ある程度までは体に悪い影響が出にくく、自覚されないまま進行します。しかし動脈硬化が進行して血管の狭窄が強くなると、症状が現れることがあります。例えば心臓の冠動脈が狭くなれば胸の痛み(狭心症)、足の動脈では歩行時のふくらはぎの痛み(間欠性跛行)などが起こる場合があります。また、動脈硬化が高度になると血管内のプラークが破裂して突然血栓が詰まり、一気に血流が途絶えて心筋梗塞や脳梗塞といった重篤な発作が起こることがあります。
検査・診断
動脈硬化そのものを調べるには、いくつかの検査方法があります。一般的な健康診断では、血液検査でコレステロール値や血糖値を測定したり、血圧を測ったりすることで、動脈硬化のリスクとなる状態(脂質異常症や糖尿病、高血圧など)をチェックします。必要に応じて、頸動脈エコー(首の動脈の超音波検査)で血管内のプラークの有無や狭窄を調べたり、足首と上腕の血圧の比(ABI検査)で血管の詰まり具合を評価することもあります。このほか、医療機関では動脈の硬さを調べる脈波伝播速度検査(PWVやCAVI)、心臓の血管のCT検査、血管造影検査などにより、さらに詳しく動脈硬化の状態を診断することもできます。
治療
動脈硬化の進行を防ぐには、まず生活習慣の改善が基本です。喫煙している人は禁煙し、食生活では塩分や動物性脂肪の摂りすぎを避けて野菜や魚中心のバランスの良い食事を心がけます。適度な運動を行い、肥満やメタボリックシンドロームがあれば減量に努めます。こうした生活習慣の改善によって高血圧・糖尿病・脂質異常症といった危険因子をコントロールすることができ、動脈硬化の進行を遅らせることが可能です。生活習慣の改善だけでは十分でない場合には薬物療法も行われます。高コレステロール血症に対してはスタチンなどのコレステロールを下げる薬、高血圧には血圧を下げる薬、糖尿病には血糖を下げる薬というように、それぞれの危険因子を薬で適切な値にコントロールします。さらに、動脈硬化が原因で狭心症や心筋梗塞、あるいは閉塞性動脈硬化症(足の動脈の閉塞)など血管が詰まる病気を発症した場合には、カテーテルによる血管拡張やステント留置術、バイパス手術などで狭くなった血管を広げ、血流を改善させる治療が行われます。
参考:
厚生労働省 e-ヘルスネット 「動脈硬化」
日本循環器協会 「循環器病は防ぐことができる」
日本生活習慣病予防協会 「動脈硬化」