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ネクスト・メディアとは何か 〜ネット&ライフスタイルの新時代〜 従来のメディアやビジネスに影響を与えながら、日々成長と変化を続けていくネットの世界。その現状と将来の展望を紐解いていきます。 powered by WIRED VISION

テーマ3 インターネットの本当の意味を考える
第2回
ブログとSNSの次に来るコミュニケーション


インターネットは言うまでもなくコミュニケーションのためのインフラです。既にこの連載のテーマ1でも見たように、今日の新しいコミュニケーションを支えているのはまぎれもなくインターネットです。電話やFAXの使用頻度や支払っている料金と、インターネットでのコミュニケーションの頻度やコストをこの数年くらいで比較してみると、インターネットの比率がどんどん高まってきたことが分かると思います。

主な利用用途がコミュニケーションであるメール、Skype、ショートメッセージなどはもちろんですが、突き詰めて考えると、Webもコミュニケーションのために存在すると言えるでしょう。

企業とそのユーザーがWebサイトを通じてコミュニケーションする、個人がブログを使ってコミュニケーションする、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などのWebアプリケーションで多くの人とコミュニケーションする、といったことですね。あるいは、もっと直接的なコミュニケーション・ツールであるメールでさえ、グーグルのGmailのようにすべてがWebの中で完結するようになってきています。


ブログ、SNSの次のコミュニケーションの姿

ブログやSNSでのコミュニケーションは、Web 2.0というキーワードとともに広く受け入れられるようになりました。しかし、ブログにせよSNSの日記にせよ、書き続けること、継続することは、なかなか容易なことではありません。

例えば、最近公表された総務省情報通信政策研究所の調査結果(「ブログの実態に関する調査研究の結果」、平成20年7月)によれば、国内で公開されているブログは2008年1月末現在で約1690万に上ります。1人でいくつものブログを運営しているユーザーもいますので一概には言えませんが、日本のネットユーザー(約8800万人)の2割がブログを利用しているというデータです。

この調査では、米国での調査結果も踏まえて、ブログは世界に約7000万存在し、使用言語別では日本語が約37%で同36%の英語をわずかに上回り数の上ではトップであるとも指摘しています。

一方で、国内のブログのうちアクティブなブログ(月に1回以上の更新など)は、全体の2割弱の約300万に過ぎず、2006年以降はあまり変化していないとも指摘されています。書き続けるためのモチベーションを保つことが難しいということを反映したデータではないかと思います。

こういった背景の下で、新しい方向性として注目しておきたいのが、(1)今までよりもリッチな動画等を使ったコミュニケーション、(2)短いメッセージを頻繁にやりとりする手軽なコミュニケーション、という二つだと思います。前者の典型例は「YouTube」でしょうし、後者では短い一言メッセージを投稿し合う「Twitter」が挙げられると思います。

これらは、方向性は異なりますが、たくさんの文字や文章を読んだり読ませたりしてのコミュニケーションから、文字ではない何かの情報交換へと向かおうとしていることの表れとも言えるでしょう。YouTubeであれば、動画によるネタの共有とそのネタ同士の関連性やつながり感を楽しむ、といったことでしょう。また、Twitterであれば、「いま、どこ〜?」「渋谷、公園通りです〜」「お、近いじゃん」といったような、ごく短くて他愛のないコミュニケーションの楽しさなのかもしれません。

また、これまでのコミュニケーションでは、メールのように、ビジネスとプライベートのどちらでも利用できて、しかもその使い分けが比較的容易なものが中心でした。今後のコミュニケーションを考える上では、それらに加えて、もっと個人の人格や性格に直接結びついたようなコミュニケーション・ツールが存在感を増していく、ということにも留意しておくべきなのでしょう。

携帯型の無線端末でいつでも容易にコミュニケーションが可能ではあるが・・・(CC) photo by Brian Solis
携帯型の無線端末でいつでも容易にコミュニケーションが可能ではあるが・・・
(CC) photo by Brian Solis

