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ネクスト・メディアとは何か 〜ネット&ライフスタイルの新時代〜 従来のメディアやビジネスに影響を与えながら、日々成長と変化を続けていくネットの世界。その現状と将来の展望を紐解いていきます。 powered by WIRED VISION

テーマ2 次世代ネットワークとサービスを考える
第2回 ユーザーもアーティストも変わる


前回は、技術やサービスの動向を中心に最近の動きを振り返ってみましたが、今回は、そういった状況を踏まえて、アーティストやユーザーがどんなことを始めつつあるのかを見ていきたいと思います。


レコード会社から離れるアーティスト

「レディオヘッド」という英国のロック・グループは、2007年秋にネット配信でニューアルバムを発売しました。彼らは、レコード会社の旧来のビジネスから距離を置きたいと思っていたようで、レコーディングから配信まですべて自分たちでやってしまったのです。

■レディオヘッドのオフィシャルサイト( http://www.radiohead.com/deadairspace/ )

圧縮のかかったファイル形式での配信ということで、CDに比べると音質は犠牲になっているものの、データのコピーは制限されておらず、なるべく多くの人に聴いてもらうことを目的としたものでした(別途、CDのパッケージは販売しています)。

しかも、サイトからダウンロードする際の楽曲の価格はユーザーにお任せ。好きな価格で買ってくれ、というやり方だったのです。タダでダウンロードした人もいたでしょうが、それでも、従来型のプロモーションに比べて非常に安いコストでプロモーションを実現したと言えるでしょう。

このようにレコード会社を通さずに、ネットで直接ファンにアクセスしようとするアーティストが増えてきています。この背景には、旧態依然とした著作権管理の問題などもあるでしょうし、ネットを使ったプロモーションなどが得意ではないレコード会社も多い、といったことがあるでしょう。しかしそれよりも、技術的な障壁がなくなって誰もが容易に音楽を作って配信できるようなインフラが整った、ということが最も大きな要因ではないかと思います。

レディオヘッドは、レコード会社を離れて自分たちで直接配信を始めましたが、レコード会社を離れてイベント・興行会社に移籍した大物アーティストもいます。米国の女性歌手「マドンナ」です。

この移籍は、ライブに軸足を置きつつ、CDやグッズを販売していく、という彼女自身のビジネスに対する姿勢の表れであり、そのためにはCDを中心に考えがちな旧来のレコード会社からは離れた方がやりやすい、ということなのだと思います。 それにしても、彼女のWebサイトは素晴らしくよくできていますね。アルバムやCDはもちろん、過去のプロモーションビデオなどもすべて揃っており、それらをその場で見たり聴いたりできるようになっています(ちょっと重いですけれど)。

■マドンナ・オフィシャルサイト( http://www.madonna.com/ )

レディオヘッドとマドンナの例に共通するのは、ネットでのコミュニケーションとそこでのデジタルコンテンツの流通の可能性が、既存のレコード会社やCDなどのリアルな記録メディアといった旧弊からアーティストを解き放っている、ということではないかと思います。

音楽に特化したSNS

先の例はメジャーなアーティストがレコード会社から離れつつあることを示すものでしたが、そもそもレコード会社とは関係ないところでアーティストとファンの新しいつながり方も見えてきています。

音楽に特化したSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)がその一つです。YouTubeのような動画投稿サイトにも、バンドのビデオクリップ、あるいは楽曲の音源と静止画などをアップロードしているような例は多々見られますが、音楽のためのSNSには音楽ファンやアーティストが喜ぶ、音楽ファンのツボを心得た機能が用意されています。

例えば、「Last.fm」というロンドンに本拠を置く音楽SNS(サイトは日本語対応です)では、SNSの基本機能である同じアーティストのファンや興味のある音楽のジャンルが似ている者同士のためのコミュニケーション機能は当然として、アップロードした楽曲の傾向から「こんなのも好きなんじゃないですか?」と推薦してくれるような機能、PCの音楽プレーヤで再生した曲目を自動的にサイトにアップロードしてくれる機能などが提供されています。

また、Last.fm内でダウンロードされた楽曲数に応じてアーティストやレーベルに利用料を支払う、という仕組みも用意しています。この機能を使えば、単なるプロモーションではなくて、そこで直接ビジネスを展開することもできるわけです。

■Last.fm( http://www.lastfm.jp/ )

こういったSNSやYouTubeなどの投稿サイトにアップロードされたコンテンツには、アーティスト自身の手によるものもあればファンが勝手にアップロードしたものもあります。集まってくる音楽好きな“濃い”オーディエンスと相まって、関連するコンテンツがどんどん充実していきます。

アーティストにとっては、インディーズレーベル的な機能も果たしますし、口コミ効果も期待できます。格好のプロモーションの場になるわけです。ファンにとっても、ファン同士の交流やアーティストとの交流、楽曲をダウンロードで手軽に入手できるなど、多くのメリットがあります。

レコード会社も動き出している

ここまで、アーティストやネットサービスの側から見てきましたが、レコード会社も手をこまねいているわけではありません。

例えば、コロムビアミュージックエンタテインメントでは、ネットを使った新人の発掘を始めています。デモ音源の投稿サイト「音REVOLUTION」を開設して、そこに集まった楽曲の中からアクセスの多いものをCDデビューさせる、というやり方です。

音REVOLUTION
(ビデオ投稿型オーディションサイト「音REVOLUTION」。)

■音REVOLUTION( http://www.otorevo.jp/ )

また、同社ではSNSのMySpaceで人気の出たアーティストをネット配信だけのシングル盤でデビューさせたりもしています。定期的にシングルを配信し、そのダウンロード数などを参考にして、ローコスト/ローリスクのアルバム制作へとつなげるのが狙いです。

数百組のアーティストのデモを実際に見たり聴いたりするには膨大な時間がかかりますが、ネットの仕組みを利用することでその時間を短縮できるわけです。しかも、アクセスやダウンロードの数などから、事前に売れそうかどうかまでがある程度分かってしまいます。これにより短期間で何組ものアーティストのデビューを実現しています。 こうした新しいスタイルは、従来のレコード会社のビジネスにはなかったもので、脅威的なこととも言えるでしょう。

次回は、ブロードバンドをキーワードにしながら、ブロードバンドを前提に始まっていること、ちょっと先のネットワークなどを見て行きたいと思います。

ワイアード・ビジョン 編集委員 田邊俊雅


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