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製品やサービスを巧みに使いこなす「使巧者」を育て、その工夫の中からイノベーションを起こす 東京大学 先端科学技術研究センター 知財マネジメントスクール校長役 特任教授 妹尾 堅一郎 氏

今日のビジネスは、ますます知を軸に様々な形に進化している。日本のものづくりの強さを代表するトヨタ生産方式には知が凝縮されている。また、コアビジネスを知の凝縮であるサービスに移したITベンダーも多い。しかし、成功した企業とそうでない企業がはっきり分かれてきている。違いはどこにあるのか。新しいビジネスモデルを作り出すには、どのような考え方が有効なのだろうか。「サービスともの作りを一体として考えることが必要。優れたサービスの裏には優れたもの作りが実は潜んでいる」と東京大学先端科学技術センターの妹尾堅一郎氏は指摘する。サービスともの作りの関係、事業化の成功要因などについて妹尾氏に聞いた。

サービスの成功の背景にはもの作りがある

――ビジネスが知を軸に進化していく中で、新たなビジネスモデルはどうあるべきなのでしょうか。
妹尾 一番の問題はサービスともの作りが分離された形で議論されていることです。つまり、何かと、サービスか、もの作りか、と分けて考えてしまっている。しかし、実はサービスともの作りは一体化して議論すべきものなのです。もの作りがどれだけサービスに寄与するのか、サービスがどのような製品や技術を必要としているか。このスパイラルな関係を描くことなしに、ビジネスの発展モデルは生まれません。今、話題の商品でいえば、iPodの例があります。iPodはメディアがMDからハードディスクに変わっただけではなく、iTunesとの組み合わせで、もの作りとサービスがセットになっています。

――ものとサービスが連動しているわけですね。
妹尾 そうです。しかも、この流れの奥をよく見れば、「所有から使用へ」という概念の変化がしっかり見て取れるのです。「あなたはCDが欲しいのか、音楽が聴きたいのか」−−音楽が聴きたいのなら、ダウンロードすればいい。このように、ビジネストレンドはものの所有よりも、サービスに移行し始めているのです。この点を見落とすと、単なるものの変化を追い求めてしまうことになっていまう。そこで考えるべきことは、ものを生かすサービスは何かを一方で考え、他方で、サービスを提供しようとした時に製品や技術をどれだけ引き寄せられるか、を考えることです。この視点の重要性をまず理解することが必要です。

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「見巧者」で事業を評価、「使巧者」でイノベーションを起こす

――技術の目利きを育てることが大切だといわれますが。
東京大学 先端科学技術研究センター 知財マネジメントスクール校長役 特任教授 妹尾 堅一郎 氏 妹尾 技術を技術として評価するのならばそれで済みますが、技術の事業化の観点から評価するのならば、技術がビジネスにどう役立つかという“パフォーマンス”としての見極めです。昔から日本では、歌舞伎をはじめパフォーマンスを見る目をもっている“通(つう)”のことを「見巧者(みごうしゃ)」といいますが、日本の最大の問題は、マーケットサイドから見て技術の事業パフォーマンスの可能性を評価する人、すなわち事業の見巧者が育っていないことです。見巧者が育てば、オペラも落語も演者が育つ。それと同様に、事業の見巧者が育つことによって、全体のレベルが上がるのです。
 一方、イノベーションそのものを展開するには、製品やサービスを提供側が思いもよらぬ形で使いこなしていく人々に注目すべきです。その人々のことを私は「使巧者(しごうしゃ)」と呼んでいます。


――ものを洗練させることについて、日本人は大変優れていますね。
妹尾 全くその通りです。日本には元来使巧者がたくさんいるのです。振り返ってみると、かつてのポケベルも携帯電話も、イノベーションは実は使う側が工夫したところから生まれているのです。ですから、メーカー主導のイノベーションだけではなく、その一方で、ユーザー主導のイノベーションが起きる環境をどう作るのかが勝負でしょう。ユーザー起点型イノベーションを本格的に研究・実践したいと考えています。そして、使巧者を見つけ、育て、彼らが工夫できるような「場と機会」の提供が待ち望まれていると思います。


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東京大学大学院
松野 泰也准教授

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