難しくなるビジネスとプライベートの区別

既に生活や仕事に密着したコミュニケーションの場として、SNSを挙げることができると思います。SNSでは自分の友達を登録することができます。国内で最もユーザー数の多いSNSであるmixiでは、登録した友達のことを「マイミク」と言います。マイミクはマイミクシィの略で、マイミクの間では日記等の更新が通知されたり、友達関係が分かったりします。

最近よく耳にする話として、「家族がマイミクになっちゃって、なんだかやりにくいのでアクセスしなくなってしまった」というようなものがあります。もちろん、家族というのは一例ですが、プライベートな友人が中心のコミュニケーションの場だと思っていたら、家族や仕事関係の人のような異なる関係性の人が混じってしまった、ということが「やりにくさ」につながるわけです。SNSの普及によって、日常的なコミュニケーションのごく近いところにいろいろな関係性の人が居る、という状況はごく普通の光景になりました。

国内でも、代表的なSNSであるmixiやGREE(mixiと同時期に開始された国内大手SNSサービス)だけではなく、ISP(インターネット接続事業者)が運営するSNSや海外のSNSサービスの日本語版(MySpaceやFacebookなど)、数多くのSNSサービスが提供されています。また、複数のサービスのアカウントを持っているユーザーもたくさん存在します。これだけユーザーとサービスが増えてくると、ネットを通じてコミュニケーションできる範囲がどんどん広がり、その広がり方をコントロールすることはなかなか容易ではありません。

例えば、ある海外のSNSでは、新規にアカウントを取得すると「あなたを招待した友人とあなたの他のサービスの登録情報から考えて、本サービスのユーザーにあなたの友人ではないかと思われる人が何人か居ます。これらの人達にあなたがサインアップしたことをお知らせしておきました」というようなサポートまで用意されています。

つまり、コミュニケーションの範囲は広い方が良いであろう、というポリシーがはっきりしているわけです。この点、mixiなどでは、友人のカテゴライズであるとか、日記等の公開範囲を友人限定できるなど、交友範囲が広ければよいというだけではないサービス機能になっています。交友の範囲を限定したり、分類したり、あるいは日記を見せる友人を限定するなど、情報によってそれが届く範囲を変化させることが可能です。

英語圏と日本の利用の違いは匿名性

こういったサービスの基本的な方向性の違いが生じるのは、ユーザーがサービスを利用する際に実名かどうか、ということが一つの要因なのだと思います。海外のSNSは実名での利用が前提のものが多く、ユーザー側もビジネスモードで自分のスキル等をプロフィールに並べるのが普通です。

これに対して日本では、「2ちゃんねる」に典型的に見られるように匿名でのコミュニケーションが多いように感じます。ブログなども匿名が目立ちます。ブログの場合、良く見るとどこかに実名を出している、あるいは知人の間なら皆知っているけれど、というような場合もありますが、実名に大きな意味を求めていないのが日本のコミュニケーションの大勢なのではないかと思います。

この違いの理由を考えると、企業あるいは仕事と、個人との関係性に大きく影響されていると感じます。米国のようなレイオフの有無はもとより、個人ありきで仕事を選んでいるという意識と、組織の一員である自分ありき、というスタンスの違いのようなものが、サービス機能の違いにまで反映しているのではないか、と思うのです。

もちろん、どっちが良いとか悪いとかではないわけで、こういった違いはコミュニケーションの文化的な違いとも言えるわけです。とはいえ、今後はこれまで以上に個人がインターネットを駆使してビジネスを進めていく場合が多くなるのではないか、という仮説が正しいとすれば、実名的なスタンスが現在よりも強く求められるようになる、ということもありうることだと思います。

カギを握るのはデータ・ポータビリティか?

