I.業績の概況

(1)市場環境および事業基盤の変化

一昨年の秋以降、金融危機がグローバル経済に様々な影響を及ぼしておりますが、各国政府による景気対策もあって、アジア・米国に明るい兆しも出始めました。しかし、日本・欧州経済はデフレの進行・円相場の上昇・信用不安等で依然として先行き不透明な状況が続いております。このような状況下で、日本の情報通信市場においては、経営の効率化に向けて、各企業のICT利用の要請が一層高まっており、クラウドコンピューティングを起点とした新しいサービスやビジネスモデルの変化が急速に進んでおります。

(2)経営概況

当社は、急速に変化する経営環境を踏まえ、お客さまの「ワンストップでトータルかつグローバルなソリューションサービス」に対するご要望や、「豊かな社会と安心で快適な生活」を実現するサービスに対するご要望にお応えするため、NTTコミュニケーションズグループの成長戦略「事業ビジョン2010」に基づき「ICTソリューションパートナー」そして「“CreativE-Life”for Everyone」のブランドにふさわしいサービス提供に取り組んできました。

また、コンサルティング型営業をさらに深化させ、お客さまの経営課題の解決に資するICTソリューションを提案する法人ビジネス事業、あらゆる分野において「“日本品質”でグローバルにつなぎ続ける」ことを追求するグローバル事業、顧客基盤を活用してお客さまとの接点を強化するサービスの提供や、新たなサービス・ビジネスモデルの投入に取り組むネットビジネス事業の積極的な展開に努めてきました。

さらに、“つなぐ"、“つなぎ続ける”という基本ミッションを念頭に、7つの成長エンジン「ソリューション」「ネットワークマネジメント」「セキュリティ」「グローバル」「ユビキタス」「ポータル/エンジン」「マネージドクオリティオペレーション」に磨きをかけるとともに、NTTコミュニケーションズグループ総体としてグループ会社群とのシナジーを徹底的に訴求する成長戦略を加速してきました。

上記ミッションのもと、7つの成長エンジンに経営資源を集中することによる事業構造の転換を推進し、これらの事業を支えるプロフェッショナル人材の育成、デリバリープロセスの改革、オペレーションの品質改善、新たなサービスの創造などに取り組んできました。

法人ビジネス事業については、国内外シームレスな営業を加速し、お客さまの経営課題を解決する「ICTソリューションパートナー」として、コンサルティング型営業の推進、お客さまニーズにあった付加価値の高いソリューションの提供に努めました。また、いつでもどこでも、安心・便利に仕事ができるICT環境を提供する「BizCITY」コンセプトのもと、企業のICT環境における、資産圧縮・投資リスク軽減・アウトソーシング化等のニーズに対応した、セキュアで高品質なクラウド型サービスの提供を推進しました。

グローバル事業については、国内外シームレスかつ高品質なサービス提供という日系企業や多国籍企業のお客さまニーズに応え、ネットワークインテグレーションに「データセンター」「セキュリティ」「サーバ・マネジメント」などを組み合わせた付加価値の高いトータルなICTソリューションの提供に努めるとともに、データセンターの拡充や事業拠点の展開を図りサービスの充実に努めました。また、日米間海底ケーブルPC-1を保有するPacific Crossing社やセキュリティサービス事業者であるIntegralis社を買収するなど、サービス提供能力の強化を図りました。

ネットビジネス事業については、光サービスを中心とした販売活動の推進や多様なサービス提供により、OCNやぷららの顧客基盤の拡大を図るとともに、NTTレゾナントやNTTぷららなどグループの総合力を発揮し、ISP、050IP電話、映像配信、CGMなど総合的なネットサービスを展開しました。NTTぷららの「ひかりTV」においては、地上デジタル放送IP再送信の提供エリア拡大やハイビジョンコンテンツの拡充等により、今期、100万契約を突破しました。

以上の取り組みにより、多様化・高度化するお客さまのご要望にお応えするとともに、お客さまとの接点を担う「現場力」「人間力」そして活力ある「企業力」を重視する地に足を着けた収益基盤作りを行いました。

(3)経営成績

営業収益については、IP系収入が、OCN、VPN収入の拡大により、対前年比+107億円増(+3.0%)の3,648億円となりました。一方、音声伝送収入およびデータ通信収入については、減少傾向が続いており、それぞれ対前年比▲348億円減(▲8.4%)の3,789億円、▲130億円減(▲9.8%)の1,201億円となりました。また、景気も一部明るい兆しが出始めているものの、依然として予断を許さない状況が続くなか、前期まで増収の続いていたソリューション収入が、当期は対前年比▲105億円減(▲5.3%)の1,865億円となりました。

以上の結果、営業収益全体としては、対前年比▲479億円減(▲4.3%)の1兆792億円となりました。

次に、営業費用については、持続的なプロセス改善を通じたコストコントロールの徹底により、経費が対前年比▲301億円減(▲5.9%)の4,799億円となりました。また、音声伝送収入の減等の影響により通信設備使用料が対前年比▲111億円減(▲4.0%)の2,688億円となりました。

以上の結果、営業費用全体としては、対前年比▲445億円減(▲4.3%)の9,817億円となりました。

これにより、営業利益については、対前年比▲33億円減(▲3.3%)の975億円となり、当期純利益については、不動産および株式売却等を実施した前年に比べ▲283億円減(▲31.9%)の606億円となりました。