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Web2.0はモデルの転換。主客融合の中で新たなビジネスの可能性が生まれる。 東京大学 先端科学技術研究センター 知財マネジメントスクール校長役 特任教授 妹尾 堅一郎 氏

今、Web2.0が大きな話題になっている。様々な意見があるとはいえ、Web2.0は企業経営や日常のビジネスにまで大きな影響を及ぼすことは確実だ。特に新しいビジネスモデル創出の可能性は極めて高い。だが、そもそもWeb2.0とは何なのか、また、それをどう捉えるべきか。「Web2.0はモデルの転換、主客融合の始まりであり、リアルの世界にも大きなインパクトを与えつつある。Web2.0の世界とリアルの世界が相互作用する中で、新たなビジネスのヒントが生まれる」と東京大学先端科学技術研究センターの妹尾堅一郎氏は指摘する。Web2.0の本質をどう考え、それをビジネスの中でどう生かしていくのか、妹尾氏に聞いた。

Web2.0は主客融合。リアルの世界にも広がるインパクト

――今、Web2.0がブームになっていますが、これをどのようにお考えですか。
妹尾 Web2.0は、ビジネスやそれを取り巻く経済、社会のモデルが変わっていることの象徴ではないでしょうか。ですから、ブームだと表層的に見るべきではなく、ひとつの大きなトレンドが根底にあると見るべきです。Web2.0のもっとも大きな意味は「主客融合」だと思います。出版物でいえば、今までは読者と執筆者、編集者、発行者の間には大きな断絶があって、「私書く人、あなた読む人」でした。それがSNS(Social Networking Service)やWikipediaでは、「私が書く人かつ読む人」になっています。約30年前に、アルビン・トフラーがプロデューサーとコンシューマーが融合して、プロシューマー※が生まれると言いましたが、それを具現するような動きがWeb2.0と言えると思います。
※アルビン・トフラー著書 「第三の波」より引用

――リアルな世界ではどうでしょうか。
妹尾 例えば、ファッションを見てみましょう。今までは世界のモード界をリードする著名デザイナーがデザインし、高級モデルが着て、高級ブティックで販売といった仕組みでした。つまり、流行を創る人とそれに乗る人の区分が明確でした。しかし、最近では、「エビちゃん」や渋谷の『109』の店員が「かわいい」と言った洋服が口コミやメールであっという間に広まり、しかもケータイを通じて大量に売れるなど、リアルな世界でもモデルが変容しています。
 そうした動きは教育の世界でも同様です。かつて、10年近く前に、私が慶應丸の内シティキャンパスの校長をしていたとき「ABC(Academy Business Citizen)モデル」を提示しました。AtoAやAtoB、AtoCといった「大学知の伝達」や、BtoCといった「企業知の貢献」に加え、CtoA、CtoB、CtoCといった「市民知の開放」モデルの出現も指摘しました。それが今やWikipediaなどの出現で実現しています。つまり、「私教える人、あなた教わる人」というモデルから「教え合う・学び合う」(互学互習)モデルへの転換です。今、Web2.0ではこれらは「集合知」と呼ばれています。さらに、当時、私がさらにABCは融合していく、ということを言いましたが、実際にWeb上の知的コミュニティはそういう方向で動いていますね。

図 教育と学習の主体の変容

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Web2.0の世界とリアルの世界の相互作用で生まれる新たな可能性

――その動きは、これからどのような方向に進むのでしょうか。
妹尾 既に新しい動きが出始めています。そこで、今、私が注目しているのが、あるレシピサイトです。今までのレシピサイトは「きょうの料理」などのように、プロが作ったレシピをダウンロードして消費者が参考にするWeb1.0の世界でした。ところが、そのサイトは、主婦が自ら工夫したレシピをアップロードするのです。それも、豪華な料理のレシピではありません。例えば、今冷蔵庫には、にんじんと大根、肉200gしかないが、それで夕飯のおかずを作らなくてはいけない。その時に、あと肉を100g足せば、こんなおいしい料理ができるという日常生活の知恵を出し合うサイトになりつつあるのです。

――現実的なビジネスではどのような可能性が考えられますか。
妹尾 そうしたサイトは口コミやインターネット上のやり取りで、あっという間に知れ渡ります。そして、そのレシピを見て食品を買いに行く主婦が増えるでしょう。これは、実は大変なことを意味しています。つまり、ネット上の情報がリアルな行動を変えていくわけです。このレシピによって購買行動は確実に変わりうるでしょう。Webサイトがリアルを変えるという、サイバーの世界とリアルの世界の相互作用が始まります。ここに、新しいビジネスのヒントがあるのではないでしょうか。


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