自分の意志とは関係なく、コミュニケーションの範囲が拡大し、いったん構築された関係は維持され続ける、という状況で、ビジネスとプライベートを厳密に区別することは難しくなってきています。そこから生まれる新しい成果もあれば、コミュニケーションにある種のやりにくさも存在する、ということは現実として受け入れる必要があるでしょう。あるいは、好きな相手も嫌いな相手も存在する、というリアルな人間関係に近いコミュニケーション環境になってきている、とも言えるでしょう。

こういった状況で、一つ注目されているのが、ユーザーのプロフィールや属性のデータを複数のサービスで共用できるようにする「データ・ポータビリティ」という考え方です。データ・ポータビリティが実現すると、例えば先に挙げたような、あるSNSに新規に登録すると、「ここにはあなたの友人と思われる人が何人かいます。この人達について、ここでも友人登録します」というようなサービスができるようになります。

さらにこれに加えて、「OpenID」のように複数サービスのアカウント(ユーザーIDとパスワード)を共通化してしまうようなサービス機能(シングルサインオンと呼ばれます)も提供されてきています。例えば、gooのアカウントで他のサービスにもログインできてしまう、というようなものです。サイトごと、サービスごとに異なる複数のID/パスワードを管理しなくても、一つのIDとパスワードの組み合わせですべてにログインできるようになるわけで、ユーザーにとっては便利といえば便利な機能です。

OpenIDによって複数のサービスを利用するのに1回のログインで済むようになり、データ・ポータビリティでユーザーの属性などが共用されるわけです。

しかし、これらを進めれば進めるほど、あるユーザーのネットでの振る舞いを規定する情報が単一に近づいていく、ということも言えると思います。つまり、どのサービスを使っても、同じ属性のユーザーとして見えてしまう可能性があるわけで、例えばビジネスとプライベートでサービスを使い分けたいと思っても、それがなかなか難しいということにもなりかねません。

こういった状況の下で、豊なコミュニケーションを円滑に進めるためには、サービス提供者側とユーザー側の両方からのアプローチが必要ではないかと思います。

まず、サービス提供側には、ユーザーのプロフィールや属性のデータについて、複数サービスでの利用を想定したり、ビジネスやプライベートといった使い分けを可能にするための詳細化・多機能化が求められるでしょう。既存のユーザーIDよりも一階層上位のIDでユーザーを識別する、といった階層化も必要かもしれません。

一方、ユーザーにもますます高度なネット・リテラシ、コミュニケーション・リテラシが求められるようになるのだと思います。その場とそこに参加している自分の関係やモードというものを常に冷静に把握してコミュニケーションする姿勢が重要だと思います。ビジネスオンリー、プライベートオンリーというような、これまでの単一の場でのコミュニケーションとは違った配慮がないと、その場の空気感を台無しにしてしまうことにもなりかねません。例えば、ビジネス上の立場をプライベートの場に持ち込むというようなことは避けなければなりません。また。公私混同で信頼を失ってしまう、ということもあるかもしれません。

ビジネスとプライベートというだけでなく、プライベートであっても複数のコミュニティに所属していたり、多くの仕事上のプロジェクトに参画していたりするなど、多様で複雑になるのが、これからのコミュニケーション環境です。これまで以上に、コミュニケーションの「場」と自分との関係性をコントロールし、その場においては自分はどのような存在なのかということを常に意識する、ということが必要になってくるのではないでしょうか。

次回は、インターネットのもう一つの大きな側面である「投資のプラットフォーム」としての役割について考えてみたいと思います。グローバル化した経済環境の下では、コミュニケーションの基盤環境として捉えていたインターネットが、それと同じくらいの大きな意味を持って投資の基盤として機能しています。そして、インターネットでのコミュニケーションと投資には、共通点がたくさんあります。ユーザーが工夫する余地が大きく、工夫すればするほど、大きな成果が期待できる、という点もその一つです。

ワイアード・ビジョン 編集委員 田邊俊雅


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