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テーマ2 次世代ネットワークとサービスを考える
第4回 コミュニケーションはPC&モバイルへ


前回までは、ブロードバンドが可能にした新しいコンテンツ流通の姿や、それを使って始まったアーティストの取り組み、ブロードバンド・インフラの一歩先の技術などを見てきました。今回は、ちょっと目先を変えて、携帯電話とPCが形づくる新しいメディア環境について考えてみます。


「いつもつながっている」をPCと携帯で

最近は、PCを持たずに出歩くことが多くなりました。それでも、ネットに接している時間は従来よりもはるかに長く、常時接続に近い感覚になってきています。言うまでもなく、それは携帯電話があるからです。

総務省の調査によれば、既に8000万人を超えたインターネット・ユーザーのうち、PCと携帯電話を併用するユーザーは約7割です(出典:「平成18年通信利用動向調査」)。

このようなユーザーの状況に加えて、最近のWebサイトはPC/携帯の両方に対応するのが当たり前になりつつあります。特に、コミュニケーション系のサービスは、携帯に軸足を置いたものになってきています。

日本国内の携帯電話、PHSの総加入数は平成19年12月末現在、1億件を突破した。(CC) photo by Gaetan Lee
日本国内の携帯電話、PHSの総加入数は平成19年12月末現在、1億件を突破した。
(CC) photo by Gaetan Lee
実際、PCはサブノート・タイプではあっても、気軽に持ち歩くには重いですし、電源の心配もあります。また、ソフトウエアのインストールや各種設定、セキュリティ対策や日頃のディスクのメンテナンスなどが必要です。つまり、PCの環境を整えなければならず、このために相当の手間がかかります。

コミュニケーションという側面で見ると、ちょっと気になることがあったときにさっとメールを送ろうと思っても、起動してメールソフトを立ち上げて、という点が面倒です。歩きながら、電車で吊り革につかまりながら、などということもできません。

こういった点から、日常的なコミュニケーション端末としては、圧倒的に携帯電話に分があります。携帯電話であっても、携帯メールだけでなくPCのメールもWebメールの携帯版サービスで利用が可能ですし、多くのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)ではモバイル・サイトを用意していて、内容は常にPCサイトと同期しています。サービスとして、携帯でアクセスすることを前提に考えられているのです。

Webメールの携帯版サービスでは、PCのメールソフトのように発信者のアドレスを設定できるサービスもありますから、メーリングリストへの投稿などで特定のメールアドレスが必要な場合でも問題ありません。

メールとSNSが使えれば、コミュニケーション系の用途にはほぼ十分ですが、さらに、PC用サイトを見るための「フルブラウザ機能」も提供されていますので、PC用のWebサイトも見ようと思えば見られます。

携帯で面倒なのは文字入力ですね。それでも、若い人がメールを打っている手元などを見ていると、「親指の先に複数の突起があって、それぞれを独立にコントロールしながら打っているのではないか」とさえ思えるような動きだったりします。ポケットの中でタッチタイピングで入力する、という話も聞いたことがあります。

電話は出ないけれど、メールはすぐに返信が来る、1日に100通以上のメール(短いメールも多いようですが)を携帯でやり取りする、というようなユーザーの姿が普通になってきています。最近の携帯小説なども、筆者の方々は携帯で書いていると聞きます。

もちろん、動画やフラッシュなどのリッチな表現のサイトを見たり、込み入ったコミュニケーションなどは、PCでなければできませんし、ダウンロードするようなコンテンツもPC向けですね。

コミュニケーションのためのPCという観点からは、最近出てきた「EeePC」などのように、性能はそれほどではなくても小型で安価な製品が、これからの主流になるかもしれません。価格は、一気にノート型の半額以下になってしまいました。高性能なPCは、クリエイティビティを支援するような役割やエンターテインメント系での利用が中心になっていくのではないでしょうか。

携帯電話さえあれば、デジカメ、メモ帳、スケジュール管理、アドレス帳、メール端末、SNS端末、投資端末、バンキング端末、ICカード(電子マネー)端末など、ほとんどのことに対応できてしまいます。そしてこれらの機能が、WebメールやSNSに見られるように、Webテクノロジを間に置くことで、PC向けのサービスと同期させることが可能になっていきます。

ユーザーにとって快適な位置情報サービスとは?

