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ネクスト・メディアとは何か 〜ネット&ライフスタイルの新時代〜 従来のメディアやビジネスに影響を与えながら、日々成長と変化を続けていくネットの世界。その現状と将来の展望を紐解いていきます。 powered by WIRED VISION

テーマ3 インターネットの本当の意味を考える
第3回
インターネットは「投資」の基盤になった


「インターネット 投資」というキーワードでグーグルで検索してみましょう。検索結果は、1760万件にも上ります。試しに「インターネット SNS」にしてみると739万件、「インターネット メディア」では53万6000件に過ぎません(検索ヒット数はいずれも2008年8月中旬の値)。

この連載ではこれまで、インターネットについて、コミュニケーション・プラットフォーム(基盤)としての観点から、あるいはコンテンツ流通プラットフォームという切り口から考えることで、「ネクスト・メディア」としてのインターネットの姿を探ってきました。

今回は、そういったいかにもネット的な見方から離れて、「投資の基盤環境としてのインターネット」という少し違った観点から考えてみたいと思います。


誰もがリアルタイム24時間のグローバル投資家に

インターネットは、メールやブログ、SNSなどのコミュニケーションの基盤でありツールであることは言うまでもありませんが、それらと同じくらい、投資の基盤環境としての役割も増してきています。実際、インターネット取引なしでは、もはやグローバルな金融マーケットは成り立ちません。個人投資家の投資金額も相場を左右するほどになってきています。

また、個人が投資に取り組もうとすれば、経済やビジネスに強いメディアでの情報収集はもとより、ネット証券や投資会社の情報提供サービスなども、その多くをインターネット経由で受け取ります。そして何より、投資行為そのものがインターネットを前提とし、インターネットの仕組みの上に構築されている、という事実を否応なく知らされます。

証券会社に電話をかけて売買の注文をする、というような投資のスタイルは、一部でまだ残ってはいますが大きく変わりました。投資家であるユーザーが、インターネット経由でパソコンを使って自分で売買します。マーケットの状況も自らパソコンで確認します。グローバルなマーケットと投資家は、インターネットを媒介にしてつながっているのです。

日本証券業協会のデータによれば、2008年5月末段階でインターネット取引をしている国内の口座数は約1163万口座(調査対象の証券会社の合計数で法人口座を含む)にも達しており、いまなお増加中です。

ビジネスは世界中で24時間動いています。東京市場が夕方閉じる頃、欧州市場が開きます。その後、ニューヨーク市場が開き、日本時間の明け方まで取引が続きます。そして、すぐにまた翌日の東京市場が開くのです。ほぼ途切れることなく、月曜の朝の東京から土曜未明のニューヨークまで市場は動き続けます。

しかも、相場が動くのは、東京というよりはロンドンとニューヨーク。特にニューヨークの午後、日本時間の明け方3時、4時あたりは大きく動く場合が多く、投資に取り組んでいる身ならば目が離せません。

世界の金融の中心はニューヨーク証券取引所(NYSE)と同商品取引所(NYMEX)
(CC)photo by Jermaine Green
世界の金融の中心はニューヨーク証券取引所(NYSE)と同商品取引所(NYMEX)
(CC)photo by Jermaine Green

インターネットには国境も時差もありません。もちろん、市場は土日はお休みではありますが、普段は24時間いつでも、インターネットで情報を受け取ったり、市場での売買注文をすることが可能です。インターネットは、情報と実際のお金の流れの両面で、このグローバルなマーケットの神経系とも言うべき存在になっているのです。

ベストエフォートでもかまわない

一昔前であれば、金融システムといえば高い信頼性が要求されるアプリケーションの最たるものでした。処理の遅延や端末の信頼性などに厳密な基準値がありました。品質(速度や遅延など)が補償されないベストエフォートのインターネットは、こういった分野では使うに足るインフラではありませんでした。端末にしても、パソコンのような不安定(ハングアップしたり、たとえばブラウザのようにインストールされているソフトによって動作が異なったりする)なものは想定されていませんでした。

現在でも、従来からある保守的な銀行業務のオンラインシステムなどは信頼性を第一に考えられてはいますが、インターネットをインフラにしたネットバンキングやネット証券においては、窓口業務にあたる部分がPCや携帯電話に置き換わってきており、従来の概念が大きく変わったと言えるでしょう。

