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ネクスト・メディアとは何か 〜ネット&ライフスタイルの新時代〜 従来のメディアやビジネスに影響を与えながら、日々成長と変化を続けていくネットの世界。その現状と将来の展望を紐解いていきます。 powered by WIRED VISION

テーマ1 Web2.0の次を考える
第3回 コンテクスト・メイキングが勝負


前回、インターネットはノイジーな世界である、ということを書きました。

日々受信しているメールのうち、実際に業務などで保存する必要のあるメールは、個人差もあるでしょうが5%〜10%程度ではないかと思います。特に、Webサイトで問い合わせ先や連絡先のアドレスを公開していたりすると、不要なメール(迷惑メールやスパムメール、買い物と同時に登録されるネットショップなどからのメールなどなど)の数は格段に増加します。

Webサイトについても同じようなことが言えます。以前は、メディアのサイトにバナー広告が目立つくらいでしたが、ブログやGoogleのマッチング広告(AdSense:そのページの内容に合わせた広告が掲載される)などが一般化したために、個人のブログであっても広告だらけで、どこにエントリの本文があるのか分からない、というような例も多々見られるようになってきました。

こうなってくると、情報を受け取る側が自然とその状況に対応するようになってきます。


膨大なコンテンツがフラットに存在する

メールであれば、毎日送られてくるようなものは、ほとんど読み飛ばすようになります。メディアのサイトのメールマガジンを毎日開封して中身をスクロールして読む、などという手間がかかることは誰もしなくなるわけです。

Webでも、広告は無意識に読み飛ばすようになります。サイトが配信しているRSS(RDF Site Summary:タイトルやサマリといったサイトの更新情報)を読んで、その中でも興味のあるものだけを読むようになります。トップページは経由せずに、記事本体に直接アクセスするようになります。テレビは、ビデオに録画することで好きな番組の必要な部分だけを見るようになりました。これと同じようなことがWebでも起こっているのです。

紙の新聞には、1面から最終面までがあって、1面トップにはその新聞社の意図が込められています。記事の並び順、分量、見出しの大きさ、専有面積、写真の有無などが、記事と記事の関係や重要さの度合いをはっきりと物語っています。

ところが、Webサイトではすべての記事がフラットな構造で並んでいます。もちろんジャンルやカテゴリといった考え方はあるのですが、新着記事タイトルのリストであるヘッドラインには、時間軸はあっても重要性の軸はなかなか表現できません。Webサイトのトップページには、トップニュースという考え方はありますが、それも1日に何度も差し替わります。

Webはテレビに比べると能動的な面がありますが、用意されているコンテンツを読んで行く、という意味では受動性のあるメディア環境です。たくさんのWebサイトがフラットに並び、そのサイトの中のコンテンツもフラットな状況では、個々のコンテンツは読者の目には触れても「今、見なきゃ」と強くは認識されない、ということになってしまったのです。

道筋をつける「コンテクスト」

こういったコンテンツの氾濫とも言えるような状況の中で、オーディエンスに対して意図をもって何かを伝えようとした場合に、「コンテクスト」という考え方が重要な意味を持つようになってきます。

さて、コンテクストの具体的な話に入る前に、ちょっとことばの整理をしておきましょう。コンテクストというのは、元々は文脈、前後関係、状況といった意味ですが、Webの世界ではコンテンツ同士の関係性やコンテンツに辿り着くまでの道筋など、Webに独特の概念を付加して本来よりも多少広い意味で使われています。また、オーディエンスというのは、「読者」とほぼ言い換えても良いことばですが、紙媒体やテレビなどに対して、Webというメディアが持つ双方向性をより意識してWebに接する人たちのことを意味しています。単なる読者にとどまらず、Webを中心としたコミュニケーションの「場」を形成する役割の一端を担うこともあるからです。

具体的なコンテクストの例としては、次のようなものが挙げられるでしょう。ブックマークにせよRSSにせよ、オーディエンスがそれを自分のPCの閲覧ソフトに「このサイトは、いつもチェックすることにしよう」と考えて登録するためには、そう考えるに至る何らかのきっかけが必要になります。きっかけだけではなくて、それが実際の行動につながるための後押しがあって、ようやくそのサイトが日常的なチェック対象になります。

こういった、きっかけから始まる一連の流れ、あるいはそういった行動に結びつく情報の一連のつながり、文脈ともいえるものが、Webの世界ではコンテクストとして認識され、重視されるようになっているのです。

共感できるブログのRSSをいつもチェックするということは、そのブログにどうやって辿り着いたのかが問題になります。信頼できる誰かにそのブログの存在を聞いたからだったり、友人がブログで引用しているのを目にしたり、あるいは、たまたま検索で見つけたり、というように辿り着くまでのさまざまなルートが考えられます。そして、なぜそれに共感できたのか、その共感は何が原因なのか、といったことがさらに絡み合って、コンテクストを形成します。

これはブログに限らず、商品やサービスなどでも同じことが言えます。もし、新しいデジカメを探していた場合、メディアのサイトで記事として紹介されていても、同じような製品がたくさんある中で埋もれてしまうことがあります。でも、ある製品について、カメラについては造詣の深い友人がブログで詳しく説明し、褒めていたとしたらどうでしょう? その製品に対する感覚がポジティブに変わってくるだけでなく、多くの製品の中からその製品をまず見つけるようになります。

こうして、オーディエンスは、Webサイトやメールなどで提供される情報を自らコンテクストによって、意識的にあるいは無意識に取捨選択し、自分にとって一番楽な方法で、しかも自分の見たいような形で受け取ろうとするようになったのです。

コンテクスト・メーカーとしてのブログ

こういった状況の中で、コンテンツそのものだけではなくて、そこに至るコンテクストをどうやって作って行くかということを多くの人が重視するようになりました。その中の取り組みの一つがブロガーの力を借りる、という方法でした。

PRの役割を担うブロガーの存在はますます重要になっている。(CC) photo by b_d_solis
PRの役割を担うブロガーの存在はますます重要になっている。
(CC) photo by b_d_solis
ブロガー向けの製品説明会を開催し、ブロガー経由で肯定的なコンテクストに乗せて製品情報を流通させる、というようなやり方がその一つの例です。ブログベースのサイトを作って、オーディエンスからのコメントやトラックバックを受け、そこからコンテクストを作って行く、といったことも例の一つです。

前回、ブログの最大の特徴と当初言われていたトラックバックがスパム化して機能しなくなっている、ということに触れました。こうしたコメントやトラックバックのスパム化、「炎上」などによるコミュニケーションの停止などによって、コンテクスト・メイキングがちょっと停滞している、というのが今の状態なのかもしれません。

次回は、前述の「ユーザーが自分で情報の受け取りかたをコントロールする」というあたりをもう少し考えてみたいと思います。

ワイアード・ビジョン 編集委員 田邊俊雅



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