5GとMRが実現する臨場感あふれるオンライン実習

山口大学共同獣医学部では、COVID-19の影響で授業のオンライン化が進む中、対面で行ってきた臨床実習の教育効果をどのように保つかが課題でした。その解決策として、MR※グラスと5Gモバイル技術による臨場感あるオンラインHands-On実習システムをドコモとともに開発。2022年2月に新システムによる遠隔実習の様子を公開しました。

先端技術「5G×MR」が実現する新たな実習環境

高まるオンライン実習の必要性と課題

同大の共同獣医学部は、山口大学と鹿児島大学が共同で2012年に設置した新しいスタイルの教育体制で、両大学の教育資源を遠隔授業で共有し同一のカリキュラムを実現しています。近年、同学部では動物福祉の観点から生体実習を模擬モデルに置き換える取組みを行ってきました。さらにCOVID-19の影響下で、遠隔で実施できる2DのHands-On実習を構築。受講者に事前に実習用モデルや機材を送付し、講師が画面越しにオンラインで技術指導を行えるようにしました。しかし、対面で直接見て学ぶ場合に比べ、2Dの画面では受講者が得られる情報量が劣るのが課題でした。
そこで、実在の風景に3D映像を重ねて投影できるMR技術を採用。受講者がMRグラスを装着し、講師側の映像を自身の視界で立体的にとらえながら手元の実習が行える環境を、ドコモとともに新たに構築しました。今回、遠隔拠点間におけるリアルタイムの3D映像配信と音声通信を実現したのが、高速大容量のデータ転送を低遅延、多数接続で行える5G通信の技術です。
同大が2021年度に文部科学省のデジタル活用教育高度化事業に採択されたことを受け、DX推進計画の1つとして、この次世代MR技術と5Gを用いたオンラインHands-On実習システムの開発は進められました。
※MR:Mixed Reality(複合現実)

オンライン実習オンライン実習

3Dで専門技術のオンラインHands-On実習指導を実現

先端技術「MR」で講師の視点を再現

MRグラスを使用したHands-On臨床実習の公開は、山口大学内で講師側と受講側の教室を分けて実施されました。
公開授業で指導したのは同大共同獣医学部の佐々木直樹教授。模型を使用して馬の脚の骨折時における固定処置の実習を行いました。佐々木教授の手元は2眼の専用カメラで撮影されており、受講者はMRグラスを通じて、専用プログラムで3D化された映像をリアルタイムに視聴できます。専用カメラは3D映像を生成するために人間の目と同様の間隔に設定された2眼で同時撮影をしていて、人の立体視に近い3D像を再現できるよう工夫されています。

Hands-On臨床実習の公開佐々⽊直樹教授

MRグラスを装着した未来的な授業シーン

MRグラスを装着した学生

受講者は各座席で実習用の模型や器具を整え、MRグラスを装着。各自がMRグラス上で3D映像を視聴します。MRグラス上で見える映像の操作は空中に手をかざして行うため、学生が何もない空中で手を動かす様子はとても未来的です。また、教授の手技は3アングルから撮影して配信されているので、好みの視点に切り替えながら、3Dで細部まで確認することができます。同一の視界で、講師の手順を確認しながら、自らの手元の模型で練習に取り組めるというのは、非常に画期的です。
また、学生側の作業シーンはMRグラスのカメラを通じて映像として送られ、すべて教授側のモニターで確認できます。遅延なくやりとりができるため、個別の細やかな指導も可能となり、対面の実習に近い学習効果が得られました。

新しい時代の実習モデルの先駆けとして

場所を越えて専門的なオンライン実習が可能に

実習を終えた佐々木教授は、対面でリアルな実習が行えない状況において今回の新実習システムが価値を持つのはもちろんのこと、新たな可能性を開いたと述べました。今後対面での実習を行いやすい社会状況になったとしても、「社会人や、普段学校に通うことができない人たちも、自宅にいながら遠隔で実習できるという利点が大きいのではないでしょうか」と佐々木教授は語ります。多様な学び方に対応して専門技術を指導できる可能性が広がります。
さらに、「これまでなかなかできなかった学外実習などを、その場に行かなくても体験できるようになります」と話し、より専門性の高い内容もオンライン実習を通じて学べるチャンスが広がることに期待を寄せました。

オンライン実習オンライン実習

獣医学以外の分野での活用にも期待が集まる

佐々⽊直樹教授へのインタビュー

同大のDX推進計画では、今回の新システムをいっそう充実させて、共同獣医学部において必須の学び方に拡張性をもたらすHands-On実習をオンラインで実施できるように進化させる予定です。離れた場所でも臨場感ある講義と実習を行える山口大学式DXスタイルを構築し、教育の高度化を実現します。
また、獣医学実習だけでなく、医学、工学、理学分野の室内での実験や実習、農学、水産学、地理学分野の野外での調査や実習でも応用が可能です。この5Gモバイル通信とMR技術を融合させたオンラインHands-On実習システムは、未来の学びの可能性を大きく広げようとしています。
ドコモビジネスは2022年度も引き続き同システムの開発を続け、さらなる機能の充実を図る予定です。今後も山口大学と連携し、同大のDX推進をサポートしていきます。

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