病室に監視カメラを設置する理由とは?病院側のメリットとプライバシー問題

病室内の監視カメラ

病院に監視カメラを設置することで、防犯対策だけでなくさまざまな用途で活用することができます。しかし取り扱いによってはプライバシーの侵害となり病院の信用問題にかかわることもあるため、設置の際には撮影対象となる個人の権利利益を侵害するリスク、その個人が感じる違和感や抵抗感などを事前に考慮しておくなど、設置した際の影響を、設置前に評価しておくことが望ましいです。

この記事では、病室など病院内に監視カメラを設置するメリットや、プライバシー問題などの設置における注意点についてご紹介します。

病室に監視カメラを設置するメリット

病院の中でも特に監視カメラの設置ニーズが高いのが、入院病棟の病室です。プライバシーに配慮しながら、目的に応じて病室に監視カメラを設置することで、以下のような効果が期待できます。)

患者さんの様子を離れた場所から見守りできる

ナースステーションなどから病室の様子を確認できれば、巡回時間でなくても患者さんの変化にすぐに気付いて処置・対応することができます。
特に、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の影響により、遠隔での見守りの需要は高まっています。感染症に罹患している患者さんの様子やバイタルを映した映像を遠隔でチェックすることで、接触回数を減らし、業務効率の向上とともに病院内の感染拡大リスクを最小限に抑えられます。
巡回を効率化でき、患者・スタッフ共に安心感を得ることができるでしょう。

不審者の侵入や、盗難(病室狙い)対策になる

病院は、開院時間中はある程度自由に出入りできる場合が多いため、患者さんの家族や友人を装えば誰でも簡単に病室へと侵入できます。
不審者の侵入によって、入院患者や病棟スタッフが危険にさらされる可能性があるほか、盗難が発生する恐れもあります。複数人が入院している相部屋だとしても、ほかのベッドのカーテンが閉まっていたり、患者が寝ていたりすることも多いため、周囲に怪しまれず金品を持ち去られてしまうのです。
このような盗難の手口は「病室狙い」と呼ばれます。病室に監視カメラを設置することで、病室狙いの発生抑止や、有事の犯人特定に役立てることができます。

介護施設・保育施設でも同様の用途で監視カメラが導入されている

ご紹介したような用途を目的に監視カメラを設置しているのは、病室だけではありません。介護施設や保育園でも、同様の目的で導入が進んでいます。
防犯対策はもちろん、介護・保育中の見守りや事故防止、不審者対策など幅広く活用されています。人の動きを検知する人感センサー付きカメラを設置すれば、老人ホームの入居者の徘徊や、保育園からの子どもの抜け出しにいち早く気が付くことができます。徘徊や抜け出しは深刻な事故や事件につながる可能性もあるため、発生を抑止し履歴を記録することは大変重要です。
病院や介護施設、保育施設のようにすべての対象者をスタッフのみで対応することが難しい場所では、監視カメラを設置することで負担を減らし、業務を効率化させることが可能です。

病院の監視カメラ設置はプライバシー侵害になるのか

監視カメラにより撮影される方の同意が得られている設置目的の範囲内で利用する場合には、監視カメラの設置自体は基本的に問題ありません。ただ、設置する場所や状況によってはプライバシー侵害に該当する可能性があります。

プライバシー侵害となるのはどんなケース?

監視カメラで撮影した映像・音声から、顔や体つきなどの身体的特徴、氏名、住所、職業、収入、婚姻歴、そして病歴や通院・入院歴などの情報を読み取ることができます。顔画像については、はっきりと見えていれば単体で個人の認識が可能です。また、顔の全容が見えない場合や画像が不鮮明な場合でも、氏名などほかのいくつかの情報を組み合わせることで、特定の個人を識別することが可能となります。
このような個人を特定できる映像の中で、以下の条件を満たす映像を撮影・公開した場合、プライバシー侵害が問われる可能性があります。

  • 私生活に関する内容
  • これまで他人が知らなかった内容
  • 撮影された本人が「公開されたくない」「公開されることで不安を覚える」と思う内容

プライバシー侵害の影響

プライバシーを侵害されたと感じた人から損害賠償請求を受け、それが妥当だと判断されれば慰謝料を支払うことになります。さらに名誉毀損も伴うと認められると金銭面だけでなく刑事罰を科せられ、病院側は社会的影響を大きく受けるでしょう。