当然、ベストエフォートのインターネットゆえのリスクはあります。しかし、それでもインターネットを使って得られるリターンの方が、そのリスクよりも大きい。つまり、使わないことのリスクの方がインターネットのリスクよりも大きい、と考えるユーザーが多くなったのです。

自宅に光ファイバを敷いてなるべく速い速度を確保しながら、余計なソフトを入れない高性能のパソコンで投資用の環境を作る、ということも基本としては必要なことかもしれません。しかし、携帯電話からでも相場をチェックしたり売買したりできることが重視されるようになって来ています。無線インフラの不安定さや速度の遅さ、使いにくい小さな画面といったデメリットを補って余りあるメリットが評価されているのです。

特にそれを実感させられるのが、外国為替証拠金取引(FXと呼ばれています)です。世界の通貨のレートがリアルタイムに更新され、それをいつでも、その時のレートで即座に取引できます。ユーザーの口座への反映もリアルタイムです。オンライン・リアルタイム処理システムの極致のようなシステムがFXなのです。

為替や株価は24時間リアルタイムに更新されている
(CC) photo by Kishore Nagarigari
為替や株価は24時間リアルタイムに更新されている
(CC) photo by Kishore Nagarigari

例えば、FXでは、為替市場が大きく動くと、注文してもなかなか受けてもらえない場合があります。注文が殺到していて、処理が追いつかないのです。やっと取引が成立したと思ったら、狙いよりもはるかに儲けが少なくなっていた(あるいは損が大きくなっていた)、といったことも普通に起こります。

ユーザーの側も、そうした場合に備えて、あらかじめ損をストップ、あるいは儲けを確定させるようなしきい値を設定しています。それでも、注文集中の度合いによっては、それが多少ずれたりすることもあります。最近では、2007年の夏にサブプライム問題が表面化したときが大変でした。

しかし、こんなことは実際にはそうそう頻繁にあるわけではないのです。高いコストをかけて何年に一度というようなクライシスとも言えるような状況にピークを想定して設計するよりも、多くのユーザーにローコストのサービスを提供する、という選択肢もあるのです。ユーザーの側も同様に、このような例外的なリスクを承知の上で、普段安いコストで取引できるメリットを選択していると言えます。

ユーザーの工夫次第でどうにでもなる世界

投資で収益を上げていくためには、情報収集と相場の感覚が不可欠です。いずれも、黙っていても手に入ったり身についたりするものではありません。インターネットに存在する情報から自分にとって有益な情報を自分で探し出し、マーケットに身を置くことで、相場の感覚を自ら実感し身につける、というアプローチをしなければなりません。

コミュニケーションにおいても、同じようなことが言えます。居心地が良かったり役に立ったりするコミュニティや情報は、黙っていては手に入りませんし、その存在すら知らないうちに時が過ぎてしまいます。コミュニティでの振舞いにはリテラシが要求され、それはある程度の場数を踏んでいないとなかなか身につくものではありません。

ユーザー側に使う努力やリテラシが求められる、という点で、コミュニケーションにも投資にも同じような側面があります。ユーザーが工夫すればするほど、能動的に動けば動くほど、リターンが期待できます。もちろん、リスクはあるわけですが、恐れるばかりではリターンにはたどり着けません。また、ユーザーにできる工夫には、システム的な工夫もあります。このあたりも、投資とインターネットの共通点ですね。例えば、前述のFXでは、為替レートを読み込んで、プログラムに書かれたロジックに従って自動的に取引する、というユーザーが作ったシステム(既に金融機関の取引自体がこういったシステムによるものになっているわけですが)が無数にあります。さらに、それらのシステムの中から、運用成績の良い物だけをピックアップしてくる、といったソフトもあると言います。

このように、投資はいろいろな面で極めてインターネット的であり、24時間動き続ける市場と相まって、既にインターネットを前提にせざるを得ない状況になってしまっているのです。インターネットは、メールやコミュニティを実現するコミュニケーション・インフラであり、ニュースを見たり買い物をしたり、というように日々の生活に欠かせない存在になっています。そして、この日々の生活という部分を突き詰めていくと、投資ということに行き当たると思うのです。

次回は、テーマ3のまとめとして、インターネットが個人が世界で生きていくための最強の武器である、ということについて、コミュニケーションと投資の両面から整理してみたいと思います。

ワイアード・ビジョン 編集委員 田邊俊雅


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