玉井 佑治Yuji Tamai
経歴
2003年にNTTドコモ(入社時はドコモ関西)に入社後、当時のコアネットワーク部、国際事業部などを経て、2014年、グアムのDOCOMO PACIFIC, Inc.へ出向。ビリングシステムの統合プロジェクトを完遂したのち、2017年にNTTドコモ IoTビジネス部へ。以降、IoTやコネクテッドカーといった分野をテーマに、新ビジネスの企画立ち上げに携わる。2022年のNTTドコモグループ再編を機にNTT コミュニケーションズ所属となり、現在は5G&IoTサービス部 グローバルコネクテッドカー推進部門の担当部長としてさまざまな自動車メーカーとのコネクテッドカー共同開発プロジェクトを主導している。
趣味は旅行。非日常感を味わうため、プライベートの旅はできるだけ訪問したことのない場所に行くことを好む。都合がつけば一人で出掛け、特に目的を持たずにひたすら街中を歩いて気持ちをリフレッシュする。1978年生まれ、広島県出身。大阪大学大学院 理学研究科修了。
活動履歴
講演動画
ドコモビジネスが支援するIoT
インタビュー
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01
エバンジェリストとしての得意分野とミッション
入社後、主にネットワーク・技術領域でモバイルネットワークや国際ローミングに携わり、海外赴任となったDOCOMO PACIFIC, Inc.ではビリングシステムの統合プロジェクトをまとめるなど、グローバル領域でもキャリアを築いてきました。
今取り組んでいるIoTやコネクテッドカーを担当するようになったのは、2017年。車における通信では、ちょうどその少し前の時期から「テレマティクス」と呼ばれるモバイルネットワークを利用したサービス分野で当時主流だった3Gから、4G/LTEへの移行が本格的に進み出しました。まさにこの時期が大容量通信インフラを活用した動画配信など、今につながる「リッチコンテンツを車の中で楽しむ世界」が到来する大きなターニングポイントとなり、「コネクテッドカー」という呼び名も出始めました。
当時所属していたNTTドコモにおいても通信の上で成り立つコンテンツビジネスを車へ拡大すべく、2017年7月、コネクテッドカーに関する専門組織が立ち上がり、私もそのスターティングメンバーの一員となりましたが、実際のビジネス開発には大変苦労しました。続けていけたのは、「コネクテッドカーという分野がビジネス領域として非常にエキサイティングであることや、モバイル通信を担うNTTドコモグループが大きく貢献できる分野だ」ということを強く感じていたからです。
好転した大きなきっかけは、グローバル市場を見据えたビジネスへの方針転換。世界を見たときに大きな可能性が広がり、新たなチャレンジがスタート。現在はグローバルでBMWグループ様(以下、BMW様)とインフォテイメント用のモバイルコネクティビティを提供する契約を締結し、プロジェクトが進行しています。
今やIoT機器は車だけでなく、スマートメーターやエレベーターなどあらゆる領域に広がっています。通信を担う企業のエバンジェリストとして、コネクテッドカー領域で培った知見を他の領域にも生かし、皆さまのビジネスのさらなる発展に貢献していきたいと思います。
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02
これまでの活動を代表するプロジェクト
NTTドコモ時代に担当し、2022年3月にBMW様と発表した、5GとコンシューマeSIMにNTTドコモのワンナンバーサービスを対応させたコネクテッドカーサービスの提供です。
以前からBMW様は、独自のテレマティクスサービス(BMWコネクテッド・ドライブ)を展開されていましたが、それに加えて、もう一つ新たにインフォテイメントサービスを世界中で提供するために、国ごとにローカル通信事業者との連携を模索されており、日本ではNTTドコモとタッグを組むことになりました。
主に個人利用が想定されている通信端末やスマートウオッチと違い、自動車は家族とシェアする場合もあること、さらに将来、レンタカーやカーシェアに活用されることも視野に入れて、自動車でもシームレスにワンナンバーサービスが使える仕組みを整えました。このプロジェクトは日本国内のビジネスだったのですが、BMW様のご要望に沿ってプロジェクトをスケジュール通りにスムーズに進めることができた点を評価いただきました。そして同様の仕組みで今度はグローバルにBMW様のビジネスをご支援できるのではないかと考え、こちらからご提案しました。
このグローバル案件のご提案はBMW様に受け入れていただけましたが、一つのキーとなったのが、NTTグループであるフランスの「Transatel SAS(以下、Transatel)」がグローバルに提供しているIoT向けモバイルコネクティビティサービスの活用です。
2024年7月、BMW様の車両オーナー様向け車内インターネット利用サービス「パーソナルeSIMサービス」に、Transatelのプリペイド型モバイルデータ通信サービス「Ubigi(ユビジ)」の提供開始を発表しました。
UbigiはTransatelが世界190カ国に展開するeSIMサービスで、このサービスを活用して、欧州各国で車内インターネット接続サービス(4G/5Gデータプラン)が利用可能になりました。さらに車両モデルに応じて「車内 Wi-Fiホットスポット」「フロントシート用のビデオストリーミングサービス」など、BMW様が提供する各種インフォテインメントサービスを楽しむことができます。
このサービスでは、主にビジネススキームやサービスの企画・仕様、またシステム構成などにおける基本設計を私たちが担当しました(Ubigi提供のための機能開発、および実装はTransatelが担当)。現在も引き続きBMW様、Transatelとの共同開発プロジェクトは進行中で、今後さらに世界に拡大していきます。
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03
ドコモビジネスと共に描く未来
BMW様のプロジェクトでNTTグループであるTransatelのケイパビリティが生かされたように、NTTグループはグローバル通信分野で独自の技術や武器を持ち、効果的な活用方法を生み出しています。さらにそうした技術やノウハウを今後、世界に向けて発展させたいと考えています。
特にコネクテッドカーでは、現在、世界中で熾烈(しれつ)な開発競争が加速していることから、よりお客さまのサービス開発を支援できるよう「NTN(非地上系ネットワーク)」など、次世代通信ネットワークシステムとのインテグレーションも可能な限り早期に実現することをめざして、日々、取り組んでいます。
ただ、お客さまから見るとNTTグループの他にも通信事業者が多くいる中で、通信サービスそのもので突出したものを示しパートナーとして選ばれ続けるのは、それほど容易なことではありません。そこで改めて私たちが持つ強みを突き詰めていくと、技術やサービスだけでなく「お客さまに誠実に寄り添うこと」にあるのではないか感じています。お客さまが望むあらゆることに対して、仮にその全てをお客さまが望む通りに実現できないとしても「他の方法で実現できないか?」と追求し、新たな解決策や価値を提供することができる。それが私たちの本質的な強さだと考えます。
私自身その精神を大切に、グローバル市場を視野に入れたIoTから広がる新たなビジネスの可能性を探っていきたいと思っています。
※本記事の内容は取材時のものであり、組織名や役職などは取材時点のものを掲載しております。