なお、過去のプライバシー侵害に関する日本の裁判においては、映像の公表によって起きた不利益が問題となったケースが多かったですが、映像を撮影すること自体に関してプライバシー侵害や肖像権侵害に問われる可能性も出てきています。
監視カメラの設置自体は法に触れる行為ではありませんが、プライバシーに関する映像・音声の取得(撮影・録音)が可能な場所に監視カメラを設置することにより、プライバシーの侵害が問われる可能性があることを念頭に置き、必要な対策を実施しましょう。

参考:経済産業省「カメラ画像利活用ガイドブックver3.0」
https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220330001/20220330001.html

病院の監視カメラ設置時にプライバシー侵害へ配慮すべき対象

病院に監視カメラをする際には、どのような対象に向けてのプライバシー配慮が必要なのでしょうか。

患者のプライバシー

まず、病院の利用者である「患者」のプライバシーが挙げられます。通院・入院歴を他人に知られたくないと思う人は多くいます。また、病室では着替えをしたり医療処置や経過確認の際に脱衣をしたりすることがあります。
プライバシー保護の観点から、下記のような対策を実施することをおすすめします。

  • 監視カメラで撮影する映像は、防犯や安全管理、臨床研究などの目的以外では利用しないことを病院の資料やWebサイトに記載する
  • 監視カメラで取得した映像データの取り扱いや保管にあたっては個人情報保護方針に従う旨を定め、病院の資料やWebサイトに記載する
  • 病室内に監視カメラを設置していることやカメラに関する取り決めを入院申込書などの書類に記載し、入院患者やその家族・親族に対して事前に伝えてあらかじめ同意を得る

医師・看護師などのスタッフのプライバシー

患者のプライバシーだけでなく、病院内で働く医師や看護師、事務員などのスタッフのプライバシーへの配慮も必要です。
厚生労働省の「労働者の個人情報保護に関する行動指針」によると、職場に監視カメラを導入する場合は労働者のプライバシーに配慮し、設置に関して事前に通知するものとされています。休憩室・更衣室など業務に関係のない場所への設置や、映像のみでの労働評価など、指針に反する目的で利用してはいけません。

病室以外の場所での監視カメラの活用法

病室以外の場所に監視カメラを設置すると、どのように活用できるのかをご紹介します。

「病院荒し」対策

扉が開いた金庫

コロナ禍以降、窃盗件数は全体的に減少傾向となっていますが、病院やクリニックの金庫などを狙った「病院荒し」の件数は前年より増加しており、被害が多発している地域もあります。病院内の目が届かない場所や被害にあいそうな場所にカメラを設置することで病院荒しへの対策となります。

受付・会計窓口でのトラブル対策

病院の受付・会計窓口では、来院者から理不尽なクレーム・暴言を受けたり、釣り銭ミスなどの会計トラブルが発生したりすることがあります。また、スタッフによる金銭の横領なども起こります。
このようなトラブルが発生・発覚した際に、監視カメラの映像があれば状況を客観的に把握することができ、抑止策ともなります。

待合室でのトラブル対策

待合室には不特定多数の人が出入りします。待ち時間に居眠りをする、荷物を置いたまま椅子から離れるなどで置き引きが発生するケースがあるため、監視カメラの映像を証拠として残すことができます。

薬品庫からの無断持ち出し対策

病院の薬品庫には劇薬や医療用麻薬、睡眠薬などさまざまな薬品があります。中には危険な薬品や高額な薬品もあり、犯罪・転売目的で盗まれる可能性があります。
薬品庫に監視カメラを設置することで無断持ち出しや盗難を防ぎます。

新人医師・研修医の教育

監視カメラは新人医師・研修医の教育にも役立ちます。診療室などにカメラを設置し、患者に対して正しく説明できているか、上手にコミュニケーションが取れているかをメンターなどの先輩スタッフが確認してフィードバックするために映像を記録しています。

業務効率化

カメラの映像から病院内の状況を包括的に確認し、病院内を移動する患者さんやスタッフの場所を把握することができます。各フロアを回らずとも誰がどこにいるかすぐに把握できるため、人を探す手間を省いて業務効率がアップします。