携帯電話の特徴的な機能の一つに「位置情報」があります。GPSを使ったり基地局の情報から推定したりと方式はいくつかありますが、端末の位置を使ったさまざまなサービスが考えられています。

緊急時の位置確認などはもちろんですが、万一の時のためではない日常的に便利なサービスがユーザーにとって快適であることが重要ではないでしょうか。

一つの例として、コミュニケーション機能との連携があります。位置情報で確認して、近所にいたらメールなどで連絡を取る、などというサービスへの取り組みが進んでいますし、実際、現在提供されている機能をユーザーが自分で組み合わせて、そういった使い方をしているケースも多々あります。

また、ユーザーの楽しさや向上心に訴求するサービスもあります。位置情報の履歴を地図情報と組み合わせることで、ジョギングやサイクリングの記録や消費カロリーなどを携帯電話に表示させたり残しておいたりできるサービスが始まっています。

もう一つは、広告モデルのサービスで位置情報を活用しようというものです。Webサイトのアクセス解析や、サイト内あるいはサイト間の動きを把握して分析する行動ターゲティングと呼ばれる手法は、広告の効果を向上させるために不可欠とされていますが、ユーザーがPCの前にいる限り、実際の消費行動とダイレクトに結びつかないケースもたくさんあります。

ここに位置情報を取り込んで、携帯電話向けに広告や情報を流すことで、これまでの行動ターゲティングの限界を打ち破れないか、という考え方です。ユーザー属性とネットでの行動をベースに、そのユーザーが今どこにいるかを加味した情報提供をする、というサービスです。

例えば、無線LANのアクセスポイントを検索したときに、自分に近いところから表示される、などということが可能になります。レストランなんかでも同様です。クルマでドライブしていて、レストランが近づいたときに割引チケットが送られてくる、などという応用も可能です。

ユーザーが位置情報を公開してそのサービスを受ける意志があることが前提になると思いますが、こういった日常的な状況へ向けた、何気ないサービスの中に位置情報が取り込まれていくのかもしれません。

次世代の携帯電話の姿は?

日本の携帯電話は、普及台数の面でも端末機能の面でも世界のトップクラスですが、携帯電話機の世界でのシェアは、ノキア、モトローラ、サムスン電子などが圧勝しています。

さらに2007年には、アップルの「iPhone」とGoogleの「Android」という二つの異なるアプローチの携帯電話プラットフォームが登場しました。この二つに共通するのは、PCのOSと同様に、アプリケーションのプラットフォーム、つまりアプリケーションを動作させるための基盤である、という点です。

これまでの携帯電話は、電話がベースでユーザーが手を入れる余地は極めて少ないものでした。しかし、これからの携帯電話は、端末とネットワークの機能をアプリケーションから必要に応じて選択して使いこなせるようになるでしょう。はじめから入っているけれど使わない機能が多い、ちょっとカスタマイズしたいのにできない、といったことは少なくなっていくでしょう。

携帯電話の機能は、現在でもソフトウエア開発の世界ではありますが、これまで以上に上記のようなプラットフォームを前提として、構造化されたものに変わっていくと思います。

構造化というと分かりにくいかもしれませんが、例えば「携帯のカメラで撮影した写真をメールで送る」という操作をするときに、メール機能から画像添付して送るのと、画像のフォルダからメール機能を呼び出して送る場合があります。

このとき、どちらもメニュー画面の遷移が同じ方が使いやすいですし、送信後は写真をメールで送るという操作を始めたときの画面に戻るべきではないかと思います(人によって好みはありそうですけれど)。

2003年ころにシンビアン社製のOSを搭載した携帯電話を使っていたことがありますが、メニュー画面の遷移がしっかり構造化されていることに驚かされました。ところが、2年後に機種変更した別の国産メーカーの製品では、2年も経っていながらシンビアンのOSよりもメニューや画面遷移が構造化されておらず、画面遷移や戻り先のメニューが機能ごとにバラバラで、使いにくくてすぐに手放してしまいました。

細かいことですが、こういった点で共通のプラットフォームがもたらすメリットは計り知れません。その上での競争ということになりますので、これまで以上に機能やサービスのアイデアが問われてくるでしょう。

最後に触れておきたいのは、人間相手のコミュニケーションではなくて、マシン・ツー・マシンのコミュニケーションです。これは、ソフトウエア間のコミュニケーションと言ってもよいと思います。例えばWebの世界では、人間の目よりも検索エンジンにとって目立つサイトを構築しなければなりません。こういったWebの世界で起こったことは、携帯電話にも広がっていくでしょう。

ある携帯電話事業者の幹部の方は、もう10年以上前に「人間のコミュニケーションだけでは限界がある。」と喝破しておられました。

次回からはテーマを変えて、インターネットそのものの今日的な位置づけを「インターネットは、何のためのインフラなのか?」という観点から考えてみたいと思います。

ワイアード・ビジョン 編集委員 田邊俊雅


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