I.業績の概況

(1)市場環境および事業基盤の変化

米国サブプライムローン問題に端を発する金融危機が、株式市場の低迷や為替相場の変動をはじめとした経済の混乱を招き、昨年半ば以降、企業の設備投資の削減、個人消費の冷え込みなど情報通信業界を含む実体経済にも影響が及んでいます。このような状況下で、日本の情報通信市場においては、「固定と携帯」「通信と放送」など様々なサービスの連携・融合が一層進行し、ブログやSNS(Social Networking Service)、Q&AコミュニティーなどのCGM(Consumer Generated Media)を起点とした新しいサービスやビジネスモデルの変化が急速に進んでいます。

(2)経営概況

当社は、急速に変化する経営環境を踏まえ、お客さまの「ワンストップでトータルかつグローバルなソリューションサービス」に対するご要望や、「豊かな社会と安心で快適な生活」の実現に向けたサービスに対するご要望にお応えするため、法人サービス・グローバルサービス・ネットビジネスサービスの充実・強化に努めてきました。2008年度は、NTTコミュニケーションズグループの成長戦略「事業ビジョン2010」の達成に向けた2年目として、“つなぐ”という基本ミッションを念頭に「ICTソリューションパートナー」と「“CreativE-Life”for Everyone」のブランドのもと、7つの成長エンジン「ソリューション」「ネットワークマネジメント」「セキュリティ」「グローバル」「ユビキタス」「ポータル/エンジン」「マネージドクオリティオペレーション」に経営資源を集中するとともにNTTコミュニケーションズグループ総体としてグループ会社群とのシナジーを徹底的に追求する成長戦略を加速してきました。

上記7つの成長エンジンに経営資源を集中することによる事業構造の転換を推進し、これらの事業を支えるプロフェッショナル人材の育成、コンサル型営業の推進、デリバリープロセスの改革、オペレーションの品質改善などの取り組みを進めました。

法人ビジネス事業については、業種・業態別を基本とした法人営業体制の整備、プロセス改善ならびにSE機能の強化を加速し、お客さまの経営課題を解決する「ICTソリューションパートナー」として、コンサルティング営業の推進、お客さまニーズにあった付加価値の高いソリューションの提供に努めました。

グローバル事業については、国内外シームレスかつ高品質なサービス提供という日系企業や多国籍企業のお客さまニーズに応え、ネットワークインテグレーションに「データセンター」「セキュリティ」「サーバ・マネジメント」などを組み合わせた付加価値の高いトータルなICTソリューションの提供に努めるとともに、データセンター事業の拡充や事業拠点の展開を図りました。

ネットビジネス事業については、光サービスを中心とした販売活動の推進や多様なサービス提供により、OCNやぷららの顧客基盤の拡大を図るとともに、NTTレゾナントやNTTぷららなどグループの総合力を発揮し、ISP、050IP電話、映像配信、CGMなど総合的なネットサービスを展開しました。

また、CSRについては、NTTコミュニケーションズグループの「CSR基本方針」に基づき、「社会への貢献」「地球環境保護」「人財の尊重」の観点から、豊かで持続可能な社会の実現に向け、情報通信サービスの提供を通じてグローバル規模で社会の新たな価値創造や課題解決に取り組みました。

以上の取り組みにより、多様化・高度化するお客さまのご要望にお応えするとともに、お客さまとの接点を担う「現場力」「人間力」を重視する地に足を着けた収益基盤作りを行いました。

(3)経営成績

営業収益については、ソリューション収入が、景気後退という厳しい環境下において対前年比41億円増(+2.2%)の1,970億円となりました。また、OCNなどのIP系サービス収入も対前年比で198億円増(+6.0%)の3,540億円となりました。

一方、IP系サービスへのマイグレーションが進むデータ通信収入および音声伝送収入については、それぞれ対前年比▲143億円減(▲9.7%)の1,332億円、▲365億円減(▲8.1%)の4,138億円となりました。

以上の結果、営業収益全体としては、対前年比▲273億円減(▲2.4%)の1兆1,271億円となりました。

次に、営業費用については、大口案件にかかる委託費用の一時的な増などもあり、経費が対前年比129億円増(+2.6%)の5,100億円となりました。また、音声伝送収入などの減影響による通信設備使用料の▲236億円減(▲7.8%)や、減価償却費、固定資産除却費などの▲132億円減(▲8.5%)により、営業費用全体としては、対前年比▲234億円減(▲2.2%)の1兆263億円となりました。

これにより、営業利益については、対前年比▲38億円減(▲3.7%)の1,008億円となりましたが、当期純利益については、不動産および株式の売却などによる特別利益360億円を計上するなどにより、対前年比262億円増(+41.9%)の890億円となりました。

(4)今後の取り組み

2009年度は、厳しい経営環境の中、「事業ビジョン2010」の実現に向け、引き続き“つなぐ”という基本ミッションを念頭に、成長分野である法人ビジネス事業・グローバル事業・ネットビジネス事業の強化・拡大をより一層加速していくこととします。

具体的には、法人ビジネス・グローバル事業については、「ICTソリューションパートナー」としてコンサルティング型営業を強化するとともに、国内外シームレスかつ高品質なサービス提供というニーズに応えるべく、付加価値の高いトータルなICTソリューションをワンストップで提供します。

特に、グローバル事業については、昨年度来、日露間光海底ケーブル運用開始、上海・香港・ベトナムなどでのプレミアムデータセンター展開、さらには、フットプリント拡充など、サービス提供体制の強化に取り組んできました。

今後も、イギリス、アメリカ、シンガポールなどでプレミアムデータセンターを整備拡充していくとともに、現在21の国と地域、50都市で展開している海外拠点についても、ロシアのサンクトペテルブルクやベルギーのブリュッセルなどに拡大し、お客さまのグローバルな事業展開を支えます。

ネットビジネス事業については、特に、“BtoBtoC型”ビジネスの展開として、デジタルフォレスト社とともに、企業向けマーケティング・ソリューション分野における新たなビジネスモデルの構築に努めます。

また、NTTぷららの「ひかりTV」については、会員数が55万を超えたところであり、今後も地デジIP再送信の提供エリアの拡大など魅力あるサービスを展開し、今年度末までに累計110万会員の獲得を目指します。

さらに、NTTドコモやNTTレゾナントと連携した携帯電話とPCのシームレスサービスの開発や検索機能の高度化など、先進的なサービスを開発・提供し、新たな収益基盤の確保にも努めます。

以上の取り組みにより、「事業ビジョン2010」の下、7つのコアバリューに磨きをかけ、成長分野の事業拡大に努めるとともにNTTコミュニケーションズグループ一体となった事業運営を進めてまいる所存です。