クリニックや歯科医院でも同様の用途で活用可能

病院荒らしや各種トラブルは、病院の規模にかかわらず発生しうることです。クリニックや歯科医院、薬局、そのほかあらゆる病院・施設で監視カメラが活用されています。

病室・病院内に監視カメラを設置する際の注意点

ここからは、病室・病院内に監視カメラを設置する際の注意点をご紹介します。

防犯カメラのガイドラインがある市区町村はそれに従う

防犯カメラの設置に関しては、市区町村がガイドラインを作成している場合が多いです。カメラの設置前に必ず病院所在地の自治体のガイドラインを確認してください。ガイドラインがある場合は、その内容に従ってカメラや周辺機器の設置を進めましょう。

ガイドラインで策定されているのは、主に以下のような内容です。

  • 設置目的
    犯罪の防止を目的とする
  • 設置場所
    道路、公園・広場、商店街・繁華街、地下街・駅、金融機関、商業施設、劇場・映画館、スポーツ・レジャー施設、ホテル・旅館、駐車場、病院、社寺など
  • 装置
    画像撮影装置のほか、ビデオ、DVD、ハードディスクなど画像を記録し、表示する機能を備えたカメラ
  • 防犯カメラの管理・運用に関して配慮すべき事項
    1. 防犯カメラの設置場所・撮影範囲
    2. 防犯カメラを設置していることの表示
    3. 防犯カメラ管理責任者の指定
    4. 防犯カメラ設置者・管理責任者が守るべきこと
    5. 防犯カメラにより撮影された画像の適正管理・保管期間など
    6. 防犯カメラの画像の利用・提供の制限
    7. 苦情などへの対応
    8. 防犯カメラ管理・運用規程の策定
    9. そのほか

参考:京都府 防犯カメラの管理・運用に関するガイドライン
https://www.pref.kyoto.jp/anshin/1170044790358.html

また、教育や業務効率化といった、防犯目的以外で監視カメラを活用する場合は、経済産業省が策定している「カメラ画像利活用ガイドブック」も参考にしてください。

監視カメラの設置を周知する

監視カメラ動作中のプレート

入院病棟の病室にカメラを設置する場合は、必ず入院時に設置目的や個人情報の取り扱いに関して説明し、患者さんからの同意を得ておく必要があります。入院申込書などの書類にサインをもらう形で同意を得るケースが一般的です。
病室以外の待合室などに設置する場合は、入口やカメラの近くにステッカーやプレートなどを掲示しましょう。
患者さんだけでなく、スタッフなどの病院関係者にも事前に説明をして理解を得ることが大事です。

利用目的に沿った監視カメラを設置する

設置場所によって利用目的に沿った機能がついているカメラを設置しましょう。
病室にはプライバシー対策のため、高セキュリティなカメラが望ましいといえます。24時間の見守りや夜間の侵入・盗難防止目的であれば夜間撮影が可能なタイプや、動体検知・音声検知機能を搭載しているカメラを設置すると効果的です。

クラウド録画カメラサービス「coomonita(コーモニタ)」

NTTコミュニケーションズのクラウド録画カメラサービス「coomonita(コーモニタ)」で撮影した映像はクラウド保存されるため、PCやスマホからリアルタイムの映像を確認することができます。映像を録画するレコーダーの配線や、閲覧用のモニタールームが不要なので、導入コストを抑えて手軽に導入できるサービスです。

遠隔からのモニタリングに最適な高機能が搭載されており、防犯目的以外に幅広い用途で活用できます。セキュリティ面では、通信・録画映像の暗号化や外部からカメラへの直接的なアクセスを遮断するため、不正アクセスによって映像が流出する心配もありません。映像の個別権限設定やAIを活用した画像解析機能など、プライバシーにかかわる問題への対策も可能です。

まとめ

今回は、病室に監視カメラを設置する理由やメリット、プライバシー問題に関する注意点についてご紹介しました。
カメラを導入する際は多方面への配慮が必要となりますが、設置することで入院患者や外来患者、その家族の方々にとってはもちろん、病院で働く医師や看護師などのスタッフにとってさまざまなメリットがあります。
病院内の安全管理や業務効率化にお悩みの場合は、監視カメラの設置を検討してみてはいかがでしょうか。

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