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「成長」か、「発展」か:成熟社会型モデルへ抜本的な転換を。 東京大学 先端科学技術研究センター 知財マネジメントスクール校長役 特任教授 妹尾 堅一郎 氏

情報化やグローバル化、地球環境問題の深刻化が世界中を覆っている中で、日本は世界に例を見ない少子高齢化の急速な進行や人口減という問題も抱えている。そうした中で、企業の不祥事や今までであれば考えられなかったような事件が続発している。こうした事件の当事者が世の中の大きなうねりに対応できていないのは明らかだ。時代の変化をつかむこと、しかも変化の表層だけでなく、その本質に迫ることが求められている。また、時代変化を適切に認識することは新しいビジネスのヒントになることはもとより、先端的な人材育成の前提を再確認することになる。「時代が変わるとはモデルが変わるということ。今、日本の社会・企業はモデルを抜本的に変える時期に来ているにもかかわらず、その認識が極めて浅くかつ甘い」と東京大学先端科学技術研究センターの妹尾堅一郎氏は危惧する。時代の変化とその中で、日本経済や企業の向かうべき方向について、妹尾氏に聞いた。

「成長」か、「発展」か、その基本的違いを確認する

――今日の時代変化について、どうお考えですか。
妹尾 時代が変わるということは、実はモデルが変わるということです。モデルとは「仕組み」と「仕掛け」と「仕切り」、すなわち、構造と機能、そしてマネジメントです。この3つのセットが変わると時代が変わるのです。現在の日本は工業社会から情報社会に移る過渡期で、情報化社会だと誰もがいいます。では情報社会は工業社会の発展型か、成長型かと聞くと、ほとんどの人が答えられない。同じように、日本経済を成長させたいのか、発展させたいのかと聞いても、大抵の人はよく分からない。つまり、成長と発展の区別がついていないのです。

――成長はGrowth、発展はDevelopmentですね。
妹尾 そうです。成長は「子どもの背が伸びて成長する」というように、同じモデルの量的拡大を意味します。一方、発展は「さなぎが蝶に変わる」「おたまじゃくしがカエルに変わる」というように、ある成長の過程で不連続にモデルが変わることです。さなぎから蝶になる時には、細胞がいったんすべてドロドロになり、カオスの中から自己組織的に次のモデルになる。これが発展です。


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発展論に基づいて、成熟社会に合ったモデルを作る

――日本経済を考えた場合、どうなのでしょうか。
妹尾 今、日本では、情報化、少子高齢化、グローバル化、環境志向化、の4つの「化(ばけ)」が一斉に進行しています。先進諸国の中で最も早くさまざまな課題が起こる「課題先進国」です。そこでは、従来と異なる形や性質に変わる「化」が始まっているわけだから、モデル自体を変えなくてはならない。そのために、日本経済は発展論にもとづいて成熟社会に合ったモデルを作っていかなければいけないのです。成長より発展を先行させ、モデルを変えてから成長に移行する、つまりオタマジャクシのまま大きくなるより、まずカエルになってから大きくなろうということです。


図 日本の将来推計人口

――企業はどうでしょうか。
妹尾 大手企業の役員研修で同じように聞くと、やはり成長と発展を区別できていません。両者の違いを真剣に考えずに、単純な売上拡大を考えている。やはり、企業でも、成長か、発展かという根本的な問いかけをする必要があります。そして、その根本にあるのは、モデルを変えなくてはダメだという認識なのです。ICT(Information and Communication Technology)の活用も、効率化に注目するのか、仕組みを変える、つまりビジネスや経営のモデルを転換させるために使おうとするのか。前者は成長史観であり、後者は発展史観です。そこをはっきりさせることが何よりも重要です。

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