5Gがつなぐ広島と長崎の平和への想い

2021年12月、広島と長崎の高校生をつなぐオンラインの平和学習イベントが、広島県・長崎県協力のもとNTTドコモ中国支社主催で開催されました。5Gエリアの広島国際会議場と出島メッセ長崎に集まった合計31名の生徒たちは、同じ教室にいるかのような空間演出のなかでともに講演を聞き、最新技術を体験しながら平和の祈りを込めたVRアート制作に共同で取組みました。

Virtual Design Atelier™は、VR装置を使いクラウド上で3Dコンテンツを共同制作できる仕組みです。5Gネットワークの高速・低遅延性を活かし、離れた場所にいても同じVR空間でリアルタイムの共同制作が実現します。本イベントでは、遠隔拠点にいる高校生がチームを組み、VR装置を装着して共同でVRアートを制作しました。

遠隔共同制作ソリューション
Virtual Design Atelier™
https://www.ntt.com/business/services/vda.html

最新技術が高校生たちの心をつなぐ

「知らなかった」ことに気づく

広島会場の参加生徒たちは、壁一面がスクリーンの特設会場で等身大に投影された長崎の生徒たちと顔を合わせました。壁越しに手を振り合い並んで座り、平和ガイドボランティアの方々の講演に熱心に聞き入ります。広島からは内藤達郎氏が地域の歴史や復興の営みを、長崎からは調仁美氏が記念碑などの意味を解説。原爆被害を中心に知識をつけてきた生徒たちにとって新鮮に響いた様子です。また、被爆地同士でありながら互いの地域のことを知らなかったという感想が交わされました。

広島と長崎でVRアートを共同制作

講演後は平和への祈りを込めた3Dアート制作です。広島と長崎混合のグループに分かれオンラインビデオ会議で作品コンセプトを詰め、VR装置をつけいざVR空間へ。実演を披露したVRアーティストせきぐちあいみ氏のアドバイスを受けながら、コントローラーを空中で動かします。参加した生徒の中の美術系専攻の生徒は、「3Dで考えて描くのが新鮮で、頭もフル回転でした」と新たな技術との出会いに目を輝かせます。また、日頃のオンラインコミュニケーションで遅延を経験している生徒は、5Gの高速通信に「全然違います!距離感を感じなくてすぐ隣の同じ空間にいると本当に実感できました」と驚いていました。

平和への想いをポジティブに表現

完成した作品は、惨禍を受け止めながらも力強く明るい未来につながるコンセプトのものばかり。これまでの平和学習のイメージにはないポジティブでクリエイティブな表現で平和への想いを発信しました。最初は緊張した表情だった生徒たちですが、終わる頃には「楽しかった!」という声と笑顔にあふれ、すっかり打ち解けた様子でした。

距離を越えたつながりに新たな平和学習の可能性が開ける

臨場感あふれるオンライン体験

広島県地域政策局平和推進プロジェクト・チーム担当課長栗原あゆみ氏は、「臨場感に驚きました」と当日の印象を語ります。昨今、広島発の数々の平和学習プロジェクトはオンライン実施を余儀なくされてきただけに、イベントで生徒たちがバーチャル空間で自然に交流する姿に大きな可能性を見出しました。今後は広島のオンラインツアーを検討中で、「5Gの技術が活かせれば、平和記念資料館の展示物などをよりリアルに遠方の方に見せることができそうです」と伝達の質が上がることに期待を寄せます。

共同制作から生まれるつながり

VRアートにともに取組む生徒たちの姿に、「共同制作というのはお互いの距離を一気に縮めますね」と栗原氏は感心します。これまでの平和学習ではディスカッションを行うのが通例でアート制作という発想はなかったと振り返り、国際交流においても言葉の壁を越えて平和への想いを共有する手段になるのではないかと感じています。また、若い世代はSNSで発信するなど行動に移す力があることを評価し、広島と長崎の間にとどまらず、日本中、世界中とつながり「広島を起点に訴えていってほしいと強く願っています」と呼びかけました。

最新技術が人と人をつなぎ学びの可能性を広げる

5Gの通信環境がさまざまなつながりを実現

NTTドコモ中国支社支社長白川貴久子は、「つながる」を実現したイベントだったと振り返ります。広島と長崎の会場の高校生たちをつなぐだけでなく、当日の様子はリアルタイムで配信、海外を含む各地から視聴されコメントが寄せられました。「つながることによって知ることが増え、心が感じ合えることがあると実感してもらえたのではないでしょうか」。

5Gがあれば、教育分野での活用アイデアも広がります。すでに、美術館と小学校をつないで作品を高精細な映像データで送信し遠隔鑑賞を実現しています。今後はモバイルの特性を活かした遠隔の自然観察や工場見学などに活用することもできそうです。また、生徒たち同士が地域を越えてつながり、双方向で学び合える豊かな教育環境がオンラインで実現させられるのではないかと白川は見通します。

アート表現の力と最新技術のインパクト

白川は 広島をとても美しい街だと感じてきました。今の魅力的な街の姿は惨禍から立ち上がる人間の強さの象徴であり、これからの希望になるポジティブな発信をしたいと考えてアートを題材に選んだといいます。「アートは元気づけてくれたり喜びを表したり、平和の願いととても親和性があると思います。そして自由ですよね」。完成した作品が講演内容を受け止めたものであったことを振り返り、「あそこまで表現してくれるとは生徒たちの発想は予想を越えていました」と賞賛しました。

遠隔地をつないでVR アートの共同制作を可能にしたのがVirtual Design Atelier™。3Dの大容量データが行き交うクラウド上の作業に高速通信環境は必須です。教育目的での活用は今回がはじめてで、生徒たちは最先端技術でバーチャル空間を体験しました。「何より生徒たちが楽しそうに参加してくれたことがうれしいですね」と白川。

今回のイベントは、場所に捕らわれることなく、距離を越えて人と人がつながることが、学びの可能性をどこまでも広げることを教えてくれました。

PDF(1,956KB)

お問い合わせ